00-W_水曜日氏_06

Last-modified: 2008-11-23 (日) 21:40:42
 

「いやぁ、僕までいいのかなぁ」
「気にするなカタギリ。人数は多い方がいい」
「だが、遠慮している割に荷物が多いな。その中身はなんだ?」

 

 五飛がビリーの両手を塞いでいる荷物を指差す。

 

「ああこれかい?僕なりに日本のお花見というものを調べた結果、お花見にはお酒やお菓子やおつまみが必要なのが分かってね。自分なりに作ってみたんだ。ええと、蜜柑酒と、蜜柑団子、蜜柑大福、蜜柑の薫製…色々試作してみたから、皆で食べてくれると嬉しいな」

 

 話を聞いていたガンダムパイロット達は曖昧に微笑んでおいた。
 カタギリ博士、素晴らしい才能を持っているのは確かだが、いかんせんその使い方が明後日の方に向いている
 さて、今日はプリベンター一行(+マリナ+マグアナック隊+カタギリ)でお花見。
 昨日から場所取りをしているデュオとコーラサワーを探しているのだが、会場の半分以上が既に他の花見客で埋め付くされていて、なかなか見付からない。

 

「見当たりませんねぇ、デュオ達…」
「大きなレジャーシートだから目立つ筈なのだが」
「カトル様ぁ!見付けました!!」

 

 プリベンター達とは別の場所を探していたマグアナック隊がデュオ達を発見したらしく、プリベンター達を呼びに来た。
 いよいよお花見!と喜ぶプリベンター達がマグアナック隊に連れられ向かった先で見たものは、見事に咲き誇った桜の木の上で寝ている、デュオとコーラサワー。
 勿論、場所なんか取れている訳が無い。

 

「なんで…」

 

 鞄の中からフライパンを取り出すヒルデ。

 

「木の上なんかにいるのよぉぉぉぉ!!」

 

 ヒルデの投げたフライパンは見事デュオの頭にぶつかって跳ね返り、コーラサワーの頭に当たった。
 ドサリと2人が木から落ちる。

 

「いてててて。ん?なんだお前等。弁当はあんのか?いでぇ!!」

 

 寝惚けているコーラサワーに、フライパンでもう一発殴るヒルデ。

 

「何故貴様等が場所取りもせず木の上にいたのか、説明して貰おうか?」

 

 久々にゆっくり出来ると、密かに楽しみにしていたレディ・アンが手をバキボキと鳴らす。

 

「穏やかじゃないねぇ…」

 

 ビリーが少し楽しそうに呟いた。

 

 レディに殴られたコーラサワーとデュオの話を要約すると、途中までは普通に場所取り取りをしていたのだが、夜も丑の刻を過ぎる頃にもなればだんだん場所取りも飽きてきてしまった。
 で、暇でどうしようもなくなったので、どっちが早く登れるか木登り勝負を始めたが、登る途中で疲れて眠ってしまった、との事。
 全くもって馬鹿の2文字である。

 

「じゃあ花見はどうするのよ」

 

 話を聞いて本日3回目のフライパン攻撃を浴びせた後ヒルデが嘆いた。
 そんな時、何処からともなく空になった一升瓶を抱えた酔っ払いのお姉さんがプリベンター達……というか、トロワの元に近寄ってきた。

 

「アレルヤァ~お酒の追加を買ってくるって言って、何分かけてるのよぉ~。あら?ちょっと見ない内に若々しくなったぁ?羨ましいわねぇ~若さってぇ」

 

 お姉さんはトロワを見ながら呂律の回らない口で好き勝手に話だした。

 

「俺は、アレルヤとやらではないのだが…」
「誰かと間違えているんじゃないかな?」

 

 見ず知らずの人に絡まれて慌てるトロワを救ったのは意外な人物だった。

 

「その声は、クジョウ君?」
「カ、カタギリ君!?何で貴方が此処にいるの!?あら?貴方はアレルヤじゃないわね」

 

 カタギリの一言で一気に酔いが醒めたらしい。
 妙な誤解が解けてトロワはホッとした。

 

「それが、お花見をしようと思ってたんだけど、場所が取れなくてね」
「だったら私達の場所に来ない?私も会社の社員達とお花見してるのよ。人数が多い方が宴会って楽しいし」

 

 お姉さん、どうやらカタギリの知り合いらしい。
 彼女からの申し出に、全員の気持を代弁してサリィが尋ねる。

 

「宜しいんですか?」
「勿論」

 

