LSD_Striker'S_第04話前編

Last-modified: 2008-05-04 (日) 21:53:52

・このお話は私lyrical Seed Destinyが書いたContact of Destinyの続編にあたりますので
Contact of Destinyを読むと、大体の世界観やキャラの関係が分かるかと思います。
もしよろしければそちらも読んでみてください。

 

4話 小さな歪み(前編)
 

 

「ふぅ……」
 疲れがこもったため息をつき、シンは右に体を傾ける。冷たい石柱が頬に当たり、気持
ちいい。
 目の前のホテル・アグスタの玄関前には現場検証を行う調査班と、それに混じって協力
している六課のフォワード達の姿がある。
 本来ならシンも彼らの手伝いをするはずなのだが、そうしていないのには理由がある。
「シンさん。まだ飲みます?」
 そう言ってシャマルがボトルを差し出してくる。中身は疲労回復効果を促進させる特性
ドリンクだ。
「いや、いい」
「そうですか? でも表情がさっきとあまり変わっていないですし……」
「平気だよ。さっきと比べればだいぶ楽になったし」
 笑みを浮かべるシン。しかしシャマルの表情に変化はない。どうやら笑みらしい笑みが
浮かんでいないようだ。
 ため息をつき、シャマルから三本目のボトルを受け取り、口をつける。適度な甘みとさ
っぱりとした液体が喉を通っていく。
──意識して発動させたSEEDの反動がこれほどとは……
 スティングたちとの戦いで初めて意識的に発動させた“SEED“。しかしその反動は
予想以上だった。無意識で発動させていた時も結構な疲れがあったが、意識して発動させ、
戦った今日は、さらに疲労が激しい。

 

とはいえ今回はうまくいったが、次はうまくいくとは限らない。今まで散々発動しようとしてきたがすべて不発に終わっている。今回発動させられたのは偶然、今後は確実に発動できるよう訓練を積まなければ、とシンは思う。
三本目を飲み終えると立ち上がり、隅に移動。体操で体をほぐす中、シンは現場検証を
手伝っているフォワード達に目を向ける。
 エリオとキャロは特に普段と変わりなく他の研究員たちと会話したり、ガジェットの残
骸を回収している。
 もう一方のスターズの二人、スバルとティアナ。こちらも普段と変わりない様子でライ
トニング同様動いている。
「……」
研究員が見せるデータ表を見てティアナはいつも通りの落ち着いた表情で話している。
そんな彼女を見て、いったいどうしてあんな行動をとったのかとシンは首をひねり、考
える。
ティアナのミスについての話は既に聞いている。敵を狙った弾を味方に誤射するなど酷
いミスだ。ヴィータが激怒するのは全く当然のことといえる。
 あの時、ヴィータがすぐ近くまで来ていた。リミッター制限されているとはいえヴィー
タ一人でも戦列に加われば戦況はこちら側に傾いたはずだ。
そもそもホテル・アグスタ前に張った防衛ラインを突破されなければ問題なかったのだ。
確かに追い込まれていたとはいえティアナがあそこまで無理する理由はなかった。
幾度か模擬戦をやって、また訓練を見て思っていた事なのだがチームにおいてセンター
ガードのポジションであるティアナは、時たまそのポジションにそぐわない部分──前線
のスバルと同じぐらいの積極的、というか攻撃的部分を見せることがある。
おそらく、今回のミスはその攻撃的な部分が強く表れたために起こったものだろう。そ
う、シンが結論付けたとき、
『シン、みんなの様子はどうや?』
 ウィンドゥが開きはやての顔が目の前に現れる。着替えたのか先ほどのドレス姿ではな
く、管理局の制服姿だ。
「現場検証は滞りなく進んでる。周囲にも敵影はないようだし、多分もう少ししたら隊舎
に帰れるとは思う。
 ところでお前は何してるんだ? オークションの主催者とでも会ってるのか」
『いや、違うよシン・アスカくん』
 聞き覚えのない軽い声が聞こえたと思ったら、はやての横に出現するウィンドゥ。
 映し出されたのは長髪の男性だ。若いが自分より少しばかり年上に見える。淡い緑の長
髪、表に浮かんでいる笑みは柔和さと軽薄さが混じり合っているように見える。
『ちょっとロッサ。現場の確認をしとるんやから勝手に話に割り込まんといて』
『ごめんはやて。だけどようやく噂の彼と話ができるんだから大目に見てほしいな』

