魔法成長日記_04話

Last-modified: 2010-04-07 (水) 23:25:58

カタカタカタカタカタカタ・・・
カタカタカタカタカタカタ・・・
部屋の中を二つのキーボードのタッチ音が埋め尽くす。
「ふぅ。ジャスティスもセイバーもそこまで変えられたところはないな。シンのはどうだ?」
「あぁ、俺のも問題ない。インパルスもデスティニーも変更点はないみたいだ。
データをとられたかは分かんないけど、多分無理だったろうな。」
「やっぱりか・・・」
「まぁなぁ。いつものことだろ?俺たちがデバイスの説明するなんてのは。」
シンはあの後シャマルと朝食をとるために食堂へ行ったのだが、途中でシンを探していたアスランに出会い三人で朝食をとった後シャマルは、用があるからと言って別れ舎内をうろついているところをシャーリーと出会った。
シャーリーが、デバイスの解析をしたい、と言ったのでシンのインパルスとデスティニー、アスランのジャスティスとセイバーを渡すはめになったのだ。
そしてついさっき、デバイスが返却されたので二人はそのチェックを行っていた。
「んにしても、なんで俺たちのデバイスって二個なんだろうな?」
これはシャーリーにも疑問に思われた点だった。普通は一人に一つが原則、というか限度らしい。
「わからん。分かるのは、コズミック・イラから来た俺たちのデバイスは基本的に自分の搭乗機だった機体が元になっているということだけだ。俺のジャスティスにセイバー、お前のインパルスにデスティニー、
キラのもあれはストライクフリーダムだな。本人は"フリーダム"と呼んでいたようだが。
まぁ不便はないしいいじゃないか。」
"フリーダム"という言葉に反応を示すシンだが、あくまで平静を装う。
「今回もまた説明に行くんだろ?デバイスの。」
「そうだな。俺たちもチームの隊員の能力くらい把握しなくちゃならない。
それに、挨拶回りもしてないからな。」
アスランたちははやてに『FW陣との顔合わせもせなあかんやろうし、うちもいろいろ忙しなる。最初やから許したるわ。ただし!二度目はないで!!?』、と言われ、今回の件は不問になった。
「デバイス調整も終わったことだし、行くか?訓練所。」
「あぁ、行くか。」
「そうだシン、地図持ってこいよ?」
「へいへい。」
そうして、シンは無色透明の宝玉と緋色の宝玉、アスランは紅色の宝玉と朱色の宝玉を手に取る。

 

その頃、当の訓練所ではエリオにキャロ、スバル、ティアナの四人で訓練の真っ最中であった。
内容は、ここ最近出没するようになった人型の機械――ガジェット――の破壊。
なのはたちのデータをもとにしてシャーリーが作ったものだ。
このガジェットは、人型で色はくすんだ水色の、背面のスラスターで飛び回る、いわゆるMSジンと酷似しているものだ。
「ちっ、ちょこまかと飛び回って射ってくるだけなんて!
なめんじゃ・・・ないわよ!!!」
ティアナのその掛け声とともに発射された二発のうち一発が、ジンの頭部のモノアイを撃ち抜く。
そして後方のもう一発がジンの胸部を撃ち抜き、ジンが大破する。
「やりぃ!スバル!そっちの首尾は!!?」
『ち、ちょっと待って。もうすぐ終わるから!』
『援護いる!!?』
『いらない!!ティアはエリオとキャロのところへ!』
『わかったわ!さっさとしなさいよ!!?』
『うん!』
そういってティアナは通信をきり、エリオたちのもとへ向かう。
今回の撃墜目標のジンは計八機。すでにティアナが二機、エリオ、キャロ、スバルが一機ずつ落としていているので残りはエリオ、キャロのところに一機、スバルのところに一機だった。
「もう少し!行くわよクロスミラージュ!!」
『Alright』
そうしてティアナはエリオたちのもとへ駆けていった。

 

