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蒼き自由と青き厄災_08話

Last-modified: 2014-12-15 (月) 18:07:26

 旧ベルカ自治区森林地帯でピコピコと音が聞こえる。
「あ~、退・屈」
 クロト・ブエルは携帯型ゲームをしながら、退屈そうな顔をして言った。
「怠けるなクロト。いつでも動けるように準備しておけ。」
 ラバースーツ姿の戦闘機人、トーレが注意するがクロトは鬱陶しそうに言い返した。
「うるさいなぁ、僕が何してようが僕の勝手だろうが、ヴァーカ。」
「姉に対してそう言う言い方はするなといつも言っているだろう、クロト。」
 ラバースーツの上からコートを羽織った銀髪の小柄な戦闘機人チンクがまるで手の掛かる子供に言い聞かせるような口調で言った。
「チッ、わかったよ。けどさぁ、いつまでこんな森の中で待ち伏せしなきゃいけないのさ。」
「セインが偵察から戻るまでは待機していろ。」
 チンクがそう言うとクロトは再びゲームに集中し始めた。
「まったく、手の掛かる弟だな。」
 チンクがそう言って苦笑すると地面から水色の髪の戦闘機人、セインが出てきた。
「チンク姉、トーレ姉、目標見つけたよ。」
「そうか、戦力はどれくらいだった?」
「魔導士は一人もいないみたい。
けど、ガジェットに似た変な機械兵器が結構いたよ。」

 

セインがそう言ってデータを見せた
「確かにドクターが作ったものではない。
かといって、アスランが作ったMSでもないな。」 そこに映っていたのはC.EのMA"メビウス"を小型にしたものだった。
 トーレがデータを見て考えているとクロトが軽い笑みを浮かべて呟いた。
「何だろうが関係ないね。出てくる敵は全部まとめて撃滅さ。」
「クロトはいいよねノーヴェと同じ単純突撃思考だから。」
 セインが笑いながらからかうとクロトも噛みつく。
「セイン、テメェ僕をノーヴェの突撃馬鹿と一緒にすんなよ!!」
「別にいいじゃん誉めてんだよ。」
「嘘つけ!このやろ~。」
「二人共やめろ。
そろそろ目標が来る。」
 チンクが二人を静かにさせると近づいて来る輸送部隊に目を向け、トーレが全員に的確な指示を出した。
「セイン、私達が仕掛けたら"ディープダイバー" でコンテナまで向かい目標を奪取しろ。
チンクとクロトは私と共に雑魚を片付ける。
時間に余裕はない。いいな?」
「承知している。」
「オッケー、トーレ姉」
「へへ、了・解。」
 トーレの指示にチンク、セイン、クロトの順にそれぞれ返事を返す。

 

 返事を確認するとトーレは手首、大腿部、足首に紫の刃、"インパルスブレード"を展開し、チンクは身に付けていたコートの中から投擲用のナイフ"スティンガー"を構え、セインは足元に戦闘機人独特のテンプレートを出現させた。
チンクは自分のジャケットのポケットから一枚のカードを取り出した。
「行くぞ、IS"ライドインパルス"!!」
 トーレがIS(インヒューレントスキル)を発動するとまるで閃光の様なスピードで突撃し、機械兵器"メビウス"は迎撃する間もなく両断された。
「次は姉の番だ。IS"ランブルデトネイター"!!」
 チンクが飛び出すと同時にスティンガーを放つ。それは数機のメビウスに突き刺さると同時に爆発し、メビウスを吹き飛ばした。
「それじゃ、あたしは先に行くよクロト。IS"ディープダイバー"。」
 セインはISを発動すると地面に飛び込みコンテナへと泳いで行った。
「へへへ、んじゃあ行くよ?レイダー!!」
『スタンバイ』
「起・動!!」
『セットアップ』
 レイダーの機械音と同時にクロトは漆黒の光に包まれ、黒と黄色のバリアジャケットと黒と赤の装甲が全身を装着され、そして背中に漆黒の魔力で構成した赤いラインの入った翼を纏う。

