Lnamaria-IF_赤き月の鷹_第23話

Last-modified: 2020-01-29 (水) 08:45:05

with a will

そのままお茶なんか出してもらっちゃって、みんなで議長の演説とかデスティニープランについて話していたら、ヴィーノが駆け込んできた!

「ハァハァ……アルザッヘルが撃たれた!」
「え?」
「連合のあのレクイエムで!」
「ええ!」

レクイエムと言うのはダイダロス基地に設置されていたあの大型ビーム砲の名前だ。そんな名前を付けて、悦に入っていたのだろう。ロード・ジブリールは。

「何で!? 誰が!?」
「基地に反攻の動きがあったんだ。それをローラン隊が討ったということだ」
「レイ!」

レイも部屋に入ってきた。

「反攻?」
「軍はあれを直したの?」
「言った通りだろ? シン。例え良いことでもスムーズにはいかない」


オーブ宇宙軍がデスティニープランの強制への反対と大規模破壊兵器の排除を宣言して、レクイエムのステーション1目指して進軍を開始したと報告があったのはそれからしばらくしてだった。

「まったく何を考えているのかしらね! オーブは! 連合との同盟を破棄したと思ったらこれだ。デスティニープランは結果を強制する物でもないでしょう?」
「そう言うな。奴等も怖いのさ」
「怖い?」
「そうさ。こちらはレクイエムを握っている。強制されると考えても不思議じゃない。俺たちだって艦長から話を聞いてるだけで議長の真意なんざわからんさ」
「そうしたって、奴等だって不法に戦略級モビルスーツのフリーダムとかエターナルとか隠しておいて、いまさらという感じよねー」
「そうよね、ゲイル。ユニウス条約の明白な違反よ。これほどの宇宙戦力保持しておきながら、強すぎる力は争いを呼ぶ? 笑っちゃうわね。に、してももどかしいわね。議長も、もっとうまくやれなかったのかな。反ロゴスで世界を纏めた手腕は見事だったけど」
「言うな。いまさら言っても後知恵になるだけだ。議長が可哀想だろ」
「そうだね。……アスランとシン、またオーブ軍と戦わせちゃうな……」
「……覚悟はある! 俺は戦う!」
「……アスラン!」

振り向くと、アスランがいた。

「心配するな。いまさらだぞ」
「だよな。さすがアスランだ。見込まれて再びフェイスになっただけある」
「ちゃかすなよ、ショーン。シンには、フリーダムの相手をしてもらうつもりだ」
「そっか。オーブ兵の家族の恨みはあたし達が引き受ければいいものね。シン、勝てるかな?」
「勝てる! そのために猛特訓してきたんだ」
「もし、相手がコクピットを狙ってきたらどうすんの?」
「その想定でのシミュレーションもみっちりしてるよ、ゲイル。大丈夫だ! あいつなら」

ミネルバは、ステーション1の防衛を命じられた。
やってくるオーブ軍の中には、あのエターナルも確認されたと言う。フリーダムはきっと現れる……

「でも、オーブ全軍はダイダロス基地に向かっちゃって、ステーション1に来るのはアークエンジェルとエターナルだけぇ!?」
「オーブ本土じゃ反政府デモや、軍のサボタージュもあると聞く。オーブも苦しい所だろう」
「みんな、2艦だけだと侮るな! エターナルにはミーティアと言う戦艦並みの武装もある。自分で言うのもなんだが、前大戦時、俺とキラ・ヤマトで、プラントに飛来する無数の核ミサイルをすべて迎撃したり、押し寄せるモビルスーツをばったばったと戦闘不能にしたり、まぁ強力な武装だ。これは、2艦がステーション1を早期に落とし、続いてダイダロス基地に向かう作戦だろう」
「そうだな、気を引き締めよう。……まだミネルバがステーション1に着くにはしばらくある。しっかり休んでしっかり働こうぜ」


