CCA_電波◆Oa7bLA.9Wg氏_第4話

Last-modified: 2007-11-10 (土) 18:12:05

 ロンド・ベル隊は地球を正面にしてネオ・ジオンの別働隊との交戦を開始していた。ネオ・ジオンの別働隊はロンド・ベル隊と距離を置
いていたが、急にその動きを変えて四隻平行に航行していたロンド・ベルに攻撃を仕掛けてきたのだ。
 宇宙で明滅する光は時に帯となり点となる。人類が宇宙に住むようになった時代でも、ミノフスキー粒子によって有視界での戦闘を余儀
なくされた戦いに置いて光の有無は重要視される。そしてそれは、今、正にラー・カイラムへと迫るモビルスールのスラスターの光でも同
じくだ。
「艦長!敵モビルスーツ部隊の発進を確認しました!!」
「主砲回頭!敵の鼻先に発射後、モビルスーツ隊を発進させろ!!」
「了解!主砲回頭!目標、敵モビルスーツ部隊!!」
 ブライトが忙しなく動く戦闘ブリッジで指示を出す。オペレーターもブライトの指示を繰り返すと、ラー・カイラム前方に備え付けられ
たメガ粒子砲三基が音を立てて起動する。三基のメガ粒子砲の砲塔からは淡い桃色の光が漏れ出て、その光が膨れ上がって三門の主砲から
は大きな光の線が向かってくる敵モビルスーツ部隊へと発射される。平行している三隻の艦からもだ。
 しかし、その弾幕を察知していたのか敵モビルスーツ部隊は光を増して散開。主砲など一発も当たらないのだとでも言うように上下左右
へ避ける。だがそんなものはブライトとて承知している。これは敵の勢いを増させない為の牽制に過ぎない。
「モビルスーツ発進!!」
 オペレーターの言葉と共に左右舷にあるカタパルト・デッキで既に発進態勢に入っていた淡い黄緑色をしたモビルスーツ、ジェガンが弾
き出されるようにカタパルト・デッキから発射される。宇宙へと勢いよく放り出されたジェガンは一呼吸置いた後に背部のスラスターは真
空に熱風を吐き出して、瞬間、光が爆発して宇宙を駆ける。

 

「…………」

 

 次々と発進していくモビルスーツを見ながら、ブライトは考えていた。
 ネオ・ジオンの別働隊は急に動きを変えた。陽動と時間稼ぎなのは目に見えていたが、何故このタイミングでそれを行なうのか不明だっ
た。その真意を探ろうとしたが見えてこない。わざわざあちらから仕掛けてまでなんのメリットがあるのか。
「いや、考えても答えは出ないか」
 ブライトは頭を振って打ち消す。何はともわれ今は戦闘中だ、今はこれを乗り越えてからにすればいい。そう結論するとオペレーターの
方へと首を向ける。
「アムロから連絡は?」
「十分後には此方に着くそうです」
「そうか……」
 ブライトは溜め息を吐いて艦長席のシートに身を預ける。すると、傍らの副長席に座っている副艦長のメランが前を見ながら呟く。
「陽動、ですね」
「ああ、これが奴らにとって予定調和だというのが癪だがな」
「ネオ・ジオンは何をするつもりなのか……」
「それはシャアに聞かんとわからんな。だが、その前にこれを乗り越えてからだな」
「そうですな―――左!ラー・チャターの火線が緩いぞ!敵艦の攻撃を許すな!!」
 それで終わり。メランはすぐに戦闘指示へと戻って激を飛ばす。ブライトも戻ろうとして―――
「―――んっ?」
 一瞬、宇宙が揺れたように見えた。瞬きをしてもう一度見ると元通りになっている。
「気のせいか……」
 疲れているのかもしれない。ブライトはこれが終わったら少し休もうと思った。

 
 

