Lyrical DESTINY StS_短編

Last-modified: 2008-10-24 (金) 18:49:44

フェイトは今日という日を楽しみにしているようで
前日の夕食のときにはすでにうわの空、と言った感じに表情が緩んでいた。
彼女の使い魔アルフは
「フェイトが幸せそうだから、あたしは全然いいさ」
と笑っていたが、どうにも僕は容認できそうにない。
え?なぜかって?それは・・・フェイトが楽しみにしているという事項が“男とのデート”だからだ。
そりゃ、認めたい・・・義妹が選んだ男なんだから、認めたいさ?
けど、義兄として!やはり、気になるものなのだ!

 

「・・・ねぇ、クロノ君、考えてること、口に丸出してるよ?」
「ハッ!」
エイミィのツッコミに、クロノは心臓が飛び出ると言わんばかりの驚きようで、ある意味見ていて面白かった。
しかし、エイミィもクロノを放っておくと碌なことにならないだろう、と目を細めクロノの肩をぽんと叩く。
「クロノ君。フェイトちゃんの幸せ・・・壊しちゃダメだよ?」
冷やかなセリフにクロノは思わず振り向くのをためらっていた。
しかし、ぐぃっとエイミィに肩を引っ張られて強制的にエイミィのほうを向かされてしまう。
「・・・」
見た瞬間に、クロノは・・・案外と、お約束な顔をしていないんだと安心したのもつかの間。
その笑みの裏部分を理解して冷や汗をどっと流していた。
「ね?クロノ君♪」
「・・・イエス、マイ、ロード」
どこぞの軍人のように妻であるエイミィに・・・亭主関白とは程遠いだろう。

 

そんな二人のやりとりを微塵も気にせず、キッチンで明日のお弁当の下ごしらえを
鼻歌を歌いながらしているフェイトがいた。
「ふんふふ~ん♪タマゴ、きゅうり~♪ベーコン、ハムに、レタス~♪」
え、フェイトそんなキャラだった?とクロノは顔面蒼白にしてキッチンを見やるが、
それにはエイミィも同意のようで少し顔をのぞかせてそのさまを見つめていた。
「・・・嬉しそう、だな?」
クロノが少し悔しそうに、さみしそうにそう口にすると、エイミィがふぅっと笑ってクロノの背中をバンッ!と叩く。
「い、痛いじゃないかエイミィ!」
「いやぁ!クロノ君があまりに可愛いもんだから、面白くって!」
エイミィはクロノがフェイトのことを大事に思っていることを知っているから、
彼女に対するクロノの感情が家族としての愛情だとわかっていた。

 

「アハッ♪喜んでくれるかな!」

 

だが、今の言葉を聞いて・・・どうやらクロノに再び戦慄が走り、
エイミィも少なからずフェイトのキャラ豹変に、恐れに似たものを抱いていた。

 

二人の生暖かい視線を・・・だが、フェイトは気づく様子もなく
鼻歌を口ずさみながら、まるで達人のように包丁を振るっていた。
「喜んで・・・くれるかな?」
すると今度はあからさまに頬を紅潮させ、手に持つレタスを見つめていた。

 

さて、このデート・・・お相手は何を隠そう管理局でフェイトと同じ執務官をしているアスラン・ザラなのだ。
内気なフェイトがデートにかこつけられたこと自体が奇跡に感じられるが、
実はフェイトの周りの親友たちの綿密な裏工作がものを言ったのだ。

 

遡ること4日前。いつものように、書類仕事に励んでいたフェイトに、アスランが訪ねてきたときのことだった。

 

「どうしたの、アスラン?」
普通に接することに問題はないので、フェイトは入ってきたアスランにそう問いかける。
すると、アスランは手に持っていたファイルから一つの紙を取り出す。
「実はな、この任務を引き受けてもらいたいんだが、ダメか?」
アスランがとり出した紙を受け取り、フェイトは目を通すと・・・書いてあった内容は、こうだった。
「第1回THE水着コンテストIN本局♪お遊び気分をたまには満喫!忙しさの中にこそ花を持とう!」
「・・・アスラン、ぶっ飛ばされたい?」
フェイトはいい顔で、拳をグッと握った。
いくら惚れているからと言って、迷いはない・・・拳に差別や区別は存在しない。
「・・・・・・すまん、高町、八神、任せた」
アスランが、俺は言ったからな、と呟きながら後ろに下がり、代わりになのはとはやてが顔を出す。
「なぁフェイトちゃん、出ようや~!」
「そうだよ~私たちの中で一番スタイルがいいの、フェイトちゃんくらいなんだよ~?」
なぜだか親友たちがハイテンションで自分にまとわりついてくる。
なぜだか、いやな予感しかしないのは気のせいだろうか?
だいたい、二人とも仕事はいいのだろうか?
二人とも階級からもそれなりに忙しいはずなのだが・・・それに、あんなイベントを
アスランが自分の意志で持ちかけてくるとも思えない。
「それで・・・季節なんてあんまり関係ない本局でなんで水着コンテスト?確かに、海鳴はもう夏だけど・・・」
チラリ、とカレンダーを見やる。
夏と言えば水着・・・脊髄反射的に答えればそうかもしれないが、それでも仕事中に
そんな話を持ちかけられてもフェイトはどう対応していいかわからなかった。
すると、二人がアスランに聞こえないように、フェイトに顔を近づけて耳打ちをしてきた。
「それにほら!フェイトちゃんもアスラン君といい感じになりたいやろ?」
と、はやて。
「私たちもいろいろ考えてるんだよ?
イベントで着るようの水着をアスラン君と買いに行くとか、さ?デートチャンスだよ?!」
と、なのは。
「・・・けど、アスラン、今まで私が誘ったり何かそれらしいこと言っても何も反応しないんだよ?」
鈍感男なんだよ?とかなり失礼なことを述べるが、彼女らのひそひそ話が聞こえていないアスランは疑問符を浮かべるしかなかった。
それにしても、異様な光景である。
真面目一筋で通るフェイト・T・ハラオウン執務官の執務室に、高町一等空尉、
八神はやて二等陸佐、アスラン・ザラ執務官が集まっているのだから。
しかも、アスランは若干あきれ顔、上気した顔をしている二人の女性、そして詰め寄られるフェイト執務官。
さらには、補佐官であるシャーリーがデートコースをさりげなく組もうとしていたのは、あと数分立つまで誰も知らなかったそうな。

