Lnamaria-IF_523第05話

Last-modified: 2007-11-17 (土) 07:21:31

「カガリ様! ご無事でなによりです!」
「ああ、心配をかけた」
カガリを乗せた救命ポッドは無事に収容されていた。
「クサナギか……」
「は、何か?」
「いや、頼もしいなと思ってね」
カガリはヘリオポリスで会った少女の事を考えた。
ルナマリア・ホークとか言ったな……無事だろうか?
あんな別れ方をしたせいだろうか、不思議と気に掛かる。
「……隊が未帰還……」
なぜ? その報告にカガリは耳をそばだてた。モビルアーマー隊の一隊が未帰還らしい。
オーブは戦争をしている訳でもないのに、なぜ!?
お父様は中立宣言していたのに……ザフトは遠慮しなかったらしいな。
力がなければ、中立宣言など一顧だにされない。それがカガリには骨身に染みてわかった。
力が、欲しい。国を守るだけの力が。
国へ帰ったら、広い世界を見てみよう。視野を広げなければ。
カガリの小さな決意だった。




「はい。また声が聞こえました。でも、私を助けてくれた、導いてくれた気もします」
「ふーむ。潜在意識が、顕在化したものかも知れんの。まぁ悪い事は無かったと言うことじゃな」
「でも、私の意志とは勝手に攻撃したり……」
「それも、自己保存の本能が働いた物かも知れんよ。また、なにかあったら来なさい」
「はい」
デンギル先生に言わなかった事もある。夢の事だ。ヘリオポリスが崩壊する前、居眠りで見てた夢……私とアスランがモビルスーツで戦っていた夢。現実になっちゃった……予知夢って奴かな。
でも、やっと、味方の基地に着くんだよね。
医務室を出て、ほっと一安心してたところにフラガさんが現れた。
「ちょっと言い忘れてた」
「はい?」
「ストライクの起動プログラムをロックしておくんだ。お嬢ちゃん以外、誰も動かすことの出来ないようにな」
「……え?」
なんで? でも、やっておこう。フラガさんが言う事だ。何かあるのかもしれない。
「いいですけど……ちょっと聞いてもらえますか。変な話だけど」
「いいぜ、お嬢ちゃん」
夢の話をフラガさんに聞いてもらおう、と思った。誰かに話さなきゃ、我慢できそうになかった。




休憩室で、みんなと休んでいると。
なに? 突然銃を持った兵士が……
「よーし! そのままだ!」
「あぁ!」
「動くなっ」
なんなのよ? なんなのよ、これ!?
「ユーラシアって味方のはずでしょ? 大西洋連邦とは、仲悪いんですか?」
「そういう問題じゃねぇよ」
「ハァ、識別コードがないのが悪い」
「それって、そんなに問題なんですか?」
「どうやらねぇ……」
「本当の問題は、別のところにありそうだがな」
「……ですね」
はぁ……当分、おとなしくしているしかなさそうだった。


せっかくの食事も、銃を持った兵に監視されながらじゃ、おいしくなーい。
「この艦に積んであるモビルスーツのパイロットと技術者は、どこだね?」
「……あぁ……」
突然、えらそーなおっさんが入って来た。
「パイロットと技術者だ! この中に居るだろ!」
……! 私が立ち上がろうとすると、マードックさんが私の肩を押さえた?
「何故我々に聞くんです?」
「なにぃ?」
「艦長達が言わなかったからですか?それとも聞けなかったからですか?」
……あ! フラガさんが、ストライクの起動プログラムをロックしておくようにと言った訳がわかった気がした!
「なるほど。そうか!君達は大西洋連邦でも、極秘の軍事計画に選ばれた、優秀な兵士諸君だったな」
「……ストライクをどうしようってんです?」
「別にどうもしやしないさ。ただ、せっかく公式発表より先に見せていただける機会に恵まれたんでね。パイロットは?]
「フラガ大尉ですよ。お聞きになりたいことがあるなら、大尉にどうぞ」
「先ほどの戦闘はこちらでもモニターしていた。ガンバレル付きのゼロ式を扱えるのは、あの男だけだということぐらい、私でも知っているよ」
何? こいつ、いきなりミリィの腕をつまみあげた!
「……うあぁーいっ……」
「ミリアリア!」
「……くっ!」
「……うっ……」
「女性がパイロットということもないと思うが……この艦は艦長も女性ということだしな」
「いったーい!」
「止めて下さい! 卑怯な!」
もう、我慢できなかった。
「お嬢ちゃん……!」
「あれに乗っているのは私です!」
「お嬢ちゃん、友人をかばおうという心意気は買うがね……あれは貴様の様なひよっこが扱えるようなもんじゃないだろ? ふざけたことをするな!」
――! なに、こいつ。いきなり殴ろうとしてきて!
私はえらそーなおっさんを投げ飛ばした。
「……うわっ、うおぉ、うほぁ!」
「私はあなたに殴られる筋合いはないです!」
「司令!」
「なんなんですかっ! あなた達はっ!」
「ルナ! 止めろ!抵抗するな……」
「貴様ぁ!」
「止めて下さい! うっ!」
「うわぁぁ! ……サイ! ……ちょっと止めてよ! その人が言ってることは本当よ! その人がパイロットよ!」
「貴様ら! いい加減にしないか!」
「嘘じゃないわよ! だってその人、コーディネイターだもの!」
「……ええ!……」
「あちゃー……」
「……コーディネイター……なんだそうかぁ、そうだったのか! ははは!」