「ルナ、ちょっといいか?」
「なぁに、レイ。ひょっとして、愛の告白!?」
「莫迦。真面目な話だ。聞いてくれ」
「……いいわよ」
「ふ。俺にはもうあまり未来がない。実は、俺はクローンなんだ……生まれながらにしてテロメアが短い」
「……」
「おそらく俺は、議長が作る新しい世界を見届ける事は出来ないだろう」
「……」
「議長はお前を信頼している。だからルナ、お前が守るんだ。議長と、その新しい世界を…って、聞いているのか?」
「ええ」
「だったら黙ってないで少しは反応しろ」
「そうね……じゃあ一つ聞くけど」
「ああ」
「レイ、あなた、何時死ぬの」
「な、何?!」
「寿命が短いんでしょう。何時死ぬのかと聞いてるの」
「………」
「明日か、明後日か。はっきりさせて貰えると助かるんだけど……分からないの?」
「当たり前だ!」
「意外と不便ね。それに、寿命が短いなんて言っている割には、しぶといわ」
「そんなに簡単に死んで堪るか!!」
「……そう。じゃあ、あなたの頼みも却下ね」
「何だと?」
「あなたのオリジナルが何歳の時のクローンか知らないけど、人類の理論上の最大寿命は120歳よ。もっと延びるかも? それだけ元気なら、まだまだ長生き出来るわよ。せいぜい長生きして議長の為に励みなさいよ」
「……ルナ、お前」
「さぁ、そろそろ出撃の準備よ。奴らは、簡単な相手じゃないわ。入念に行きましょう」
「ああ、そうだな……ルナ」
「何?」
「勝つぞ。俺たちは死ぬ訳にはいかないからな」
「いつもの事よ。レイ、気負わないでね。冷静にね。くれぐれも」
「……それは余計なお世話だ」


「少しは休めたか?ルナ。そろそろ俺たちも出撃だぞ」
「ええ」
「ミネルバにはフェイスが4人もいるんだ。ステーション1、守って見せなきゃな。……ルナ、議長についてどう思う?」
「……アスラン? 何を突然……」
「君から見た意見を聞きたいだけさ。あぁ、今更ラクス達が正しいとか言うつもりはないから安心してくれよ」
「……そうですね。正直な所、全面的には賛同できないというのが私の意見です」
「ふむ」
「デスティニープランはナチュラルとコーディネイターの確執を取り除くためならば、そう悪いものでは無いと思います。ナチュラルとコーディネイターが争わないのならそれにこした事はない。けれど……」
「けれど?」
「やり方が少々強引すぎるように見えます。現にデスティニープランは議長の"提案"ではなく一方的な"導入"宣言により始まりました。対話も議論も何も無い」
「……」
「デスティニープランは、評議会で議論したものでもなく議長一人が考え上げて宣言しました。本来なら、評議会でどうやって実施するか、実施にあたっての問題点などを議論するはずです。しかし、それすらもなされていない。問題はそこです」
「そこ?」
「まるで議長個人の考えあげたプランが正しいかのようにされている。絶対的に正しい人間などいないのに、民衆は自分達で考えるのをやめて、偉い人間の言いなりです。まるで人形ですね」
「ふむふむ」
「デスティニープランを全面的に否定はしませんが、よくもわかっていないプランを両手を上げて賛同するつもりもないですよ」
「……そこまで考えていても、君は議長の言うとおりに働くのか?」
「今は戦争中ですから。自国の政策云々以前に倒さなければならない敵がいる……議長に文句を言うのはその後ですね。政治家でもない、ただの軍人の私が問題点を指摘しても取り合ってもらえないでしょうが」
「ヘタをすれば反逆者として捕まるかもねしれんぞ」
「その時はその時です。なんなら全世界にTV中継されてる時にでもやってみますか。派手なほど大衆へのインパクトは大きいですし、『お前らも少しは自分で考えろ』ってね」
「君らしくなく過激だなぁ」
「今まで散々"軍の命令だから"と多くの命を奪ってきたんです。一度くらい馬鹿げた事をやってみても悪くないかと」
「どうして俺にそこまで話してくれたんだい?議長に君の事を報告するかもしれないよ?」
「私にもよくわかりません。ただ、アスランになら話してもいいかと思いました」
「信頼されてるってことかな?」
「ふふ。さぁ、どうでしょうね」

『コンディションレッド発令、コンディションレッド発令。パイロットは速やかにモビルスーツに搭乗してください』

「出撃みたいだ、行こうか。……なあ、ルナ」
「はい?」
「もし君が今言った事を実行するなら、俺も手伝っていいかな?」
「ふふ、お好きにどうぞ」
「あぁ、好きにするよ」


『デスティニー、レジェンド、発進してください』

いよいよだ!

「アスラン・ザラ、レジェンド、発進する!」
「ルナマリア・ホーク、デスティニー、行くわよ!」

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