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Last-modified: 2009-04-07 (火) 18:05:00

「また負けたぁ」
ミューディーが嘆息した。
「何度やっても無理だって」
ブルデュエル対ユークリッドのシミュレーションである。
「機動性だってユークリッドの方が高いし、真正面から突っ込んでこられたら、ビームシールドがあるんだぜ」
「くやしいなぁ」
「それより、ユークリッドの確保した制宙権の元で如何に戦うか考えた方が建設的だな」
「だな」
「そういや、ユークリッド専門の大型空母がもうじき完成するらしいな」
「ああ、ユークリッドは普通のモビルスーツより大きいからな」
「楽しみだな」
「確か、コバヤカワヒデアキだっけ」

 
 

その頃、メキシコに潜入した服部達は街道の脇に陣取った。
走って来る車に手裏剣を投げ、パンクさせる。修理のために運転者が出て来たところを催眠術にかけるのだ。
100人も一台の車に乗れないのでこれを繰り返す。
同乗者が居た場合は催涙弾を投げて出て来たところを催眠術にかける。
服部達はこうしてメキシコのティファナまでたどり着いた。
運転者達には催眠術をかけ服部達の事を忘れさせる。殺しはしない。軍人ではなく民間人を殺すのは国際協約違反だからだ!

 

「なぁ、親戚を捜しているんだが、知らないかね? 私にそっくりなんだが」
服部は、ティファナで出会う人毎に声をかけていた。大抵は知らないと言われる。
しかし、とうとう10人目で違う答えが返ってきた。
「ホセじゃないか?」
「そうそう! 確かホセだったよ。住所を教えてくれないか?」
首尾よくホセの住所を聞きだした服部は、ホセの家へ行き、催眠術にかけてしまう。ホセのパスポートを盗み出し、アメリカに入国する。
売春宿近くに拠点を構えた服部は、自分とよく似た体格の軍人が訪れるのをじっと待つ。
とうとうその男が来た! 服部は歩き方の癖を盗みつつ尾行して、暗がりに引き込んでしまう。
そして催眠術にかけ、名前や階級、その他すり替わって日常生活を送るために必要な情報を全て聞き出すのだ。全ての情報を聞き出したら可哀想だが、この男には死んでもらう。顔がわからないようにぐちゃぐちゃにして、腐敗ガスで浮かんで来ないように腹を裂き、湖へ放り込むと、次は変装だ。オキシフルで髪を脱色した後、カラーコンタクトをする。これだけである。これだけで、誰にも咎められる事も無く服部はサンディエゴ基地に潜入を果した。伊賀忍術の賜物であろう。
首尾よくサンディエゴ鎮守府に潜入した服部は、掲示板を見て回る。するとなんと言う事だろう! 新しく建造されたユークリッド専門の大型宇宙空母の乗員を募集しているではないか! 服部は早速志願した。
月基地へ出発し、その新造された宇宙空母コバヤカワヒデアキに乗り込むと、なんと言う事だろう! メキシコに潜入したSP忍者100人の内80名が新造された改アガメムノン級に配属されていたのである。これも伊賀忍術のなせる技、であろうか。

 

服部はコバヤカワヒデアキの行き先も探らなくてはいけない。しかし、下っ端の兵隊に教えてくれるはずも無い。
そこで服部は警備の兵に催眠術をかけ、自分を見えなくする。そしてコバヤカワヒデアキの艦長、ミッチャーの寝室に首尾よく忍び込んだ服部は、ミッチャーにスコポラミン(自白剤)を注射すると、目覚めさせる。必要な事を聞き出した服部は、訓練のために独艦で航行するようにミッチャーの頭に吹き込み、自分達の事を忘れるように催眠術をかける。

 