 

最後にレイダーがカードから破砕球と二連装の防盾砲になり、左右の手に納まった。
「クロト・ブエル、レイダー行くぜぇ!!」
 クロトは叫ぶと同時に漆黒の翼を広げ、獲物へと襲い掛かった。

 

 戦場から少し離れた位置でクロトやナンバーズの戦闘を監視している長い銀髪の女性がいた。
彼女はモニターに映った金髪の初老の男性と会話していた。
「やあ、戦況はどうなっているかい?」
「メビウスは後五分保たないでしょう。
"アル"、あなたが連絡してきたということは"聖王の器"は無事に輸送出来たんですね?」
「いや、輸送部隊は全滅したよ。」
アルの返事を聞いて女性はその血のように真っ赤な目を細める。
「妨害者は"無限の欲望"ですか?それとも"真紅の正義"?」
「いや、邪魔してくれたのは偶然居合わせた聖王教会の"禁断の死神"さ。器は戦闘中にロスト、今ごろクラナガンの地下を彷徨っているだろう。」
「どうしますか?」
「プラン変更だよ、ヴェイアと評議会は納得してくれた。
そちらは手早く済ませて"古き雷光"と合流してくれたまえ。」
「分かりました。"漆黒の強奪者"は回収しますか?」
「今はまだその時じゃないな。」
「分かりました。」

 

「それじゃあまた会おう"古き祝福の風"。」
 アルはそう言ってモニターから消えた。
女性はすぐに詠唱を開始した。

 

「でやぁあああ!!必・殺!!!」
『ツォーン』
 クロトの口周りから放たれた漆黒の砲撃がメビウスを撃ち抜いた。
メビウスがリニアガンを放つが、クロトは鮮やかにかわす。
「目障り!抹・殺!!!」
『ミョルニル』
 破砕球が放たれそのメビウスをスクラップにかえる。
「なんだよ、もう終わりかい?」
 クロトが最後のメビウスを防盾砲で撃ち抜いてつまんなさそうに呟く。
「クロト、そっちは片付いたようだな。」
「チンク、トーレとセインの方は?」
「まんまと一杯喰わされた。目標はなかったようだ。」
「それじゃあ、さっさと撤退しよう・・・ぜ?」
 その時クロトの超人的な視力はこちらに向けて砲撃魔法を放とうとしている魔導士の姿を捉えた。
「撃ち抜け閃光・・・」
「チィッ!」
 クロトはチンクを担いで全速力で離脱を開始した。
「スターライト・・・」
「トーレ!セイン!罠だ!!早く離脱しろ!!!」
 チンクが絶叫し、そして・・・
「ブレイカー!」
凶悪な一撃が放たれた。

 

 ちょうどその頃、クラナガンの地下水路では聖王教会騎士シャニ・アンドラスが一人でガジェットやメビウスを相手に戦闘を行っていた。
「せっかくの休みをお前お前お前ぇぇ!!」
『ニーズヘグ』
 振るった大鎌が最後のガジェットⅢ型をきれいに両断する。
「あ、そういえばあれ、どこ行ったんだろ?」
 シャニは戦闘前に目撃した少女を探そうかどうか迷ったが、さすがにほうっておくと後味が悪いと思い大鎌を肩に担いで地下水路の奥へ進んでいった。

 

「アスラン、行くの?」
 ドゥーエが静かに問いかける。
「ああ、作戦は失敗し、お前の妹達も手傷を負わせてしまった。」
 アスランは申し訳なさそうに呟く。
「べつにあなたが悪い訳じゃないわ。」
「だが!」
「それよりレリックの反応があれば、きっと例の機動六課も出てくるわ。あなた、親友と戦えるのかしら?」
 アスランは一瞬辛そうな表情をしたが、
「覚悟はある、俺はキラを助けてみせる。だから、そのために今はキラと闘う!!」
 アスランは決意に満ちた目で断言し、彼のデバイスもまた真紅の輝きを見せていた。