蒼き自由と青き厄災_06話

Last-modified: 2008-11-16 (日) 18:27:29

訓練場で激突する赤と白
「こぉんのォ!」
『マイダスメッサー、ダブルシフト』
 オルガが両肩から二つの赤い魔力刃を投擲する。
 しかし、その魔力刃はなのはに届く前にアクセルシューターに迎撃され、今度はオルガに多数の桜色の魔力弾が襲いかかる。
「そんなものォ!」
『スキュラ』
 オルガはギリギリまで引きつけてスキュラで一掃したが、
「ディバイン・・」
 なのははすでに砲撃の発射体勢に入っていた。
「チィッ!!」
 オルガは防御しようとして構えようとするが・・・
「な、何ィ!」
 オルガの体は、なのはのバインドによって拘束されていた。
 そして、
「・・・バスター!!」
 なのはから、桜色の砲撃が放たれた。
「クッソォ。」
 オルガな自分の敗北を悟って思わず目を閉じるが、
「フリーダム!」
『クスフィアス』
 突如、キラが放った魔力弾が高速でなのはに直撃し、ディバインバスターの射線をずらした。
「キラ、邪魔すんじねぇ!!」
「キラ君も、頭冷やされたいのかな?」
 オルガがキラに叫び、なのはは冷たい声でキラに問いかける。
しかし、キラは冷静に言った。

 

「少し頭を冷やすべきなのはオルガとなのは隊長だ。
今はティアナを医務室に運ぶ方が先決です。」
 キラはそう言ってスバルの傍に降り立った。
「スバル、大丈夫?」
「キラさん。」
「大丈夫だよ。ティアナは気を失っているだけだから、医務室に連れて行こう。」
 キラはティアナを担ぎ上げるとオルガの方を向いて
「オルガも、もう気が済んだでしょ早く行くよ。」
 オルガは少しの間沈黙していたが、最後になのはを睨み付けてキラの後に続いて行った。
 ティアナがぼんやりと目を開くと、医務室の天井が見えた。
「目が覚めた?」
「シャマル先生?」
「熟睡してたわよ、最近あまり寝ていなかったでしょ?」
 シャマルがそう言って微笑みかける。
「さっきまで、オルガ君が付き添ってたんだけどね。」
「えっ、オルガが?」
 時計はすでに夜の9時を回っていた。
 その少し後、なのはとフェイトは訓練場にいた。
「さっき、ティアナが目を覚ましてスバルと一緒に謝りに来てたよ。」
「ありがとう、フェイトちゃん。
ところでオルガ君は?」
 なのはの問いかけにフェイトは少し表情を暗くして答える。

 

「ティアナ達と一緒にキラが来ててね、明日きちんと謝りに来させますって言ってたよ。」
「ごめんね、フェイトちゃんやライトニングの二人にも迷惑かけて。」
「いいよ、別に気にしないで明日の朝ティアナ達ときちんと話そう?」
「・・・うん。」
 その時、警報が鳴り響いた。
 ヘリポートに集合した前線メンバー達だったが、今回ガジェットが出現したのが海上であるためなのはとフェイトとヴィータの三人での出撃となった。
「ティアナとオルガ君は出撃待機から外しておこうか。」
 なのはのその言葉を聞いたオルガは舌打ちして手持ちの本に視線を移したが、
「言うこと聞けない奴はいらないって事ですか?」
ティアナが呟き、なのはは呆れた様子で言った。
「自分の言ってることわかってる?
それ、当たり前のことだよ。」
「訓練の時も現場でもきちんと言うこと聞いてます。でも、それ以外で努力する時も言われたとうりじゃないといけないんですか?!」
 ティアナの目の端に涙が溜まる。
「凡人の私は、無茶をして死ぬ気でやらなきゃ強くなれないじゃないですか!!」
 ティアナが叫ぶとシグナムがティアナの胸ぐらを掴み殴ろうとしたが、
「何のつもりだ?ヤマト。」

 

 シグナムの腕はキラに捻り上げられており、ティアナの方はオルガが背後からの手刀の一撃で気絶させた。
「チッ、世話焼かせんじゃねぇよ。バカが」
 オルガが気絶したティアナを支えて呟き、
「ヴァイスさん、ヘリを出してください。隊長達も今はガジェットの方を優先してください。」
 キラがシグナムの言葉を無視して、ヴァイスやなのは達に言った。
「わかった。隊長さん達、早くヘリに乗ってください!」
 ヴァイスがなのは達を促してヘリに乗せ、ヴァイスはヘリを発進させた。
「どういうつもりだ?ヤマト。」
 ヘリが飛び立った後、シグナムが再びキラに問うとキラは手を放して呆れた様に言った。
「無駄に殴ったってティアナはきっと納得しませんよ?
それに、こんな事で時間を無駄に出来ないじゃないですか。」
「何だと?」
一気に険悪になる二人

 