そしてそれを上から見る、なのはとシャーリーがいた。
「うんうん。みんないい対応してるね。中々良いタイムだよ。」
「ですね。今度からはターゲットのレベルあげますか?」
「そうだね。そうしようか。」
二人とも、四人の訓練の様子を眺めては感想をぼやいていた。
「でもやっぱりスバルがなぁ・・・空飛んでるすばしっこいのは苦手みたいだねー
エリオはキャロと一緒だからなんとかなってるけど。」
「まぁ、陸士ですから仕方ないところはありますね。」
「まぁねー。でも、やっぱりいろいろな場合に対応できなきゃいけない、っていうのもあるから・・・ここは私の腕が試されるところかな?」
と、そんな話をしていると、シンとアスランが訓練所に入ってきた。

 

「やっと着いた、って・・・あれは・・・ジン?」
「だな。あれがガジェットというやつだろう。機動六課があたる主な敵はあれらしいぞ?」
「てことは、コズミック・イラから来たやつが関与してるのか?」
「そう考えるのが妥当だろうな。」
そう語るアスランの顔は暗かった。同胞に敵がいる、と考えると表情が曇るのは必然だった。
シンも、「なんでこんな・・・」とぼやいただけでそれからは黙ってしまう。
そこへ、アスランに気付いたなのはが声をかけた。
「おーいアスランくんにシンく~ん!どうしたの~!?」
その声に二人が振り向く。
「あぁ、高町!隊の一員として挨拶をしにきたんだ~!」
「なるほどね。ちょっと話してくるから。シャーリー、あの子たち任せるね。」
そういうとなのはは二人のもとへ降りてきた。
「二人とも出てきて大丈夫なの?」
「八神部隊長に今回は不問にしてもらったんだ。だから挨拶とデバイスの情報を伝えに来た。」
「あぁ、シャーリーがなにか言ってたね。データがとれない、って技術室でもがいてたけど・・・」
「だからデバイスを使って直接データをとってもらいに来たんだよ。」
「なるほどね。じゃあみんな呼ぶからまってて。」
なのははFW全員に通信を入れる。
『スバル、ティアナ、エリオ、キャロ、ヴィータちゃんにシグナムさん、フェイトちゃん。ちょっと集まってくれる?
新しいFW二人を紹介したいから。』
『『『『わかりました。』』』』
『わぁったよ。』
『了解した。すぐそちらへ向かう。』
『うん。すぐに行くね。』

 

――数分後――

 

「うん。全員そろったね。それじゃあ遅くなっちゃったけど紹介するね。こちらが新しく機動六課のFWに入ったシン・アスカくんとアスラン・ザラくん。」
「この度、機動六課に配属になったアスラン・ザラです。よろしくお願いします。」
「同じくシン・アスカ。よろしく。」
「じゃあ私たちも自己紹介からだね。
私は、機動六課スターズ隊の隊長高町なのは。よろしくね♪」
「同じくライトニング隊の隊長フェイト・T・ハラオウン。よろしく。」
「スターズ隊副隊長のヴィータだ。」
「お前たちと会うのはこれで二度目だな。ライトニング隊副隊長のシグナムだ。よろしく頼む。」
「スターズ隊、スバル・ナカジマです。よろしくお願いします。」
「同じくスターズ隊、ティアナ・ランスター。よろしくお願いします。」
「ライトニング隊、エリオ・モンディアルです。よろしくお願いします。」
「お、同じくライトニング隊、キャロ・ル・ルシエです。よろしくお願いします。」
「とりあえず顔と名前くらい覚えてね?」
「「はい。」」
そこへシャーリーが現れる。
「あの~横やりですみません、二人のデバイスなんですが・・・」
「あぁ。今日はその件で来たんだ。俺たちはミーティングもしてないから、あなた方にも俺たちの戦力を知ってもらわなくてはならないと思い、ここに来た。(互い)」
アスランがそこまで話し終えると、なのはが口を開いた。
「ていうわけだからみんな協力してあげてくれる?」
一同はみな首を縦に振る。
「じゃあ、長くなるから俺から話すよ。アスラン、いいよな?」
「あぁ。」
シンは無色透明の宝玉を手に取る。
「インパルス、コアスプレンダー起動。シルエットはフォースからだ。」
『Alright.Core Splendor and force silhouette set up』
直後、シンが光に包まれ、出てきたシンはバリアジャケットを身に纏い、背中には赤と黒の箱のようなものをつけていた。
「さて、こいつの名前はインパルスっていうんだ。インパルスは三つのシルエットとそれら特有の武装、特徴を持ってて、それを使って戦う。これはフォースシルエット。高機動中距離戦闘用シルエットだ。武装は三つのシルエットの中じゃ一般的で、二本のナイフ、一本のヴァジュラサーベルに一丁のビームライフル、近接迎撃用魔法CIWS、シールド、あとは背中に着いてるスラスター、こんなもんだ。スラスターってのは、飛行補助用の武装で、機動力をあげるためにある。」
CIWSは胸部についているため不可能だが、それ以外の武装を召喚して地面に並べるシン。
それを見て驚くばかりの機動六課の一同。
「あぁ、そうそう。このジャケットはVPS装甲っていって、起動すると色が変わって防御力が上がるんだ。インパルス。」
『Variable Phase Shift armor set up』

