FateDestiny_第01話

Last-modified: 2007-11-18 (日) 15:53:04

穏やかな街の一角。
店の中から出てきたフェイトは、シンとの待ち合わせ場所へと向かう。
「シン…待った?」
「いや…、俺も今来たところだから…。」
フェイトとシン、二人は日用品を買いに来ている。
両手に紙袋を持っているが、フェイトの持っているそれはシンの持っているものよりも一回り大きかった。
「フェイト、そんなにいっぱい何買ったんだ?」
「……女の子には必要な物がいっぱいあるんだよ。」
「ふ~ん、そういうもんか。」
明日はミネルバの進水式があるのでそのことを話題にしながら基地まで二人は話をしながら歩く。
「インパルスの調整はどう?」
「まぁ上々かな…。フェイトのバルディッシュは?」
「うん、いい子だよ。」
微笑んでいうフェイトにシンも表情が緩む。
MSのことを『子』扱いするのはどうかと、最初のうちは思っていたが、毎回整備を行うたびにフェイトがバルディッシュに声をかけているのを見ていたのでなれてしまった。
「そっか…昼はどうする?」
大通りから細い路地に入り、歩き続ける二人。
「う~ん…」
腕時計を見るフェイト。
「結構時間も押しちゃってるし、軍の食堂でいいんじゃない?」
路地から大通りに出ようとした時だった。
「そうだな…そう…あっ!?」
ドンッ。
一人の少女にぶつかってしまい、とっさに荷物を放り出して、シンはその少女を両手で転ばないように支えた。
「ごめん…大丈夫?」
肩まで伸ばしたフェイトと同じ金髪に、幼い顔立ち。
ヒラヒラしたドレスのようなものを着ている少女は、シンを睨むと、自分を支えるシンの手をふりほどき走っていってしまった。
その様子をただ呆然と見送るシン。
「駄目だよ…シン…。女の子の胸触っちゃ…。」
「えっ!?…あれはとっさだったから……わざとじゃなくて…。」
「必死なところがまた怪しいね。」
半目になったフェイトがシンの横を通りすぎ先に行ってしまう。
「あっ、ちょっ…待てよフェイト!」
慌ててフェイトのあとを追おうとするシン。しかし、荷物を散乱させたままのことを忘れていたので、ちゃんと全部紙袋に詰めてからあとを追う。
「だから…わざとじゃなくて…」
「分かってるよ…シンはそういうことする人じゃないし…。
ただちょっとラッキースケベなだけだよね?」
「フェイト!?お前、そんな言葉…どこで…。」
ヴィーノあたりに吹き込まれたのだろう。
基地までの道のりを誤解を説くのに費やしたシンだった。

アーモリーワン、工場区域。

「だが、強すぎる力は、また争いを呼ぶ!!」
オーブ国家元首、カガリ・ユラ・アスハはそう叫んだ。
戦後、本来ならば必要のない兵器、戦艦を製造し続けるザフト。
そして、オーブ戦のおりに流出した技術と人員の軍事利用の停止について、未だ返答をもっていない。
プラント最高評議会議長、ギルバート・デュランダルに言葉巧みに言いまかされ、苛立ったカガリがそう叫んだ。
「他国を侵略せず、他国の侵略を許さず、他国の争いに介入しない。
我々もそうありたい、いや、そうであれば一番いい。
だが、力なくばそれは叶わない。
それは姫の方がご存じでしょう?だからオーブも軍備を整えているのでしょう?」
カガリの脳裏に蘇る前大戦の記憶。
「しかし、ならばなぜ…何を怖がってらっしゃるのです?あなたは…。」
区域を移りながらデュランダルはもちろん、カガリ、それからその護衛であるアレックスと数名のザフトの護衛を従え、歩き続ける。
「大西洋連邦の圧力ですか?オーブが我々に条約違反の軍事強要をしていると?」
一時の沈黙。
「だが、そんな事実は無論ない。
かのオーブ防衛戦のおり、難民となったオーブの同胞たちを我等が暖かく迎え入れたことはありましたが…。
その彼等がここで暮らしてゆくために、その持てる技術を生かそうとするのは仕方のないことではありませんか?」
カガリは黙ったままだ。
「そして、争いがなくならぬから…力が必要なのです。」
返すことばが見付からなかった。カガリはデュランダルに視線を向けたまま拳を握る。
長い沈黙を破ったのは、警報だった。
「何だ?」
デュランダルが状況の確認を取ろうとしていると、爆音が響き、爆風で熱波を含む黒煙がこちらへ向かってやってくる。
アレックスはカガリを、他護衛はデュランダルとともに、近くの物陰に伏せ、黒煙を回避する。
そしてその黒煙から姿を現す緑、黒、青の三体のモビルスーツ。
「そんな……カオス、ガイア、アビス…。」
ザフト製、最新鋭の機体三体は、何者かによって強奪されていた。

