SEED-IF_4-5氏_04

Last-modified: 2008-05-01 (木) 19:02:20

「くっ……どこから?」
モビルスーツなんて見えない。
まるで何もない空間からただビームが襲って来るような感覚。
「ルナマリア!」
「大丈夫よ、レイ!」
何か……何かあるはずだ。ビームを撃って来る物が!
ルナマリアは空間に目を凝らした。
戦闘機形態になると、ランダムな飛行を開始する。
――!
敵の攻撃が、レイのザクファントムを襲う。
「レイ!」
「気をつけろ! この敵は! 普通とは違う!」
「……! 見えた! ガンバレルよ!」
「本体がいるはずだ! 俺はそいつを探して叩く! お前は機動性でドラグーンを引き付けろ!」
「了解!」
ルナマリアは先程見つけたガンバレルに追随する。
「――そこ!」
セイバーのMA-7B スーパーフォルティスビーム砲が連射され、ついに弾幕がガンバレルを捕らえる!
爆発するガンバレル。ルナマリアは急上昇して爆発をかわす。そのセイバーが飛び去った空間をビームが通り過ぎる。


「なるほどねぇ。これは確かに俺のミスかな」
ルナマリアと交戦しているエグザスのパイロット、仮面の男はルナマリアの戦闘に感心したようにつぶやいた。


「気密正常、FCSコンタクト、ミネルバ全ステーション異常なし」
ミネルバの副長、アーサー・トラインはアーモリーワンより出撃したミネルバの状態を報告する。
「索敵急いで。セイバー、ザクの位置は?」
タリアは先に宇宙に出たルナマリアのセイバー、レイのザクの位置を尋ねる。
「インディゴ53、マーク22ブラボーに不明艦1、距離150」
「それが母艦か?」
「そのようです。所見をデータベースに登録、以降対象をボギーワンとする」
タリアはデュランダルに答えると、指示を飛ばす。
「同157、マーク80アルファにセイバーとザク、交戦中の模様」
オペレーターのシンが報告する。彼はマユの弟だ。
「呼び出せる?」
ほんとに顔も声も可愛い子。一服の清涼剤ね。
タリアはシンの後姿を見つめると微笑んだ。
「駄目です。電波障害激しく通信不能」
「敵の数は!?」
「1機です。でもこれは……モビルアーマーです!」
「モビルアーマーが一機だけ?」
タリアは驚いた。


「そこか!」
ルナマリアは照準にガンバレルを捕らえ、MA-7B スーパーフォルティスビーム砲を連射した。
――爆発! 同時に、コクピットに衝撃が走る。
「……下から!? シールドに当たらなければあぶなかったわ」
別のガンバレルが、下方からセイバーを狙ったのだ。
容易ならない相手だ。モビルアーマーと舐めてはいけない。
ルナマリアの額に冷や汗が生じる。


「ボギーワンを撃つ! ブリッジ遮蔽、進路インディゴデルタ、加速20%、信号弾及びアンチビーム爆雷、発射用意! ……アーサー! 何してるの!」
タリアが叫ぶ。
「あ! ぁぁはい! ランチャーエイト、1番から4番、ナイトハルト装填。トリスタン、1番2番、イゾルデ起動!照準ボギーワン!」
「彼等を助けるのが先じゃないのか? 艦長?」
デュランダルがタリアに尋ねる。
「そうですよ。だから母艦を撃つんです。敵を引き離すのが一番早いですから。この場合は」


「艦? ちっ……欲張りすぎは元も子もなくすか」
ミネルバの姿を確認し、仮面の男はつぶやく。
「帰還する!」
エグザスは残ったガンバレルを収容するとガンバレルのスラスターをブースターとして不明艦の方へ帰還して行く。


ミネルバから、帰還信号弾が放たれ、宇宙に光を放つ。
「……ミネルバ?」
「帰還信号? なんで!」
「命令だ。帰るぞ、ルナマリア」
「……ええ」


「ナイトハルト、てぇ!」
ルナマリア達が宙域から撤退したのを確認して、ミネルバから放火が放たれる。
「エンジンを狙って! 足を止めるのよ!」


「エグザス着艦!」
ミネルバからの放火に回避行動を取る不明艦に、エグザスが着艦する
「撤収するぞ! リー!」
仮面の男が叫ぶ。どうやら艦長らしき男はリーと言うらしかった。


