=第3.5話、NGの恐怖=
その時、ストライクが救難信号をキャッチした
信号の出されてる方向を見ると、そこには何かがあって
「あ…ヘリオポリスの救命ポッド?」
拡大したら、救命ポッドだってわかった
まだ握ったままだったシュベルトゲベールを、バックパックに移して、跳ね飛ばさないようにゆっくりと、慎重に近づいていく
けど、思ったより推力の調整が難しくて
そのまま、跳ね飛ばしちゃった
「あんた、コーディネーターで主人公だからって、何しても許されるって思ってるんでしょ!」
そんなことは…無いんだけど…
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「何だと!?ちょっと、待て!誰がそんなこと許可した!!」
コックピットに、バジルール少尉の怒鳴り声が響く
報告もせずに救命ポッドを勝手に持って帰ったのが、まずかったらしい
仕方ないか…
「ごめんね、うちの艦じゃ助けてあげられないんだ」
ポッドをぽいっと、放り投げる
「ちょっと待て!誰がそこに捨てろと言った!…あっ?!」
また、バジルールさんの怒声…僅かな間の後、ポッドはアークエンジェルに跳ね飛ばされ、暗黒の宇宙へと消えていった
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「あぁ、あなた!サイの友達の!」
強張ってた表情が緩んで、こっちに飛んでくる
「フ、フレイ!?」
僕だって浮いてたから、慌てて足を踏ん張って、それを受け止める体勢をとる
「あくっ!?」
胸に飛び込んできたフレイからは、良い匂いがしたけど…僕の口から、錆臭い赤い液体が零れる
「あなた、ザフトのスパイだったのね!」
腹部を見ると、調理用ナイフが突き立っていた
「ち、ちが…」
「これ、ザフトの船じゃない!スパイだから、こんなところにいるんでしょ!」
「こ、これは地球軍の船だよ…」
「嘘!だってMSがあるじゃない!」
そう言って、フレイはナイフを捻る
「いや、だから、あれも地球軍ので…」
霞む視界の中、軍人さんたちが慌ててフレイを抑えるのが見えて…僕の意識は、そこで途切れた
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まっすぐ突っ込んできたせいで、僕はマリューさんの胸に顔を埋める事になる
けど、マリューさんはそんなこと気にもしないで、質問を投げかけてきた
「キラ君、イージスと戦闘したの?破壊できたのね?」
「んぐ…」
答えようとしたけど、顔が埋められたままじゃ答えられない
しかも、呼吸も出来ない
それに気づかず、マリューさんがまた問い掛ける
「どうしたの?何故黙ってるの?」
く、くるし…
僕が意識を取り戻したのは、アークエンジェルが破壊された後だった
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「ヘリオポリスの崩壊で、バタバタしてしまってね…君と話すのが遅れてしまった…」
キーボードを打つのをやめ、こちらを見てそう宣う
と、すぐに立ち上がってこちらに歩み寄ってくる
「何故呼んだか、分かるかね?」
「ハッ!先の戦闘では、申し訳ありませんでした…ガッ」
不意に、姿が視界から消えたと思ったら頬を強く打たれていた
「奪取した新型機で無断出撃した挙句、腕を一本奪い返されるという失態…本来なら、本国に強制送還の後に厳
罰ものだが、君はザラ国防委員長の息子だ…この一発で不問と!?」
カッとなって、思わず殴り返す
鈍い手応えの後、クルーゼ隊長は動かなくなっていた
「また、やってしまった…」
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MAの発進を見送り、ぼくもカタパルトへ
今回装備されたのは…準備が間に合わなかったのだろう、なんだか歪なエール
武器はソードの剣にランチャーのビーム砲
バランスが悪い上、エネルギー消費の多い装備だ
バーニアを噴かすと、艦を出た直後にエールが吹き飛ぶ
それと一緒に、ストライク自体のバーニアも壊れてしまう
敵が、すぐそこまで来ていた…