SCA-Seed傭兵 ◆WV8ZgR8.FM 氏_古城の傭兵(仮)_第01話

Last-modified: 2009-04-27 (月) 23:04:55

 かつて黒い森と呼ばれた森林地帯。
その樹木の縁に、ザフト軍の基地があった。

 

 再びのNジャマー投下、通称「正義の断罪」「平和の為の指導」「自由の執行」の混乱の最中
カーペンタリアと同様資材を衛星軌道から投下して建造された中規模の補給基地。
 大型の整備場や品揃えが豊富なPX(酒保)、更には小規模なMS部隊も配置されており、
補給基地という名称が名目なのは間違いが無かったが

 

 またこの基地には、近隣の住人を"説得〟によって排除し、獲得した広大な土地があった。
そこは主に地球に降下したばかりの新兵の訓練、"志願者”を使っての新兵器実験等に用いられている。
そのフィールドに、閃光が奔っていた。

 

『落ちろよ雑魚が!』
『ナチュラルがたった一機でここに立ち入った事、その命で償うんだな!』
『死ねよ! 下等生物!』
 それぞれのパイロットの罵声と共に、教習用のジンたちがマシンガンを乱射する。
FCSの補正がある割りには狙いは乱雑極まりなく、お世辞にも上手いとは言えなかったが。
だがそんな乱れ切った射撃も、四肢を破壊され、鉄柱に縛り付けられたダガーには十分だった。
 為す術も無く火線に晒され、雨が砂の城を削るようにガリガリと弾丸を受ける。
このウィンダム、数日前に哨戒に当たっていた部隊が捕獲したものだった。

 

今現在も、ダガーのコクピットには搭乗者が乗り込んでいる。

 

これは言わば、教練の名を借りた公開処刑だった。

 

『ひゃははははははッ! 死ね死ね死ね死ね死ね!』
 嬌声を上げ、トリガーを引き続けるジンのパイロット達。
元より高いとは言えないザフト軍兵士の質。
ザラ、カナーバ、デュランダル時代は比較的マシと言えるものだったが、
平和の歌姫が議長に就任して以来、その質は着実に悪化の一途を辿っていた。

 

彼女とその信奉者達が掲げる「自由・正義・平和」の名の下に。

 

『まだ落ちねえのかよ……しぶといな』
『ナチュラルってのは生命力だけは一級品だからな』
『本当、害虫なみだよな!』
 弾が切れたマシンガンを後ろに放り投げ、腰部にマウントされていたバズーカを構えながら、
口々に言うパイロット達。

 

 その姿を、遥か後方から見つめる真紅の瞳があった。

 

『じゃ、これで終わりに――』
してやるよ、と呟きながらバズーカのトリガーを引こうとしたそのパイロットの声が、中途半端に途切れる。
頭の上に疑問符を浮かべながら傍らのジンがそのモノアイを回らせる。

 

その通信を行ったジンは、立っていた。
確かに、数分前と変わらぬ姿で。

 

そのコクピットハッチに綺麗な穴が開き、焼け焦げた煙を上げていること以外は。

 

『な、な――』
 なんなんだと叫びを上げる間も無くそのパイロットの意識が断ち切られる――永遠に。
彼の身体は、横一文字に走った閃光によって機体ごと上半身と下半身が泣き別れしていた。

 

 最後に残ったジンのパイロットが漸く気がつき、その襲撃者の姿を見る。
彼の目に映った物は、Gタイプやザフト軍のMSに比べると遥かに無表情な顔を持ったモビルスーツ――
――ウィンダムだった。

 

『お前、よくもやりやがっ――』
バズーカを投げ捨て、左腰に差されていた重斬刀を抜刀し、態々ポーズまで決めるジン。
が、大振りな動きが仇となり逆に懐に潜り込まれ、ウィンダムが振り抜いた
ビームサーベルによってコクピットを串刺しにされ、沈黙した。

 

『て、敵機侵入! モビルスーツ隊は迎撃にあたれぇッ!』
『なんなんだアレは! 連合か!?』
『機種特定――ウィンダムです! 正規軍の物では在りません!』
ようやく反応した基地の人間が騒ぎ始めた。
これは演習ではないと叫ぶ管制官の声に、赤いウィンダムのパイロット――
――赤い瞳の男は口角を吊り上げた。

 

「――悪いけど、仕事なんでね」

 
 

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