 

少しも悪びれない男。肩をすくめる仕草が驚くほどよく似合っている。
『それじゃあ改めて自己紹介したいので今からそっちに──』
『シン、悪いけどちょうホテルの三階のラウンジまで来てくれへん? 彼を紹介するから』
 嘆息してはやては言う。その様子を不思議に思うシンだが、反射的に頷きウィンドゥを
閉じると、シャマルに一言告げてホテルに入る。
「こっちだよ、シン・アスカくん」
 ラウンジに到着すると、こちらが探す前に男がこちらを呼ぶ。
「はじめまして。本局査察部ヴェロッサ・アコースです」
「起動六課所属、シン・アスカだ」
 差し出された手に握手を返すシン。柔和に微笑んでいるヴェロッサだがかすかに感じら
れる巨大な力の気配が、彼を只者ではないことを悟らせる。
 はやての隣に座ると、早速ヴェロッサは初対面の相手とは思えない親しさで話しかけて
くる。
「一度、君とは会ってみたかったんだ。クロノくんやザラ中将、それにレイくんからも話
は聞いていたからね」
「アスラン、それにレイからも?」
 アスラン・ザラ──現在は管理局地上本部に所属しているかつての上司にて宿敵──と
親友の名前を聞き、思わずシンの声は硬くなる。
 シンの反応に気付かなかったのか、それともあえて無視したのか笑顔のままで続けるヴ
ェロッサ。
「僕はクロノ君とは個人的にも親しくてね。アースラやクラウディアにはたびたび訪問し
ている。それでレイ君と知り合ったのさ」
 そういえば以前レイからの通信で妙に陽気な査察官と知り合った──妙に苦い顔をして
──とレイが言っていたことを思い出す。おそらくヴェロッサのことのなのだろう。
「それに──はやてからも色々と」
そう言い、浮かべていた大人の微笑が、子供っぽい笑顔にかわる。
「ちょ、ちょっとロッサ! 何を」
 何故か席を立つはやてに、ヴェロッサはニコニコと微笑んでいる顔を向ける。
「色々? はやて、お前何話したんだ」
「あ、それは、まぁ。……い、色々や」
 ぎこちない笑みを浮かべるはやて。形こそ違えどヴェロッサのものと同じ、何か含んだ
ような表情だ。
「大したことじゃないよ。昨年の六課における君の活躍や君個人の話など、その辺りさ」
 問い詰めようとしたところで割って入るヴェロッサ。絶妙のタイミングにシンは思わず
言葉をつぐむ。
「時間ができたら一度六課に行って会ってみようかと思っていたんだけどね」

 