 

「とに、かく!いやだよ!?私・・・その、水着コンテストだなんて!」
断言するフェイトに、なのはとはやての不満たらたらの「え~?」という声が室内に響いた。
はぁ、とため息を漏らすフェイト。
そんなフェイトが不憫?に思ったのか、アスランは助け船を出すように口を開いた。
「おい、二人とも・・・フェイトが困っているだろう?そろそろ・・・」
と、あきれ声で注意したつもりだったのだが・・・。
「「アスラン君は黙ってて!!」」
恐ろしいほどの剣幕で怒鳴られ、さすがにアスランも後ずさっていた。
「だいたい、アスラン君もな~」
はやてが怒鳴った剣幕のまま、アスランに詰め寄り、愚痴るようにして言葉を放った。
「鈍感すぎんねん!フェイトちゃんかて・・・」
だが、そこまで言うとガン、とはやての頭に衝撃が走る。
「いったぁ・・・」
しゃがみ込んで頭に走った鈍痛をこらえようとするも、やはり痛みがきついのかそこでうずくまってしまった。

 

「はやて、今何を言おうとしたのかな?」
顔は笑っているが・・・ゴゴゴゴゴゴ、という激しい音がフェイトの後ろではしていた。
はやては涙目でそれを見ると、なのはに救いを求めるが・・・なのははすでに、
ごめん!と両手をあわせて、はやてを見捨てた。
「ねぇ、はやて?」
顔は笑っているが、目が笑ってない・・・やばい、とはやてはアスランの後ろに隠れる。
「あっ!はやて!」
「アスラン君助けて~!このままやったら私ひどい目にあわされる~!」
必死で懇願するはやての姿に憐れみを感じたのか、アスランは仕方なくフェイトのほうに向きなおる。
「ま、まぁ八神も悪気は・・・なかったと・・・信じよう?」
後に続くにつれて自信をなくすアスランの言葉に説得力はなかったが、フェイトは仕方なく怒気を抑えた。
「ありがとうアスラン君♪」
しかし、それに乗じてか、はやてがアスランの腕をとり、
自分の腕と重ねて腕を組んだため、せっかくフェイトが抑えた怒気が再び浮上してしまった。
「は~や~て~?」
「はっ!しまった!」
ついつい、いつもの調子で他意のなかったはやては自分の軽さを思わず後悔し、再びアスランの後ろに隠れる。
「はぁ・・・ホント、なんなんだよ」
クシャリと頭をかいてから、アスランはため息をついて天井を仰ぐ。
「・・・どうだ、フェイト?出てみないか、これ?」
考えたのか、視線をフェイトに戻しアスランは再度イベントのことが書いてある紙を見せて、控え目に言ってみた。
「・・・」
少し、う~っと唸るようにうつむき、フェイトはしばらく動かなくなる。
あれ?とアスランはフェイトの顔を覗き込むと、アスランは少しだけ後悔した。
なぜなら、そこにあったのは、顔を真っ赤にして何やら呟いているフェイトがいたのだから。
「あ・・・フェイト?」
返事はない。というより、アスランの言葉が耳に入っていないようだ。
「・・・フェイト!」
再び、返事はない・・・やはり聞こえていないようだ。
そんなフェイトはアスランをよそに、ぶつぶつ何かを呟いていた。
「フェイト~?帰ってこーい?」
三度目の正直、と思ったのだが、やはりアスランの言葉は届かなかった。

 

そんなフェイトの呟きを少し傍受し、お伝えしております。

 

