SEED-クレしん_16-140

Last-modified: 2009-04-15 (水) 23:10:38
 

 これで未来は人類に委ねられた。僕はヴェーダの一部となり君たちを見守ることとしよう。
 来るべき対話の時まで……さようなら、みんな……

 

 ・・・・・・・・・
 ・・・・・・
 ・・・

 

 と、思ったが……見守るにしてもどうもしばらく世界は静かで、僕は暇になりそうだ。
 そんなわけで僕は暇つぶしにヴェーダのすべての機能と情報を知ろうとあれこれ調べ尽くした。どうせ時間だけは腐るほどある……そして……発見した。
 最初はまさかと思った。
 決して存在するはずのないレベル8のセキュリティ。
 ヴェーダの一部となった僕だけがアクセスすることができる。

 

 悩みぬいた末に恐る恐るアクセスしてみて……僕は驚愕した。
 そこに広がっていたのは。例えるのならば情報の海。
 ……どこのものとも知れぬ無数のデータがそこには氾濫していた。
 取るに足らない掲示板の書き込みから国家機密まで、ありとあらゆる世界のすべての情報を僕は無条件に全部閲覧することができる。

 

 が、そんなものに僕は興味ない。興味が湧いたのはある世界の、あの個人の、あるアクセス記録。
 その記録とヴェーダの中に存在する、とあるガンダムマイスターの情報と一致したのだ。
 僕は。光るネットの波をくぐり抜けてその場所へと向かった。
 死に目にも立ち会えなかった、かつての友に出会えるかもしれないという期待を胸に秘めて。
 そして……

 

   ※   ※   ※

 

 ――ビューティーサロン『デュナメス』――

 

 草木も眠る丑三つ時。
 ニール・ディランディは、自室で趣味のネトゲーをしていた。

 

「さ~て今日は地道にレベル上げでもすんかな~……お?キラとムウの旦那がすでに来てやがるな。えーと『こんにちは、これから狩りにでもいきませんか?』と……え? 何ィ? レバ剣拾っただって!?」

 

《ミツケタ……!》

 

「……ん?なんだ……変に画面がブレやがる。ディスプレイの調子がおかしいのか?」

 

《マッテテ……イマ……ソチラニイク……》

 

「ん~~?なんだこの変な文字………うおッ!?」

 

 そのとき。ディスプレイからなにか光るものがゆっくり出てきた。やがてそれは人の形になっていき……
 両手で机を掴んでディスプレイからはいずり出てこようと……

 

「さ、貞○!? ○子がッ貞○があああああっ!?」

 

ドタドタドタッ!ガチャッ

 

 悲鳴で目が覚めたのか、リヒティ・クリス・アニューが部屋に飛び込んできた。

 

リヒティ「店長、大声出してどうしたんすか!?
     まさかやってたエロゲーが急に鬱展開になったんでブチ切れたとか!?」
アニュー「え……ニールさんってそういうのしてるんですか?」
リヒティ「ミネルバの副店長とエロゲ友達だと聞いてるっす」
クリス 「……サイテー」
ニール 「お、おいおい! そんな根も葉もない冗談言ってないで俺のPC見ろ! 画面からな、何かが出てきて……」
??? 『久しぶりだなロックオン・ストラトス……いや、ニール・ディランディ』
ニール 「な……?」

 

 そこにいた全員がロックオンのPCの方を見ると……そこには懐かしい顔がいた。

 

クリス  「ティエリア・アーデ!」
リヒティ 「テ、ティエリアさんじゃないですか!どうしてここに……」
アニュー 「あ……お、お久しぶりです」
ティエリア『ああ。みんなも元気そう……というのもおかしな話か。
      まさかニール以外のみんなにも会えるとは思っていなかった』
ニール  「本当にティエリア……なのか? それにしてはお前……体が透けてるぞ?」
リヒティ 「透け……!? じ、じゃあもしかして幽霊とかそんな……」
ティエリア『幽霊か。まあ……似たようなものだな。今の僕は意識だけの存在だ」
クリス  「じ、じゃあ本物のい幽霊!?」
アニュー 「だとするとおかしいですね。私たちに霊感はないはずですが」
ティリエア『話そう。僕の身になにが起きたのかを……』