「ボギーワン、離脱します! イエロー71アルファ!」
「セイバー、ザクは?」
タリアはルナマリア達の帰還を確認する。
「帰投、収容中です」
「急がせて。このまま一気にボギーワンを叩きます。進路イエローアルファ!」


「大佐!」
不明艦のブリッジに仮面の男が飛び込んで来た。どうやら階級は大佐らしい。
「すまん、遊びすぎたな」
「敵艦、尚も接近!ブルー0、距離110!」
「かなり足の速い艦のようです。厄介ですぞ」
「ミサイル接近!」
「取り舵!かわせぇ!」
「えぇぃ、両舷の推進剤予備タンクを分離後爆破! アームごとでいい! 鼻っ面に喰らわせてやれ! 同時に上げ舵35、取り舵10、機関最大!」
仮面の男が指示を飛ばす。


「ボギーワン、船体の一部を分離!」
「ん!?」
「撃ち方待て! 面舵10、機関最大!」
嫌な予感がする。
その予感に従ってタリアが指示をした時、不明艦の切り離された推進剤予備タンクが爆発、閃光を放った!
「きゃぁぁぁ!」
「うっ!」
「えぇぃ……」
手に嵌ったか……
デュランダルは舌打ちをした。


「何!?」
突然の衝撃に、ミネルバに帰還したルナマリアは叫ぶ。
「何だ!」
「被弾したぁ!?」
「ブリッジ、どうした!?」
レイはブリッジとの通信機を手に取る。だが向こうも騒がしい音が聞こえるだけだ。
「……ちっ!」
レイは通信機を元に戻すと、格納庫からブリッジへと向かう。


「バート! 敵艦の位置は!?」
爆発の衝撃からすばやく立ち直るとタリアは不明艦の位置を掴もうとする。
「待って下さい、まだ……」
閃光でセンサー類がまだ撹乱されていた。
「シウス起動、アンチビーム爆雷発射! 次は撃って来るわよ」
タリアは不明艦からの攻撃に備える。
「見つけました。レッド88、マーク6チャーリー、距離500」
「逃げたのか?」
アーサーは不明艦の位置に軽く驚いた。こちらを攻撃できるような位置ではない。
「やってくれるわ、こんな手で逃げようとは」
「だいぶ手強い部隊のようだな」
デュランダルは唸る。
「ならば尚の事このまま逃がすわけにはいきません。そんな連中にあの機体が渡れば……」
「ああ」
「今からでは下船頂く事もできませんが、私は本艦はこのままあれを追うべきと思います。議長の御判断は?」
「私のことは気にしないでくれたまえ、艦長。私だってこの火種、放置したらどれほどの大火になって戻ってくるか……それを考えるのは怖い。あれの奪還、もしくは破壊は現時点での最優先責務だよ」
「ありがとうございます。トレースは?」
「まだ追えます」
「では本艦は此より更なるボギーワンの追撃戦を開始する。進路イエローアルファ、機関最大」
「進路イエローアルファ、機関最大」
ミネルバは不明艦を追い増速した。
「ブリ……議長!?」
その時ブリッジに入ってきたレイが、デュランダルを見て驚きの声を上げた。


「全艦に通達する。本艦は此より更なるボギーワンの追撃戦を開始する。突然の状況から思いもかけぬ初陣となったが、これは非常に重大な任務である」
アーサーが全艦に通達する。
「各員、日頃の訓練の成果を存分に発揮できるよう努めよ」
「ブリッジ遮蔽解除。状況発生までコンディションをイエローに移行」
「ブリッジ遮蔽解除!」
シンが、少しほっとした物が混じる声でブリッジの遮蔽を解除する。
「コンディションイエローに移行」
「議長も少し艦長室でお休み下さい。ミネルバも足自慢でありますが、敵もかなりの高速艦です。すぐにどうと言う事はないでしょう。レイ、御案内して」
「はっ!」
その時、通信機の画面が開くと、マユの顔が現れた。
『艦長!』
「どうしたの?」
『戦闘中の事もあり、ご報告が遅れました。本艦発進時に格納庫にてザクに搭乗した3名の民間人を発見』
「え?」
『これを拘束したところ3名は……オーブ連合首長国代表カガリ・ユラ・アスハと宰相補佐官ユウナ・ロマ・セイラン及びその随員と名乗り、傷の手当てとデュランダル議長への面会を希望致しました』
メモを見ながらマユが報告する。
「オーブの……」
「彼女が……何故この艦に?」
『僭越ながら私の独断で傷の手当てをし、今士官室でお休みいただいておりますが……状況が落ち着いたら議長にお会いしたいとの事です』
「「んー……」」
期せずして、デュランダルとタリアは同時に呻った。