(だいたい、アスランは鈍感すぎるんだよ・・・私がいくらそれっぽいこといっても
全部流すし、だいたいいろんな女の子と飲みに行くくせに・・・アスハ提督とだって、
ていうか私魅力ないの?胸少しは大きいつもりだよ?母さん並みだよ?
両方のお母さん豊満だよ?それとも熟女趣味?それとも少女趣味なの?
出会ってもう何年たってると・・・まさか、アスラン私のこと女として見ていないとか?
それとも・・・それとも・・・ブツブツブツブツ)
以上、傍受終了・・・これ以上は不安定になりそうになったので断念しました♪

 

「フェイト!!!!!」
「ハッ!?」
アスランが通常ボリュームの5倍くらいの声で呼びかけてようやくフェイトは現実に帰ってきたようです。
「あ、アスラン・・・えと、その・・・」
急に現実に帰ってきたもんだからフェイトもシドロモドロである。
そんなフェイトにあきれたようにため息をついてから、アスランは。
「えと、じゃあ、その、あの・・・」
また声が小さくなっていき、聞きとり辛くなってきたので、アスランは仕方なく。
「フェイト・T・ハラオウン執務官!!」

 

「!!」
「お、おれ、俺がついていってやるから・・・水着コンテスト、でて、見ないか?」
そ、それって・・・それって・・・とフェイトの中で反響していき、顔が真っ赤になっていく。
アスランも同様に顔を赤くしているが、この紅潮はあくまで水着なんていうものを
買いに行こうと言っている恥ずかしさからくるもので、フェイトを誘ったことで
感じている恥じらいではない。
所謂鈍感男。
後ろではなのはとはやてが「いえ~い」と両手をあわせて喜びの舞を舞っていた。
「じゃ、じゃあ!なのはとはやても出るんなら!」
「「・・・へ?」」
フェイトの言葉に、今までの喜びを忘れ、目を点にギギギ、とフェイトのほうを向く。
「だ、だって・・・私一人だけじゃ恥ずかしいし、やっぱり」
と、照れながら言っているが、なのはとはやては予想外の展開に、今だに思考が停止していた。
「そうだな。フェイトが出るんならお前たちも出るべきだろう?」
アスランからの追い打ち。
逃げ場がなくなった彼女らは、ともかく・・・アスランを恨んだ。

 

かくして、なのはとはやては多少の犠牲を払いながらも、
フェイトとアスランの水着選びという大義名分?を得たデートをこじつけた。

 

「けど、クロノ君は私とのデート、一人で誘ったのにねぇ?」
かくして現実に戻ってくると、クロノはエイミィに恥ずかしく忘れたい過去を赤裸々に・・・。
「はぁ、明日は仕事なんだ・・・しかし、なのはやはやても水着を選びに行くと聞いたが?」
「なのはちゃんはユーノ君と・・・はやてちゃんはキラ君と行くらしいよ?」
その組み合わせに、クロノは少し意外だな、と漏らす。
「なのははともかく、はやては意外だな・・・キラってキラ二等空佐だろう?」
「けど、はやてちゃんと同じ特別捜査官だからね。付き合いがないわけじゃないだろうし、まぁいいじゃない!」
何やら無理やり納得させられている気分だが、仕方がない。
ともかく、明日のデートを妨害などは仕事の都合上できなくなった。
クロノは残念そうにしながらも、るんるん気分のフェイトを見つめながら・・・大きくため息をついた。

 

翌日、海鳴公園の噴水の前でフェイトは時計を見ながらアスランを待っていた。
白いワンピース・・・長いスカートがフェイトの長い髪とあっており、
黒いパーカーが単純な色合いだがとても似合っていた。
髪の毛は普段と同じくおろしてストレート。そして末端をリボンでまとめていた。
フェイトは化粧などしなくても美人なのだが、今日はエイミィに言われて軽く化粧もしていた。
それがまた彼女をさらに可愛らしく、淡い化粧はまさに凶器にすらなりそうだった。
「まだかな~まだかな~♪」
そわそわなフェイトだが・・・時間はまだ九時半。アスランとの約束の時間は10時である。
そして、ここでお約束なのは、ナンパ・・・フェイトほどの美少女なら、男どもは単純に引き寄せられていった。
「ねぇねぇそこのかーのじょ!一人?俺らとお茶しない?」
三人の軽そうな噛ませ犬っぽい男どもがフェイトに群がる。
「あ、すいません。待ち合わせしてます」
だが、今のフェイトにほかの男たちのその気など眼中にすらなく、笑顔で言った。
「そんなこと言わずにさ~来るまで暇でしょ?」
「ね?ちょっとだけ」
お約束の口説き文句であるが・・・フェイトは普段男にそんなことを言われることがないので、マイペースに返事をする
「無理です。それに、知らない人とお茶に行けるほど暇じゃありませんし」
悪気はないんだが・・・男どものイライラゲージを上げるには十分な言葉だった。
「ああ!?」
「何お高くとまってんだよ!?可愛いと思って優しくしてりゃつけ上がりやがって!」
「ちょっとこっちこいよ!」
すると、男の一人がフェイトの手を引っ張る。

 