 

 ティエリアは事の次第をすべて話した。
 自分の肉体がリボンズ・アルマークに撃たれて既に死んでいること、だが意識はヴェーダの一部となって生きていること……

 

ニール  「あー、つまり……ティエリアはあれほど崇拝していたヴェーダと遂にひとつになっちまったって事か」
クリス  「ティエリアらしいというか、なんというか……」
ティエリア『お互い様だ。僕は完全に死んだはずの君達がこの世界にいるなんて思いもよらなかった。
      無我夢中で来てみたが、てっきりここは地獄の1丁目あたりだと思っていた』
アニュー 「まあ普通はそう思いますよねえ」

 

リヒティ 「あの……で、その透けてる体は……?」
ティエリア『ああ、これはヴェーダの裏機能で作り出したホログラフィーみたいなものなんだ。
      ヴェーダの演算能力をもってしてもまだ僕の身体情報を計算しきれていないから、まだこんな感じだが……
      そのうち計算が済めば完全に実体化するはずだ』
ニール  「もはやなんでもアリだな……」
アニュー 「ヴェーダってそんな事までできましたっけ?」
ティエリア『出来るんだから仕方ない。さて……積もる話もあるし僕は当分ここにいることにする。よろしくな』

ニール  「は? お前、刹那たちを見守るんじゃないのか?」
ティエリア『それもやるが、まあしばらくは向こうとこっちを行ったり来たりだろう。
      向こうに動きがない時はこっちにいる事にする。ここだと退屈しそうにないし』
ニール  「おいおい勝手に決めるなって! ここに居つくってなあ……」
ティエリア『大丈夫だロックオン』
ニール  「え……」
ティエリア『今の僕に食事は基本的には必要ない。おかわりはしないから安心するがいい』
ニール  「実体ないくせにメシはきっちり食う気かよッ!」

 

 こうして春日部に愉快な仲間がまたひとり増えた。

 

   ※   ※   ※

 

 そして翌日。店の前でなにやら作業をしているロックオンたちの姿が……

 

シン   「なにしてるんです?」
リヒティ 「なに、ちょっとした改装っすよ」
しん   「改装~?」
アニュー 「うちにまたひとり、従業員が増えたんです。で……どうせだから心機一転して頑張ろうって事になって」
シン   「へー。今度は誰か来たんですか?」
ティエリア『君たちが噂のWしんか。ティエリア・アーデだよろしく』
しん   「おお~~これまた綺麗なおねいさん~~♪」
ティエリア『い、いや……残念ながら僕は男だ』
しん   「なんだ。つまんないの」
ティエリア《……ものすごい手の平の返し方だな》

 

ニール  「よーしできた!おいリヒティこいつを取り付けるぞ手伝え~」
リヒティ 「は、はーい!んしょっと……」

 

 それはロックオンたちの店の新たな看板だった。
 名前は……『プトレマイオス』。

 

ニール  「これだけソレスタルビーイングの仲間たちが揃ったんだ、もうデュナメスじゃ足りねえ。
      やっぱこの名が相応しいだろ?」
ティエリア『いいな。やはりあの艦は僕達の故郷みたいなものだし』
クリス  「いつか他のみんなもここに来て一緒に暮らせるといいわね」
アニュー 「どんな非常識でもティエリアさんを見ていると平気で起こりそうだから不思議です」
リヒティ 「次は誰が来るのか楽しみですねー」

 
 

シン   「ティエリアさんねえ……遂に来たのかあ。レイがどう出るかな……」
しん   「え?」
シン   「い、いやなんでもない」

 
 

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