魔法戦士リリカルSEED_第02話

Last-modified: 2007-11-17 (土) 18:15:33

プレシアに案内されて辿り着いたのは、西洋宮殿内を思わせるような内装の広い部屋だった。
さっきの薄暗い部屋と違い、明るくて綺麗な場所だ。
「ここであなたの力を見せてもらうわ」
「ここで?」
見たところ広い意外に訓練など、魔法を使うような物があるようには見えない。
するとプレシアは術式を展開し、魔法陣から複数の傀儡兵が姿を阿現す。
その数は30体近くいて、この広い部屋にも溢れかえっていた。
かなり様々な種類があり、バリエーション豊かである。
「あの、どうするんですか?」
「あなたに戦ってもらうの、あれと」
「ええ!?」
さも当然みたいに戦えと言うプレシアの言葉に驚く。
いや、なんとなく予想はしていたが、できれば外れてほしかった。
「無茶ですよ。僕は普通の人間なんですよ!」
“普通の”という言葉は実際少し正しくないが、それでもただの人間には変わりない。
たとえ生まれながらにして与えられた才能があったとしても、それは魔法と関係ない世界でのことだ。
「言ったでしょ。あなたには魔導師としての資質があると。現にデバイスを起動させた」
「だからって・・・」
「あなたがこの世界で生きていくには、魔導師になるしかないの。ここはそういう世界なんだから」
プレシアの言っていることは半分嘘だが、半分は本当である。
多少なりとも自由を保障され、命を長らえるには魔導師になってもらう必要がある。
もっともそれは、キラの意志とは無関係に、プレシアが必要と思ったからだ。
「あなたはもう少し、自分を信じたほうがいいわね。それがせっかくの才能を潰すことになる」
「僕は・・・才能なんて・・・」
キラの脳裏にクルーゼの言葉が過ぎる。
-知れば誰もが思うだろう!キミのようになりたいと!-

もしこれで魔法の才能まであったら、本当に都合よく生み出されたものだ。
だからこそなのか、キラの中で試したいという気持ちが生まれた。
しかし、それを肯定する気になれないのも事実。
「しかたないわね。始めるわ」
「え!?」
いきなりのことに驚くキラ。
プレシアはさっさと転移してしまい、出入り口が閉ざされてしまう。
この広い部屋に一人残されたキラは、目の前の傀儡兵の群れを見る。
(冗談・・・だよね?)
誰に質問するわけでもなく、キラは額から汗を流す。
だが、キラの考えに対する答えなのか、傀儡兵が一気に襲い掛かってきた。
「クッ!」
キラは咄嗟にフリーダムを傀儡兵に向ける。
しかし、そのトリガーを引くことができなかった。
傀儡兵の振り下ろした剣を後ろに飛び退いてかわすが、すぐさま飛行タイプの傀儡兵が突っ込んできた。
上体を捻って辛うじてかわして、床を転がるようにして距離を取って起き上がる。
「プレシアさん!どうしてこんな!?」
「実戦に勝る訓練はないわ。心配しなくても、非殺傷設定にしています」
「そんな問題じゃないでしょ!」
巨大な斧を振り下ろす傀儡兵の一閃をかわし、意を決してフリーダムのトリガーを引く。
すると銃口から蒼い光の弾丸が発射され、傀儡兵の頭部に命中する。
「やった?」
命中して倒したかと思ったが、頭部が半壊しただけで、倒せてはいなかった。
すぐさま拳を振り下ろし、キラは咄嗟に左手を前に掲げる。
するとキラの手から蒼色の壁のようなものが現れ、傀儡兵の攻撃を受止める。
「これは・・・盾?」

キラが生み出したシールドだが、それは前面にしか展開されていないので、四方八方から迫ってくる傀儡兵に対応できない。
持ち前の反射神経と、常人以上の運動能力と、ついさっき使えることを知ったシールドで辛うじて防御に徹している。
隙を見てはフリーダムを撃つが、いまいち威力が不足している。
「この!」
ただ連射ができるので、攻撃に転じる機会はそれなりにあり、複数を連続して攻撃できる。
(もっと威力のある武器は・・・あるわけないか!)
持っているのはフリーダムだけ。
MSのときと、違いその他の武装があるはずもない。
フリーダムをイメージして戦えれば楽なのだが、多数の武装もなければ空も飛べない。
(飛べない・・・?もしかして!)
キラは魔法というものは全然わからないが、こういうものは集中力や意志の力が肝心ではないかと思った。
飛ぶ自分の姿をイメージして、床を蹴って高く跳び上がると、そのまま高く飛翔した。
「できた!だったら!」
キラはビームライフルをイメージする。
するとフリーダムの銃口の先に術式が展開された。
『ビームライフル』
魔法陣が瞬時に圧縮されて、緑色の閃光となって伸びる。
その魔力光は傀儡兵を簡単に貫通して、一撃のもとに破壊した。

その様子を映像で見ていたプレシア
「思ったより早かったわね。もう戦い方を熟知した」
本当に良い拾物をしたと思い微少する。
この調子ならすぐにでも使い物になるだろう。
そう思ったとき、後ろのドアが開いて一人の少女が入ってきた。
「お母さん」
母と呼ばれたが、プレシアは振り返りもしない。
少し辛そうな表情を浮かべる少女。
「行って来ます・・・」
「待ちなさいフェイト」
出て行こうとした少女フェイトを呼び止める。
「もう少し待っていなさい。時期に彼の戦いは終わる。あなたに付けるわ」
「彼?」
フェイトはプレシアの見ていた映像に目を向ける。
するとそこには、自分より少し年上なのだろう少年が複数の傀儡兵と戦っている。
魔法やデバイスの使い方はまだ不完全みたいだが、その戦い方は戦いを熟知しているものの戦い方だった。
普通は魔法の知識に始って戦いの知識と経験なのだが、まったくの逆だ。
「素晴らしい拾物だわ。初めてとは思えない戦いぶり、さっきまで魔法を知らなかったとは思えない」
「え?」
フェイトは驚いた。
まったくなにも知らない素人の戦い方ではない。
それが本当なら、凄い才能の持ち主だということになる。
「ふふふ・・・」
狂気に満ちたプレシアの微少。
フェイトはそんなプレシアと、映像の中の少年を静かに見つめていた。