訓練宙域付近に着くと、服部忍者部隊達は行動を開始する。就寝中の乗員を手裏剣で次々に刺殺していくのだ。不審に気づいて様子を見にやってきた乗員も待ちかまえていた忍者部隊が当然手裏剣で刺殺する。
仕上げとして、炊事係りに紛れ込んだ忍者部隊が朝食に食中毒菌を混入する。80名の忍者部隊は食中毒で身動きが取れないコバヤカワヒデアキ乗員を次々に手裏剣で刺殺していった……
「さぁ、エターナルと合流しようじゃないか!」
「「はい!」」
コバヤカワヒデアキはエターナルと合流すべく動き出した。2000名の死体を乗せて。

 
 

「誰だ! 新造宇宙空母にコバヤカワヒデアキなんて名前を付けたのは! 敵の物になるのが当たり前のような名前じゃないか!」
コバヤカワヒデアキが強奪されたと言う知らせに一人の日系人が怒髪天を衝いている。
「ヘイ! ケンイチ。コバヤカワヒデアキはショーグン、トクガワイエヤスに天下を取らせた武将と聞いたぜ!」
「間違ってない、間違ってないけど!」
「……じゃあ、いいじゃないか?」
「違う……違うんだよ!」
「ヨクワカラナイヨ!」
「あぁあ、イシダミツナリにしときゃよかったよ……」
当分誤解は解けそうも無かった。

 

「おいおい、また強奪かね。それも新造艦だぞ」
「うむ」
「それなりに警備を強化していたのだが……」
「このまま一ヶ月に1隻のペースで強奪されると士気が落ちるぞ」
「同僚に疑心暗鬼にもなる」
「早期に戦わざるをえんか……もう少し物資を充実させて一気に叩きたかったのだがな」
「そう言えばザフトが軍事ステーションを作っておったな」
「そこを目指すか」
「攻略できなくてもいい。優勢勝ちになれば」
「では、新編なった第3・第8艦隊と、第5・第6艦隊を当てればどうでしょう? 負けはしますまい」
「了解した」

 
 

地球軍の新造空母を強奪したと言う出来事はラクス軍の戦意を向上させた。
――もはや前戦役のように三隻同盟ではありえず、ラクス軍、と言うのがふさわしいだろう。オーブクーデター政権からオーブ軍として扱う旨連絡が届いていたが、状況が変わった今それを受け入れるのはマイナスが多いと思われたためラクスはそれを黙殺していた――
しかし、それをさして嬉しい様子を見せない者もいた。
「ああ! キラ!」
つまらなそうな様子のキラを見ると、ラクスは飛びついて頬にキスをした。
「キーラ? ストライクフリーダムの様子はどうですか?」
一瞬で機嫌を直すとキラは弾んだ声で答えた。
「すごいよ! フリーダムより動かしやすい! ビームシールドもすごい! ドラグーンもすごい! これなら……アスランに勝てる!」
ラクスの顔が少し曇った。
そこに、悄然とした様子のヒルダがやってきた。
「ラクスさまー」
「あら、どうしたのです?」
「お願いです! 忍者部隊から抜けさせてください!」
「あらあら、私の役に立ちたいと自ら志願したのに?」
「あいつらまともな精神じゃありません! 2000人の死体を前に平気で飯食ってるんですよ? 頼みます! 医者から貰った精神安定剤1シート飲んでも耐えられません! 限界です!」
「……わかりましたわ。では、元の通り、モビルスーツのパイロットに戻ってくださいな」
「ああ、ありがとうございます! 一生恩に着ます!」
「ちょうどあなたに使って欲しい機体が届きましたのよ。ドムトルーパーとか言う……」

 
 

