08MS-SEED_30_第04話

Last-modified: 2013-12-23 (月) 16:27:51

第四話 終わりの始まり

朝カズミが起きるとシーツが血で汚れていた。携帯電話で日付を確認すると六月十五日だった。
――予定日は来週じゃない。
カズミは憂鬱そうに箪笥から下着とポーチを取り出し階下へと下りた。ママは既に起きていて食事の支度をしていた。
「ママ、私始まっちゃったみたい」
カズミはおはようの挨拶をすっ飛ばして不機嫌そうにママに声を掛けつつトイレへと駆け込んだ。
本当についてない。次の休みの日には児童施設で行われるチャリティーイベントに参加するのに。
カズミは深々と溜め息を吐いた。不意に下腹部に鈍痛を感じ、眉を潜めて手で顔を覆った。
カズミの場合は初日が重い。鎮痛剤が効かなくて学校を休んでしまう時がある位だ。
こんな痛み無くなればいいのにって思ったりもするけれど、ママに子供を産むための痛みだって言うけれど、カズミは憂鬱になる。
いっそ、コーディネーターなら良かったのに。コーディネーターは痛みは少ないらしい。
子供を作り辛いと云う弊害も有るけれど、この痛みが続くくらいならとカズミは考える。
「姉ちゃん、早く出てくれよ。俺漏れちゃうよ」
騒々しいノックの音と共にジローの声が聞こえた。
カズミはポーチから布ナプキンを取り出した。
市販の紙ナプキンは快適だと云うけれどカズミは苦手だ。何となく無機質な冷たさを感じるからだ。
専らカズミが使用するのは木綿のネル木地を重ねて作ってある布製だ。肌触りが良く暖かく通気性に優れていて、痛みも若干和らぐ気がするからだ。
「今出るわよ。ジロー、あんたちょっとその言い方下品よ」
カズミはナプキンを当て下着を履き替えた。汚れた下着をポーチにしまうとカズミはトイレから出た。
入れ替わりにジローがトイレへと駆け込む。
――男の子って楽で良いわよね。
カズミは階段を上がり部屋へと戻った。
「カズミ、大丈夫?辛いようだったら学校をお休みする?」
カズミがリビングへ行くと心配そうにママが声を掛けて来た。
「うん……薬を飲んでから決める……」
カズミの目の前にはプレーンヨーグルトとメイプルシロップが置いてあった。カズミの体調の悪い日にの朝食メニューだ。
「姉ちゃん体調悪いのか。昨日甘いものは別腹だって桜ん坊をたらふく食ったからじゃねえか?」
カズミは生意気そうに笑うジローを睨み付けた。
「ジロー、カズは体調悪いんだからそんな事を言うんじゃない。」
パパがジローの頭にげんこつを落とした。ジローは頭を抱えて痛がっている。
いつもと変わらぬ光景だけれど、こういう日にはうざったく感じる。
「カズ姉ちゃん、大丈夫?ヨツバが痛いの飛んでけってやったら治るかな?」
「大丈夫よ、そんなに酷くは無いから」
――大丈夫。別に病気じゃ無いから。女の子なら誰でも経験する事だから。
今自分に出来る精一杯の笑顔でカズミはヨツバに笑い掛けた。
その時だった。
「ねえ、何か聴こえない?」
サンタがポツリと呟いた。
遠くから小さな音で聞え始めたそれは段々と大きくなりオノゴロ島全体に響き渡った。
非常事態時に流れるサイレン。
眉間に皺を寄せてパパがテレビのリモコンのスイッチを押した。テレビからはオーブが地球連合と戦争状態に入ったと云うニュースが流れた。

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