「なんだろう……この感じ」
 シャトルが地上を離陸して宇宙へと上がる最中、クェス・パラヤは窓際の席で外を見ながら呟いた。
「どうしたんだ、クェス?」
 クェスの横の席、アデナウアー・パラヤはクェスが何かを言っているのに気付いて怪訝な表情を見せた。その様子にクェスは見る見る内
に不機嫌になり、アデナウアーが父親にも関わらずぶっきらぼうに答える。
「なんでもない」
「クェス……」
「今更、父親をしないでよ。どうせ私のことはついででしょ」
「クェス!いい加減にしなさい!!」
「そっちこそあの人が居ないからって私に構わないでよ!!」
 機内では二人の応酬が激しくなる。それを見かねた乗務員の一人が止めに入ってようやく終わったが、それでも二人から漂う険悪な空気
は簡単に近寄れるものではない。クェスは、ふと、アデナウアーを挟んで隣に座っている少年を見た。少年、ハサウェイ・ノアは居た堪れ
ない気持ちで座っているように見える。すると、ハサウェイはクェスの方を向いて互いに目があった。
「…………」
「…………」
 ハサウェイは苦笑に口許を歪めるがクェスはすぐにそっぽを向いて窓際からまた外へと視線を戻した。
 クェスとて喧嘩をする為にわざわざ父親に付いて来たわけではない。最初こそ反発していたが、宇宙に行くという言葉を聞いて多少は大
人しくした。しかしその父親は地球連邦軍参謀次官としての仕事と愛人の事しか頭になかった。それでも地球生まれのクェスには宇宙とい
うものは興味があったのだ。
 ニュータイプ。人類の新たな革新を指す言葉はクェスには心揺さぶられるものだった。誰もが知ってる知識としてではなく、それを感じ
るためにインドにだって行った。
「でも………」
 結局、アデナウアーから連れ出されてという形でシャトルに乗った。だけど、これはある意味良かったかもしれない。憧れていた宇宙に
上がれた事は決して損ではないのだから。
「うん、そうだよね」
 そう少しでも納得するとクェスは近くなっていく宇宙の光景を眺める。唯一つ、首の裏がピリピリとした痛みを感じながら……。

 
 

 ムサカの二本のカタパルト・デッキから発進したネオ・ジオンのギラ・ドーガ部隊は、敵艦から撃たれた砲撃を回避すると『脚』たるシ
ャクルズを切り離して、前方の敵艦から発進したジェガンとぶつかっていた。
 モビルスーツ同士の戦闘により、混戦となった宙域は絶え間なく光が発せられている。その中で、ブレードアンテナが設置された青のカ
ラーリングに染め上げられたギラ・ドーガを先頭として二機のギラ・ドーガの小隊がその戦闘の中で一際輝いていた。
「ハッ、陽動するにしても気付かれてるだろうにさ!」
 激しい気性を露わにした女性、レズン・シュナイダーがコクピットの中で叫んだ。
 レズンのギラ・ドーガが勇敢に一機のジェガンへと突撃を掛ける。ジェガンもそれに気付き、ビームライフルの銃口をレズンへと照準を
合わせる。が、レズン機の影に隠れていた二機のギラ・ドーガが一気に飛び出すと、ジェガンは後ろから現れたギラ・ドーガに驚いて一瞬
動きを止めた。しかし、それをレズンが見逃す筈もなく。
「戦場で動きを止めるなんざ馬鹿のする事だよ!!」
 青いギラ・ドーガのモノアイが輝く。ビームソードアックスの柄を抜き放つと、スラスターの光が増してジェガンの懐へと入ろうとする。
ジェガンのパイロットもようやく意図を理解してビームライフルをレズン機へと撃つが当たらない。レズン機は微動な動きを加えることで
ビームの射線から避けているのだ。
 そして、散開した二機のギラ・ドーガがすれ違い様にビームマシンガンによる斉射を行なう。連続的に撃ち続けられるビームの塊がジェ
ガンの肩部、頭部、脚部へと直撃して機体を揺さぶる。瞬間、動きが制限されたジェガンの懐にレズン機が潜り込んだ。その手には斧状の
ビーム刃が既に展開されている。

 

「――――」

 