「あっ!」
イキナリだったので、フェイトは持っていたバスケットを落としかけてしまう。
今日のためにかなり頑張って作ったサンドイッチ・・・それを落とすわけにはいかないが、いきなり引っ張られてはいくら反射神経がよくても拾うことは無理である。
ゆっくりと地面に近づくバスケットをフェイトは必死の形相になり、手を伸ばすが・・・男どもが邪魔である。
(蹴散らしていいかな?)
などと、平和主義なフェイトが物騒なことを考え出した時・・・誰かがそのバスケットを落下前に拾ってくれた。
「おい?」
「あぁ?」
フェイトの手を掴んでいた男が、後ろから声をかけられたので振り向くと突然吹き飛ぶ。
「なんだぁ!?」
「誰だこの野郎!?」
吹き飛んだ男を見て、冷や汗を浮かべながらも残った二人は振り向いた。
「アスラン!」
フェイトはそこにいたのがアスランだったので、喜びの声を上げる。
「汚い手で、彼女に障るな・・・」
ドスの聞いた低い声に男二人はビビり後ずさる。
「な、てめぇ、なんなんだよ!」
男の一人はビビりながらもそう口にする。
「彼女の連れだ・・・今なら見逃してやるが、これ以上やるなら・・・覚悟してもらおうか?」
「ひ、ひぃ!」
「おぼえてやがれぇ!」
すると、二人は殴られ気絶した男を抱えて、その場を後にした。
「ごめん、待たせたな?・・・ていうか、早く来すぎだフェイト」
男どもがいなくなったことで、アスランはため息をついて優しい・・・だが、あきれ顔でそう言った。
「あ、ご、ごめんなさい・・・」
シュン、となってフェイトは俯く。
「・・・まぁ無事でよかった」
「あ・・・」
その一言に、フェイトは顔を上げる。
そして、アスランの顔を見ると、照れくさそうにしながら、視線をずらしていた。
「ふふ・・・ごめんなさい」
それが安心につながったのか、フェイトは少し笑ってからもう一度謝り、アスランの腕をとった。
「あ・・・ああ、さて、行こうか?」
「うん!」
アスランも笑みを浮かべ、フェイトと腕を組み・・・そこから歩き出す。
二人とも・・・特にフェイトは浮かれていたから、その時、その場にいた不穏な気配に気づけずにいた。

 

「こちらはやて、歩きだしました!どうぞ!」
キラリーン、と端っこが輝くサングラスをつけたはやては無線機に向かい、そんなことを言った。
「ザザッ・・・こちらキラ。了解、こっちでも確認しました。これより尾行を開始します。どうぞ」
同じく反対側に待機していたと思われるキラもはやてと同じようなサングラスに黒いスーツ・・・似あっているのが恐ろしい。
二人ともどこのSPなんだか。
「ママ~スパイだよ~!」
道を行く子供に後ろ指をさされるが、そんなことは気にしない。
「だめ!見ちゃいけません!」
しかし、その後の母親の言葉には「え?」と思うキラでもあった。

 

二人はショッピングモールにつくと、まずはウィンドウショッピングを軽く楽しんだ。
「ねね、アスラン!あれよくない?」
アクセサリー屋でフェイトは目についた鷹の翼をモチーフにしたアクセサリーを指さして子供のように言った。
「ああ、いい感じだな。けど、君にはこっちのほうが似合うと思うけど?」
そう言って、アスランはその三つ横にあった可愛らしい猫の顔があしらわれたプレートがあった。
「あ、これもいい!」
「・・・ほしいか?」
楽しそうに見るフェイトの横顔に、思うところがあったのか、そう聞いてみると。
「う~ん・・・けど、無駄遣いすると困るかもしれないから・・・また今度来た時に考えるよ」
と、控え目だが・・・残念そうな顔をしているのがわかった。
「ちょっと待ってて」
「え?」
アスランはそう言うと、一人店の中に入り数分間出てこなかった。
その間、フェイトは燦然と輝く太陽を見て「帽子持ってくればよかった」とつぶやいていた。
すると、店の扉が開く音を聞いてフェイトは振り返ると、アスランが紙袋を持って立っていた。
「これ」
その持っていた紙袋をアスランはフェイトに渡すと、少し顔を赤くして顔をそらした。
「え、アスラン・・・もしかして」
期待してしまう。
さっきの言動から予測できるとすれば、買いに言ってくれたのだろう。
開けてみると、やはりさっき自分が目をとられていた猫のプレートがあった。
「あ、アスラン!?」
「こ、こう言うのは・・・やっぱり、ほしい時に買うのがいいだろ?」
アスランは顔を合わせず、平常を保っているつもりなのか、そんなことを言った。
けど、フェイトはそれがうれしかった。
「・・・ありがと」
それは、彼からの・・・はじめてのプレゼントだったのだ。
好きになってから、長いこと仕事仲間を続けていたが、こんな風に出かけて、
何かをプレゼントしてもらうという経験はこれが初めてなのだ。
「嬉しいよ」
ギュッとその紙袋を抱きしめるフェイト。
そんなフェイトを見て、買った甲斐があったと感じているのか、
鼻の頭をかきながらアスランは燦然と輝く太陽を嬉しそうに見つめていた。

 