 ニッコリ笑うクジョウさん。
 こうしてプリベンター達はなんとか場所を確保する事に成功した。

 

          *          *          *

 

「会社って、《マイスター運送》だったのか。リヒティも一言言えよな」
「こっちこそ、スメラギさんが連れて来た人達がデュオ達だったとは驚きっス」

 

 久々の再会を喜ぶデュオとリヒティ。いつの間にか友達になっていたようだ。

 

「ご迷惑をおかけします」

 

 ペコリと頭を下げてレジャーシートに座るサリィ。

 

「遠慮しないで。ささ、呑みましょう!アレルヤは戻ってる?」

 

 クジョウさんに連れられて来た先にはプリベンター運送の面々が待っていた。
 お互い、偶然の再会に驚いたものの、すぐに宴会ムードに突入した。

 

「リヒティ、ヒイロの弁当スゲーんだぜ!なぁ、ヒイロ腹減ったから早く早く」
「煩い。少しは黙っていろ」

 

 そう言うとヒイロは持っていた風呂敷包みを広げ、5重箱を取り出した。
 中身は一言で言って完璧。
 彩り、栄養バランス、盛り付け、メニューの種類。何処を取っても、そう完璧

 

「ヒイロ==ユイ。お前のやる事は相変わらず徹底している」
「おっ!エビフライもあるじゃねーか」
「昨日の残り物だ」

 

 残り物は昨夜から場所取りをしていたコーラサワーとデュオの分。
 一見無愛想に見えるが、ヒイロは優しいのだ。

 

「ヒイロさんのも凄いッスけど、うちのティエリアだって凄いッスよ」

 

 そう言ってリヒティはさっきから一人で呑んでいるティエリアを指差しながら弁当を持ってきた。
 確かに、ティエリアの弁当もヒイロに負けず劣らずだったが…

 

「きゃ、キャラ弁…!」

 

 お弁当箱の中にはドラ●もんやキテ●ちゃん、トー●ス等の有名キャラクターを始め、どうやって作ったのか分からないガンダム等、細かな細工のされたキャラクターを象った食材が弁当箱の中に詰まっていた。
 才能の無駄遣いとは正にこの事。

 

「お!キテ●ちゃんがいるじゃねーか。もーらい!」

 

 コーラサワーがキテ●ちゃんに箸を伸ばしたより早く、別の箸がキ●ィちゃんを捉えた。

 

「…あ?」
「このキ●ィちゃんは俺のだ」

 

 赤いマフラーをした少年がコーラサワーを睨む。目付きの悪さはヒイロ並だ。

 

「こら、刹那。人のもの盗ったら駄目だろ。すいませんねぇ」

 

 眼帯をした茶髪の男性が少年をたしなめた。

 

「俺が●ティちゃんだ」

 

 モゴモゴとキテ●ちゃんを食べながら刹那は言った。
 どうやら反省の色は無い様子。

 

「ま、良いって事よ!じゃあ俺はこのトー●スをっと、うめぇ!そこの眼鏡、料理うめえな!」

 

 コーラサワーが礼を言うと、少し離れた場所に居たティエリアがスタスタと近寄ってきた。

 

「……今貴方、目から食べましたね」
「ああ。それがどうしたんだ?」
絶望したぁ!煙突から食べずに目から食べる貴方に絶望したぁ!」
「おいティエリア、お客さんには…」
「ロックオン、貴方もです。うさぎさんを耳から食べずにほっぺの辺りから食べましたね。その行い、万死に値する!」

 

 そう言うと、ティエリアはポケットから銃を取り出し、ロックオンとコーラサワーに向けて撃った。
 パァン!ではなく、ピューと勢い良く水が吹き出る。

 

「冷てっ!おいティエリア、水鉄砲はやめろよ」

 

 ティエリアは少し驚いた顔した。

 

「普通の拳銃なら死んじゃうじゃないですか」
「あのなぁ…」

 

 何でウチの会社にはこう手のかかる奴ばかりなんだろう……ロックオンは額に手をあてた。
 ロックオン=ストラトス、サリィと良い酒が呑めそうだ。

 

          *          *          *

 

「平和ですねぇ」
「ええ全く。桜も綺麗ですし」

 

 コーラサワー達の様子を遠目に見ながら、ラシードとシーリンは酒を口に含んだ。
 マリナが本日何回目かのビデオカメラのバッテリーを交換した頃、グラハムが口を開いた。

 

「やはり、花見といえば一発芸だろう!」

 

