依然として絶え間ない十字放火を浴びせているにも関わらず、しぶとく戦い続ける赤いデュエル。
その姿から、クルーゼ隊の面々に焦りが生じ始めた。
「なぜ墜ちないぃぃ!?」
イザークは怒声を上げつつ射撃を続けたが、その閃光は一条たりとも敵を貫くことは無かった。
『ハッチから敵が出て来たぞ!何をやっている!』
――母艦からの伝達である――
「なにぃ?俺たちは知らんぞ!」
戦っている最中に余計な事を話し掛けるなと言わんばかりにイザークはオペレーターを怒鳴りつけた。
『だが、現にヘリオポリスから戦艦が発進している!』
負けじとオペレーターも怒鳴り返したときだった。
『逃げる!?』
眼前の赤いMSが堰を切ったが如く逃走しはじめたのだ。
今までシールドを使って、亀のように守り続けていた姿からは想像も出来ないような引き際の良さだった。
『そうかい、母艦を守るためってことかよ!!』
敵の目的が明確となり、本来ならばその目的たる戦艦を叩くのが定石である場面だが、
未だ屈辱の借りを返済していなかったイザークは、赤いデュエルが向かう先でもあり、自ら侵入経路として使った孔へと疾走したのだった。
その突出への反応が遅れながらも、隊員たちはイザークのデュエルの少し後に続いて宇宙に出た。
「生意気なんだよ!ナチュラルがMSなどと!」
既にイザークは赤いデュエルに攻撃を加えていた。
逃げるデュエルに、追うデュエル。
「ん……?よせぇぇぇ!」
――その様相が急変した。
逃げに一辺倒だった赤いデュエルが、途端に踵を返したのだ。
意表を突かれた上、凄まじい勢いで突進してきた赤い機体。
その閃光の太刀をかわすことが出来ず、デュエルは木偶人形のようになった。
「痛いっ、痛いぃぃ!」
運よくコックピットの直撃は避けたものの、衝撃によって破損したコンソールの破片が顔を突き刺した。
痛みと温かい鮮血が顔中を覆った。
『貴様とは踏んだ場数が違うのだ』
勝ち誇ったように流れ込んだ通信――イザークは恨みを呑みながら、意識を失った。