 

インパルスの発声と同時に、灰色だったジャケットと武装の色が変わり、赤、青、白を基調としたデザインに変わった。
最早唖然とするしかない機動六課の面々。その時スバルが呟いた。
「ねぇティア、なんか、軍人さんみたいだね。」
「スバルうっさい!!」
いつものようにティアナが一蹴するが、その言葉にシンとアスランは顔を曇らせる。
『軍人さん、か。いつかは話さなくちゃなんねぇのかな、コズミック・イラのこと、フリーダムの件もあるし、みんなの事も・・・ジンもいるんじゃあ、いつかは話す必要あるよな・・・やっぱり・・・』
『だろうな・・・どうするんだシン?』
『どうもこうもないだろ。話すさ。必要になれば。』
『シン・・・』
通信を介し、会話をしていた二人だがアスランは驚いていた。今までのシンなら、断固としてコズミック・イラのことや自分のことは話そうとしないと思っていたのだ。
それが、今は他人にも話せるほどシンに余裕が出来たのか、と驚き、疑問に思った。
「シンくん?お~いシンく~ん?」
「あぁ、ワリィワリィ。インパルス、ソードシルエットを。」
『Sword silhouette set up』
シンの体がまた光に包まれ、今度は赤と白を基調としたバリアジャケットになった。
「これがソードシルエット。近接格闘用シルエットだ。背面のスラスターはなくなるけど、デッドウェイトになるものがないから運動能力は損なわない。さっきのヴァジュラサーベルとスラスター以外の武装はそのままで、サーベルのかわりの追加武装がこの二本のエクスカリバーと、二本のビームブーメラン。」
シンはエクスカリバーを召喚、それを振り回す。
「うわ~、でか。よくそんなもの振り回せるわね。」
「あんま重くはないさ。ティアナ、だっけ?ほら。」
シンはエクスカリバーを一本、柄をティアナに向けて渡す。
「あ、ホントだ。そこまで重量はないのね。私でも使えるくらい。」
「まぁな、んでこの二本は双頭刃にすることもできる。インパルス!」
するとティアナのもとからエクスカリバーが離れ、シンの持つエクスカリバーと合体する。
「長すぎるから地上じゃあんま使わないけどな。空中戦だと役に立つ。」
「ほう、シン・アスカ!それを貸してくれるか?」
シグナムが早速くいついた。
「まぁいいけど、ほら。」
シンはエクスカリバー二本をシグナムに渡す。
「・・・なるほどな。魔力刃と実体剣の両方を兼ね備えているのか?使い勝手も良さそうだ・・・ありがとう。」
「ん。んで、これがビームブーメラン。これはその名の通り、ブーメランで、ある程度遠隔操作も出来るようになってる。こんな感じで!」
シンはブーメランに魔力をこめて投げる。ブーメランを円形とは言い難い軌道を描かせて手元に戻らせた。
「んで、最後だ。インパルス、ブラストシルエットを。」
『Brust Silhouette set up』
するとシンがまた光に包まれ、今度は緑と白を基調としたバリアジャケットを身に纏っていた。
「これがブラストシルエット。後方火力支援用シルエット、まぁいわゆる遠距離戦闘用シルエットってとこだな。これは、この背中についてる緑色のやつはケルベロス、肩についてる二門はデリュージーだ。ケルベロスの火力と射程は当然全武装中一番だ。」
「んで、ケルベロスについてるこの穴がミサイルランチャー、まぁ小型の魔法弾を発射するやつだ。最後に、近接の弱さを補うためのビームジャベリン、これは近接武器兼投擲武器だ。
・・・よし、ざっとこんなもんかな?インパルス、コアスプレンダー解除。」
『Yes,sir』
「あとは、このデスティニーってのがあるんだけど、これはインパルスの全シルエットをまとめたようなデバイスだ。
その分魔力消費量が多くなっちまうのが欠点だな。隊としてポジション決めて攻めるならインパルスだし、一人で特攻して道を開くならデスティニー、そういう使い分けかな、いまんとこは。」
そう言うと、ティアナが疑問を口にする。
「ち、ちょっと待って!ってことは、一人で二つのデバイスを使えるってこと?」
「そうだな。なぜ二つなのかは俺たちにも分からないんだ。」
シンが一通り説明を終えると、シンとアスラン以外の面々はみな唖然としていた。
「す、凄いね。そんなにたくさん・・・ようするにオールレンジに対応出来るってこと?」
フェイトがようやく言葉を紡ぐ。するとシンは思い出したように言う。