「どうやら成功、というところですかな?」
不明艦の艦長、イアン・リーは仮面の男に話しかけた。
「彼らは使い物になったようですな。前大戦時はブーステッドマン、最近じゃエクステンデッドなんてのが居るようですが、そいつらより世代は古いようですが」
「ああ。前大戦じゃ薬やら使った奴らがいたって言うけどねぇ、データ見ればそう言う奴ら、戦死しなくてもどの道精神崩壊で終わりだったっていうじゃないか。僕ぁそう言うの、苦手でね。兵士は金かけてんだ。長く使えなきゃあ、仕方ないじゃないか。その点今の奴らは投薬は実験された程度だ。訓練で実力をしっかり身につけている。そう言う奴らはいいぞぉ」
「確かに」
「ポイントBまでの時間は?」
仮面の男がオペレーターに尋ねる。
「2時間ほどです」
「まだ追撃があるとお考えですか?」
「判らんね。判らんから、そう考えて予定通りの針路をとる。予測は常に悪い方へしておくもんだろう? 特に戦場では」
「ネオー!」
その時ブリッジに女性のパイロットが駆け込んできた。ショートカットで目を強調したメイクが特徴的な女性である。彼女の後ろに二人の男性が続く。
仮面の男――実は地球軍のネオ・ロアノーク大佐と言う。この艦の名はガーティー・ルー。地球連合軍第81独立機動群――通称ファントムペインに所属する宇宙戦艦である。
「おー! お前達! よくやった! まぁ信じてたけどな、お前らならやれるって!」
ネオは飛びついてきた女性の背中をぽんと叩きながら彼らを労った。
そう、彼らがザフトの新型モビルスーツを強奪した犯人である。
グレイの髪のきりっとした顔立ちの男性がスウェン・カル・バヤン中尉、黒い肌で眼鏡をかけているのがシャムス・コーザ中尉、ネオに抱きついた女性がミューディー・ホルクロフト少尉である。
「どうだったかい? ザフトの新型は?」
「ん~、コロニーの中だからよかったけどー」
黒いモビルスーツ――4足獣型のモビルアーマー形態への可変機構を備えているガイアに乗ったミューディーが答える。
「宇宙空間じゃ変形なんて役立たずじゃない。地球に降りても活用できそうなのは平地だけでしょ? あたしは、あたしのブルデュエルの方がいいなぁ」
「アビスもですね」
水色のモビルスーツ――アビスに乗ったシャムスも答える。
「ビーム砲やらなんやらがいっぱいあるのはいいですが、あれ、水陸両用でしょう? 水中での攻撃手段が魚雷4門と近距離しか使えない連装砲4門だけってのは、どうなんでしょうね?」
「きゃはは、やっぱコーディネーターって馬鹿じゃなーい?」
ミューディーがけたたましく笑う。
「こらこら、コーディネーターってひとくくりにするんじゃない。地球軍にもコーディネーターはいるんだ」
「あー。そうね。じゃ、ブラントの人間もどき達」
ネオの指摘を受けてミューディーは言い直した。但し、よりひどく。
「まぁ、アビスは揚陸作戦用らしいからな」
「しかし、こう新型機の特徴を見ているとプラントは再び地球に侵攻する気満々ですね」
「ああ、だが、地球軍も油断しちゃいないさ。だから俺達に任務が下ったんだろう? スウェン、お前はどうだった?」
残る一機、緑のモビルスーツ――カオスに乗ったスウェンにネオは聞いた。
「なかなかいい機体でした」
「ほう」
「ドラグーンのような機動兵装ポッドが2個、それでエグザスのようなオールレンジ攻撃ができるのは、なかなか楽しい」
「へぇ」
あまり笑わないスウェンが『楽しい』と表現した事がネオの興味を引いた。
「ですが、それを生かせるのは宇宙だからこそでしょう。地球に降りてもそれなりに戦えると思いますが、汎用性ではストライクノワールの方を私は選びます」
「お前もか。どうも、ザフトの新型機は特定の環境に特化しすぎてるなー。ま、奪ってきた機体は技術開発局の連中に渡せばミッションコンプリートだ。ご苦労だった。休んでいいぞー」
「はーい」
彼らが出て行くと、ネオは顎を撫ぜた。
「さてさて、どう出てくるかな? ザフトの諸君は?」






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