 一つ眼とコクピット越しに目が合う。
 青いギラ・ドーガは横一閃にビームソードアックスを振り払っている。
 レズンは笑みを浮かべながら、ジェガンのパイロットの息を呑む声を聞き、

 

「死にな―――ッ!!」

 

 コクピットごとジェガンを薙ぎ払った。ジェガンは為す術もなくコクピットを引き裂かれてパイロットは即死した。
 ジェガンの胴体は外側に抉れるように中身を剥き出しにして赤く熱を発していた。レズンはその様子に気を良くして部下に次の指示を出
そうとした時、別方向からビームの一斉斉射が三機のギラ・ドーガに襲い掛かった。
「なんだと……ッ!?」
 レズンは兵士としての勘でシールドで胴体を庇ってビームを防ぐ。他の二機も同じようにシールドで防いでいた。
『コイツぅっ!』
 通信機から聞こえるのは女の声。一機のジェガンが先頭に立ってその後方には三機のジェガンがビームライフルを構えてレズンの小隊に
肉薄している。
 先頭のジェガンのパイロット、ケーラ・スゥは味方がやられたのを見て、その動きからエースだと判断した。そして三機のジェガンを率
いてレズン達へと向かったのだ。しかしそれは敵も同じ。レズン達の下にも数機のギラ・ドーガが向かっている。
「死にに来たかい!」 
 レズンは先頭のケーラ機へと機体を向けるとスラスターに瞬時に光が点った。ビームソードアックスからビームライフルへと持ち換えて
ケーラ機へと迫った。同時にレズンを追って二機のギラ・ドーガも後ろからビームマシンガンを撃って援護する。
『何を!!』
 レズンの挑発が効いたのか、ケーラも横を通過していくビームの塊を尻目にシールドを前面に突き出してレズン機にビームライフルを照
準を定めた。ジェガンもまた、一斉斉射を行なってギラ・ドーガの動きを止めようとする。

 

 この混戦の中で陣営の違う光が交差した。

 
 

「戦闘はもう始まっているようだな……」
 アムロはモニターに映った光の輝きを見てポツリと呟く。
「そう見たいですね……」
 それに答えたのは前のシートに座っているチェーン。彼女もアムロと同じ場所に視線を向けている。
「チェーン、これから戦闘に入る。少しキツイだろうが我慢してくれ」
「ええ、私の命はアムロの腕に掛かっていますから」
「おいおい、それは責任重大だな」
 チェーンが茶化して笑うとアムロも同じように笑う。これから緊張に満ちた戦闘に入るのだ。パイロットのアムロならともかく、メカニ
ックのチェーンからすれば戦艦の格納庫に居る以上に恐怖を味わう。しかし、その程度で怯むようでは軍人は務まらない。彼女は軍人とし
て、一人の女性としてアムロを気遣っている。アムロもそれをわかっているからこそチェーンの厚意を受け取っている。
 そしてチェーンは前のシートから降りてアムロの横にしゃがみこむ。戦闘時に掛かるGは時代が経ても変わらないものだ。特にモビルス
ーツ戦闘は宇宙空間を縦横無尽に駆けなければいけないので、パイロットの訓練を受けていない者からすればジェットコースターを常に乗
っている気分になる。
「それじゃあ行くぞ」
「はい、どうぞ」
 ベースジャバーのアフターバーナーに火が点る。νガンダムを乗せたベースジャバーは交戦している光の中に飛び込んでいった。

 
 