「こちらキラ。いい雰囲気です。どうぞ?」
電柱の陰に隠れながら、アスランとフェイトを見てキラは無線機に話しかける。
すると、やはり反対側にいるはやてはそれを拾う。
「こちらはやて。確認しましたどうぞ」
今更だが、二人の目的はアスランたちと同じはずなのである。
しかし、野次馬根性旺盛なはやてとアスランをいじりたい
という思いがあるキラはカメラを持って彼らをつけることにしたのだ。

 

次は、今流行りだと言って、フェイトがアスランを引っ張り映画に。
映画の内容は超絶アクション!ということなので、映像美などをアスランは楽しんでいた。
実は、その間に、フェイトが何度も手を握ろうと模索していたのを彼は知らない。
丁度彼女が勇気を出して手を出そうとした瞬間にアスランが
「おお!!」と言って拳を浮かせ握るから、手も重ねられないのだ。
フェイトは若干涙目でしょんぼりしていた。
それでも、隣で楽しそうに映画を見るアスランの横顔が見れて、それだけで眼福ではあったのだが。
(来て良かった・・・ホントに)
軽く頬を染めた彼女は今とても魅力的だったのだが・・・アスランはそれよりも映画に夢中という悲劇であった。

 

映画が終わると、ちょうどお昼時ということもあり、公園に戻りベンチに座ってバスケットを広げた。
「昨日の夜から仕込んできたんだ~♪ほら、アスラン」
手渡しでサンドイッチを渡され、アスランはおずおずとしていたが、フェイトがせっかく持ってきたので、食べないわけにもいかない。

 

そして・・・。
「こちらキラ、二人は昼食に入った模様。どうぞ」
「確認しました・・・私らも昼食にしぃひん?どうぞ~」
ここまでつけてきていた二人もやはりお腹がすいたのか、
持ち場?を離れ合流しアスランたちに気づかれない場所で昼食をとることにした。

 

「おいしい・・・フェイトは料理もうまいんだな?」
アスランはひとつめのサンドイッチを食べてそう漏らした。
「そうかな?料理はするときはするんだけど・・・管理局の仕事が忙しいから、自信がなかったんだけど」
アスランが褒めてくれたことがうれしいらしく、フェイトは恥ずかしそうにそう言った。
「そうなのか?けど、ホントおいしいよ?」
その一言に、さらに顔を赤くするフェイト。
てれ隠しと言わんばかりに、自分も一つパクッと口にくわえた。
上出来だ、と自分でも納得し、アスランの頬張る姿を見つめていた。

 

昼食を終えると、二人はお茶を飲んでふぅ~っと一息。
「ごちそう様」
「お粗末さまでした」
まるで、熟年夫婦のようなやり取りをする二人・・・ある意味天然同士の会話である。
「さて、じゃあ行くかフェイト?」
立ちあがって軽く伸びると、アスランはフェイトのほうを向いて手を伸ばす。
「うん!」
アスランの手をとり、立ち上がるとフェイトはやはり嬉しそうに腕を組んだ。

 

所変わって、ここは・・・高町家。
なのはの部屋でなのはとユーノは待ったりしていた。
「ユーノ君とお休み一緒に過ごすの久々だね~?」
「そうだね。僕はほとんど休みないから、なのはと会うのが久しぶりの気がする」
若干苦笑いでなのはが笑うと、ユーノがうなだれる。
「10年前のことを思い出すと、いろいろと恥ずかしくなるね?」
ふと、そんな話題をうなだれながらユーノは口にする。
「あ~・・・確かに、ねぇ。小学3年生とはいえ、同じ部屋に寝泊まり・・・といっても、ユーノ君はフェレットだったんだけどね」
「アハハ、そうだ・・・ねぇ?!」
突然、何かがユーノを襲う。
それは、投げられた・・・小太刀だった。
「あ、はは・・・あははは・・・や、やだな。死んじゃいますよ・・・恭也さぁん?」
顔を青くして、目の前の刃を見つめるユーノ。
なのはの部屋の扉はいつの間にか開いており、そしてそこには・・・妹溺愛歴19年の兄高町恭也が立っていた。
「フフフ・・・俺はまだ、赦してないからね?ユーノ君」
いい笑顔で殺気をぶつけてくる恭也に、ユーノは命の危険を割とマジで感じて顔色はさらに悪化した。
「なのはの寝室に動物の姿をとって出入りしていた淫獣。まさか愚かにもこの高町家の敷居をまたぐとは」

 

「いや、だからその・・・あの・・・」
「お兄ちゃん!とりあえず落ち着いて!」
「止めるななのは!今日こそ俺は、お前のことをいやらしい目で見ていたこの男を・・・」
ジャキ、ともう一本小太刀を取り出し、恭也は笑顔から鬼気迫る顔に変わる。
「死んでいただけますか?」
なぜに敬語、というツッコミを入れる余裕はユーノにはなく、なのはとともに脱出。
その際、運の悪いことになのはの胸をユーノの手が思いっきり掴んでいたのだが、
なのはは気にせず、ユーノは気づいておらず、恭也は・・・はっきりと視認していた。
「ユゥウゥゥゥゥゥゥゥゥノォォオオオオオオオオ!!!」
一匹の獣を本気にさせるのはそれだけで充分であった。
今、最強の獣が淫獣に迫る。

