蒼き自由と青き厄災_03話後編

Last-modified: 2008-12-16 (火) 23:21:32

 昼下がりの訓練場で対峙した4人。
「よぉ、チビ副隊長。」
 オルガは挑発的な笑みを浮かべ
「さっきはよくもぶっ飛ばしてくれたじゃねぇか、この糞ガキ。」
 すると、ヴィータも挑発的な笑みを浮かべた。
「何だ生きてたのかよ。ゴキブリ並みにしぶてぇな、この触角頭。」
 ヴィータがオルガの前髪を見て言った。
 オルガは怒りに満ちた表情を浮かべて
「糞ガキ、絶対に泣かす!!」
 ヴィータも怒りに満ちた表情を浮かべて
「その触角、引っこ抜いてやる!!」
火花を散らす二人。
「ヤマト、この模擬戦で証明しよう。私はニートではないとな。」
 シグナムは好戦的な笑みを浮かべる。
「だから、僕はニートなんて言ってないのに~(泣)」
 キラはうんざりした口調で呟く。
 一方、その様子を見ていた、なのはと前線メンバー達は
「うわ~、見て見てティア。副隊長達やる気満々だよ。」
 スバルは無邪気にティアナに話し掛ける。
「そう?私には副隊長達がやる気満々というより殺る気満々に感じるんだけど。」
 あれは明らかに殺気だとティアナは感じていた。

 

「それじゃあそろそろ始めようか。4人共準備はいい?」
「あぁ、いつでもいいぜ。」
「こっちもいつでもいいぞなのは隊長。」
 両方の確認を済ますと訓練場のフィールドが市街地に変わった。
「それじゃあ、模擬戦始め。」
「オラァァァ、行くぜぇ!!!」
『シュラーク』
 先制攻撃とばかりにオルガが二本の砲撃を放ち、同時にキラは空へと舞い上がった。
「そんな砲撃が当たるかよ!!」
 ヴィータ達は左右に飛翔して砲撃をかわすが、
「ヴィータ、上だ!!!」
「何!?」
 シグナムの声を聞いてそれに反応した瞬間、
『ハイマットフルバースト』
ヴィータは閃光に包まれた。
「さすがキラ、相変わらず容赦ねぇぜ。」
「オルガ、油断しないで。」
 オルガの上空でキラは油断なくライフルをシグナムに向ける。
「なるほど、最初から各個撃破が目的か。」
「ええ、僕達にとって古代ベルカの騎士は天敵のようなものですから。」
 オルガは典型的な砲撃型であり、キラはどちらかと言えば万能型だが、接近戦のエキスパートであるベルカの騎士を相手に接近戦をする気は毛頭ない。
だから、最初に速攻で一人片づけて2対1に持ち込む事を考えた。

 

「なるほど、二人掛かりでなら私を確実に倒せると?」
「ええ。少なくとも射程と火力はこっちが上です。」
『クスフィアス、スタンバイ』
 キラの腰に二つの発射体リングが出現する。
オルガも胸部のスキュラを収束させている。
 シグナムは不敵な笑みを浮かべると、
「ベルカの騎士を甘く見るなよ、ヤマト。」
 キラがその言葉の意味を理解した瞬間、
「吹っ飛べぇ!!」
「何ぃ!?」
 爆煙の中からヴィータが突っ込んで来た。
オルガは反応仕切れずグラーフアイゼンの一撃を受けて吹っ飛んだ。
「オルガ!?」
「お前の相手は私だぞ?ヤマト」
 一気にシグナムは距離を詰めて来た。
「クッ、フリーダム。」
『ラケルタ、ツインサーベル』
 素早く二本のサーベルを抜き放ち、シグナムの一撃を受け止める。
「さぁ、ニートと言ったことを後悔しろ、ヤマト。」
「だから、そんな事一言も言ってないって言っているでしょー!!!」
 キラは叫ぶとシグナムを弾き飛ばして切りかかった。
しかし、先ほど述べたようにキラが接近戦でシグナムに勝てる筈もなく、次第に追い込まれてきた。
「どうした、ヤマト。その程度では私には勝てないぞ!!」
「くそ、接近戦じゃ勝てない。」

 

