蒼き自由と青き厄災_05話

Last-modified: 2015-11-14 (土) 17:20:32

「みんな、ご苦労様。今日の午後の訓練はお休みだから、お風呂に入ってゆっくり休んでね。」
 隊舎に帰還した六課のメンバーは、なのはからの指示で隊舎に戻ったがティアナは一人で自主練すると言って別れた、
「オルガさん、大丈夫でしょうか?」
 エリオが心配そうに呟くが、
「大丈夫だよ。フェイト隊長とキラが一緒なんだし。」
 スバルが不安な空気を変えるように明るく言う。
 隊舎が見えて来ると隊舎の前に誰かがいるのが見えた。
「よう、遅かったじゃねぇか。」
「オルガさん!!大丈夫なんですか!?」
 エリオが心配して問うが、オルガは軽く笑みを浮かべて、
「ハッ、そんなに心配しなくたって、たいしたことねぇよ。」
「でも・・・・・。」
 キャロも不安そうな表情をする。
 すると、オルガはエリオとキャロの頭に手をのせて軽く撫でながら、言った。。
「バーカ、心配すんなって言ったろうがチビ共。それより、悪かったなお前らにも迷惑かけちまって。」
「いえ、そういえばキラさんは?」
「キラのヤツならフェイト隊長と一緒だ。
そういや、ティアのヤツはどうした?」
「ティアは自主練するって。」
「なんかあったのか?アイツ。」

 

スバルの様子を見てオルガが問う。
「うん…。」
スバルは頷いて話し始めた。
 キラは隊長達に報告を済まし、シャーリーのところにデバイスのメンテナンスに来ていた。
「キラ君、フリーダムのメンテ終わったよ。」
「ありがとうございますシャーリーさん。」
『ありがとうございますシャーリー。』
 キラがシャーリーからフリーダムを受け取ると、フリーダムも一緒に礼を言う。
「どういたしまして。そういえばキラ君、"ソード"と"ミーティア"の方だけど。」
「あぁ、ソードの方は明日からオルガの方も呼んで調整しますから大丈夫です。
後、"ミーティア"の方はクラナガンの施設で仕上げますから、"ストライク"の調整に入りましょう。」
「だけど、ストライクは誰が使うの?」
「一応、彼に使ってもらうつもりです。」
 キラの見せたデータを見てシャーリーは驚愕した。
 その頃、ティアナは一人で自主練を続けていた。
既に夜になっており、自主練をもう四時間も続けていたすると、
「オイ、お前いつまでやる気だよ。
マジでくたばっちまうぜ。」
 ティアナが声の方を見るとオルガが木にもたれかかってこちらを見ていた。
「オルガ、あんた病院運ばれたんじゃ…。」

 

「ハッ、心配してくれたのか?」
「そ、そんなんじゃないわよ。
それより、何か用?」
「お前が自主練してるって聞いたから差し入れ持ってきてやったんだよ。」
 オルガが手に持っている包みをティアナに放り投げた。
「え・・?」
 ティアナは呆然と包みをキャッチして包みを開くと、中に弁当箱とスポーツドリンクが入っていた。
「とりあえず、メシぐらいは食っとけよ。
じゃねぇと訓練中に倒れちまうぜ?」
「いいわよ別に私お腹空いてな(キュ~)」
 ティアナの言葉を遮るようにティアナのお腹が鳴った。
「ハハハ、体は正直者じゃねぇか。」
「う、うっさい!」
 顔を真っ赤にしてティアナは近くの木に背中を預けて座り込むと弁当を広げ始めた。
「ねぇ、この弁当ってあんたが作ったの?」
「バカか、オレが料理なんざ出来るわきゃねぇだろうが。」
 弁当の中身はおにぎりとちょっとしたおかずが入っていた。
「おかずは食堂の連中に作ってもらって、おにぎりはスバルが作ったんだよ。」
「スバルが?」
 ティアナがオルガの方を見上げて呟いた。
オルガはティアナの方を見て呟き始めた。
「お前は真面目過ぎんだよ、もうちょっとバカになった方が良いぜ?」

 