 

はたまた、はやてとキラは。
「ホントはやてが料理上手だっていうのは周知の事実だけど、僕はいまだに意外感が抜けないなぁ」
お茶を飲みながら、はやての作った昼食を食べ終わって頭の中に浮かんだ感想を口にする。
「それ、どういう意味や?」
しかし、それを口にしたとき、まさかはやてが反応するとは思わず、キラは「やばっ」と冷や汗を浮かべる。
「キラ君?」
はやてもまた笑顔だが・・・どうして、こう言うタイプは笑っている時のほうが怖いんだろう?とキラは後ずさっていた。
「べ、別に深い意味は、な、ないよ?そ、そうだ!おいしかったよ?君の作ったご飯!」
ごまかそうとしているのだが、相手ははやて・・・そんなごまかしは通じない。
「おいしいのは当たり前やん?私が作ったんやで?それよりも、意外感ってどういう意味や?」
言うにことかいて口走るはやてにキラは逃げ場ナシ?と震えた。
「・・・一生懸命作ったんやさかい」
すると、一瞬はやてはキラから顔をそむけ、ぼそりとそんなことを呟いたが、あいにくキラには聞こえなかった。
「もぉ~!」
そして、ガツン!と弁当を入れていた籠でキラの頭をぶったたいた。
「あ・・・僕らは、どうしてこんなところまで・・・」
それは君が主人公だった時のセリフ・・・って結局後のも主人公だったか。
「さぁて、キラ君。いつまでも寝てんと、はよし~」
気絶しかかっているキラにはやては容赦なく足を引きずって、今回の主目的である水着が置いてある店に向かった。
「あ、イタッてかアツイッ!ちょ!はやて!」
キラは意識を取り戻し、自分で歩く!と言いたいが、はやては無視してしばらくキラを引きずった。

 

かくして、話はアスランとフェイトに戻る。
アスランとフェイトは、有名かつ人気のある水着ショップに来ていた。
「うっわ~いっぱいだねぇ?」
その店は広く、多種多様な・・・一般向けからマニア向けなものまで・・・しっかりと用意されていた。
だが、ここは普段女子がグループで来るような場所。
そこに男であるアスランがいれば・・・目のやり場に困るというもんだ。
「あ、あのフェフェ・・・フェイト?!」
すっかり声が裏返ってしまい、動きがギクシャクしているアスランをフェイトは
そんな訴えを無視(というか聞いてない)して引っ張り奥に進んでいく。
哀れアスラン!
すると、店員らしき女性が二人に近寄ってくる。
「いらっしゃいませ。水着をお求めで?」
営業スマイルを浮かべて、アスランとフェイトを見てからお決まりの言葉を口にした。
「ええ。一番新しいのってどこにありますか?」
フェイトも笑顔で対応すると、そんなことを聞きだして、アスランはまたもシドロモドロだ。

 

「こちらになりまーす!」
店員に案内されれば、明るい色からクールなっ!というポップが張ってあった。
「どうもありがとうございます」
フェイトはスマイルを浮かべたまま、水着選びに取り掛かる。
「あ、これ可愛い・・・ね、アスランどうかな?」
体に合わせて水着を見せてくるフェイトに、アスランはビクッと反応し、それを見る。
黒いビキニ・・・明るい花柄の腰巻がついたソレをアスランは直視して、思わずフェイトのそれを想像し、顔を赤くする。
「あ、あ、そう、だな!に、似合うかも、な!」
「じゃあ試着してみるね♪ちょっと待ってて!」
先ほどの想像が現実になる、とアスランの胸の中で期待が・・・あふれるはずもなくむしろ動揺が増えただけであった。
フェイトは選んだ水着を持って試着室に入ると、アスランは一人になってしまい、
どうしていいやら、とりあえず近くにあった柱にもたれて、フェイトを待つことにした。

 

「アスラン、顔真っ赤だった・・・フフ、可愛いところもあるんだ」
フェイトは試着室に入ってから、アスランの反応を楽しんでいたが、ここに入るまで笑うのを必死にこらえていた。
「フフフ・・・ホント、おかしい」
だが、そんな今を感じてフェイトは幸せだなぁ、と思った。
家族といる時の自分も幸せだけど、今アスランとこうして笑い合いながら過ごせる時間が幸せであると感じているのだ。

 

