第×□話 春日部にあの特撮ヒーローが来たようです、だゾ
ある日突然。春日部のとある空き地に建物が現れた。
その建物の名は『光写真館』……玄関のドアが開き、3人の男女が出てきた。
首から古いカメラをぶら下げた青年と、同じくらいの年頃と思われる女性、あと見るからにお人よしそうな能天気顔の青年だ。
「……ここがクレヨンしんちゃんの世界か」
「なんか平和そうな世界ね」
「なあ士。この世界にライダーはいるのかな?」
「さあわからん。この世界も他の世界のように崩壊しかかっているのかどうか……」
「あれ、こんなとこに写真館なんてあったっけ?」
「ほ~こりゃまた古臭そうなお店ですなあ」
「ん…?」
ふと見ると。光写真館を物珍しそうに見ている赤眼の少年とボーズ頭の幼稚園児がいた。
「お~~!こりゃまたきれいなおねいさん~~♪ねえねえピーマン食べれる?納豆にはネギ入れるほう~~?」
「きゃ!な、なんですかこの子?」
「うーむ。今までいろいろな世界を旅してきたが、初対面で夏ミカンをナンパしようとする園児に出会ったのは初めてだ」
「感心してないで助けてください士君!」
「あ、すいませんッうちの主人公がとんだ粗相を……ほらしんちゃん見ず知らずのおねーさんに失礼だろ~」
「うむ。最初はお友達からですな」
「な、何だこの子……?」
※ ※ ※
「ふ~んつまり……この世界にはライダーも戦隊の類もいないわけか?」
「テレビの中のヒーローならそういうのいますけど。ああ、そういえば昔負債というのがいたけど今じゃ全然姿見ないなあ」
シンにこの世界の事情を聞く青年――門矢士(かどや つかさ)。
どうやらこの世界は崩壊とかそういう危機には無縁のようだ。
「やれやれ無駄足か……だいたい、いつものごとく別世界に来たとたんに服装が変わらないからなんか変だとは思ってたんだ」
「この世界は大丈夫ってことなんですか?士君」
「そういう事みたいだ。いや……たぶん今まで世界崩壊の危機は何度かあったのかもしれないな。
だがすべてこの世界の人間だけでなんとか切り抜けてきたんだろう」
「俺達の出番はなしってことか」
「あの、もう行っていいですか?俺達みさえさんに頼まれた買い物途中なんで…」
「ああ手間をかけたな。もう行っていいぞ」
「だってよ。さあ行こうぜしんちゃん」
「え~オラ夏海おねいさんとお付き合いしようと思ってたのにィ~」
「はいはい。みさえさんのぐりぐり攻撃が出る前に用事すませてからな」
「は~な~せ~~~」
とまあそんなこんなで。買い物を急ぐWしんは士たちと別れたのであった。
「……いったかな?」
「変な子供だったわ。もうナンパだなんて」
「さてと。それじゃさっそく次の世界に……」
「そういうわけにはいかないなディケイド!」
「なに…?」
声の方向に視線を向ける。そこには円形の盾と銃をもつ怪人の姿がッ!
「アポロガイスト……!ここにも大ショッカーの魔の手が伸びてきたかッ」
「ふふふ。私はお前がどこの世界に行こうがしつこく付けまわす!私はお前にとって実に迷惑な存在なのだ!」
「やかましい害虫。変身ッ!」
《カメンライドゥ……ディケイド!!》
士がディケイドに変身しライドブッカーからカードを取り出す。
手に持ったのは白いカードだが徐々に模様が現れはじめていた。
「この世界のライダーカード? 試しに使ってみるか……」
《カメンライドゥ……ししししし、しん王ッッ!》
士 「……あ?」
夏海 「え……と……?」
アポロ 「……ブタ?」
ユウスケ「……尻まる出し?」
………ッ!?………ッッ!~~~~~~~~~ッ!!!!
シン 「……あれ?」
しん 「どったのシンにいちゃん」
シン 「なんかどこかで悲鳴が聞こえたような……」
しん 「んー……ま、気のせい気のせい~♪」
どんなシリアスが売りの完全無欠のスーパーヒーローでも、春日部に足を踏み入れたからには強制的にギャグキャラにされてしまう。
クレしん世界はかくも楽しく恐ろしい世界なのであった。