 

「まぁそうなんだけど、シルエット換装時にかかる魔力量が大きいから、戦闘を考えると一回の戦闘につき二回が限度かな。」
「じ、十分でしょ・・・」
「ですが、なぜそこまでの武装を?魔法陣も見たことないものでしたし、誰からそれを?」
シャーリーがそう言うと、シンは困ったように話し出す。
「これは作ってもらったもの、っていうか、拾い物?違うな、こっちに来て元々持ってた物、だな。」
「次元転移した時にはすでに持っていた、と?」
「そんなとこだ。」
「でも、デバイスは起動時に自分で武器やバリアジャケットをイメージして決めるよね?シンくんは最初からそんな緻密に武器を決めてたの?」
「いや、そうじゃない。」
「ん~?どゆこと?元々武器もバリアジャケットも決まってたの」
「まぁ、そうだな。」
「決めてないのに決まってた?それっておかしくない?次元転送の直後に手にいれたってことは、シン以外は使ってないよね?なのに武器もバリアジャケットも決まっててシンくんはそれを決めてない・・・どゆこと?」
「それは・・・」
なのはが言うとシンは押し黙り、アスランに通信をいれる。
『やっぱこの際言うべきじゃないか?コズミック・イラのこと』
『出来れば話したくなかったが・・・ここらが潮時かもな。』
(シンも変わったな・・・この一年は無駄ではなかったということか。キラの事は・・・どうだろうな。ふっきれているといいが・・・)
アスランが嘆息し、それとともにシンが語りだす。
「それを話すには、俺たちの過去を話さなきゃならない。長くなるがいいか?」
機動六課一同はシンの表情が険しくなったのをみて、静かにうなずく。
「そうか。まず、スバル?の言う通りこっちに来る前の世界、コズミック・イラって言うんだけどな。そこでは俺たちは軍人だった。常に前線に出て戦ってきたさ。」
そこまで言うと一同は驚きをあらわにする。
「コズミック・イラには魔法は無く、あるのは質量兵器だけ。俺は知らないが、核が大量に投下されようとしたこともあるらしい。
俺たちは、モビルスーツっていう人型の質量兵器に乗って戦っていた。モビルスーツってのは大きさは様々だけど、とりあえずデカイし重い。重さは、重いと八十トンくらいあるし、全長も二十メートルはくだらないさ。
ミサイルとかサーベルとかビームとかスラスターとかいろんなもんのっけて、そんな化け物じみた機体だ。それを宇宙や地球で動かす。この世界からみたらとんでもないことだ。"死ぬ"って思ったこともかなりあったさ。このデバイスは、その俺たちの乗っていたモビルスーツを元につくられてるみたいなんだ。俺のインパルスもモビルスーツ名はZGMF-X56S インパルス、デスティニーもZGMF-X42S デスティニーって言う。
シャーリー?が俺たちのデバイスを弄れなかったのも、そのモビルスーツの調整画面だからやり方が分からなかったんだろう。モビルスーツのシステムをするのをコズミック・イラではOSって言うんだ。それがこのデバイスにも適用されてるから、コズミック・イラの人間じゃないとまず触れない。」
さっきから危なっかしい単語の連続で、すでにアスランとシンとシャーリー以外は皆顔がひきつっている。
