Seed-Crayon_3-384_3-4

Last-modified: 2008-06-19 (木) 18:14:53

ある愛の物語(キラ&ラクス編)・第4話
 
~数週間後~
 
キラ 「ラクスさん。起きてる?」
ラクス「あ、キラ先生、おはよう御座います。今日も『前の彼女』の話ですか?」
キラ 「ま、まあね」
 
 キラはラクスに笑顔でそう言われると少し苦笑しながら返して、前の彼女の話を始めた…
 彼女の記憶が失われる前の、一緒にいた時のことを…
 
キラ 「それで、彼女が怒っちゃってさ~」
ラクス「それはあたり前ですよ、ふふ」
 
 何か思い出すきっかけになればと思い数種間前から、あの時はどうだった、そしたら彼女が…というような話をしたが、彼女の反応は新鮮で、それが逆にキラの心を締め付ける。
 
キラ 「あ、すいません。僕、回診の時間なんで…これで」
ラクス「はい…あの、また来て下さいね」
キラ 「は、はい…」
 
 少し嬉しさと辛さの入り混じった顔でキラが病室を出ると、ドアの前にはアスランが心配そうな顔でキラに話しかけた。
 
アスラン「どうだ?彼女は?」
キラ  「いや…まだ…」
アスラン「そうか…」
 
 そう言って少し肩を落とすキラに、アスランはポンと手をのせる。
 
キラ  「でも…僕はまだ彼女を『思い出』にしたくないから…」
アスラン「えっ?『思い出』?」
キラ  「いや、こっちの話…アスランも回診の時間だろ?早く行こう」
 
 アスランはキラの言った『思い出』がよくわからないらしく、少し首をかしげながら、二人はそれぞれ回診へと向かった…
 
~そんなある日の夜~
 
看護婦「あらあら、ラクスさん39度も熱があるわよ?」
ラクス「けほ、ほんとで、けほ…けほ…ですか?」
 
 看護婦はラクスから受け取った体温計を見て少しおどけた感じで言ったのを
 ラクスは少し申し訳なさそうに言った
 
看護婦「いいのよ別に、こういう時は無理しちゃダメですよ」
キラ 「どうしたんですか?」
 
 ラクスが看護婦とやり取りしている最中、診察を済ましたキラが、心配そうな顔をして立ち寄った。
 
看護婦「あ、ヤマト先生。いや、彼女なんか熱出しちゃって…」
ラクス「心配…けほ…かけてすいません…けほけほ」
キラ 「そんなに気にしない、だから今日はゆっくり休んでくだいよ」
ラクス「そ、そうですか?」
看護婦「ほらほら、だから寝た寝た」
 
 ラクスは看護婦にそう促されると、無理やり布団をかけられ仕方なく床についた…そう時間が経たない内に彼女は寝息を立て始めた…
 
看護婦「じゃあ、私はこれで…先生も明日がありますからはやく帰ってくださいね」
キラ 「は、はい」
 
 看護婦にそう言われて『はい』とは言ったものの、ラクスが心配だったのか、キラは近くにある椅子を引っ張りだし、彼女のベットを側に腰掛け、あの事故にあった時のことを不意に思い出していた…
 
 
~野原家~
 
しん 「どうしたの~? 元気ないのか~?」
シン 「しんちゃん、どうしたの?さっきから」
 
 しんのすけは心配そうに小さな虫かごをかじりつく様に見て、必死に何かを話しかけていた…あの時ラクスからもらった、てんとう虫の幼虫のようである。
 
しん「昨日まで、ずっとお元気だったのに、今日は何だか弱っているんだぞ」
シン「ん~どれどれ?、あ、ホントだ…あんまり動かないね」
 
 その幼虫は中に入れられている葉っぱにしがみ付いているだけで、それを食べるわけでもなくじっとそこに止まっている。
 
みさえ「しんのすけ~~、シンく~~ん、もう寝なさ~い」
しん 「え~~でも~~」
シン 「大丈夫だってしんちゃん、明日になったらまた元気になってるって」
しん 「ほんと?」
シン 「うん。だから、今日はもう寝よ」
しん 「ほ~い」
 
 てんとう虫が心配で寝たくないというしんのすけをシンは優しくなだめ、二人は布団のある部屋へと行った…
 
~翌朝、病院~
 
ラクス「…ん?」
 
 ラクスはカーテンの隙間から入ってくる朝日で目を醒まし、少し状態を起こす。
 隣には自分のベットに座りながらもたれているキラの姿があった…。
 
ラクス「先…生?…ふふ、かわいい寝顔…」
 
 ラクスは微笑を浮かべながら、おもむろにキラの頭を撫でた…
 その瞬間、頭の中にある映像が流れ込んできた…
 事故に遭ったあの時、あの瞬間の映像が…
 
キラ 「ん…ん?あ、おはよう御座いますラクスさん!」
ラクス「あ…おはよう御座います」
 
 飛び起きたキラに、少し茫然としていたラクスは素っ気無く返す。
 
キラ 「ラクスさん、もう大丈夫ですか?」
ラクス「あ、はい、もうすっかり…」
 
 まだあの映像が気になるラクス
 
キラ 「よかった…じゃあ僕はこれで…
    診察の準備がありますので、ラクスさんはまだゆっくりしててくださいよ」
ラクス「あ、ちょっと…」
キラ 「何です?」
 
 自分の安否を確認して安心したキラが病室を出ようした時、ラクスは呼び止め…こう言った…
 
ラクス「ラクス…ラクスで良いですよ」
キラ 「えっ?今なんて…」
ラクス「ラクスって呼んでくれませんか? そう呼ばれるのが、なんだか懐かしくて…」
 
 ラクスの思いもしなかった申し出に少しキラは唖然としていたが、すぐ満面の笑みを浮かべてはい喜んでといって部屋を出て行く。
 キラの足取りは軽かった。
 
 
~野原家~
 
シン 「しんちゃん!!はやく来なよ!ほら」
しん 「も~~う。そんなにはしゃいじゃって、子どもだな~」
シン 「ほっとけ(苦笑」
 
 二人はてんとう虫のかごをそっと覗いた。
 そこには、昨日あれほど動いていなかった幼虫たちが、さかんに動いて一生懸命葉っぱを食べている姿があった…
 
 
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