「第3艦隊、ネオ・ロアノーク准将だ。艦隊指揮は初めてでね、よろしく頼みたい。」
「第5艦隊、コーブアソ少将だ」
「第6艦隊、ホフアソ少将です」
「第8艦隊、ハノレパートソ准将です。よろしく」
「では打ち合わせ会議を始める」
最先任のコーブアソ少将が口を開く。
「今回の作戦は、ザフトの軍事ステーションに近づき、出血を強いると言うものだ。無理はしない。ひたすらザフトに戦い続ける事を強いて疲労させる。なに、同数の損害を与え続ければこちらの勝ちだ」
「しかし、地球で使えるマスドライバーはパナマの一基だけ。それほど時間が無いのでは?」
「まぁ、ギガフロートも使えるがね。確かに、オーブかカオシュンが使用可能にならなければ、物資は厳しくなる一方だろう。司令部は月基地の物資を使える1年の間にザフトを叩き潰す気だ」
「ふむ。面白そうですな」
「作戦としては、単純なものだ。四方から進軍し、戦う。それだけだ。但し! 敵に、我々が攻略をもくろんでいると思わせねばならん。本気にならせねばな。後先考えない反撃で疲労してくれればよいのだ。同時に我が軍の損害も抑えねばならん」
「単純な作戦ですが……」
ネオは発言した。
「艦隊によって時間差をつけては? 予備兵力もあるでしょう。それを投入する時間は同時にするのです」
「面白いかも知れんな」
「他に案は無いか?……では、その作戦で行く。我らが行く末に勝利があらん事を!」
「ところで……」
ネオはいたずらっぽく言った。
「本当に攻略してしまってもかまわないのですよね?」

 
 

オーブ。
この日、オーブ――オロファトスタジアムで非合法の集会が行われていた。だが、非合法にもかかわらず3万人の民衆が参加していた。
救国軍事会議のオーブ支配に反対する集会である。
「貴様等、すぐに解散しろ!」
救国軍事会議のクソスティマソ一佐がジーブで乗り付けた。
「あなたがたに、そう言う権利がありますの?」
一人の女性が発言した。
「アスハ家の専制を謳いながら、やっている事はそれ以上の独裁ではありませんか!」
「うう、一時の事でやむを得ん事だと言っておろうが!」
「カガリ様を戴くオーブ正統政府は相変わらずアメノミハシラに存在しています。地球連合にも協力しているとか。プラントとの戦いが終われば、地球軍の力はオーブに向けられる事になるでしょう。また、国を焼くおつもり!?」
舌鋒鋭くクソスティマソを責める女性に、彼は見覚えが歩きがした。……そうだ、常に軍事費の削減を叫ぶジェシア・江戸輪須議員だ。憎い奴だ。こいつがいなくなれば……
クリスティマソはいきなり銃の台尻でジェシアを殴りつけた。ジェシアは倒れこむ。何度も何度も、クソステマソは叩き続けた。ジェシアは、もう殴っても動かない。そして、クソステマソは近くにいた男性に聞く。
「なぁ、さっき、民衆が、主権がどうとか言ってたよなぁ、もう一度、言えるか?」
「……わ、我々は屈しない! 救国軍事会議はすぐに権利を民衆に返せ!」
クリスティマソはその男も台尻で殴り倒した。
「さあ、隣の坊やに同じ事を聞こうじゃないか……」
「う、うわぁーーー!」
混乱したのか、その若い男はクソステイマソに飛び掛った。
「くそが!」
銃声が響く。若者は倒れる。
「誰か撃たれたぞ!」
「救国軍事会議は我々を皆殺しにする気だ!」
次第にその声は大きくなっていた。
クソスティマソを包囲する人の輪がじりじりと狭まっていく。
「う、撃て!」
「しかし……」
「命令に従わず解散しない奴は、撃て!」
――発砲が、はじまる。逃げ惑う民衆達。しかし、仲間の死体を盾にクソスティマソに近づく者も多かった。
そして、クソスティマソの身体は怒りざわめく民衆の足の下へを姿を消したのであった。
だが……この様子を見ていた各所の救国軍事会議派軍隊が攻撃を開始、最終的に、死者は市民20,000人、兵士1,500人にのぼった。この一件はオーブに潜入していたジェスとミリアリアの手で世界中に発信され、『スタジアムの虐殺』と呼ばれ、救国軍事会議が人心を失うに至った大きな一因となった。

 
 

「おい、あれは地球軍じゃないか!?」
「こちらの識別コードに反応無し! 警戒警報を出せ!」

 