「まずハンガーを潰す!モビルスーツが出てくるぞ!」
緑のモビルスーツ、カオスに搭乗するのはスティング・オークレー。
「ステラ!お前は左…。」
青のモビルスーツ、アビスはアウル・ニーダ。
「…わかった。」
黒のモビルスーツ、ガイアはステラ・ルーシェだ。
三機のモビルスーツはそれぞれ別方向に散開し、工場区の破壊を始めた。
轟音、地響き、ついで爆音、爆風、爆煙が舞い上がる。
ガイアはモビルアーマー形態となり、暴れまわる。
アビスはその砲門の数にものを言わせ、ハンガーに収納されているモビルスーツを一掃する。
カオスは迎撃に出てきたモビルスーツを撃破していく。
「なんだとっ!?」
デュランダルは報告を聞き、目を見開く。
「強奪されたのは六番ハンガーの新型です。」
「新…型?」
カガリは呟いた。
瞬く間に広がり行く戦火。カガリとその護衛、アレックスの目に、新型と呼ばれるモビルスーツ一体の姿が目についた。
「あれは…ガン…ダム…。」
他のモビルスーツとは形状が違うのですぐに判別出来た。
アビスのカリドゥスがハンガーを根刮ぎ爆散させ、カオスのファイヤーフライが広域にわたって爆破する。
ワインレッドのショートカットの髪の少女と金髪長髪の少年は専用のモビルスーツにのるため、ハンガーに向かう途中だった
二人ともザフトのトップガンである証しの赤服を纏っている。
少女の名前はルナマリア・ホーク、少年はレイ・ザ・バレルと言う。
しかし、二人のモビルスーツはファイヤーフライの着弾衝撃により、横倒しになり、さらに瓦礫に埋もれていた。
一方、カガリとアレックスはデュランダルの計らいにより、シェルターへと案内されていたのだが、途中の爆発ではぐれてしまった。
「ミネルバにも応援を頼め!」
デュランダルはテキパキと指示をだす。

ミネルバ。
「アーサー!二人は?」
ミネルバ艦長、タリア・グラディスは副艦長、アーサー・トラインに探すよう指示をだした。

カオスに攻撃を仕掛けるゲイツR、ディン、ガズウート。
しかし、放たれるビーム、マシンガンは盾で防がれ、逆にカオスのビームとミサイルにより一掃される。
逃げ惑うアレックスとカガリ。
MA形態のガイアがディンを背面のグリフォンビームブレイドで上半身下半身を両断。
空中で爆散し、その衝撃でザクウォーリアが一機、ハンガーから飛び出した。
衝撃からカガリを蒲っていたアレックスの目にそれが止まる。
「カガリ!こい!!!」