 どう関連付ければそうなるのか分からないが、もう大分お酒も入って出来上がってきた一同は特に反論もなく「イェーイ」と賛同した。

 

「じゃあ一番!俺、デュオ=マックスウェルいきまーす!」

 

 ヒョコっとデュオは立ち上がると箸をマイクの様に持ちエヘンと咳払いした。

 

「仮面の男、ラウ・ル・クルーゼの声やります!3・2・1『君に任せよう』」

 

 似ているというより本人そのものの声に、「おお!」と歓声があがる。

 

「次、アレルヤ何かやりなさいよ」

 

 クリスがアレルヤを小突く。
 横でハロを抱きながら厚焼き玉子を摘まんでいるフェルトもコクコクと頷く。

 

「え、ええと、じゃあ一人漫才でも…」

 

 おずおずと立ち上がるアレルヤに皆の視線が集まる。

 

「え、えーっと。ハ、ハレルヤ、あっちの世界後半の僕達って視聴者の皆さんになんて呼ばれてたか知ってる?」
「はぁ?知るわけねーだろ?なんて呼ばれてたんだよ」
「画面に殆ど映らないし、出撃もしなかったから、アレルヤとハブられるをかけて…」
「『ハブラレルヤ』ってか!っは、全然面白くねーんだよ!このボケが!」
「ご、ごめんハレルヤ。僕にはこれが精一杯だよ…えっと以上です」

 

 ネタの面白さ云々以前に、『よくも此処までキャラを変えられるもんだ』と、その演技力を評価して皆は拍手を送った。
 その後もマグアナック隊の面々の腹踊りや、トロワのアクロバット、五飛の拳法の形、ラッセのボディビル等様々な一発芸が披露され、その度に拍手や歓声があがった。

 

「なぁ、ヒイロぉ。お前もなんかやれよぉ」

 

 相当出来上がったデュオがヒイロに絡む。

 

「俺には芸なんて無い」
「タンクトップも特技の一つ位あんだろぅ!やれやれぇい」

 

 同じく相当出来上がったコーラサワーがヒイロの肩に腕を回す。

 

「特技…」

 

 そう呟いて、少し考えた後、何か閃いたのかヒイロは立ち上がった。

 

「任務了解。ヒイロ=ユイ、これより自爆する」

 

 何処から取り出したのか、ヒイロは自爆スイッチをポチッと押した。
 チュドーンッと小さな爆発が起こる。
 ヒイロに絡んでいたデュオとコーラサワーも勿論巻き込まれた。

 

「死んだらどうするっ!それに彼等は大丈夫なのか」

 

 ギリギリ爆発に巻き込まれなかったティエリアが、びっくりして叫んだ。

 

「大丈夫ですよ。彼等丈夫ですから」

 

 その横で、カトルが何もなかったかのように答える。
 マイスター運送の面子以外は、カトル同様何事も無かったかの様に弁当やおつまみをつまんだり、お酒を呑んでいる。
 爆煙が消えると所々服が焦げた3人が現れた。
 流石ガンダニュウムより硬い男達。
 ちょっとやそっとの爆発なんてなんともないらしい。

 

「ゲホッ。おいヒイロ!俺を巻き込むな!」
「あいつが『特技』と言ったからな。俺にはこれぐらいしか出来ない」
「いてえな、畜生!俺、今日こんなんばっか…」

 

 涙目になりながら、コーラサワーは手元にあった缶ビールをぐびりと飲み干した。

 

          *          *          *

 

「ルイス、夜桜が綺麗だね」
「うわぁ、本当。今日これて良かったね」
「夜は危ないって言って、絹江姉さんもルイスのママもなかなか了承してくれなかったからね」
「ねぇ沙慈、来年も一緒に桜見に来ようね」
「うん」

 

 こんこんと降り積もる雪の様に、桜の花びらが夜空を舞う…
 今日も地球は馬鹿を除いて平和でありましたとさ…

 

 

【あとがき】
 まさかの体育会系オチにしちゃいました、こんばんは。
 最終話、コーラちゃっかり映ってましたね!炭酸吹きましたw
 他作品とのクロスオーバーは微妙なようなので、ちょこっと入れるだけにしときました。
 プリベンターとマイスター達だけで一杯一杯になってしまったので、出して欲しい新キャラは今後の参考にさせて頂きます。
 取りあえず2期まで結構空くので、これからは毎週じゃなくなるかもしれません。てか、先週からスランプ気味です。
 嗚呼、コテハンに‘毎週’なんてつけなきゃ良かったぜイヤッホォォォ!!
 では。

 
 

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