SCA-Seed傭兵 ◆WV8ZgR8.FM 氏_Project:Media Control 外伝

Last-modified: 2009-04-11 (土) 22:28:06

なるほどな……最近はこういうのが流行ってるのか……

 

中世の城跡を利用したゲリラの拠点。
その中庭に片膝を着いているスローターダガーのコクピットで、
ディスプレイに表示されたとある画像を眺めながらとある傭兵が呟いた。
茶色い髪が揺れる。
ディスプレイに映し出された画像には際どい衣装を纏った真紅の瞳の女性が
大胆なポーズで大写しになっていて、ただでさえはちきれそうな肢体が更に強調されていた。

 

眺めているとある傭兵、その相棒にプラント時代の上司から届けられた大型のダンボール箱。
“極秘”と印刷されたその箱がどうしても気になり、サブリーダーとして
確かめる義務があると己に言い聞かせて開封し、
その中身を覗き込んだ彼女の瞳に真っ先に映ったのが、
現在起動しているこのPCゲーム(お試し版)のパッケージだった。

 

そのPCゲームのキャラクターのサンプル画像。
悪側のキャラクターとしてデザインされ、立絵の横には「ツンデレにデレはいらない」のキャッチコピーと
このキャラクターに最もマッチしているだろうバーチャルアイドルの名が綴られていた。
なるほどねぇ……アイツはやっぱりこういうのが好きなのか……
再び呟き、視線を下に下げる。

 

――勝った。

 

何処かの死を呼ぶノートの主人公のようにニヤリと笑う傭兵。
視界の八割を、豊かに育った双丘が覆っていた。

 

ニヤけてるわよ、小娘……不気味ね

 

不意に入った通信音声に傭兵が眉を顰める。
サブウィンドウに、緑の髪の女性の顔が表示されていた。

 

年増こそ口角が吊り上ってるよ?……考えてることは大体同じだろうにさ
……スポンサーの一人に対して酷い言い草ね……あの子の相棒とは思えないわ
ま、後半は間違っていないけれどもね。そう言って緑髪の女性は口角を更に吊り上げた。
傭兵は舌打ちしながら小声で「……牛乳年増が」と呟きながら手元のコンソールを操作し、
ウィンドウをスクロールさせた。
キャラクターが画面からフェードアウトし、そのページの最下段の、開発元の表示された欄に目をやった。

 

そこに表示されている総合企業の名を眺め、そのアドレスに向けてあるメールを送信する。
スポンサーの女性も同時に同じことをやっていた。

 

これで片はつくな。あとは……
わかってる。あの子――シンにもう一度教えて上げないといけないわね……

 

――飼い主が、誰なのかということを。

 

ふふ、と同種の笑みを浮かべる傭兵と女性。

 
 

同時刻。
拠点の厨房にて料理を作っていた青年が、背筋に走った怖気に身を震わせていた。
「……嫌な予感がするな……逃げたほうがいいか?」