私は、ストライクの前まで連れて来られた。でも、しょうがないよね。ミリィをあのままにしておけなかったし。
「OSのロックを外せばいいんですか?」
「まずはな。だが君にはもっといろいろなことができるのだろ?」
「何がです?」
「例えば……こいつの構造を解析し、同じものを造るとか、逆にこういったモビルスーツに対して有効な兵器を造るとかね」
「コーディネーターを何だと思ってるんですか! 魔法使いじゃありませんよ!? それに私はただの民間人で学生です! 軍人でもなければ、軍属でもない! そんなことをしなければならない理由はありません!」
「だが君は、裏切り者のコーディネイターだ」
「……あぁ? 裏切り者……?」
「どんな理由でかは知らないが、どうせ同胞を裏切ったんだろ? ならば色々と……」
「違うわよ!……プラントなんて同胞じゃない! 私はオーブの……」
私はザフト。ザフトの赤服。
まただ。頭が……痛い。
「地球軍側に付くコーディネイターというのは貴重だよ。なに、心配することはない。君は優遇されるさ。ユーラシアでもな」
――!
「……あっ?」
格納庫が、揺れた。
あ、また!
「管制室!この振動はなんだ!?」
「不明です! 周辺に機影なし!」
「……だがこれは、爆発だぞ!」
「爆発ですって!?」
「ああ、安心しな、お嬢さん。傘さえ展開すれば……」
「ぼ、防御エリア内に、モビルスーツ! リフレクターが落とされていきます!」
「なんだとっ!! 傘が破られた!?そんなバカなっ!?」
「司令ー……」
アルテミスの傘が破られた。とにかくモビルスーツが基地を攻撃しているのは間違いない!
「……でいっ!」
「うわぁー!」
私は足でガルシア指令達をコクピットから押し出し、ハッチを閉めた。
「だーっ! 貴様!」
「攻撃されてるんでしょ? こんなことしてる場合ですか!? 出ます!」
「……くっそーっ!」


……こんな所じゃランチャーもエールも向かない。ソードストライカーが装着されると、私は歩いて出撃した。
――まただ。私の知らない戦いの場面が脳裏に浮かぶ。誰かが、ストライクのようなモビルスーツで、対艦刀で艦を次から次へと叩き切っている。私はその人と仲が良かった気がする。誰だろう……?
――! ブリッツだ! あいつら、しつこい!
私は頭を一振りすると気を引き締めた。
ブリッツがロケットアンカーを射出して来た! 私は対艦刀でそれを受け止め、絡ませレーザー部でコードを焼き切る!
「……もう私達を放っておいてよー!」
そのままスラスターを吹かしてダッシュ、対艦刀を振り下ろすも、動きのすばやいブリッツはそれを躱す。
「ルナ! ルナ、戻って! アークエンジェル発進します!」
ミリィだ! よかった! アークエンジェル、私達の手に戻ったんだ!
そうならもう、すばやいブリッツを無理に追う事も無い!
ブリッツは右手からレーザーと金属製の針を飛ばして来る……?
レーザーをロケットアンカーの基部で受ける。金属製の針……なんで無意味な物を……と思った瞬間、それが爆発した!
衝撃。その隙にブリッツが、ビームサーベルを展開して向かって来る!
「鬱陶しいのよ!」
対艦刀を振りかぶり、振り下ろす! ブリッツは慌ててスラスターで逆進をかける。
「……えぇぃ!」
私は対艦刀でそこら中を切りつける! 壊れてしまえ! こんな基地!
建材と煙が空間を漂い、ブリッツとの間を塞いでいく。
『……くっ! 逃げるのかぁ!!』
ブリッツのパイロットが喚いている。
「追って来たければ来なさいよ。出来ればね!」
私がアークエンジェルに着艦したと同時に、艦は最大加速でアルテミスを脱出した!










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