「バカになるってどういう意味よ?」
 ティアナが苦笑しながら尋ねと、オルガは頭を掻きながら答える。
「うるせえ、他の言い方が思いつかねえんだよ。とりあえず、テメェにはスバル達がいるんだ。
もっと頼ってみな、仲間なんだろうが?」
 ティアナはオルガの言葉を聞くと、いきなり立ち上がってオルガの前まで来てオルガの額に手を当てた。
「な、いきなり何しやがる!?」
 オルガは赤面してティアナの手を振り払う、
「何って、あんたが珍しい事言うから熱があるんじゃないかと思って。」
「テメェ・・そんなに珍しいか?
オレがまともなこと言うのが?」
「ええ、当たり前でしょ。」
「即答かよ、ったくオレはもう戻るぜ、お前も弁当食ったらさっさと戻りな。スバルのヤツも心配してっからよ。」
 オルガはそれだけ言うとティアナに背中を向けて歩き出した。
「オルガ!」
「あぁ?」
 ティアナに呼び止められてオルガが振り向くとティアナが笑みを向けて言った。
「ありがと。」
「あ、あぁ。」
 思わずその笑みに一瞬見惚れてしまったオルガは呆けた様に返事を返して、隊舎へと歩き出した。
「オレも変わったもんだよな、キラ。」
 隊舎に戻る途中、オルガは一人呟いた。

 

 オルガは思わず、キラとコンビを組んだばかりの頃を思い出して、苦笑した。
 あの頃の自分は周りに噛みついくしか能のないただの狂犬だった。
「レジアスのおっさんとキラに出会って、そして次にギンガやゲンヤの旦那、そしてスバルやティアに出会って、チビ共や六課の連中とも出会ったんだよな。」
 オルガはアグスタでのことを忘れようと考えていた。
自分の過去なんか知らなくてもいい。
「やっとこの生活が楽しく思えて来たんだ。
記憶なんざ・・「それが、お前の本心か?」」
 オルガの言葉を遮って落ち着いた声が問い掛けてきた。
「テ、テメェは・・!?」
 そこにいたのは、アグスタで交戦した槍騎士、ゼスト・グランガイツだった。
「テメェ、どうやって六課に侵入しやがった?」
 ゼストはその質問には答えることなく、一枚のディスクをオルガに投げた。
「何だよ、こりゃあ。」
「その中にはあるデータが入っている。
もし、そのデータを見て尚も真実を、自分の記憶を知りたいと思うのであれば、五日後の同じ時間にまた此処に来い。」
「オレが仲間を呼ぶかもしれねぇぞ?」
「そうしたければそうするがいい。
しかし、お前の答えはもう出ているのではないのか?」

 

 ゼストの問い掛けにオルガは獰猛な笑みを浮かべる。
「ハッ、勝手に決めつけんじゃねぇ。」
「ならば、また五日後だ。」
 ゼストの姿が消え去ってきた。
「おい、テメェ名前ぐらい名乗っていけよ。」
「五日後にお前が来たら教えてやる。」
 そう言うとゼストの姿は完全に消え去った。
「ちっ、言うだけ言って消えやがった。」
 オルガはディスクを少し迷ったがポケットにしまった。
「さあて、さっさと戻って寝るか。」
 オルガはまた隊舎へと歩き出した。
 オルガは気がつかなかった。
 自分とゼストの会話を聞いていた人物がいることに・・・
「キラのヤツ、いきなり呼び出しやがって。」
「一体どうしたんですかね?」
 翌日、オルガとエリオはキラに呼び出され、デバイスのメンテナンス室に来ていた。
 メンテナンス室にはキラの他にシャーリーとシグナムも来ていた。
「キラ、何か用か?」
「うん、"ソード"が一応完成したんだ。」
「一応って何だよ?」
「まだ、スキュラの出力調整が完全じゃないからそっちの調整と、後は剣での戦い方をシグナム副隊長に叩き込んでもらうからね。」
「マジかよ…。」

 