 キラはシグナムの腹部にとっさに蹴りを入れ、その反動を利用して距離をとりライフルを向けた。
「これで!!」
『ショートバスター』
ライフルから蒼い砲撃が放たれ、シグナムに直撃した。
しかし、
『シュランゲフォルム』「えっ!?」
キラの足をシュランゲフォルムとなったレヴァンテインの連結刃が絡め取っていた。
「ハアアァァー!!!」
「うわぁぁーー!!」
シグナムはそのまま連結刃を回転させ、キラをビルに叩きつけた。
「少しやりすぎたか?
しかしヤマト、これで分かっただろう。
私はニートではない!!」
 シグナムがたかだかと勝利宣言をした直後、
「だ・か・ら、最初からぁニートなんて言ってないって言ってるだろー。」『ミーティアソード』
 蒼い巨大な剣が真っ直ぐシグナムに突っ込んで来た。
「何!?クッ!」
 シグナムはとっさにかわしてキラの方を見るがキラはすでに気絶していた。
シグナムはそれを見ると、柔らかい笑みを浮かべて言った。
「ヤマト、お前はきっとまだまだ伸びる。」
 見たくなった。この少年がどこまで強くなって行くか。
そして、戦ってみたくなった。強くなった少年と命を懸けた本気の死闘を。
「だから、私がお前を鍛えてやる。」

 

 一方、少し時間を遡ってオルガとヴィータの戦いは、
「コノヤロ、よくもやりやがったな!!」
『トーデスブロック』
 オルガの右手のバズーカから魔力弾が放たれる
「そんなもん!」
 ヴィータがグラーフアイゼンでそれを打ち返してきた。
オルガはとっさにかわしてまた魔力弾を放つ。
「ワンパターンなんだよ、触覚頭。」
打ち返そうとした次の瞬間、
「バカが!!」
『スタン・ボム』
 魔力弾は閃光と強烈な音を放った。
「これでぇ!!!」
『シュラーク、スキュラ、チャージ』
魔力が胸部と肩部に収束していく。
「落ちろぉ!!!」
『ダブルバースト』
 強烈な砲撃が放たれ、爆発する。
「やったか?」
「砲撃がおせぇ!!」
 ヴィータが砲撃をかわしてオルガの右方向から強襲する。
オルガがバズーカの引き金に指を掛けるが、
「させねぇよ。」
 ヴィータがバズーカを弾き飛ばし上空に魔力弾が放たれる。
「やべぇ?!」
「終わりだぁ!!」
 ヴィータはグラーフアイゼンを振り上げる。
しかし、オルガはどこか狂気を帯びた笑みを浮かべる。
「なんてなぁ!!!」
『クレイモア・バレット』
 突如上空に放った魔力弾が爆発し、上空から細かい魔力弾のシャワーを降らせた。

 

 ヴィータはすぐに射程圏内から離脱しようとするが、
『ディレイドバインド』バインドがヴィータを捕縛した。
「なっ!?」
「ハッ!俺の唯一の捕縛系魔法だ!!」
 そして上空から魔力弾のシャワーが降り注いだ。
「今度こそやったか?」
『いえ、魔力反応を確認』
爆煙の中からヴィータがゆっくりと現れた。
「今の攻撃は良かった。いつのまにバインドを仕掛けた?」
「ハッ、テメェにぶっ飛ばされてる間に詠唱を済ましてたんだよ。」
 いきなり褒められ狼狽しながらも表に出さずにオルガは答える。
「やっぱり、お前は伸びるな。」
「そいつはどうも、だが俺の勝ちだ!!!」
 オルガはスキュラの発射体勢に入った。
しかし、オルガは気付かない。
ヴィータの帽子に付いている筈のウサギのぬいぐるみがもげている事に・・・。
 そして次の瞬間、オルガ強烈な衝撃を伴って意識を刈り取られた。
 意識を失う直前にオルガが見たのはまるで、
「お、鬼がいやがった」 地獄の鬼も素足で逃げ出す樣な怒りの表情を浮かべたヴィータだった。
 模擬戦は副隊長達の勝利に終わったが、その後なのはとシグナムが止めに来るまでヴィータは半ベソでオルガをグラーフアイゼンで殴り続けていた。

 

「やあ、君から私を訪ねてくれるとは珍しいね。ルーテシア。」
 スカリエッティはアジトで紫髪の少女、ルーテシアと話していた。
「アスランからの頼まれもの。」
 ルーテシアは淡々とした口調で手紙を渡す。
「あぁ、ありがとう。優しいなルーテシアは。そうだ、お菓子でも食べて行くかい?」
 ルーテシアは首を横に振る。
「アギト達が待ってるから。」
「そうか、なら持って帰って皆で食べるといい。すぐに持って来させよう。」
スカリエッティは手紙に目を通した。
「ありがとう、ドクター。アスランからの手紙、何て書いてあったの?」
「今度開かれるオークションの品物の一覧さ。」
「レリック?」
「残念だが、レリックではないが私が個人的に欲しいものでね。」
「手伝おうか?」
「ありがとう、けどいいのかい?」
「うん、アギト達はドクターやアスラン達の事嫌ってるけど、私はドクターやアスランの事嫌いじゃないから。」
「ありがとう、ルーテシア。」
 ルーテシアが帰った後スカリエッティは小さく呟く
「あのような娘を利用しないといけないとは、君は私を軽蔑するかい?。」
手紙には、最後にこう書かれていた。
このオークションの際にMSの実戦テストを行うと