「なんだいっ!?」
 ビームサーベルとビームソードアックスが火花を散らして拮抗する最中でレズンは通信機から部下の報告を聞いていた。
『一機、月の方向からモビルスーツが接近中です!』
「一機がなんだ!落とせばいいだろう!!」
『今だ!!』
 レズンがコクピットの中で怒鳴ると、ケーラのジェガンがチャンスと見てレズン機を蹴り飛ばす。ジェガンはその勢いを利用して後方に
下がるとマニュピレーターを向けてダミーバルーンを発射する。ダミーバルーンはジェガンと同じように人型になって撹乱させる。
 レズンはサブスラスターで姿勢制御を行いながら体勢を立て直すとビームライフルでダミーバルーンを撃ち抜く。弾けるように貫かれた
ダミーは、付与されている機雷が爆発してケーラ機のモニターが爆発の光で覆われた。
『クッ!?』
「甘いんだよ!」
 怯んだケーラ機にロックオン・マーカーが赤く合わさる。レズンの指がトリガーに掛かるのに連動してギラ・ドーガーの指が引き金に力
が篭った。光が収まってケーラがそれに気付いた時には遅かった。反射的にコクピットの中で顔に手を寄せた瞬間。

 

「なにっ!?」

 

 肩部にビームが直撃した。ギラ・ドーガはよろめきながら新たな敵に警戒する。
「くそっ!誰が―――」
 頭部をビームが発射された方向に回すと接近するモビルスーツがあった。そのモビルスーツを更に拡大するとモニターに映ったモビルス
ーツにレズンは声を出して驚く。
「ガンダムだとっ!?」
 νガンダムはベースジャバーから立ち上がって離脱する。そしてベースジャバーのアフターバーナーを全開にさせるとギラ・ドーガとジ
ェガンの間にベースジャバーが通過した。だがそれだけでは終わらない。νガンダムはビームライフルをベースジャバーに向けて斉射して
爆発。爆光が目暗ましになった隙にνガンダムは二機の間に滑り込む。
『大丈夫か、ケーラ』
 アムロは頭部のバルカンを放つ。バルカンの側部からは次々と薬莢が排出され、青いギラ・ドーガに叩き付けながら後ろのジェガンへと
通信を入れた。ケーラはそれに安堵すると同時に申し訳ない気持ちになって悔しさを声に出す。
『すみません、大尉……』
『反省は後だ。ケーラは他の機体の援護に向かってくれ』
『了解』
 アムロの命令にケーラは頷いて応じ、ジェガンは反転させて後退する。
 ようやく体勢を整えたレズン機は寮機に指示を出す。他のジェガンと交戦していた二機のギラ・ドーガはその動きを変えてνガンダムを
標的にしてビームマシンガンの黒塗りの銃口が火を噴いた。挟撃を仕掛ける二機のギラ・ドーガを援護に、正面のレズンのギラ・ドーガも
ビームライフルを撃ってアムロに回避行動をさせないようにする。
『ファンネルは使えない……ならばっ』
 アムロはダミーバルーンを正面に放出してレズン機の視界を狭める。アムロの機転が功をそうして、レズンのモニターからはνガンダム
の姿が見えなくなる。思った通りにその射線は外れて在らぬ所にビームが通過した。そして、νガンダムのスラスターを全開にして真正面
からレズン機へと接近し、ビームマシンガンは空を切る。
『よせっ!隊長に当たるぞ!』
 一機のギラ・ドーガが銃口をνガンダムへと向けるが、もう一機のギラ・ドーガが静止させる。
 射線には青いギラ・ドーガも入っており、此処で撃てばレズンにも当たる可能性がある。アムロはこの事を見透かしてわざわざ敵機の懐
に飛び込んだのだ。しかし、レズンもこれで終わるほど落ちぶれてはいない。接近してくるνガンダムをダミーごと撃って爆発に巻き込ま
せようとする腹だ。照準をダミーへと向け、
「喰らいなっ!!」
 撃った。νガンダムは爆発の範囲内に入ってその爆発に呑み込まれる。幾らガンダムと言えどあの爆発に巻き込まれればタダではすまな
い。レズンは自然と勝ち誇った笑みを浮かべた。
「え………?」
 しかし次の瞬間に呆けた声にそれは変わった。
 爆発の中から一つの影が這い出たのだ。影は煙と光に包まれながらも輪郭を形取って姿を現した。
『貰った!!』
 その声と同時に、白と黒の銃身をしたビームライフルがビームの粒子を加速させて発射。だがそれだけに止まらずにビームは次々と絶え
間なく発射される。その数は三発。従来のビームライフルの連射速度を超えた速さはギラ・ドーガを貫かんと迫るが、レズンもシールドを
突き出して防衛。シールドは三発のビーム粒子を立て続けざまに喰らったせいか破砕する。
 アムロはそのままνガンダムをレズン機の頭を通過して脚部のサブスラスターだけを使用し、前転する形でギラ・ドーガの後ろを取った。
そしてビームライフルを無防備になった背中に撃ち込もうと―――