しかし、幸せとは程遠い無限書庫司書長はというと。
「淫獣ぅぅぅぅぅぅぅどこいったぁぁ!?」
いまだに恭也に追い回されていました。
「ねぇ、なのは・・・恭也さんは、いつになったら僕らのこと認めてくれるのかな?」
ユーノはそんな恭也を上空30メートルの位置からなのはとともに見つめていた。
「ん~・・・いつかは、認めてくれるよ♪・・・まぁ認めてくれなかったら、全力全開で・・・」
「な、なのは・・・容赦はしようね?」
隣にいる少女もまた、下で叫んでる人の血縁者なんだなぁ、とユーノは改めて感じた。
「そう言えば、フェイトは今頃どうしてるかな?ザラ執務官とデートなんでしょ?」
「あ、うん!水着コンテストの水着選びに行ってるよ。私たちは明日行こうね?」
「うん。三日間は有給とってあるから、ちゃんと付き合えるよ」
ユーノの言葉に、なのはは「ありがと♪」と言って、頬に口づける。
だが、その瞬間・・・。
「そぉこぉかぁぁぁぁぁぁ!!」
なんと恭也が上空30メートルにいるなのはとユーノ(なのはがほっぺにちゅーシーン付き)を見つけ、ハイジャンプを敢行した。
「うぞっ!?」
ユーノは人間離れした・・・というか、もう人間じゃないよ!?と叫びたくなる行動をする恭也にとりあえず、驚愕の言葉を漏らした。

 

「今、ユーノ君の悲鳴が聞こえた気がするわ~」
のほほん、とはやてはベンチに座りアイスコーヒーを飲んでいた。
「高町一尉のご家族ってそんなに娘離れしてないの?」
「キラ君は知らんもんな~・・・あの人間離れしたお兄ちゃん。見たら、現実逃避したくなるで?」
そんなに!?とキラははやてを見るが、嘘をついていないことがわかり、ある意味好奇心が湧いていた。
「で、水着はそれでいいの?」
「うん♪私は胸フェイトちゃんほどないからな~」
自分の胸を触って少し悔しそうにしているはやてに、キラはほほ笑んで、頭をなでた。
「別にいいじゃない?大きいだけが魅力じゃないよ?」
そう真顔で言われると、ツッコミを入れにくい、とはやてはキラを睨みながらも、それもそうか、と納得することにした。
すると、はやてはニヤリと笑みを浮かべ、たぬきの耳としっぽを生やしこんなことを呟いた。
「キラ君はちっちゃい胸がすきなんやな~?」

 

「ち、違うよ!僕は!」
普段、アスランばかりいじっているから、自分がいじられることに免疫がないのでその辺はアスランと同じくシドロモドロだ。
「あははは~ムキになるのがあやしいなぁ♪」
こ憎たらしく笑うはやてに、キラはむっとして・・・反撃に出る。
「まぁ僕も大きいのは好きだけどね!」
「・・・じゃあ、キラ君は私のこと、タイプじゃないん?」
ドキッとした。
反則的なほどに可愛く言うはやてに、キラは一気に顔を紅潮させた。
「そ、そんな、そんなことないよ!はや、はやてはかわいいいしぃ、えと、その、あの!」
錯乱しつつ、キラは言いたいことを言おうとするのだが、そこでクツクツと笑い声が聞こえて押し黙る。
「・・・ププ・・フフ」
声を押し殺してはいるが、それでも聞こえてくる笑い声。
そして、キラは気づく・・・からかわれている、と。
「はやて・・・君」
「アハハハハ!キラ君は可愛いなぁ?私より可愛いやん?性転換でもする?」
冗談半分、本気半分なはやての言葉に、キラは冷や汗をかきながら「遠慮します」と声を絞り出した。
「・・・フフ、遠慮せんでええんよ?」
キラの顎に手をやり、つぅーっと撫でるこのセクハラ大王に、キラはパシッと軽く手をはたく。
「冗談はやめなさい」
はやては「え~」と抗議の声を上げた・・・本気だったの?とキラは冷や汗を浮かべる。
「で、ここから見えるアスランは・・・うわ、もう目を閉じて待ってるよ?クールぶってるよ?」
そう、キラとはやてがいる場所はちょうどアスランとフェイトが入店した店が一望できるのだ。
「フフフ、アスラン君も可愛いなぁ・・・ホンマに」
はやては手をワキワキさせながら、危ない目でアスランを見ていた。
そのはやてを横目で見るキラはいつか、身の危険が訪れてもいいように警戒は怠らないよう心がけた。

 

(フェイト~まだか~)
声には出していないが、心の中でアスランはフェイトが声をかけてくれるのを必死に待っていた。
すると、パシュ、とカーテンの開く音が聞こえたので、アスランは目を開けると・・・。
「どう?」
水着姿のフェイトがいた・・・予想以上の破壊力に、アスランはさっきより顔を赤くして。
「あ、ああ・・・似あっ・・・てる・・・よ」
バタン、と倒れた。
「アレ?アスラン?アスラーン!?」
そのまま水着姿でフェイトはアスランに近寄り抱き上げるが、アスランは完全に気絶していた。
仕方なく、フェイトは店員さんに少しの間アスランを預け、そして着替えてから
水着を購入し、アスランをその店の事務室のソファで介抱していた。
それから数十分後。
「う、うぅん・・・あれ、ここ・・・は?」
アスランは頭の下に何か柔らかいものを感じつつ、目を開ける。
すると、フェイトの顔が最初に目に入った。
「あ、起きた?アスラン?」
「・・・あれ?」
そこから、頭が回転し始め、頭の下にある柔らかい感触はフェイトのふともも・・・
つまり、自分は今膝枕なる物をしてもらっているということ。
「う」
「う?」
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
そして、アスランはそのまま起きようとしたのか、逃げようとしたのか無理やり体を動かしたため、体勢を崩した。
「あ、ちょっ!」

