蒼き自由と青き厄災_07話

Last-modified: 2008-11-25 (火) 20:48:18

「オルガ、お前朝から様子おかしいぞ?」
「あ?んなこたぁねぇよテメェの気のせいだろヴァイス。」
「でも、本当に今朝から何か暗い表情ですよ?オルガさん。」
「だから、気のせいだって言ってんだろチビ助。」
 オルガ、ヴァイス、エリオの三人は昼食をとりながら話していた。
「そういやオルガ。」
「何だよ?」
「お前、ティアナのことどう思ってんだよ?」
 オルガは飲んでいたお茶を思い切り吹き出した。
「うお、きったねぇ。」
「ふ、ふざけんな馬鹿やろう、ぶっ飛ばされてぇか!?」
「オルガさん、顔が真っ赤になってますよ?」
「うるせえ、チビ助!」
 オルガが真っ赤になって怒鳴っていると、
『オルガ・サブナック陸曹及び、キラ・ヤマト空曹、部隊長室まで出頭して下さい。』
「お前、今度は何したんだよ?」
「ヴァイス、テメェ本気で殴られてぇか?」
「冗談だ。それで結局ティアナのことどう思ってんだよ?」
「うるせー。」
 オルガそう言い返して食堂を後にした。

 

「珍しいですね騎士ゼスト。
あなたがオレに頼みごとなんて、」
 アスランはモニター越しにゼストと会話していた。

 

「確かに、ブリッツを貸すのは構わないが何故ですか?」
「それを話す必要はない筈だ。」
「オルガ・サブナックですか?」
ゼストが黙り込んだのを見てアスランが続けて言った。
「かつて、あなたを殺した男オルガ・サブナック あなたは何をこだわっているんですか?
あなたが、いや、オレ達が復讐すべき相手は、」
「わかっている。」
 ゼストが静かに言うと今度はアスランが黙り込んだ。
「俺は復讐など考えていない。」
「・・・わかった。とにかく、ブリッツはそちらに転送します。」
 そして、アスランがゼストとの通信を切ると背後から声が掛かった。
「相変わらず忙しいわね。」
「ドゥーエか。お前は相変わらず暇そうだな。」
「あら、私は仕事で来たのよ?」
 そう言って、管理局の制服を着たドゥーエは一枚のディスクを端末にセットした。
「どうやら、評議会の連中は聖王の器の製造に成功したみたいよ。」
「そんな、評議会の連中がアレを生み出すにはまだ時間が掛かる筈だ!?」
 アスランとスカリエッティの見立てでは早くても後1ヶ月は掛かる筈だった。
「どうやら、手を貸した連中がいるみたいなのよ。」

 

 ドゥーエが端末を操作すると、モニターに金髪の男性と銀髪の男、そして同じく銀髪の女性が映し出された。
「何者だ?」
「さぁ、ただ金髪の方が"アル"、銀髪の男が"ヴェイア"と呼ばれていたわ。」
「ヴェイア?」
「何か知ってるの?」
「いや、聞いた覚えはあるんだが思い出せない。それで、ドクターからの指示は?」
「"トーレ"と"チンク"、後は"セイン"と"クロト"の四人で移送中に強奪させるそうよ。」
 アスランが少し驚いた。
「ナンバーズを三人にクロトも使うのか?」
「それだけ、厄介なもの何でしょう。」
アスランは静かに呟いた。
「予定を急がせなければならないか。」

 

「異動命令?」
オルガとキラが二人して声を上げる。
「そう、さっき地上本部から連絡が来たばかりなんやけどな、オルガ君に明日付で地上本部武装隊に異動って連絡が来たんや。」
「おいおいおいおい!何でオレだけ地上本部に戻されんだよ!!」
 オルガが少し声を荒げるが、
「上層部の人達にも考えがあるんだよ。きっと」 キラは落ち着いてはいるが、不信感を拭いきれない口調だった。
「私以外にこのことを知ってる人はおらへんけど、隊長達だけには話しておこうか?」

 

「はい、分かりました八神部隊長。
いいよね?オルガ」
「ああ、好きにしてくれ。」
 二人は部隊長室を出た後、オルガは隊長陣に挨拶に向かい、それが終わったときにはすでに夜になっていた。
「オルガ、もう準備は終わった?」
「ああ、明日はあいつ等が起きる前に出るからよ、オレはちょっと散歩してくるぞ。」
キラは少しして真剣な口調で問い掛ける。
「オルガ、あの日話していた人に会いに行くつもりなの?」
「何言ってんだよ、キラ。」
 オルガが何のことだという表情を浮かべるが明らかに動揺していた。
「嘘つくとオルガって結構顔に出るんだよ。」
「そうかよ、それでお前はどうすんだ?」
 オルガが問い掛ける。
キラは呆れた笑みを浮かべて、
「オルガが自分で決めたんなら、僕は何も言えないし止めるつもりもないよ。」
「ああ、悪いな。
いままで迷惑掛けちまってよ。」
「自覚があるなら、一つ約束してくれないかな?」
「あぁ?何だよ約束って言ってみろよ。」
「たとえ違う道を歩いて行っても、また、きっと同じ道を一緒に歩こうって。」
 キラはそう言って顔を俯いた。
 オルガは少し呆然としていたがすぐに笑みを浮かべてキラの頭を軽く叩いた。

 

「当たりめぇだろうがバーカ。」
「オルガ・・・。」
「それじゃあな、他の連中にも適当に言っておいてくれ。」
「うん、分かった。」
 そして、オルガはキラに一枚のディスクを渡して、小声で耳打ちした。
「キラ、そのディスクをゲンヤの旦那かギンガの奴に渡してくれ。」
「えっ?」
「スバルにだけは絶対に見せんなよ。
あと、最後に一つだけ言っとく、レジアスのおっさんには気を付けろ。」
 キラが返事をする前にオルガはそう言って部屋を出て行った。

 

「おい、槍野郎!約束の時間だ、出て来いよ!!」
 オルガは約束の場所で叫ぶと、
「答えは出たか?」
声と共にゼストが現れた。
「ああ、答えは出たぜ。探してやらあ、真実ってやつをな!!」
オルガはそう言うとゼストは問い掛けた。
「今なら戻れるぞ?」
オルガはすぐに吼えた、「バカか?決めたからにはやり通す!
意地があんだよ、オレにもよぉ!!」
「ならば、付いて来い、オルガ・サブナック。
俺の名はゼスト、ゼスト・グランガイツだ。」
 そう言って、ゼストとオルガは夜の闇の中へと消えて行った。
 自由と厄災の道は別れ、それぞれの道を行くいつか再び交わることを誓って。