 オルガがシグナムの方を見ると、シグナムが笑みを浮かべて言った。
「安心しろサブナック、エリオも一緒だ。」
「え、僕もですか?」
 エリオが驚くとシャーリーが口を開いた。
「エリオには私とキラ君が共同で作ったデバイスを使ってみてほしいの。」
 シャーリーがエリオに一枚のカードのようなものを手渡した。
「これは?」
「この子の名前は"ストライク"。」
「ストライク・・・。」
「この子は"エール"、"ソード"、"ランチャー"の三つの形態から成り立っているの。」
「エールが中距離、ソードが近距離、そしてランチャーが遠距離ですか?」
 エリオが聞くと、
「そうだよ。エリオはストラーダもあるから、今は一部の機能だけを使用出来るようにしてあるの。」
 シャーリーが答えるとキラが続けて言う。
「だから、エリオはオルガと一緒にエールとソードの特性をまずは掴んでから、なのは隊長にランチャーの砲撃戦の訓練を組んでもらうけど、大丈夫かな?」
「大丈夫です、やれるだけ頑張ります。」
 エリオが少しして答ると、
『よろしくお願いします、マスター』
 ストライクの方からも声がした。
「うん、よろしくストライク。」

 

 エリオにストライクの説明を終えるとキラがオルガにカラミティを渡した。
「オルガはソードのことは大体はわかっているよね?」
「ああ、別に問題ねぇ。後は慣らすだけだ。」
「そう、だったら今日からエリオと一緒に頑張ってね。」
 オルガはしょうがないといった感じの笑みを浮かべて言った。
「チッ、やるしかねぇか。なぁ、チビ助?」
 エリオの方も気合い十分に答えた。
「はい!!オルガさん」
 そして三日後、
 オルガとキラは訓練場にいた。
目の前ではなのはと模擬戦を行っているスターズの二人の姿が見える。
(アイツとの約束は明日か・・・)
 オルガはキラの方を見て考え込む。
(キラのヤツに話すべきかどうすべきか…。)
 オルガはキラにゼストと会ったことを話していなかった。
 そして、ゼストに渡されたディスクもまだ見ておらず、どうすべきか迷っていた。
(とりあえず、今夜ディスクの方を見てそれから決めるか)
 オルガがそう考えていると、
「私は、もう誰も傷つけたくないから、亡くしたくないから、だから、強くなりたいんです!!!」
 いきなり、ティアナの悲痛な叫び声が聞こえた。
 オルガが振り向いた瞬間、ティアナになのはの砲撃が直撃していた。

 

 そして、なのははスバルにバインドをかけて、また魔力を収束させ始める。
「やめろ!!もう、ティアナはぁ!!」
 なのはのしようとしていることに気づいたキラが叫んだ。
 しかし、無情にもなのはが放った二発目の砲撃がティアナに放たれた。
そして砲撃はティアナに直撃した。
「ティア?」
 オルガは呆然とその光景を見ていた。
そして、ティアナがウイングロードから落ちるのを見た瞬間、
「テメェェェェ!!!」
『ソードフォルム、スタンバイ』
 オルガ怒りにまかせてデバイスを起動した。
「今日の模擬戦は二人とも撃墜されて終了。」
 なのはが静かに言い放ち、スバルはなのはを睨みつけていた。
『マイダスメッサー』
 なのはとスバルの沈黙を破ったのは、飛来した魔力刃だった。
 なのはがそれを回避すると魔力刃はブーメランの様に背後からなのはを襲った。
「レイジングハート。」
『アクセルシューター』 なのはのデバイス、レイジングハートから放たれた桜色の光弾がマイダスメッサーを破壊した。
「ソード!!」
『スキュラ』
「レイジングハート!」
『プロテクション』
 なのはへとスキュラが放たれるがなのははそれを防御し、爆煙が周囲を包んだ。

 

 なのはが爆煙から飛翔してくると、
『パンツァーアイゼン』 魔力のワイヤーで繋がれたアンカーがなのはに突撃して来た。
「あまい!」
 なのははあらかじめ展開していたシューターに迎撃させる。
 しかし、弾かれたアンカーはまるで蛇の様に再びなのはへと突撃する。
 更には爆煙の中からアンカーがもう一つ飛来して来た。
「二つ?!」
 なのはは上昇してパンツァーアイゼンから逃れる。
 そして、静かになのはが言う。
「どういうつもり?
オルガ君。」
 爆煙が晴れて、赤いバリアジャケットに身を包んだオルガは吐き捨てるように言った。
「うっせぇよ、お前」
 そして、背中の二刀の大剣"シュベルトゲペール"を抜き放ち殺意を込めて叫んだ。
「叩き斬ってやる、覚悟しな!白い悪魔が!!!」
 なのはも無表情でレイジングハートを構えて冷たく呟いた。
「オルガくん、少し頭冷やそっか。」
 厄災の剣と管理局の白い悪魔が激突した。