シャーリーは一人で何度も頷いていた。
エリオがおずおずと質問をする。
「な、なんで戦っていたんですか?」
シンが黙る。がそう長くは続かない。
「理由は人それぞれさ。俺は・・・守るために・・・戦った。」
そう語るシンは震えていた。フェイトはその震えが気になった。だから彼女は問うた。
「何と?」
「なんだろうな。本当に戦うべき相手は・・・何だったのか・・・今でもまだ分からない・・・最初はただ単に敵と戦ってきた。大切な人を守るため、その敵となるやつらをがむしゃらに倒してた。でも、今になって思う。俺は・・・何と戦うべきだったのか・・・」
そこまで言うと、今度はアスランが口を開く。
「何と戦うべきだったのか、その問はとても難しい。世の中に絶対悪は存在しない。皆なんなかの正義があるから衝突するんだ。
矛盾しているようだが、本当に自分が戦うべきものを見つけるために、人は戦うんだろうな。」
「そう・・・」
「あぁ、すまない。話が脱線してしまったな。こんな話聞いててもつまらないだろう。でもまぁ今シンが言ったのがおおまかな俺たちの過去の説明だ。」
「うぅん、話してくれてありがとう。お話きけて良かったよ。」
となのはが礼をすると、シンが意外にもこう言った。

 

「ごめん、少し用事が出来たから俺帰るな・・・あとはアスランのデバイスだけだから・・・」
その瞳は、哀しく、憂いに満ちていた。
「ちょ・・・シンくん?」
なのはが止めようとするが、シンはかまわず帰ってしまう。
「・・・ちょっと私、行ってくるね。」
フェイトはそう言って後を追おうとする。
「一人にしてやってはくれないか?すぐに帰ってくるから。」
シンを気遣ってアスランが俯きながら言うが、意外にもフェイトの答はノーだった。
「いや、今のシンくんは・・・ダメだから・・・」
そう言ってフェイトはシンを追いかけて行った。
いってる事自体は滅茶苦茶だが、言いたいことはアスランには痛い程理解出来た。
(ダメだから、か・・・確かにな・・・)
ふと顔をあげると、なのはがクスクスと笑っていた。よくみるとヴィータ、エリオとキャロも笑っている。シグナムも笑ってこそいないが、なにやら楽しそうだ。
「相変わらずだね、フェイトちゃん♪」
「だな。」
フェイトの、ほっとけない精神にはなのはやヴォルケンズ、彼女に保護されたエリオやキャロも驚くほどだ。
フェイトはシンに何かを感じたのだろう、と皆は理解していた。
状況を把握出来ないスバル、ティアナ、シャーリー、アスランはひたすら首をかしげる。
「ま、続けようか。次はアスランくんだね。」
「あ、あぁそうだな。ジャスティス、ショーダウン!」
『Jastice set up』
アスランは赤の光に包まれ、バリアジャケットを身に纏って現れる。ちなみにバリアジャケットも武装も赤と黒が基調となっている。
「こいつはジャスティス、正式なモビルスーツ名はZGMF-X09A ジャスティス。武装はこの背中につくファトゥム-00とビールブーメラン、ラケルタサーベルに・・・・・・・」
訓練所にはアスランの声と機動六課の面々の驚きの表情がいつまでも残っていた。。。

