SCA-Seed_MOR◆wN/D/TuNEY 氏_EX07

Last-modified: 2009-10-03 (土) 00:50:51
 

ちょいと実験的に投下。

 
 

メサイア戦役後、シンは命を狙われ、愛機と共にザフトから脱走した。
シンが嫌っていたかつての上官、アスラン・ザラと同じ選択をしたのは皮肉と言うべきか否か。
だが、アスランと違い、シンには後ろ盾となる勢力も、助けを求める友人もいなかった。
数年に渡り、逃走を続けていたシンの前に新たな刺客が現れる。
それは、シンにとって思いもしない相手だった。

 
 

「何の冗談だよ……こいつは」
地に伏せたデスティニーは天を見上げる。

 

「面白い趣向だろう? シン・アスカ」
年老いた男の声と共に複数機のMSがデスティニーの前に降り立つ。
カオス、アビス、ガイア、セイバー。
かつての大戦で喪失された筈の、ザフトセカンドシリーズの亡霊。

 

だが、亡霊は機体だけではない。

 

「よぉ、シン。 久しぶりだな……悪いが死んでくれ」
「シン……消えて」
「せめてもの情けだ。 俺が殺してやる」
「お兄ちゃん、お兄ちゃんは生きてちゃいけないんだよ」

 

セイバーを駆るハイネ、
かつてと同じくガイアに座するステラ、
カオスを操るレイ、
アビスに乗ったマユ。
4機は銃口をデスティニーへと向ける。

 

「……カーボンヒューマン」
音がするほど奥歯を噛み締め、シンは吐き捨てるように言った。
クローニングと記憶の刷り込みで擬似的に死人を蘇らせる外法についてシンも聞き覚えはあった。

 

「くくく、親しい人間に殺されるのはどんな気持ちだ?」
聞く人間に不快感を与える下種な笑い声を男は上げる。
声こそ聞こえるが隠密用シルエット装備のインパルスに乗っているのか、その姿は見えない。
優位な立場に立っている為か、男はひどく気分が良さそうだった。

 

追い詰められているのが自分だとも気付かずに。

 

「……ごめん」
「なんだぁ? 命請いか?」

 

ごめん、みんな。 なるべく痛みは感じないようにするから

 

「はっ?」
今にも泣き出しそうな顔で呟いたシンの言葉を、男は理解出来なかった。
いや、その場でシンと相対する者の全てがシンの言った事の意味が分からなかった。

 

何故なら、彼らが知るシン・アスカは、その知識は数年前のシン・アスカの物だったから。

 

その事実を理解する前に、デスティニーは彼我の距離を瞬時に詰めていた。
アロンダイトの一閃により、セイバーの胴が真っ二つに分かたれる。

 

「えっ?」
続けて、振り向きざまに放たれたフラッシュエッジIIがガイアのコックピットを刺し貫く。

 

「嘘」
畳まれていた長距離ビーム砲が展開、
瞬きと共に正確にコックピットのみが貫かれたアビスがその場に崩れ落ちた。

 
 

「馬鹿な! お前は自分が何をしたか分かっているのか!?」
シンの蛮行とも言える行為にレイが声を上げる。
「ああ、分かっているさ。 レイ」
長距離ビーム砲を折り畳み、アロンダイト、フラッシュエッジを回収すると
デスティニーは何も持たず、カオスと相対する。
オイルと粉塵にまみれたデスティニーは、放熱口から立ち上る陽炎で幽鬼の様にも見えた。

 

「お前は、お前は本当に、シン・アスカなのか?」
オリジナルレイの記憶との相違に、レイは驚きを隠せず、シンへと問い掛ける。
「お前は自分の手で大切な人を殺したんだぞ!?」
「ああ、分かっている。 何年か前の俺なら、きっと別の方法を選んでいたんだろう。
 だが、今の俺には、この道しか選べない……!」
アロンダイトを正眼に構え、デスティニーはカオスに向け光の翼を展開、狙うはただ一つ。
「俺は……死なない。 死ぬのはお前だ! シン!」
機動兵装ポッドがカオス本体から分かれ、後方からデスティニーを襲う。

 

「今から俺は、お前の命を奪う。 だが、俺は謝らない。
 レイ、お前、お前達は俺を恨んでくれて良い。
 ……そうすれば、俺はみんなの事を忘れられなくなる」

 

左手のみでアロンダイトを振り回し、機動兵装ポッドのビームを切り払った。
既に彼我の距離は僅かだ。
デスティニーの右手が輝く。 パルマ・フィオキーナ。
掌の槍と言う意味を持つ、ザフト技術局の野心作にして、今現在のデスティニーの切り札。

 

「先に逝ってくれ。 俺も、すぐに行くから」

 

感情の感じられないシンの声と共に、デスティニーの右手がカオスのコックピットを握り締め。
次の瞬間放たれた、高出力ビームによってカオスの上半身は跡形もなく消し飛んだ

 
 
 

「ふぅ……さっきの奴、聞こえてるだろう。 それとも声も出ないか?」

 

肩で息をしていたシンは、呼吸を整える事もなく、抑揚のない、
しかし静かな怒りの感じられる声で外部へと話し掛ける。

 

「俺は、あんたがどこの誰かも、目的も知らない。……だから、二つだけ言っておく」

 

ここではじめて、深呼吸をすると、シンは肺に新鮮な空気を送り込む。

 

「今からは俺が攻撃する番だ。 ……それともう一つ。

 

 これだけ舐めた真似して、楽に死ねると思うな!

 
 

それは反撃の咆哮。 シン・アスカが逆襲の狼煙を上げた瞬間だった。

 
 

そして続かない。 

 
 

本編の続きを書いている途中、某所でヴァストレイのネタバレを見て、ついカッとなって書いた。
今は、そこそこ反省している。
しかし、CE最凶のあの男まで復活とは……ヤバイですね、ライブラリアン。
アブナイヨ、モウスコシデネタカブリニナルトコロダタヨ