 

同時にフェイトもなぜかバランスを崩し、アスランとともに倒れてしまう。
「アイタタ・・・って、うぁ?!」
お約束、と言えばいいのだろうか?
アスランは今、倒れたフェイトに覆いかぶさるような形になっていた。
「あ・・・えと」
フェイトも恥ずかしそうに目をそらす。
そして・・・またもお約束であるが、ガチャとドアの開く音がする。
「お客様~?大きな音がしまし、た・・・が・・・」
女性店員はドアを開けた状態から固まった。
そして、すぐに強制起動し、ただ一言。
「失礼しました~」
棒読みでそう言うと、ドアは再び閉められた。
しばし、静寂は流れたが、アスランは今やるべきことをはっきりとさせた。
「と、とりあえずごめん!!」
大きな謝罪の声とともに、アスランはフェイトから退き、フェイトを立ち上がらせる。
「フフ・・・おかしいね、いつも一緒に仕事してるのに」
「え?」
「こう言う雰囲気になると、こんなにも恥ずかしくなる」
フェイトがそう言うと、アスランも確かに、と納得する。
「けど、この気持ちも貴重なんだよね・・・今、お互いを感じてるって証拠だから」
それが、アスランには悲しく聞こえた。
いつも一緒に仕事をする・・・それが、もしできなくなったら自分たちはどうなるのだろう?
そう思うと、確かに怖くなる。
だから、アスランは・・・フェイトにこう言った。
「じゃあ、仕事以外でも一緒になれるように・・・もっと、頑張ろう」
「え・・・?」
「・・・きっと、もっと頑張れるさ」
アスランはソファに腰かけてそう言った。
そう言った時、彼はフェイトに対する認識を改めていた。
自分は彼女のことが・・・・・・と。

 

それから、その店を足早に後にすると、アスランはフェイトが持っている紙袋に目が行った。
「それは?」
「さっきの店で買った水着!アスランが似合うって言ってくれたから」
とてもうれしそうに言う・・・こんな彼女を見るのは今日で二度目だった。
昼間にアクセサリーをプレゼントしたとき。
アスランは自分が彼女にこう言う顔をさせて上げられた、と少し誇らしかった。

 

それから、二人は最初に待ち合わせた公園に来ていた。
この公園からは海鳴から見える海が綺麗で、夕日に染まっていた。
「綺麗だな?」
「・・・うん」
だけど、二人が見ているこの光景はどこか、儚げだった。
「変化を嫌っても仕方ないけど、やっぱり変わるのはいやだな・・・
たとえすべてが変わってしまっても、この風景だけは、このままであってほしい」
アスランは本心でそう語った。
だから、フェイトはこう返した。
「大丈夫。きっと・・・だから、また二人でここに来ようね?」
優しく微笑んで、アスランを見つめた。
あまり身長に差がない二人は、ちょうどいい目線である。
そして、フェイトはゆっくりと目を閉じた。
アスランも彼女が何を求めているかを察し、彼女の肩に手を置いた。
夕陽のせいではなく、二人の頬は赤く染まっている。
そして、二人の影は・・・ゆっくりと、優しく重なった。

 

かくして、彼らのデートは終わった。
アスランとフェイトはそのまま手をつないでハラオウン家に帰った。
もちろん、アスランは家の前までフェイトを送るだけであったが、最後に二人は
もう一度重なり、そして「また、明日」とフェイトに告げ、アスランは転移魔法を使い、その場を後にした。
フェイトは家に帰ると、エイミィに意外そうな声を上げられた。
その理由は・・・今夜は泊まりだと思っていた、とのこと。
それにはフェイトも顔を真っ赤にしたのでした♪
「おしまい」

 

オマケ。

 

後日、海鳴市海鳴公園にて二名の男性が・・・某北○の拳の兄と弟決着シーンのように
拳を空に突き出して気を失っているのが発見されました。
一人は、海鳴市でも人気の喫茶店“翠屋”の高町恭也さんと判明。
もう一人は、身元確認が済まず、いつの間にかいなくなっていたとのことです。
なお、身元不明者の病室からはフェレットのような動物の足跡が発見されており、
事故の近くでフェレットを飼う人はおらず、関連性があるかどうかを調べるとのこと。
高町恭也さんのほうは全治二週間・・・全身打撲で、いったい何をすればこうなるのか、
などと医者からの発表では原因不明のケガということになっております。

 

「・・・な、なのは」
ユーノは管理局のベッドで目の前にいるなのはに呻くように問いかけた。
「ケンカ両成敗っていうよね?」
「ケンカじゃ・・・ない・・・よ」
ガクッとユーノはそのまま意識を閉ざした。

 

「あ、あれ?俺たちの出番は?」
「仕方ないわよシン。本編まだ終わってないもの。私たちの出番、あると思ってたの?」

 

オシマイ、なの♪