まずザフトの軍事ステーションに攻撃したのはネオ・ロアノーク率いる第3艦隊だった。
「さぁ、ネオ隊長の前でみっともない真似見せるんじゃないぞ」
「わかってる!」
スウェン達は出撃した。
すぐにザフトのスクランブルしてきたモビルスーツ隊とぶつかる。
「く、こいつら、腕がいい!」
「無理をするな。これはそう言う作戦だ」
「パサラモードにゅう!」
ミラーが敵の前で防衛に専念する。

 

「くそう、こいつ、固い!」
「なめられるな、一機で3機も相手に出来ると思うな!」

 

「ふふふ、隙ありだよ!」
ミューディーがミラーに攻撃している一機を後ろから倒す。原田とジョンも一機ずつ倒す。
「ふふふ、相手の力が流れ込んでくるようだ! まだまだ行くぞ!」
黒い実体剣を構えてジョンが吼える。
ミラーの防御を破ろうとする敵モビルスーツを、味方のモビルスーツが撃破していく。
だが、スウェン達は急に敵の数が増えたのを感じた。
「おい、敵の数が急に増えた。下がった方がいいか?」
「そうだな。各人、防御優先しながらゆっくり下がれ」
「よし、殿軍は俺に任せろ!」
ミラーは最後尾に位置し、防御専念を始めた。

 

ザフトのモビルスーツが急速に増えたのは、ザフトが第3艦隊の攻撃に即応できた事を意味する。
だが……ザフトはあまりにも急速に第3艦隊への反撃体制を整えすぎたのだ。完璧すぎるほどに。
ザフトの司令部がどうやら第3艦隊の攻撃を凌げるか、と思い始めた時、第5艦隊が反対方向から姿を現した。

 

「敵は第3艦隊に集中しているぞ! 突撃しろ!」
コーブアソ少将が吠えた。
若干残っていたザフトの戦艦が、第5艦隊の攻撃で撃破される。
ザフトは慌ててステーション内部から予備の戦艦を出撃させる。

 

「救援だ! 近くのザフト軍に救援要請をしろ!」
軍事ステーションの指揮官は叫んだ。
「司令官!」
悲鳴のような声が聞こえた。
「敵の新手です!」
地球軍第6艦隊だった。

 

軍事ステーションの通信を聞き、アスランとイザークは軍事ステーションに駆けつけた。
近くに友軍もいる。
「あれは……」
「アスランにイザークか」
クルーゼ隊をはじめとする諸隊だった。
「ただ戦っても詰まらん。君らがまず戦端を開き、適当な所で私が参加する。どうかな?」
「はい!」
「了解です!」
これだけなのだ。これだけの会話なのだ。だが、会話が無いよりはるかにましな戦いが出来る!

 

ザラ隊とジュール隊は地球軍第6艦隊に襲い掛かった。
ハイネとショーン、ゲイルは前面で敵と対峙する。レイとルナマリアもそれに加わる。
敵の新型モビルアーマー、ユークリッドはできるだけ相手にしない。牽制だけに留める。
「はっ! こいつら、ほんとどうしようもねえって感じ?」
グフが近づこうにも、速度が違う。
「横と後ろはビームシールド無いみたいよ!」
ルナマリアはセイバーの機動性を生かしてユークリッドと渡り合う。
「隙あり!」
――ついにユークリッドが被弾する!

 

「ちい! やられちまったか! だがまだまだ!」

 

ユークリッドに被弾したと言うだけだった。だが、ザフト軍の士気は上がる。
そしてユークリッド隊はより慎重に、ザフトのモビルスーツに注意を払わざるを得ない。
ユークリッド隊の作り出す鉄壁の防御が破れたのだ。

 

ルナマリアは巧妙に、味方の陣の前にユークリッドが後ろや横面を晒すように誘導する。
そして――それを逃すマユではなかった。
「今よ、射撃管制、私に回して!」
マユが叫ぶ。
「「はい!」」
マユのデスティニーのM2000GX 高エネルギー長射程ビーム砲発射に合わせ、ガナーザク達のM1500 オルトロス高エネルギー長射程ビーム砲が火を噴く。
横を向いていたそのユークリッドは、長距離砲を合わせて散弾のように使うマユの戦法に敗れ撃墜……
「さぁ、まだまだいくよぉ!」
その撃墜されたユークリッドの開いた隙間から、艦船を狙って長射程ビーム砲がつるべ撃ちに撃たれる。特にデスティニーのM2000GX 高エネルギー長射程ビーム砲はその威力を充分に発揮し、3隻の敵戦艦を撃沈した。
第6艦隊は若干油断していたと言えよう。思いもしない損害を被った。

