435 ◆Bo5/5/xD9I 氏_逆襲のシン・アスカ~C.E.86~(仮)_第1話

Last-modified: 2010-11-20 (土) 01:05:49
 

時に、C.E.86年。

 

二度目の大戦の終結より十二年が経過し、戦場になった地域も森林や砂漠などは
段々と元の姿を取り戻しつつあった。
だが、国家に残った傷跡はロゴスの崩壊や各国本土へのザフト系テロリストの活動もあり、
癒える所か悪化の一途を辿る。
そんな中“偶然にも”テロリストの標的とならなかったオーブ、プラントは経済と軍の強大化を推し進める。

 

C.E.76年、弱体化した地球連合の解体と、自らが主導する「新地球圏政府」への全ての国家の統合を
オーブ・プラント政府が共同で宣言する。
全力で抵抗する地球連合諸国に対し、オーブ・プラント両政府は武力による強制解体の実行を通達。
実質的な宣戦布告の結果、三度地球圏に戦火が立ち上がった。

 

C.E.78年の新地球連合本部の陥落により一時はプラント・オーブの勝利に終わったかに見えた。
が、ロゴス狩りを生き延び、再編された企業連合体の助力を得て新型MS、MA、艦船を開発し
地球連合軍は各地で抵抗を続けた。
それをプラント永世議長ラクス・クラインの下、虱潰しにして回る「歌姫の騎士団」。
両者ともに大きな決定打が無いまま時間だけが過ぎて行った。

 

泥沼の戦いは、未だ終結の兆しを見せない。

 
 
 

夕刻に差し掛かった太平洋上。
海面から300メートルほどの高さに浮かぶ流線型の艦影が3つ。
最新鋭のガーティー・ルーⅢ級に比べると、多少型落ちになるだろうか。

 

『第一種戦闘配置が発令されました。パイロットは所定の機体にて待機してください。
 第一種戦闘配置が発令――』

 

その内の一つ、中央の艦。
警報と艦内放送を背景にMSデッキに入った男が、タラップを駆け上がって搭乗機のコクピットに潜り込む。
シートに腰掛けてパスワードを入力。
ロックの解除とOSの起動を確認して、ハッチを閉じる。
一瞬コクピットの中が暗闇になるが、外から聞こえる低い唸りとともに
モニターに、コンソールに次々と光が灯り、機体に火が入ったことを告げた。
パイロットシートの頭頂部から伸びたケーブルの先端を、エクステンデッド用のパイロットスーツの
胸に備え付けられたジャックに差し込む。
ダガー系とGAT-X系の中間のような頭部のバイザーの下で、赤いツインアイが閃く。
『敵部隊急速接近。フェイズ02から07まで省略だって。いける?』
モニターの右下に表示されたオペレーターの少女に向かって顔を上げるパイロット。
「ああ、いけるさ」
その言葉に笑みをこぼすオペレーターの少女。
歳相応の、普通ならジュニアハイスクールに通っているくらいの少女に相応しいものになった表情を
慌てて引き締め、灰色の髪を整えて咳払いを一つ。

 

『GAT-012Eケーニッヒダガー、全システム起動確認。発進シークエンスを開始します』
「了解」
ゴウンと音を立てて機体が横に滑り、カタパルトへとセットされる。
収納されていくキャットウォークから、整備班の誰かが手を振った。
『APUオンライン。カタパルト、接続』
後ろから伸びてきたワイヤーがストライカーの下部に嵌め込まれる。
「出撃準備完了。発進許可まで待機」
一時的にシステムがいくつかダウンし、発進の時を待つ。
カタパルトの照明が、赤と黒を基調にした機体を照らし出す。
そのシルエットは、ダガータイプの発展系でありながらどこかデスティニーに似ていた。
両肩に装備されたビームブレードや、大型のウィングバインダーを搭載したバックパック、
トルーパーストライカーが余計にそう見せるのかもしれない。
ケーニッヒダガーと名付けられたその機体のコクピットで、パイロット―シンが大きく息を吐いた。

 

『システムオールグリーン、進路クリアー。一番機、発進どうぞ』
「了解、ケーニッヒダガー、出る」
装甲の表面に、光の筋が走った。

 

カタパルトに押し出され、機体が一気に加速する。
伸びきったワイヤーが外れ、火花を散らす。
一瞬光が広がり、次の瞬間には機体が空の中にあった。
水平線の彼方に沈みかけた夕日が、機体を照らす。

 

『会敵まであと三十秒――パパ、がんばって』
「無論だ」
オペレーター、いや、“娘”からの激励に頷くと、シンはケーニッヒダガーを加速させた。

 

『続けてフォビドゥン隊、後部ハッチより順次発進――』

 
 
 
 

時に、C.E.86年。
嘗てシン・アスカと呼ばれた男は、地球連合側についていた。
緑服に降格されてもへこたれずに
「今の立場で、今の自分の見える範囲の物だけでも守ろう」と決意した矢先、
クライン派から差し向けられた刺客によって「任務中の事故」として戦友と上官を殺害されたのが十一年前。
そのまま自身も殺されそうになったところで死を装って脱走、
そのまま混乱の最中にあった地球に逃げ込んだ。
殺されかけたときに顔の半分に火傷を負った上にショックで髪が半分白くなったのをいいことに
名前を変えてフリーランスの傭兵をやっていたところで地球連合の外人部隊に乞われて参加し、
そのまま戦い続けること早十年。
今のプラント・オーブの上層部には何の恩も義理もないし、
態々殺されに戻ることもないだろうと思いながら戦っていたら、十年が経過していた。、

 

その中でプラントが地上で秘密裏に推し進めていたとあるプロジェクトの実験体を拾った後に
上層部の許可を得て“娘”としたり、
地球連合の崩壊で艦一隻、MS数機で二月ほど彷徨う羽目になったり、
親連合側の企業に部隊ごと拾われたり、
戦闘部隊の上官が段々戦死していって気が付けば部隊長を任されていたり、
異様な程の適性を見せた“娘”が専属オペレーターに納まっていたりしたが。
娘関係の事以外は大して気にすることではない、とシンは思った。

 

すれ違いざまに先頭の敵機―量産型フリーダム――を左手に握ったビームブレードで真っ二つに切り裂き、
続けて迫ってきた機影に右手のビームマシンガンをお見舞いして叩き落しながら。

 
 
 

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