「アコース査察官。そないに本局はお暇ですか」
「暇じゃないさ。でもそう言う時間を作ったからこそ、今こうして君達と話せているわけ
だし」
「そうですか? 仕事をサボってできた時間やないですか?」
小さな悪意を混ぜたはやての言葉にもヴェロッサは飄々とした態度を崩さない。ただの
同僚の間では決して見せない親しげな様子を見てシンはなぜか胸がざわめく。
「……なんだか、ずいぶん親しげだな」
 思わずシンは思ったことを口に出してしまう。
「え? あ、うん。かれこれ八年近くの付き合いやしな」
 八年。改めて聞くその年数にシンの胸中で何故か羨望と悔しさが入り混じる。
「はやてが教会との合同任務でカリムと会った時と同じだったね。考えてみると長いなぁ」
「カリム? それって六課の後ろ盾の人と同じ名前……まさか」
「予想した通り、そのカリム・グラシアのことだよ。ちなみに僕の義姉でもある」
 その言葉を聞き、シンは思わずヴェロッサ似の女性を思い浮かべる。
──六課、大丈夫だろうか
「言うとくけど、カリムはロッサと違うて真面目やよ」
 シンの心情を読み取ったかのようにはやてが言う。ヴェロッサは特に気にした風もなく
笑いながら「確かに」と頷く。
「まぁロッサも、普段はこんな感じやけどいざというときは頼りになるよ」
「おや、そう思ってくれているなんて嬉しいなぁ」
「でも私やカリムとしては、普段もそう思えるような態度でいてくれるとええと思うとる
んけどなぁ」
「そう言われると困るけど……。まぁ、善処しよう」
 全く改善する気のないヴェロッサを半目で見るシン。するとこちらの視線に気がついた
のか微笑すると彼は姿勢を正す。
「先ほどの戦闘見せてもらったよ。クロノ君やザラ中将、レイ君が言うだけのことはあっ
た。凄かったよ。
 君のような強い人が六課にいるなら僕の心配も少し減るかな」
 相変わらず表情に笑みは浮かんでいる。しかし先ほどのような喜や楽の感情だけではな
く、憂いと安堵も含まれているように見える。
「はやては僕達とって妹みたいなものだからね。これから一年間いろいろ大変だとは思う
けどはやてのこと、よろしく頼むよ」
 言って頭を垂れるヴェロッサ。その姿と落ち着いた声質に込められたはやてへの情の深
さにシンは心を震わせる。

 

彼の思いに返すように、シンは胸に抱く思いを発する。
「はい。はやては俺が守ります」
 シンの言葉に顔を上げたヴェロッサはまっすぐにこちらを見つめ、満足そうに微笑む。
 だが向けられた視線が突然横に向かい、ヴェロッサの笑みが愉快の色に染まる。
「はやて、どうした? 顔を赤くして」
 ヴェロッサの視線の先になぜか頬を赤く染めたはやての姿があったのだ。
「あ、ううん。別に、なんでもあらへんよ?」
「本当か? ぼうっとしてたみたいだし、疲れたのか。念のためシャマルに診てもらった
ら──」
「ほ、本当大丈夫やから。なんでもないから!」
 焦った様子で手を振るはやて。それを見るヴェロッサは小さく忍び笑いをこぼす。
 はやて同様に不思議な様子のヴェロッサにシンは尋ねるが、帰ってきた答えははやてと
似て、何かを誤魔化すような回答だ。
不可解な二人の様子に、シンは首をかしげた。

 

人通りの少ない六課隊舎の廊下をレイは歩いている。今日の主な雑務が先ほど終わり、
隊舎内の風呂に向かっているのだ。
 いつもなら部屋に設置されている簡易シャワーで済ますのだが、ときどきはゆったりと
お湯につかりたくなるのだ。
以前の自分──大戦中やそれ以前──ならそんな気持ちにすらならなかっただろうに。
このような思いや行動をとることを自覚するたび、変化がないような自分も少しずつであ
るが変わっているな、などと思い、内心で苦笑する。
「ん?」
 宵の闇を映すガラス窓に通りかかった時、レイは足を止めてその奥にいる人影を見る。
「ティアナ……。まだやっていたのか?」
 黒く染まった森の中に浮かぶ魔力球。それにティアナはさまざまな発砲姿勢で“クロス
ミラージュ”を向けている。シューターの基礎訓練、ターゲットトレーニングだ。
 ランダムに位置を変える球にティアナは素早く、正確に“クロスミラージュ“を向ける。
一見乱れなく流暢に見えるその動きだがレイから見れば、いつもの彼女に比べ明らかに遅
い上に乱れ、姿勢も崩れかけている。

 

