10月に入ったばかりのとある日曜日。あ~くえんじぇる☆にて……
シン 「……ステラの様子がおかしい?」
ムウ 「ああ。最近やけにボーとしてたり、それにこそこそ隠れてなにかやってるみたいなんだ」
しん 「まあステラおねいさんがぼーっとしているのはいつもの事だと思うけどね~。
うちのむさえちゃんやルナおねいさんと同じみたいですなあ」
ムウ 「え、そうなのか?」
シン 「ええまあ……なんかこのところ妙にそわそわしたり、あさっての方向見ながら頬赤らめたり。
なんだろうなーとは思ってはいたけど、聞いても答えずに逃げちまうんだよな」
ムウ 「うむぅ……まさか……まさかとは思うが」
シン 「な、なんですか?」
ムウ 「うちのステラやルナマリアにむさえさん……他に好きな男でもできた、とか?」
シン 「え、ええ~~~~!?」
しん 「ほうほう。むさえちゃんはともかく、
煮えきらないシン兄ちゃんの態度についに2人ともおあいそを尽かしたわけですな~
で、他にいけめんな彼氏を作って、こっそりあらびきしていると?」
ムウ 「可能性としては否定できんがな……それにしんのすけよ、それを言うなら『逢引』だろ?」
しん 「おお~。そうとも言う」
シン 「そ、そんな……ルナもステラも俺のそばから居なくなっちまうってのか?
そんな……そんなあ……」
しん 「う~ん。シン兄ちゃんにとってはかなり深刻な事態なようですなあ~」
ムウ 「……よし! なら今日はステラ達の行動を、それとなく影から見張ってみるか。俺も気になるしな」
シン 「そ、そうですね! 俺も付き合います!」
しん 「おおう、なんか面白くなってきましたなあ♪」
そして……もうすぐ夕刻になろうとする午後4時頃。
ルナマリアがまわりを気にしながらコソコソと野原家を出た。
その様子を監視していたシン達はすかさず尾行を開始したのだった。
しん 「う~ん。ルナおねいさんってば周りをきょろきょろ警戒して、足早に歩いていくゾ」
ムウ 「見るからに不審者そのものだな。こっちも見つからないように気をつけないと……」
シン 「あッ!ルナが横の細い路地に入り込みましたよ! 見失わないように追いかけましょう!」
ルナ 「……気のせいかな?誰かにつけられているような気がするわ。
家で私の帰りを待っているむさえさんの為にも、いま余人に私の目的を知られるわけにはいかないわね……
よおし、とばすわよ! たあッ!」
しん 「おお! ルナおねいさん、人の家の塀を飛び越えて走っていっちゃったゾ?」
シン 「まずい!気づかれたか……? 追えーーー!」
こうして、ルナとシン達の必死の追いかけっこが始まった。
ルナは他人の家の庭をつっきったり、裏道を抜けたりしてシン達を巻こうとする。
だが追うシンも必死だ、執拗に追いすがるのであった。
ルナ 「はあ、はあ。し、しつこいわね! ここまで食い下がる変質者は初めてだわ……!」
シン 「ぜー、ぜー……
こ、ここで俺が追うのをやめたら俺はもうさすがに主人公じゃなくなる気がするんだ!
だから……俺はルナを絶対にみ、見失わないぞ!」
ルナ 「だ、誰だか知らないけどいい加減にしてよもう~~~~!」
ムウ 「ふう、ふう……わ、若い2人はどこまでも走っていき……もう影も形も見えないな」
しん 「ま、いいじゃん。シン兄ちゃんには発信機を持たせてあるしさ、オラたちはゆっくり行こうよ♪」
そして。2人の追いかけっこは交番前の公園で終焉を迎えたのであった。
ルナ 「はあ、はあ……さ、さすがにもう走れな……い。ふう、ふう……」
ステラ 「あ、うえーい。遅かったねルナ。あ……シンも一緒だったの?」
ルナ 「え?……あ、シン!?」
シン 「ぜえ、ぜえ……や、やっと止まったのかよルナ。ふへえ……」
ルナ 「な、なによう! やけにしつこい変質者だと思って必死に走っていたら、追いかけていたのはシンだったの?
せめて一声かけてよ、もう!」
シン 「んなこと言われたって、ルナがこそこそしているのがいけないんだろう!
だから声をかけるにかけられなくて……こんな所でステラと一緒に待ち合わせして、何してんだよ?」
ルナ 「うっ……そ、それは……」
ステラ 「あのね、ステラ達、男の人と待ち合わせしているの。もうすぐここに来るハズなんだけど……」
シン 「お、男と待ち合わせェ!? や、やっぱり2人とも、もう俺のことなんか……そんな、そんな……!」
ルナ 「だって……しょうがないじゃない。こんな事、シンやしんちゃんには恥ずかしくてとても言えないもの」
シン 「あ、うう……」
ステラ 「あ、来たみたい。いつも通り時間ぴったりだね♪」
シン 「ッ!ど、どんな男なんだ……せ、せめて一言文句いってやるう!」
「いしや~きイモ~~♪ お、お嬢ちゃんたち今日も来ているのかい? まいど~」
ステラ 「おじさん。おイモ3つちょうだい」
ルナ 「私は5つ。みさえさんとむさえさんに頼まれている分もあるから……」
シン 「…………焼きイモ?」
ルナ 「う、うるさいわね! 乙女がおイモ食べちゃいけないっての!?」
シン 「い、いやそうは言わないけど……まさか焼きイモ買うためだけに、俺達からこそこそ隠れていたのか?」
ステラ 「うん。それにここのおイモすっごく美味しいの。
時々食べたくて食べたくって、うっとりしちゃうくらいなんだよ~」
シン 「ルナ……」
ルナ 「し、しょうがないじゃない! 女の子が焼きイモ好きなのは今に始まった事じゃあないでしょ!
それにおイモ食べておならプーなんて、恥ずかしくて男どもに言えるわけないじゃないの!」
シン 「……はあ」
おいちゃん「いやあ、このお嬢ちゃんたちはうちの焼きイモがよほど気に入ったらしくてさ、
ほとんど毎日のようにここに買いに来てくれるんだよ」
シン 「……ふう。なんだよもう。心配して必死で尾行してみればオチはこれか……
まあ大事にならなくて安心したけどさ。
おじさん、俺にもひとつください。全力で走ってきたから腹減ってきちまった」
おいちゃん「へい毎度!」
まあこうして。秋も深まる春日部の公園で、シンにルナにステラは3人して焼きイモを食べるのであった。
ステラ 「うぇ~い。おイモ、美味しいよねえ~。ほくほく」
ルナ 「……食べ過ぎで太ったりしないかだけが心配だけどね」
シン 「焼きイモは消化が良いし、以外にヘルシーだと以前に聞いたもんだけどな。う!
の……喉につまった! み、水! もしくは自販機どこだ?」
~その頃のしんちゃん達~
しん 「おじちゃ~ん。おイモ2つちょうだい♪」
おいちゃん「へい毎度!」
ムウ 「……あれ? なにかを忘れている気がするんだけど……ま、いいか。
それにしても焼きイモ美味ぇなあ~」