 

『なんだ……?』

 

 突然、鈴の音が聴こえた。

 

 同時刻、ラー・カイラムのブリッジでは奇妙な現象を観測していた。
「艦長!艦内の計器が異常な数値を出しています!!」
「なに……?状況把握を急げ!この隙に撃たれでもしたら取り返しがつかんぞ!!」
 ブライトが混乱に陥ったブリッジに命令を下して落ち着かせようとする。だがその中で一人のクルーが呟いた。
「なあ、何か聴こえないか?」
「え?………確かに、聴こえるけど」
「お前達!今は戦闘中だぞ!!」
 私語をする部下にメランは怒り出すが、その横のブライトも冷静ではいるが何かを感じ取っていた。
「これは一体なんだ………?」
 小さく呟いた疑問に鈴の音は唯鳴り響くだけ。

 

「なに、これ……」
 シャトルが大気圏を突破して航行していた機内でクェスも天井を見て呟いた。
 しかし、客の中には誰もそれを気付いていない。だがその中でクェスの隣の席のハサウェイだけは何故か首を傾げていた。
「鈴の音……?」
 クェスはハサウェイの呟きが聞こえて振り向く。
「貴方も聴こえたの?」
「え、君も……?」
 二人は互いにその音の異常さを感じて鈴の音を感じていた。

 

 レウルーラのブリッジではブリッジクルーのほとんどが艦内の計器の異常な数値に驚いていた。
 ナナイはその様子を見ながら、ずっと耳に入ってくる鈴の音に疑問の表情を浮かべる。
「これは………」
 聴こえてくる鈴の音には穏やかさと優しさがある。しかし、それが逆に不気味だった。まるで嵐の前の何かのように……。
 それを感じ取っていたナナイはシートに身を預けるシャアへと視線を向ける。
「大佐、何が……」
 ナナイの疑問にシャアは答えなかった。そして瞑目していたシャアはゆっくりと瞼を開けて、
「そうか、これが運命だと言うのだな。ララァ……」
 既にこの世には居ない誰かの名前を口にした。

 

「これは一体なんだ……っ!?」
 アムロは鈴の音を聞いて混乱していた。だがそれを好機と見たレズンは、急に動きを止めたνガンダムに振り向き様にビームソードアッ
クスを投げつける。その動きに一瞬遅れて気付いたアムロは左腕を覆うほどのシールドで弾き返した。
「―――、チッ!」
『なんだか知らないが墜ちな!!』
 不意の衝撃に苦悶の声を出すが、レズンはビームライフルを連射してνガンダムの動きを止める。アムロも鈴の音の異常さに気を取られ
ていて攻勢に移れずにシールドで防ぐのみ。
「アムロ!」
 コクピットの中でずっと黙っていたチェーンがアムロの危機に叫ぶ。
「くそっ!何が起きて―――」
 その言葉は最後まで紡げなかった。
 突如、現れた光がνガンダムはおろかロンド・ベル隊、そしてネオ・ジオンの艦隊をも包み込んだからだ。その光は大きく広がりを見せ
て地球とコロニーに光を照らしていた。
 そして肥大していた光がゆっくりと小さくなっていき、完全に光が収まった時にそれは起こった。光の発生源たる交戦していた宙域には
誰一人反応がなく、そこには戦闘していた痕跡すらもなかったのだ。まるで跡形もなく消えたようにロンド・ベル隊もネオ・ジオンも、ν
ガンダムの存在さえ。

 

 宇宙世紀0093年。二つの陣営は完全にこの世界から姿を消した。同時にある一つの世界へと彼らは交差する。