 

――詳細不明の地にて――
「任務の捕獲対象はあれだな?レリック、だったっけ?」
「そうだ、あれをクルーゼ隊長のところまで持ち帰るのが俺たちの任務。」
「んじゃ、ちゃちゃっとやっちゃおうぜ?護衛とか無いみたいだし。」
「そうだな、あれは俺が運ぼう。ディアッカ、お前は転移魔法の痕跡を消してくれ。」
「はいよ。じゃ、いきますか。あ、管理局にはバレんなよイザーク?」
「そんなヘマはしない。」
するとレリックを持ったイザーク、ことイザーク・ジュールと、ディアッカ、ことディアッカ・エルスマンはあらかじめ用意した転移魔法で姿を消した。
イザークたちが基地へ戻ると、クルーゼが仮面越しにも伝わるほどの笑顔で彼らを出迎える。
「イザーク、ディアッカ、よくやった。これで残りは・・・六つかな。いや、そんなことはどうでもいい。実はね、先ほどキラ・ヤマトとムゥ・ラ・フラガが私のもとを訪れてね、中々おもしろくなりそうだよ、この世界も。」
「キラが?それにおっさんも?あいつらもこっちの世界に?」
さきに反応したのはディアッカだ。キラとムゥは彼にとって、第二次ヤキン・ドゥーエ大戦をともに戦った間柄だ。
「そうだ。彼らは今まで独自に活動していたらしくてな、コズミック・イラに戻りたがっているようだ。」
「目的は同じなのか。だったらともに動けるんじゃないですか?」
「キラ・ヤマトもムゥ・ラ・フラガも私が嫌いなようでね。話だけ聞いて帰ってしまったよ。」
「そうですか・・・」
クルーゼがやっていることが誉められたことではないことぐらいイザークたちも分かっている。しかし、彼らもコズミック・イラに戻るためなら手段を選ぶつもりはなかった。
「まぁ彼らもじきにこちらに来るさ。今は休みたまえ。」
「「は!」」
そう言って二人は部屋を出、クルーゼだけが残る。
「管理局・・・機動六課か・・・邪魔しないでくれると嬉しいんだがな・・・」
「いえいえ、それは無理でしょう。彼らもレリック回収に手を出そうとしている。管理局からしたらどのような力を持つか分からないロストロギアなど、不安材料でしかないですからね。」
そう言ってスカリエッティが笑いながら部屋に入ってきた。
「あぁ、これはこれは。スカリエッティ博士、いらしたのですか?失礼、茶の一つも出せませんが。」
「気にしないでくれクルーゼくん。管理局は確かに怖いが、足がつかなければ見つからないから大丈夫さ。まぁ、偶然同じレリックの回収をしようとしていたら衝突は免れないがね。」
「いえ、その程度で諦めるつもりはありません。大丈夫ですよ、スカリエッティ博士。」
「僕も期待しているよ、クルーゼくん。」
クックック、という二人分の陰気な笑い声が部屋にこだまする。
「では、あれもそろそろ完成しますし、次の行動にでるとしましょう。」
「そうかね、まぁ私は君たちの活躍を見させてもらうとするよ。」
そして、クルーゼは部屋を出ていった。
「ラウ・ル・クルーゼか・・・思わぬ拾い物をしたな。ククク、精々頑張りたまえ。」
スカリエッティも、奇妙な笑みを残し、退室した。

