ここはプリベンター達が利用する食堂。
特に仕事があるわけでも無いので、プリベンター達は暇を持て余している。
相変わらずグラハムとジョシュアは馬鹿騒ぎをし、ヒイロは変わり果てたリリーナに胸を痛め、やけ食いに没頭していた。
そして食堂の片隅には、しょぼくれている男が一人。
え?誰がしょぼくれているのかだって?
それはプリベンター・バカこと我らがパトリック=コーラサワーである。
「……大佐ぁ~」
「珍しいな。明日は隕石でも降るというのか」
「カティさんの仕事が忙しくて、一ヶ月以上会ってないらしいですよ」
かなり酷いことをスバズバと言う五飛と状況を説明するカトル。
スレ読者の皆さんならご存知であろう。
カティ=マネキンは今や地球圏規模の大スターなのだ。
忙しいのも当たり前。
「こりゃ~重症だな。ツッコミの入れる必要もねえくらい落ち込んでるわ」
デュオの言う通り、コーラサワーは13ラウンドをフルに闘ってもいないのに真っ白に燃え尽きていた。
「大佐と会えないなんて……もう生きる気力が湧かない……」
どうやらコーラサワーはかなりの重症のようだ。
「そう落ち込むな。大佐に会いたいのだろ? ジョシュア、『アレ』を持ってきてくれ」
「アレ?あんなのでコイツの気が紛れるのか?」
グラハムには策があるようだ。
ジョシュアは『アレ』を渋々取りに行く。
しばらくすると、恥ずかしそうに戻ってきた。
「うむ。これで大丈夫。少し待っていてくれ」
何かしら準備を始めるグラハム。
「……何をする気だ奴は。もし良いものならサーカスの演目にでも取り入れるとするか」
トロワは興味津々そう。
「認めたくないものだな。若さ故の過ちというものを!どうだ?大佐だぞ」
「………」
静まり返る一同。
その時、食堂の気温が3℃下がったという。
「その時はまだ少佐ですよ、グラハムさん」
冷静なツッコミをいれるカトル。
「あ、そうだったか。うむ、もっと仮面の先輩のことを勉強せねば」
場が白けたことを全く理解していないグラハムであった。
* * *
「みんな集まって。仕事の依頼よ」
あまりの静けさに話しを切り出せなかったサリィが声をかける。
「おっ、久しぶりの仕事か。おい、元気出せよ」
「……大佐ぁ~」
相変わらず燃えカスと化しているコーラを無理矢理引きずり、サリィの元へ行くデュオ。
「仕事の内容は何ですか、サリィさん?」
「要人の周辺警護よ」
「周辺警護?ヴァリアブ……じゃなくて俺の得意な任務だな。対象は?」
わかる人にはわかる事をついヒイロは喋ってしまった(気にしなくてOK)。
「警護対象はカティ=マネキンさんよ」
サリィの口からカティの名が出た瞬間、コーラのテンションは、石破ラブラブ天驚拳を撃つ前のあの人並に上がったのだった。
「大佐~!はいっ!やりますやります。俺が絶対この仕事やります」
「待て。周辺警護なら俺が適任だ」
「へっ!大佐は他の誰にも守らせやしねえぜ。俺にやらせろ!」
言い争いになるヒイロとコーラ。
「待てヒイロ。あいつの危機察知能力はかなり優れている。任せてやっても問題はないだろう」
「おっ、珍しいな五飛。あいつを褒めるなんて」
「当然だ。あの馬鹿を警護担当から外してみろ。うるさすぎて仕事に集中できん」
さすがガンダムパイロット達の中ではコーラサワーとの付き合いが比較的長い五飛。
コーラサワーの性格を熟知していると言えよう。
「じゃあ俺で決まりだな。詳細は?詳細を早く教えてくれ」
「詳細なら私が直に教えよう」
そこに現れたのは、帽子にサングラスといういかにもスターがお忍びで出かけるときの格好をしているカティ=マネキンその人であった。
「た、大佐~!お元気でしたか?」
カティ本人の登場でますますテンションの上がるコーラサワーであったが。
「馬鹿者っ!今は退役したのだから『大佐』と呼ぶんじゃない!」
カティ必殺の鉄拳が乱れ飛ぶ。
「お前という奴はっ!」
「ギャフ!」
「プリベンターに拾ってもらったというのにっ!!」
「イヤッフゥ!」
「人に迷惑をかけてばかりじゃないかっ!」
「この痛み……や、やっぱり大佐だぜ……」
コーラサワーはドMなんじゃなかろうかと疑われそうだが、これがカティ=マネキンなりの愛情表現らしい。
「まぁまぁ、会っていきなり殴らなくたっていいだろうよカティさん」
コーラのお守り役のデュオが優しく諭す。
「ご、ごめんなさい。怒らないで」
「えっ?」
その場にいた全員が、あまりの意外な展開に驚いていた。
「た、大佐が謝ってる?なんで?」
「私はただ……謝らないとこの子にすごく怒られそうな気がして」
「俺もそんなにきつく言ったはずじゃないんだがなぁ」
謝られたデュオも謝ったカティも何がなんだかわからない様子。
「ありがとうよ~。これで毎回、大佐に殴られずに済むぜ」
「いや、俺は特に協力する気はないけど」
「そ、そんなぁ~」
焦るコーラサワー。
「ほぅ、私のことをそんな風に思っていたのか。後でたっぷりと指導した方が良さそうだな」
「ヒィッヤッホゥ!」
哀れコーラサワーはどこかに連れていかれ、カティの鉄拳指導を受けたとさ。
(……なんであの少年に怒られると思ったのだ?……そういえば、CBの最初の演説を聞いた時も悪寒がしたような)
「ところで、要人警護の件はどうなったんですか? サリィさん」
「あれは、続くといえば続くかも知れないわね。スレの雰囲気次第よ」