奮戦も虚しく、ゼクスやノイン、カトルたちは徐々に追い詰められていった。
個々の力では明らかに上回っているのだが、いかんせん数が違いすぎた。
倒せども倒せども、後から湯水のように現れるサーペントの一団。
さらにコクピットを直撃しないように戦っているのだから、仕方ないとも言えるのだが……。
「やっぱり……今度も負ける戦いだな」
カトルはサンドロックのコクピットで呟いた。
デュオが「負ける戦いは得意」と口にしたように、彼らは常に不利な状況を背負い、それを当然として今までやってきた。
これは誇張でもなく、れっきとした事実である。
命こそ奪われはしなかったものの、歴史という大河の流れから見れば、彼らはずっと敗北という名の衣を纏って抗ってきた。
そして、ここから彼らが逆転のトライを決めるとすれば、それは彼らの力ゆえではない。
人類がマリーメイアの暴挙に立ち上がり、武力による支配を拒否する姿勢を見せた時、それは成る。
彼らは、きっかけに過ぎない。
扉を開ける鍵、それこそが、敗北者たる彼らの役目であるのだ。
「くっ、どうやら……ここまでか」
ついにゼクスの口から、弱音が漏れた。
いかに不屈の精神を持つ彼といえども、機体の装甲は無限ではない。
待つという行為も、限界に来ている。
「ゼクス、さよならは言いませんよ!」
ノインも覚悟を決めた。
いや、ゼクスに再会出来た時から、彼女の覚悟はとうに決まっていたと言える。
「当然だ!」
ゼクスもノインの言葉に応える。
と、その時。
「はっはっはーっ! AEUのスペシャルエース! パトリック・コーラサワー様が颯爽と登場だあ!」
天が呼んだか地が呼んだか、それとも神が遣わしたか。
遥か天空の彼方から、メタリックグリーンに輝く細身のMSが物凄い勢いで降下してくる。
「感謝しろプリベンターだかブリベンダーだか! この俺様が来たからにはもう安心だ!」
戦場に響く大音響。
全ての回線に強制的に割り込ませて、MSイナクトは天から降ってくる。
「模擬戦二千回! 無敗! 無敵! スペシャルのコーラサえdrftgyふじこlp」
そして閃光、大爆音。
MSイナクトとコーラサワーは……ビルを三つほど巻き込んで、壮絶に大地に直落した。
「……」
「……よし、気を取り直して戦おう!」
「ああ、そろそろヒイロが来る頃だ」
「そしたらバスターライフルで勝負がつきますね」
「それにいい加減、あの眉毛女が人々の焚きつけに成功しているだろう」
「ウーフェイも、もうダダをこねないだろーしな」
仕切りなおしで再びサーペントを無力化していくゼクスたち。
そのずっとずっと後方で、大きなクレーターの中心に『犬神家の一族』状態になっているMSが一機。
「うががあがっ、俺はっ、スペシャルでっ、全開二千回でっ、模擬戦っっっ」
MSの名前はイナクト、そしてパイロットは自称AEUのスペシャルエース、パトリック・コーラサワー。
そう、彼こそ永遠の敗北者―――