 最初に見たのは夕方頃だった。今日の任務で誤射というミスをしたことは当然レイも知
っており、同じ過ちを繰り返さないよう、また自信を鍛えるための自主訓練と思いさほど
気にしなかった。
 だが今は夜の九時を回っている。夕食時には食堂で姿を見かけたがあの様子ではおそら
くそれ以降もずっとあそこで自主練を行っているのだろう。
 レイは進路を変更、ティアナのもとへ向かう。
 レイがやってきたことにも気付かず、ティアナはただ一心不乱にトレーニングを繰り返
している。遠目から見た動きの乱れは、近くで見るとさらに顕著になる。
「ティアナ」
「バレル二佐……」
 汗だくになっている面を向けるティアナ。
「こんな時間まで何をしている。自主練をやることは構わないが限度というものがあるだ
ろう」
 ややきつい声で言うと、ティアナは俯く。
「それに高町隊長から午後は体を休めるよう言われていたはずだ。だというのに──」
「わかってます」
硬い声でティアナは言う。こちらを見る彼女は睨みつけるような表情だ。
「でもみんなと同じようにやっても駄目なんです。私は、凡人ですから」
 後悔、苛立ちなど屈折した感情の混じった言葉を放つ。
言った直後、ティアナははっとなる。
「も、申し訳ありません。失礼なことを」
「かまわない。それよりもう今日は終わりにして休め」
「……はい」
 疲れ切った足取りで隊舎へ向かうティアナ。彼女が自室に戻るところまでを確認し、よ
うやくレイは風呂に向かう。
 誰もいない風呂にゆったりつかりながらレイはアグスタでの任務後、隊舎に戻ってきた
なのは達が話していたティアナの話を思い出す。
 彼女の欠点といってもいいほどの突撃思考や好戦的性格。それは空隊にいた執務官志望
の兄、彼が殉職した任務を心ない上司が罵倒したこと。それ故に兄が、兄が教えてくれた
魔法が無価値ではないこと、どんな状況でも通用する力だと証明するために一生懸命だか
ら──
「……危ないな」
 ティアナは伸びる。自身のことを凡人と思っているようだが他の三人と比べ、その潜在
能力は引けを取らない。いやむしろ他三人を指揮する立場にあること──その指揮能力を
含めれば四人の中では一番の逸材ともいえる。

 

 しかし過去の傷と彼女自身の性格が成長の妨げになりかねない。いや、もしかしたらも
うなっているのかもしれない。
 睨むように見た彼女の表情。シンがキラ・ヤマトを倒すため自分と猛特訓を繰り返して
いた時のシンの表情に似ていた。
──しばらくの間、シンと二人で様子を見ておくか
 日々を過ごす中何かのきっかけで改善される可能性もある。もし明らかな異変が見られ
たら改めてなのは達に相談することにしよう。そうレイは思った。

 

「失礼しますドクター」
 シュッと空気の鳴る音が小さく部屋に響く。入ってきたのはスカリエッティの作った戦
闘機人ファーストロット四機のうちの一機、ナンバー1ウーノだ。
「ウーノ、どうかしたのかね?」
「はい、先日改良したガジェットについてと妹たちからあげられた改善点などの報告に」
 スカリエッティはわずかに眉をひそめる。いつもの彼女ならこの程度の問題などはモニ
ター越しで告げ、自分の作業に従事しているはずだ。
 こちらの疑問を察したのか、ウーノはにこりと微笑み、
「ドクターはそちらの方にずいぶん集中されていたようなので。ご覧になられている最中
邪魔しては悪いと思いまして報告する頃合いを見計らっておりました」
「ふむ、創造主の動向を監視するとは。いけないねウーノ」
「申し訳ございませんドクター」
 からかいのこもったスカリエッティの言葉に、ウーノは微笑顔のまま謝罪する。
 スカリエッティとウーノは創造主と創造物という関係であるが、そこに絶対的な主従の
関係はない。スカリエッティは彼女たちのことを愛しており、彼女たちもまたスカリエッ
ティを慕っているからだ。
 ウーノがまとめたデータを素早く閲覧すると、スカリエッティは目にも止まらぬ速さで
コンソールを叩き、即座に直せる部位には答えを、時間が必要なところには未解決と入れ
込んでいく。
 数こそ多くないものの、なかなか難易度の高い改善、問題点をものの十数分で片付ける
スカリエッティ。その桁違いの情報処理能力は、まるでコーディネーターのようだ。
「集中していたか。……まぁ、以前も目の当たりにしたが興味深いものだよ、これは」
 データの映るモニターを閉じて、別のモニターを開く。そこに表示されたのは数日前の
ホテル・アグスタでの戦闘。
 シンの真紅の瞳が普段とはまるで違う凄みを帯びており、常人をはるかに超える反応や
速度を見せてスティング、アウルを打ちのめす姿だ。

