08MS-SEED_GAIDEN02

Last-modified: 2013-10-25 (金) 02:33:21

「“鋼鉄の撃墜王”ってのは?」
「う~~~ん、ありきたりだなぁ…なんか乱戦で見せ場も無く死ンじゃいそう」
「じゃぁ“ヘリオスポリスの獅子”とか?」
「“ヘリオポリス”ですよ…ストライクは獅子って感じじゃないし無くなったコロニーの名って言うのも…」
「ん~~~“烈火の巨神兵”では?」
「世界を七日間で滅ぼしそうで良くないなぁ……」
「……みなさん、さっきから何してるんですか?」
「ああ、ヤマト少尉いい所に……実はな、君の『通り名』を考えていたんだ」
「は?」

 ★ ★ ★ 転移戦線外伝2 ――君の名は?―― ★ ★ ★

 AAの食堂で共に昼食のカレーを食していた08小隊の面々と“ヘリオポリス”の少年少女達が何事かを話
し合って盛り上がっている所にやってきたキラは何故盛り上がってるかを聞いて目が点になった。
「『通り名』って…あのエースパイロットとかにある『通り名』ですか、“エンデュミオンの鷹”みたいな」
「そう、それ!」
「なんでそんなのを…しかも僕の?」
「ああそうだヤマト少尉…君はコーディネイターの中でもとびきり優秀で、しかも我々世界の戦術や戦略、
そして戦い方をどんどん吸収している…近い将来君は、地球圏に轟くエースパイロットになるだろう!」
「いえ…そんな……」
 真顔でシローに力説されて少し恥ずかしいというか…普通本人の目を見てはっきりこういう事を言い切られ
ると確かに悪い気はしないが照れくさい。
「で、だ……そうなると必要になるのは『異名』や『通り名』、今まさにみんなでそれを話し合っていたんだ」
「なかなかいいのがポンと出て来ないですね…」
「特定の戦場で大活躍があればフラガ少佐みたく戦場の名を付けれるんですがネェ」
「…あの、気持ちは嬉しいんですが……こういうのって普通周りとか相手が言い出したりして自然と広がった
りする物であって、自分から吹聴して周る物ではないと思うんですが…」
「甘い…シローより甘いよ、キラ!」
「俺より甘いってどーゆー事だ!?」
 立ち上がって片足をテーブルの上に乗せてシローを無視してキラに凄むキキ……連合の制服のミニスカじゃ
見えると思って心配する人も居るかもしれないが、相変わらず黒スパッツ装備なので安心だ。
「それがかっこいい『通り名』なならまだしも…変なもんだったらどうするんだい!?
 あんた“泣き虫バーサーカー”とか言われて嬉しいのかい!?」
「うっ…いや確かにそれは嫌ですけど……」
「だろ! だったら変な『通り名』を付けられる前に、先に自分から名乗った方がいい!?」
「そう言い出したのはキキだけどな」
「まぁマシかも知れませんが……」
「だーかーらー、今決めてるんじゃないか!」
「ううっ……」

「“狂乱の叩き屋”ってのは?」
「なんかイメージ悪いな…悪役っぽいよ、“機械仕掛けのサムラーイ”ってのは?」
「剣しか使わない訳じゃないんだし…“稲妻纏う機兵”は?」
「いやそれスパークして壊れそうなイメージが…AAのMSなんだから…“大天使の守護者”はどうだ?」
「宗教的って言うのもなんだか…」
「意外と難しいな…こっちの世界じゃ“赤い彗星”とか“紅い稲妻”とか“白い白狼”とか“青い巨星”とか
色と何かを組み合わせるのが多いんだが」
「隊長、白狼は既に白いですが…」
「……隊長……それ全部敵方のエースパイロットじゃないですか……」
「一応韻を踏んでみたんだが……」
「ついでに正確に言うと“真紅の稲妻”と“青き巨星”ですよ、それ」
「そんじゃ…“白い閃光”ってのは?」
「ストライクは白か? 青じゃないのか?」
「胴体は青ですが手足は白ですね…腹は赤いです」
「そもそもディアクティブモードでは灰色なんじゃ…?」
「じゃぁ“灰色の閃光”? パッとしないなぁ」
「ヤマト少尉はフラガ少佐の弟分みたいなものですから…“連合の蒼き鷹”はどうでしょう?」
「弟分の方が偉そうなのもやばくないですか?」
「…ヤマト少尉はコーディネイターですし“スーパーコーディネイター”とか“ウルトラコーディネイター”
と言うのは…」
「却下。 敵は全部コーディネイターなんだし…何よりセンスが感じられない」
「確かに…そのうち“キャプテンコーディネイター”とか“スパイダーコーディネイター”が出てきそうだ」
「エースなんだから…“未亡人製造機”では?」
「独身パイロットだって多いだろ…それならいっそ“略奪愛のエース”とか“フィアンセキラー”とか…」
「うぐぅっ……」
「それ洒落になってないから…もっとエレガントにこう…“湖の騎士”とかは?」
「……いやそれもやった事同じで洒落になってないし……“キラ・ザ・スタンピート”ってどうかな?」
「“人間災害”って感じでイメージ悪いよ…“北の狼”とか“南の虎”って…」
「北も南も関係ないし…なんか野球って感じだよそれ」
「宇宙に居たんだから“スタープラチナ”とか」
「なんかオラオラオラオラ~と敵を潰しそうでキラのイメージじゃないな…線の細い美少年顔なんだから…“美少年キラー”でどう?」
「いやそれ“美少年”を“キラー”する方に取られるぞ…キラと言えばプログラミングだから…“電子の妖精”?」
「いやそれファンタジー過ぎ……撃墜されないで必ず生還する“リターンニングマン”ってのは?」
「なんかいっつも一人だけ帰ってきそうだし…巨大軍事産業の傭兵隊長みたいだ」
「“味方殺し”……は却下だし……」
「“荒鷲のキラ”は?」
「MSに乗ったら性格変りそうで危険だなぁ…“フライングタイガー”なんてどう?」
「乗ってるMS人型だし……“雪面のトビウオ”なんてどうだ?」
「…雪上で戦った事ないし…なんだかサイコロ振って右往左往しそうだよ……」
「もう“中央不敗”でも“キング of ハーツ”でも“ライトニング=カウンター”でも“炎のパイロット”で
もなんでもいいよ!」
「いやそれ何かいろいろと危険な香りが…」
「というか言いだしっぺがもうめんどくさくなってきたな?」

 結局その場では収まらず…このキラの通り名の話は次第にAAに広がって数日後にはどこもかしこもこの話
題で持ちきりとなった。
 そしてついにAA首脳陣にまで話が届き、浮付いた話題はしないようにと……はならなかった。
 なぜならこれが『士気向上に繋がる』とラミアス艦長がいい案には報酬を出すと言い出し、一気に艦全体に
広く募集がなされて数千件も集まった中から艦内ネットで投票され、上位百個を艦上層部が最終選考するとい
う一大イベントにまで盛り上がった。
 やはり選考は難航し…徹夜明けの上層部を代表して格納庫の特設ステージでシローが結果を待つ乗組員と自
分にどんな『通り名』が付くか不安げなキラに告げた。

「……で、結局なんに決まったんですか?」
「……いいかヤマト少尉、そしてAAの諸君…こういうのは自然と言われる事であって自ら名乗るものでは……」
「それ最初に僕が言ったじゃないですか!!!」

 
 

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