SEED-IF_4-5氏_06

Last-modified: 2008-05-04 (日) 19:38:45

「ボギーワン、捕捉しました」
「ん?」
「オレンジ55、マーク90アルファ!」
「敵艦に変化は?」
「ありません。針路、速度そのまま」
「よし。ランチャーワン、ランチャーシックス、1番から4番、エスパール装填。シウス、トリスタン起動。今度こそ仕留めるぞ!」
アーサーは気負った声で叫んだ。


「あんまり成績良くないんだけどね、デブリ戦」
「向こうだってもうこっちを捉えてるはずよ。油断するしないで!」
ルナマリアはマユに檄を飛ばした。
「解ってるって。レイみたいな口きかないでよ、調子狂っちゃう」
……

おかしい。何で。何でまだ何も。
敵艦はまったく反応を示さない。ルナマリアの胸に微かな警告音がした。


「セイバー、ボギーワンまで1400」
「未だ針路も変えないのか? どう言う事だ?」
「何か作戦でも!?」
「はっ! しまった!」
「デコイだ!」
タリアとが同時に叫んだ。
視線がアレックスに集まる。アレックスは首をすくめた。




「よし、そろそろ行くぞ」
スウェンが告げる。
「おう!」
「オーケー!」
「まず一機に集中攻撃だ!」
スウェン達3機の攻撃が、ミネルバから出撃してきたモビルスーツの一機に向かう。
完全な奇襲だった。




――!
「「あぁ!」」
突如として、僚機の一機が爆発する。
「チアキ! うっ!」
それに驚く間も無く、更なる攻撃が襲って来る。
「散開して各個に応戦!」
ルナマリアは咄嗟に指示を飛ばす。
「くっそー! 待ち伏せか! ん? ボギーワンが……ロスト!?」


「ボギーワン、ロスト!」
「何ぃ!?」
「くっ……」
自分の予想が悪い方向に当たってしまった。
アレックスは口を歪め右下方を睨みつける。
「チアキ機もシグナルロストです! イエロー62ベータに熱紋3! 判別不能!」
シンの報告にタリアは舌打ちすると指示を飛ばす。
「敵急いで。本当のボギーワンを早く見つけるのよ!」




「かかったようですな」
リーはネオに、にやりと笑う。
「ああ、どうやらうまくいったようだ」
ガーティー・ルーはデブリとアンカーを使い進行方向を制御し、ミネルバの後方に遷移する事に成功していた。
ネオが片手を上げる。戦闘の開始だ。
それを見てリーは指示を下す。
「ダガー隊発進、機関始動! ミサイル発射管、5番から8番発射! 主砲照準、敵戦艦!」




「ブルー18、マーク9チャーリーに熱紋! ボギーワンです! 距離500!」
「ええっ!」
「更にモビルスーツ2!」
「後ろ?」
やられた!
タリアの胸に口惜しさが広がる。
「測的レーザー照射、感あり!」
「アンチビーム爆雷発射、面舵30、トリスタン照準」
「駄目です! オレンジ22デルタにモビルスーツ!」
「くっ! 機関最大! 右舷の小惑星を盾に回り込んで!」
「う……ぅぅ……」
操舵手が慣性に耐えながら必死に舵を回す。
「うわぁぁ!」
艦内が傾き、悲鳴があがる。
「マユ! ルナマリア達を戻して。残りの機体も発進準備を!」
「はい!」
「マリク! 小惑星表面の隆起を上手く使って直撃を回避!」
「はい!」
「アーサー、迎撃!」
「ランチャーファイブ、ランチャーテン、ディスパール、てぇ!」
ミネルバは迎撃用ミサイルを発射する。




「弱そうな奴から叩け!」
「おーけー」
スウェンの指示に気の抜けたような返事をしながらミューディーのブルデュエルは一機のザクに近づく。
ブルデュエル――前大戦時に開発されたG兵器を基にした、エースパイロット用カスタマイズモビルスーツ開発計画、通称「アクタイオン・プロジェクト」の成果の1つとして生み出された機体群の一つである。
スウェンは装備換装機構「ストライカーパックシステム」によって、多様な戦場に適応可能な汎用性を発揮するストライクを基にしたストライクE。ノワールストライカー――I.W.S.P.統合兵装ストライカーパックのコンセプトを継承しその万能性を殺さず、特性を近接格闘に振り向け特化させた物――を付けた今は通称ストライクノワール。
シャムスは砲撃戦用のバスターを基にし、大幅な火力の増強が行われたヴェルデバスター。
そしてミューディーは近接白兵戦闘用のデュエルを基に、機動力、攻撃力、防御力に格段の向上が成されているブルデュエルが乗機である。