 

「“Superior Evolutionary Element Destined-factor”」
「そう、SEEDだよ。“彼”から話だけは聞いていたが実際この目で見ると、素晴らしい
の一言だ。
 遺伝子操作された人。人にして人の限界を超えた能力を持つヒト。その彼がさらに進化
する姿。
 彼を見ていると、人という生き物は一体どれだけの可能性を秘めているのだろうか、な
どとそこらにいる有象無象の二流の科学者が口に出すような陳腐なセリフを言ってしまい
たくなるよ」
 愉快げに笑いスカリエッティはさらにモニターを開く。複数出現したモニターにはシン
と同じ“SEED“の保有者達の姿が映っている。
「ウーノ」
「はい、ドクター」
「私は、彼らが欲しいよ。欲しくて欲しくて、たまらない」
 粘つくような欲求の声とは間逆に、モニターを見るスカリエッティの瞳は幼子供のよう
に純真無垢だ。
──欲しい、彼らが欲しい。思うがままにしたい。最高位のコーディネータとはいかなる
ものか、SEEDとはどのようなものか。
 知りたい。知りたい知りたい知りたい知りたい知りたい知りたい知りたい知りたい知り
たい──
「──そんなに欲しいのかね」
 電子機器のごとく思考を稼働させていたスカリエッティの背後、陰に隠れた場所から声
は聞こえてくる。
「君か。体の具合はいかがかね」
「とても良い具合だよスカリエッティ。君の技術は本当に素晴らしい」
 こちらを見る彼の表情はいつもと同じだ。微笑を浮かべているその顔は、嘲笑うような、
呪うような、妬むような、様々な負の感情が凝縮され作られた芸術品のようだ。
「キラ・ヤマト、アスラン・ザラ。……そしてシン・アスカか」
 どうでもよさそうに、しかし興味のあるように言う彼。彼はこのような態度をよく取る。
 一部のナンバーズにはその態度がかなりの不評のようだが、スカリエッティとしては嫌
いではない。
むしろ好んでいるといっていい。なぜなら本意が見えない。わからないからだ。
スカリエッティはわからないもの、知らないものがたまらなく好きなのだ。なぜならそ
のようなものを前にした時、“知りたい”と言う欲求が生まれる。それがスカリエッティの
本能を刺激し、好奇心をあおるのだ。

 

大抵のものは知った瞬間興味が薄れるが彼はそうではない。態度や口調が自分が感じた
ことと全く違っていたりすることがあまりに多い。自分とどこか似ていると思うから、な
おのこと興味は尽きない。
「三人の中で一番捕らえやすのは、だれだろうか?」
「難しい問題だ。キラ・ヤマトは個人でも天変地異を越せるほどの規格外の怪物。周りに
も超一流のエースがいる。彼を捕らえるのは至難のわざだな。
となると残る二人、アスラン・ザラにシン・アスカ──」
 そこで言葉を切り、彼はウーノへ視線を向ける。
「君はどう思うかね?」
「私としましてはやはりシン・アスカがもっとも捕縛しやすいかと思います。
 アスラン・ザラは地上本部に所属しており、本部の厳重な警備の元にいます。またリミ
ッターもかかっていない彼はキラ・ヤマトに比肩しうる超絶的な力の持ち主。キラ・ヤマ
ト同様にリスクが大きすぎます。
 シン・アスカは部隊に所属しているため力を大きく制限されています。自力でもある程
度のリミッター解除はできるようですがそれでも全力には及びません。
 彼を部隊員から引き離し妹達とファントム01達が協力すれば、おそらくかなりの確率
で捕らえられるものかと」
「そうだな。確かに現状は彼が一番、捕まえやすい」
 そう言う彼だが全く同意しているようには見えない。笑みを浮かべて、もう一度モニタ
ーを見る。
 そこにはスカリエッティの好きな真意の見えない顔が浮かんでいた。