ある日の夕方、キッチンに向かうみさえとルナマリア
みさえ 「さて、夕食の準備、まずは大根のお煮付けから始めますか」
ルナ 「今日はひろしさんも早く帰ってきてますから急いで作っちゃいましょうね」
みさえ 「ええ、あれ?包丁が錆びてる……そうか、昨日塩魚を切って洗うのを忘れてたわ……
どうしよう、研いでたら遅くなっちゃうわ」
ルナ 「みさえさん、ここはあたしにまかせてください。じゃじゃじゃーん」
みさえ 「なにそれ? 新体操のリボン?」
ひろし 「なんかどっかで見たような……」
しん 「オラもすごくそんな気がするゾ」
ルナ 「ふっふーん。このリボン、見た目はただのリボンですが……なななーんと!一振りすればこのとおり!」
ひろし 「げっ! 大根がまるで豆腐のように!」
しん 「おお~。母ちゃんの足のように太い大根がところてんのように!」
みさえ 「なんですってぇ!!」
ゴキーン!
シン 「すごいなルナ、けど輪切りしかできないのか?」
ルナ 「とーんでもない、手首の返しひとつで、銀杏、短冊、賽の目、どーんな切り方だってオッケーよ」
しん 「父ちゃん、これってもしかして……」
ひろし 「うん……なあルナちゃん、それってどこで手に入れたの?」
ルナ 「通販で買ったんです。えーっと、このチラシ」
これであなたも家庭の主婦から華麗なるキッチンの舞姫に早代わり! これ一本であなたの台所は包丁いらず! 新体操格闘術の使い手《マホ》おすすめの一品です!
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ひろし 「やっぱり……」
しん 「あのおねいさんたちしっかりしてるゾ」
シン 「いや、そんなことより刑務所の中から通販していいのか?」
むさえ 「へー、あたしもこれほしいわ」
ルナ 「なーにをいつまでもごちゃごちゃ言ってるの?
キッチンは女の戦場なんだから男(と、役立たず)はさっさと出てった出てった!」
みさえ 「そうよ邪魔よ邪魔!
あ、そういえば色違いがもう一本ついてくるのよね、あたしにも貸してちょうだい」
ひろし 「……って、結局それで作るのかよ」
しん 「母ちゃんが?……なんかいやな予感がするゾ」
その後……しんのすけの予想どおり、不器用なみさえのせいで調理は遅れに遅れ、結局半分はインスタントになってしまったんだそうな……
※ ※ ※
【かすかべ刑務所】
マホ 「うーん、売り上げは上々ね。
今日だけで注文が12件、無理してかすかべ全域にチラシを撒いてもらった甲斐があったわ」
ホステス1「これもヘクソンさんのおかげですね」
ホステス2「ええ、あの人が活躍して、さいたま県警のウズミっていうお偉いさんに直訴してくれたから」
ホステス3「売り上げをすべて保釈金に回し、残りは福祉に寄付するっていう条件で」
ホステス4「刑務所内からの商売を特別に許可してくれたんですよね」
マホ 「あいつがどういう風の吹き回しかは知らないが、
我らたまよみ族は転んでもただでは起きないのを見せてあげようじゃない」
玉王ナカムレ「ええ、じゃあがんばってわての分の保釈金もかせいでくださいな。
そんでみんなそろってあの銀座のクラブに帰りましょ」
マホ&ホステス軍団 「おおーっ!!」
マホ 「……って、ママも手伝うの!!」