 

「アスランもイザークもやるではないか。さて、そろそろ行くかな」
クルーゼは不敵に笑う。
軍事ステーションの救援要請を聞いて集まってきた緒隊も集結している。
それが、クルーゼの指揮の下、地球軍に向けて攻撃に入る。

 

クルーゼの指揮によるザフト軍の攻撃は狡智をを極めた。数で押していたはずの地球軍の陣形にほころびが現れる。所属艦の撃沈報告が続き、ホフアソ少将は一瞬、撤退するかと考えた。だがまだだ。まだ第8艦隊がいると思い直す。

 

ザフトの誰もが予想しなかった時に第8艦隊は現れた。
第8艦隊の前にはすでに一隻の戦艦もいなかった。皆他の艦隊に対応していたのだった。ザフトには既に一隻の予備兵力も存在しなかった。
ハノレパートソ准将は叫んだ。
「全軍突撃、軍事ステーションを落としちまえ!」
「ようし!」
「予備部隊を」
「ぶつけろ!」
地球軍の各艦隊は温存していた予備兵力をザフトにぶつけた!

 

「もうだめだ……」
第8艦隊を確認した時、軍事ステーション司令官クリスティアン・ド・ラ・クロワ・ド・カストリは呻いた。
「司令官! 何を気弱な! まだまだやれます!」
「う、うむ、そうだな」
その時オペレーターが叫んだ。
「Nフィールド方面の艦隊……押し出して来ます! あ……マルクス、レーニン、トロツキー通信途絶!」
ネオの第3艦隊の攻撃である。一撃でザフトの戦艦3隻を葬ったのはネオの乗艦『ガルガリン』の特装砲『麒麟Mk.1――蝕』であった――!

 

「わはは! 前進! 前進じゃ! いっちょ、ぷわぁーっと行こう!」
「大官寺艦長!」
ネオは焦るが、貫禄が違う。ブリッジの皆は首をすくめて大官寺の言葉に従い、単艦で突出を続ける。
「ほれ、撃ちまくれ! スピードを上げろ!」
当然被弾もするが、幸い複合和紙装甲が役目を果たしている。
そして――とうとう軍事ステーションを指呼の間に捉えた!
「そりゃ! 目の前の軍事ステーションに撃ちまくれ!」

 

「Nフィールド、第13ブロック、被弾!」
だめだ……
軍事ステーションに直接被害を受けた事で、カストリ司令官の胸に再び絶望が兆した。もっとも戦力が集中しているNフィールド方面でさえこれなのだ……
「敵艦隊に、停戦の申し込みをしてくれ」
「司令官!」
「いいんだよ。もういいんだ……」

 

軍事ステーションからの停戦の申し込みをコーブアソ少将は受諾した。条件に、軍事ステーションの引渡しがあったからだ。その代わり、ザフト軍の本国への撤退は妨害しない条件である。
このコーブアソ少将の判断は、歴史上多くの賛同者と、同じ位多くの批判者を生む事になる。
カストリにとって不運だったのは、電波のクラッターにより第8艦隊ではない新たな艦隊の出現が報告された事だった。実はこれは予備隊として第3艦隊から分派されたユークリッド隊で、実数より大きく表示されていたのだった。
更に、大官寺の指揮によるガルガリンの突出により軍事ステーションが攻撃を受けた事を、第3艦隊全体が押して来たと誤認した事である。
実はこの時点で未だ軍事ステーション内にはモビルスーツ300機を数え、プラント本国から援軍が来るまで軍事ステーションを維持できた、と言う者もいたのである。

 
 
 

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