Ace-Seed_626氏_第19話

Last-modified: 2013-12-25 (水) 21:38:00

――ユーラシア連邦所属:ヴァレー宙空基地

いつも通り、朝の自主トレと新人の訓練メニュー作成を仕様かと思ったら、今日のガルム隊と訓練生は休養日だった
それを思い出し朝食をとり、なんとなく向かった娯楽室に、一人大型モニターを独占するPJがいる
その気配は戦場を支配するある種の殺気を振りまいていた…

「…?PJどうした?」

それが気になり、声をかけたオレの言葉と共に、あたりの人間の気配があたりから引いていく気がした――
瞬間、まずい事を聞いた――と理解する……だが時遅く。

「あ、サイファーすか。彼女、デビューが決まったんすよ。それで彼女のデビューシングル。
 つまり俺の書いた曲が売り出されて一週間――ランキングのどこに載ったかって見たくて、
 ここで番組始まるのまってるんすよ。それで――(ry」

終戦から三ヶ月――PJの書いていたあの曲は彼女のデビューシングルとなった
コーディネーターに部類される彼女だが、大西洋連邦で売り出されたそうだ…
PJいわく、彼女には才能が有るとか……。確かに、プラント議長になったのよりはるかに上。とオレも考えている
実際、その歌声に基地の面々は癒されていた。その長い自慢話を聞き流しつつ、モニターに目を向ける

すると、突然画面が切り替わりニュース速報が入る

『プラント、地球連合の終戦条約締結地オーブ・アカツキ島が本日・未明、テロ行為をうけ、終戦記念碑などが破壊されました
 これを受け、プラント評議会議長及び、連合各国は遺憾の意を表明し――』

そこまで聞いたところで戦闘要員の招集の放送がかかる――休日は返上のようだ…
「ええー!!?」と、言いながらモニターにしがみつこうとするPJを引きずりながら娯楽室を出て行くことになった

――ブリーフィングルーム

いつも通り司令官殿が、いかつい顔を浮かべて待っていた。パイロット一同席に着く

「さて、諸君らの知ってのとおり、終戦条約締結地のオーブ・アカツキ島が"テロ行為"で消失という話は知っていよう…
 これは、プラント・ザフト及び各国の上級将校らによるクーデターだ。
 "国境無き世界"を名乗るクーデター組織は、旧ロゴス軍の新鋭艦――コードネーム『XB-O』と呼ばれる、
 巨大ガンシップを持ち出し、アカツキ島を爆撃した。諸君はXB-O追撃作戦に備え――」

そこまで司令が話したところで突然、基地がゆれた

「デブリか?」「それにしてはでかすぎるぞ!」「一体なんだ!?」

部屋にいる面々が騒ぎ始める――

「待て……管制より緊急連絡!所属不明機が当基地に接近中!
 全機 直ちにスクランブルに入れ!――時間がない 直ちに出撃せよ!」

司令官が指示を出す前に、PJとオレは部屋を飛び出していた
ハンガーでは既に自分たちの機体がスタンバイされていた。すぐさま乗り込み、電源を入れる

「PJ今回はあの要塞のようなヤツだ…装備は出来るだけつんでおけ」
≪分かってますよ こちらガルム2――管制、状況を伝えよ!≫
≪地球側のカタパルトは潰された 予備の裏側のを使え――≫

PJが装備の変更を手早く終え、情報を求める。それに答えたのは現場の整備兵だった
その指示を受け、発進口へ迎撃に向かおうとすると爆発――それに巻き込まれて新人たちの機体は瓦礫に埋まってしまった

≪発進口に直撃弾! 発進不能!≫

絶望的な状況になった――

管制室も状況確認で騒ぎの最中だった。司令官が怒声を上げる

「一体どこに目をつけている!?何故、気付かなかった?」
「NJだけでなく、強力なECMとミラージュコロイドで――」
「馬鹿者!アルテミスの二の舞をしてどうする――MSの迎撃は!?反撃は!?」
「まばらな反撃で精一杯です。発進口は真っ先に破壊されました――」