 すぐに今度はオルガが口を開く。
「だいたいよ、ティアナの言ってることも一理あんだろ。
強くなけりゃあ何も守ってやることも出来ねぇんだからよ。 」
「確かに強くなろうとすることも、自主練することも悪くはないよ。」
「シャーリーさん?」
 キラがシャーリーの方を向くと、シャーリーは続けて言った。
「みんなロビーに集まって、教えるからなのはさんの教導の意味を。」
 ロビーに集まった面々、いつの間にかシャマルとザフィーラを加え、ティアナが目を覚ますとシャーリーはゆっくりと話し始めた。
「昔ね、一人の女の子がいたの。
戦いをするような子じゃなくて、ただ生まれつきちょっと大きな魔力があっただけの普通の女の子。」
 映し出されたのは幼いなのはの姿。
 そして映像と共にシャーリーが語る。
PT事件、闇の書事件、わずか九才の少女には、あまりにも酷すぎる戦場。
 そして、その中で行った当時はまだ問題だらけだったカートリッジシステムや、多大な負担を生じるフルドライブの使用。
「そして、入局二年目。今から八年前にある事件が起きたの。」
 映像がまた変わり、今度は血を流して倒れているなのはと、それを抱きかかえたヴィータ。

 

「ある世界での出動の帰り、正体不明の機械兵器と魔道士の襲撃を受けてなのはさんは撃墜されたの。」
 モニターになのはを撃墜した魔道士が映る。
 全身を真紅の騎士甲冑に身を包み、顔は赤のヘルメットとバイザーで隠され見ることは出来ない が、手にはフリーダムと似たライフルが握られていた。
 今度はシャマルが口を開く。
「そして、その時の負傷と今までの無茶の反動で歩くことも出来なくなるかもしれないって言われたわ。」
 シャーリーが涙を目の端に溜めて言う。
「なのはさんは皆に自分のようになって欲しくなかったんだよ?
本当に皆のことを心配していたんだよ?」
「なら、何でそれをきちんと伝えなかったんですか?」
 暫くして、口を開いたのはキラだった。
「確かに、そこんとこどうなんだよ?なのは隊長さんよ?」
 オルガが本を閉じながらそう言って視線を向けると、そこにはなのはが立っていた。
「なのはさん・・・。」
「話しちゃったんだね、シャーリー。」
 なのはシャーリーに微笑みかけて問うと、シャーリーは申し訳なさそうな表情で謝る。
「ごめんなさい。けど、私見てられなくて、」

 

 なのはは、優しい微笑みを向けたまま、
「うん、シャーリーは心配してくれたんだよね。ありがとう。」
 そう言って、なのははティアナとオルガの方を振り向く。
「二人共、少しお話ししようか。」
 少し隊舎から離れたところで、なのはとティアナは地面に腰を下ろし、オルガは立ったまま、なのは達の話しを聞く。
「ティアナは自分のことを凡人呼ばわりするけどそれは間違ってるよ。」
「え・・・?」
「自分で受けてみて気付かなかった?
ティアナの魔法って避けずらい上に当たると痛いんだよ。」
 なのははそう言って微笑みかける。
「ティアナは執務官希望だから接近戦についても後から教えるつもりだったんだけどね。」
 なのははクロスミラージュをティアナに手渡しながら言った。
「モード2って言ってみて。」
「・・・モード2。」
『ダガーモード』
 ティアナが少しして言うとクロスミラージュはハンドガンからダガーへと姿を変えた。
「本当は伝えたかったんだけど、ごめんねきちんとティアナの気持ち聞いてあげられなくて、辛かったんだよね。」
 ごめんね、となのははティアナに本当に申し訳なさそうに呟いた。
ティアナもなのはにごめんなさい、と泣きながら謝り続けた

 

「まったく、どんだけ不器用な女達だよ。」
 暫くして、オルガは呆れたような笑みを浮かべてなのはに缶コーヒーを渡す。
 ティアナはすでに隊舎へと戻り、二人だけになっていた。
「ごめんね、オルガ君にも迷惑かけて。」
なのはは缶コーヒーに口を付けながら謝る
「謝んのはオレだ、白い悪魔なんて言って悪かった。」
「それじゃあお互い様で無かったことにしよ?」 なのははそう言って立ち上がって顔を近づけて笑顔で言った。
「まともに話したこと無かったね、改めてよろしく。」
 オルガも少し照れくさそうに答えた。
「こっちこそよろしく頼むぜ?なのは隊長。」

 

「あ~今日も疲れちまったな。」
オルガはシャワーを浴びて自室に戻るとキラの姿は無かった。
「キラのヤツどこに行きやがったんだ?」
オルガはそう言って机の中から例のディスクを取り出した。
「まあ、見ておいて損はねぇか。」
オルガはディスクを端末に入れてデータを呼び出す。
そのデータファイルにはこう記されていた。
"ブーステッドマン及び戦闘機人性能試験"と、