ミネルバ。
中央カタパルトの扉が開き、一機の戦闘機が姿を見せる。
パイロットスーツを着たシンは直ぐ様コックピットに飛び乗った。
『インパルス、発進スタンバイ、パイロットはコアスプレンダーへ。
モジュールはソードを選択。シルエットハンガー二号を解放します。
シルエットフライヤー発進スタンバイ、プラットホームのセットを完了。
中央カタパルト、オンライン、機密シャッターを閉鎖します。
発進区画、非常要員は待機してください。
中央カタパルト、発進位置にリフトアップします。』
オペレーションを聞きながらコックピット内で素早くスイッチ、レバーを操作し、準備を進めていくシン。
『コアスプレンダー、全システムオンライン。発進シークエンスを開始します。
ハッチ解放、射出システムのエンゲージを確認。
カタパルト、推力正常。
進路クリア、コアスプレンダー発進どうぞ!』
戦闘機が中央カタパルトから発進する。
シルエットフライヤー、チェストフライヤー、レッグフライヤーが次々と発進していく。
『続いて、バルディッシュの発進シークエンスを開始します。
バルディッシュ、全システムオンライン。
カタパルトにセットを完了。
右弦ハッチ解放。
カタパルトエンゲージ。推力正常、進路クリア。
バルディッシュ発進どうぞ!』
「フェイト・テスタロッサ・ハラオウン!バルッディッシュ!!行きます!!」
重力下に投げ出される灰色の機体。
フェイトはスイッチを押す。すると、灰色の機体が漆黒へと変わり、背部のウィングが展開、スラスターから金色のバックファイヤーを噴射し、工場区域へと向かった。

アレックスはカガリをつれ、ザクに乗り込んでいた。
「こんなところで、君を死なせるわけにいくか!!」
ザクを起動させ、緑色のザクは立ち上がった。

「何だ、お前は…?」
ガイアを操るステラは突然、直立したザクに警戒する。
だが、正直、今まで出てきた敵は引金を撃てば当たるただの的だった。
ビームライフルの引金を弾くと同時、ザクは瞬時に回避行動に出た。
「ッ!?」
驚くステラ、避けただけではなくこちらへと向かってくる。そして、タックルを繰り出した。
「こいつッ!!!」
コクピットを揺るがす大振動。

ガイアをなんとか弾き飛ばしたものの、打ち倒すには至らず、相手はバランスを建て直し、サーベルを抜いた。
そして、スラスター全開、猛スピードで襲い来るガイア。
アレックスは舌打ちしつつもザクを巧みに操り、ビームアックスで迎え撃つ。
だが、力比べでは残念ながら、ガイアには勝てず、弾き飛ばされる。
モニターに映るガイアがサーベルを振り上げている。
とっさにアレックスはザクにバックステップさせ、紙一重でそれを避ける
しかし、返す刀でサーベルで横薙一閃の連撃で弾き飛ばされた。
「ぐっ!!」
短くうめき声をあげ、ザクの体勢を建て直し、着地。
だが、背後にはカオスの姿。
「もう一機!?…ッくそ!!」
「ステラ!!」
スティングの声に頷くステラ。
サーベルを抜き放ち、跳躍してのカオスの斬撃を直撃を回避するも、かわし切れず、ザクの左腕は切り飛ばされてしまった。
追撃を仕掛けるカオス。
しかし、カオスを衝撃が襲う。
「何だ!?」
煌めく青き戦闘機。そしてその後ろを追随する複数の戦闘機。
そしてそれらが一つずつ合体して行く。絶え間なく動き続けるシンの指。
見とれているまにザクに攻撃を仕掛けるガイアを襲う金色の刃。
盾によって防がれた金色の刃は黒い一点に向かって戻っていく。
ガイアと同じ漆黒に金のラインが入った機体バルッディッシュ。
手には斧を持っている。
そして、ニ刀の対艦刀、エクスカリバーを持つ赤いモビルスーツ、ソードインパルスの二体が戦場に降り立った。
対艦刀を連結、頭上で回転させ、構えると光が刃を作る。
「バルッディッシュ!サイズフォーム!」
『Yes, sir!』
斧の刃を形成する部分が持ち上がり、そして金色の光が飛び出し、鎌を作った。「「何でこんなこと…。」」
「また戦争がしたいのか/また戦争をする気ですか!?」
「あんたちは/あなたたちは!!!」