ダメージコントロールに表示される被害状況は戦艦用、MS用カタパルト問わず破壊されていた
XB-Oの攻撃は完全に基地の構造を把握したものだった

「ヤツが飛んでいった方向は!?復旧は!?」
「アレが向かったのは……L5方面です。復旧には一ヶ月は掛かり――」
「MS射出のためのスペースだけを確保すればいい、完全に破壊されたのならば、ミサイル発射口でも何でもいい。
 MSが出れるほどの穴を作れ!新米のMSパイロットにも手伝わせろ。ガルム隊は増槽とブースターをつけて待機!」
「!?そんなことをすれば、ガルム隊しか発進出来なくなります」

そう言われ、司令官は間髪いれずに

「――好都合だ。数ヶ月足らずのチェリーボーイにあんなバケモノを相手にするのは無理だ。
 ガルム隊なら何とかできる!!仲間の敵をとりたいなら急げ――」

その指示で一丸となったヴァレー基地、なんと20分でその作業を終える――

XB-Oを追いかけるためのブースターの使い方を確認していると

≪準備が出来た――ガルム隊、緊急発進急げ!≫

管制から発進を促す怒声が聞こえてきた。それに割り込むように整備長が危険な笑みを浮かべつつ――割り込む

≪ガルム1、そのブースターに細工をした。聞いて驚くなよ――≫
≪俺が整備した機体だ また無事に戻ってくるんだぞ≫

それに続き、腕のいい整備兵がこっちにエールを送る――猟犬が反撃のために飛び立った

十数分後…

≪レクイエムの当たったプラントコロニーがこんなところに…≫

ヴァレー基地からXB-Oの向かっていった方向はL5方面――その途中に漂ってきていたプラントコロニーを発見する
基地の管制はやられる中においても敵を捕捉し続けていた。その方向に進むと…

≪警告! レーダーにアンノウン捕捉≫

管制官がその上げたその声と共に、アンノンから護衛機が飛び出してきた

――XB-O"フレスベルク"

ヴァレー基地襲撃時のメンバーはフレスベルクに戻り、一息ついていた

「これで"鬼神"とやらが我々の前に立つことはないだろうな」
「核ミサイルか陽電子砲でも使えればもっと楽だったろうに…」
「バカヤロウ、"ナチュラル""コーディネーター"両方に痛みを与えたあんなものを使うかよ。
 それは本当に"痛み"を与えるべきものに使う、そんな信念を持った組織だからお前も参加しているんだろ?」
「ええ、まあ、そうです」

"フレスベルク"はもともと付いていた陽電子砲は取り外し、ミラージュコロイドとECMを強化していた
そんな会話を聞きながら、"灼熱の荒牛"アルベルト・ロベズは仲間に聞こえないよう一人、愚痴る

「"鬼神"か…脅威というならば、やはり核を使うべきだったのでは…」
「エスパーダ1、そんなことをしたら彼らの言うように、私たちもクラインやジブリールとかわらないわ
 それに、私たちを追ってきたとしても…」
「そうだな、我々が完膚なきまでに叩き落せばいい――」

そういって気色ばむアルベルトを見ながら、その2番機:マルセラ・バスケスは心の中で呟く――

『私はNJ投下で母を失い、ユニウスセブン落しで父を失った。宇宙のコーディネーターを…戦争を憎んで
 傭兵となった私とコンビを組んだのがこの人、一世代目のコーディの私を毛嫌いすることなく……
 その飛び方は雄々しくて…力強くて…いつの間にか心惹かれていた…そんなあなたと共に戦えるのならば――』

そんなことをマルセラが考えていると、パイロットルームに警報が鳴り響く――

"国境なき世界"――彼らが戦う理由は、捻じ曲げられた戦争に対する復讐と言うべきだろう。
しかし、相手側の復讐と言うのを失念していた。

≪光学解析とレーダーがヴァレー基地からの機体発進を確認した――おそらく"鬼神"だ。迎撃準備急げ!!≫

だが、皆、腕利きの兵士…この警報を聞きパイロットたちの顔は引き締まり、格納庫に向かって一様に駆け出した

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