 

――バルトフェルド御用達の喫茶店にて――
「クルーゼ・・・今度は何をたくらんでやがる・・・」
「企んでる、っていうか普通に帰ろうとしているだけに見えましたけど。」
「いや、あいつのことだ。何かあるに違いないさ。くそっ!クルーゼめ・・・」
キラとムゥは喫茶店で少し遅い朝食を食べながらクルーゼとの対談を思い返していた。
「確かコズミック・イラに帰るにはマスドライバーが必要なんでしたね。それも魔法版の。」
「あぁ、オーブでアークエンジェルがやったのと同じだ。路線に沿って昇り、ローエングリンみたいな大出力の砲撃でもって加速して、大気圏じゃなくて魔法陣につっこむ。簡単な話だ。しかもマスドライバーはほぼ出来ていて、あとは魔法陣の出力と座標だけ、って言ってたな。」
「でも、座標がわかれば、普通に転移魔法でどうにかなるんじゃないですか?」
「そういうワケにもいかないらしくてな、キラは聞いてなかったか?『次元を越えるにはかなりの負荷がかかる。それはもちろん、大気圏を突破する以上のね。そのためにマスドライバーと大出力の砲撃で加速して一気に突っ切らねば、こちらの身がもたない』んだとさ。」

 

「なるほど、そう言われると筋が通っている気がしますね。」
「そこが逆に怪しいんだよ。管理局云々はおいといても、あいつを頼るのは・・・」
ムゥはあくまでクルーゼと関わるのを拒む。
「僕たちはあくまでコズミック・イラ帰投作戦に協力する、という姿勢でいいじゃないですか?それ以外には関与しないということで。」
「キラがそこまで言うならなにも言わねぇけどな。でも、管理局に頼るのはダメなのか?それが一番手っ取り早いと思うんだが・・・」
「ムゥさんはナチュラルだからそれもいい、って言ってた気がします。僕はコーディネイターだから、身体調査されて遺伝子操作がバレると大変なことになる、って言われました。」
「この世界にはそういう技術が無いんだったな。キラが管理局に捕まったら一生研究対象にされて終わり、ってか。やっかいのこったな・・・
でも、この世界にはシンもアスランもいるんだろ?あいつらはどうするんだ?」
「分かりません・・・話が出来ればいいんですが・・・」
「案外管理局にいたりしてな。」
ムゥが茶化すが、あり得ないことではない。
「アスランならコーディネイターとかは誤魔化せるかもしれませんね。アスランは僕と違ってしっかりしていますから。」
「だったら一度話してみる必要があるな。」
「そうですね・・・」
そう言うキラの顔は暗い。アスランと会うということは、デスティニーのパイロット、シン・アスカと会うこととイコールだからだ。
「しばらくはクルーゼやバルトフェルドの出方を探んなきゃなんねえし、来週にでもお前が前にあいつらに会ったところに行こう。また来るかもしれねぇしな。」
「分かりました。あ、そういえばバルトフェルドさんの腕・・・治ってましたね・・」
「何?本当か?」
「いえ、確証はないんですけど・・」
「まぁいい。それも今度訊けばいいいさ。帰るぞ?今後の俺たちの方針も大分決まったんだ。」
「はい。」
二人は喫茶店を出て、転移魔法により帰っていった。

 

局面は進む。未だ過去に囚われているシンなど気にもせず・・・
人々は思うがままに選択を重ねる。
その選択が示す"未来"が過酷であっても、彼らは選択することを止めない、止めれない。
彼らは常に選択することを求められているのだから・・・
シンとキラの再会、というキラの選択、シンを追いかける、というフェイトの選択。
それらはシンに何をもたらすのか。
次回、シンとアスランの魔法成長日記、第四話『シン・アスカ中編(仮)』