「くそう、よくも、よくも僕のチアキを!」
緑のザクがビームトマホークを抜き前に出て行く。
「馬鹿! 迂闊に前に出るな! ミツオ!」


『もーらい!』
「あ!」
ミツオのザクは、打ち合う間も無く、敵のビームサーベルに斬られ、爆発する。
「ミツオ! だから! 馬鹿が!」
ルナマリアは逸って戦死してしまった部下を罵倒する。
「あっと言う間に二機も……」
「くっそー!」
マユはM1500 オルトロス高エネルギー長射程ビーム砲を発射するが、避けられてしまう。
お返しの様に4本の火線が襲って来て、慌てて避ける。
「ん? ルナ! ミネルバから!」
「ミネルバから帰還命令!? あたし達まんまと嵌ったって訳!?」
「ええ、そう言う事ね。けどこれじゃあ戻れったって……敵の方が多い!」
「そうね、可能な限り耐久する! あたしが戦闘機になって引っ掻き回す! マユは後方から支援を!」


「ナイトハルト、てぇ!」
主砲が使えない状況で、アーサーは宇宙用ミサイルの発射を指示する。
「後ろを取られたままじゃどうにも出来ないわ! 回り込めないの?」
「無理です! 回避だけで今は……!」
「レイのザクを! 残りのザクを全部出して……」
「これでは発進針路も取れないわ!」
アーサーの進言を言下にタリアは却下する。
「はあ……」




「残る赤いの2機、動きがいい。連携もいい」
「ああ。シャムス、後ろの赤いザク任せる。戦闘機型になったのは機動性でこちらが負けている。ミューディーと俺、2機で押さえ込む」
「任しとけ!」
そう答えると、シャムスは再び砲を放った。




「「うわぁ!」」
ミネルバの乗員が悲鳴をあげる。また被弾したのだ。
「これではこちらの火器の半分も……!」
「浮遊した岩に邪魔されてこちらの砲も届きません!」




「粘りますな」
リーがネオに言った。だが、その口調には余裕が感じられた。
「ああ、だが、艦は足を止められたら終わりさ。奴がへばり付いている小惑星にミサイルをぶち込め! 砕いた岩のシャワーをたっぷりとお見舞いしてやるんだ! 船体が埋まるほどにな!」
「はっ!」
「出て仕上げてくる。あとを頼むぞ」
「はっ」
ネオはふわりと立ち上がると、エグザスの格納庫へ向かう。




「ミサイル接近! 数6!」
「うぅ……」
アレックスは呻る。先程から一方的にやられている。しかし自分は何も出来ないのだと歯噛みをする。
「迎撃!」
「でもこれは……」
「直撃コースじゃない? はっ! まずい!」
アレックスは敵の意図に気づき焦る。
「艦を小惑星から離して下さい!」
「ぇ?」
突然のアレックスの声に瞬間タリアは呆ける。
――!
今までに無い、ミサイルではない、重い衝撃が艦を揺らす。
「「うわぁぁ!」」
「右舷が! 艦長!」
「離脱する! 上げ舵15!」
「更に第二派接近!」
「減速20!」




エグザスで出撃したネオは、半ばトンネルのようになった小惑星の抉られた部分を飛びながら気合を入れる。
「さて、進水式もまだと言うのに、お気の毒だがな。仕留めさせてもらう!」




「4番、6番スラスター破損! 艦長! これでは身動きが!」
アーサーが悲鳴のような声を上げる。
その時、一際大きい岩塊がミネルバの目の前に漂って来る。
「針路塞がれます!」
「更にモビルアーマー、モビルスーツ接近!」
このままではそいつらにやられる!
タリアは残ったモビルスーツを出す事を決心した。
こちらも、なんとしてでも出さなければ、あぶない。
「エイブス! レイ達を出して!」
「はっ! しかしカタパルトが……」
「歩いてでも何でもいいから急いで! ルナマリア達は?」
「セイバー、ガナーザクが、依然敵モビルスーツ3機と交戦中です! ミツオ機はシグナルロスト!」
「この艦にもうモビルスーツは無いのか! もう少しはあるはずだろう!?」
焦った声でデュランダルが声を上げる。つい、機密に近い事まで口走ってしまう。
「パイロットが居ません!」
「あっ……!」
パイロット。自分がいるじゃないか。
アレックスはそう思った時に思わず声が出ていた。
自分が出れば、あるいは……だが。
アレックスは思いを飲み込む。
「艦長、タンホイザーで前方の岩塊を撃てば……」
アーサーがタリアに進言する。
「吹き飛ばしても、それで岩肌抉って同じ量の岩塊を撒き散らすだけよ!」
「あ……あぁ……」
だめか……。
皆の顔に焦りと失望が走る――






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