Seed-Crayon_5-044_1

Last-modified: 2008-06-30 (月) 18:05:32

きょうだい【その1】
 
 春日部で人気の携帯ペットゲーム『ぴよこっち』。ここにも、夢中になっている少女が1人…
 
 ~メイド喫茶『あ~くえんじぇる☆』・開店前~
ムウ  「どうした?」
マリュー「ステラの仕事の邪魔になるから、あのゲームを取った途端、怒り出しちゃって…」
ムウ  「ステラ、君の大事な物を取り上げたりするものか。だから今はたのんだぞ」
ステラ 「嫌…ほうっておいたら…シン(つけた名前)、いなくなっちゃう…」
ムウ  「んー。いっそのことアウルに預けたらどうだ?」
 
 ~お仕事終了~
アウル 「だーめーだ、まだ返せねえ!」 ←はまっちゃった
ステラ 「嫌!返してっ、返してっ…!」
 
スティング「おいやめろよアウル!ステラが泣いてるじゃねぇか!」
 
 アウルからぴよこっちを取り上げる
 
スティング「ほら、取り返してやったぞ。だから泣くなよ、ステラ」
ステラ 「うん…」
アウル 「…なんだよ、いっつもステラの味方ばかりしやがって!」
スティ 「おいおい…そういうわけじゃなくてだな。
     今回は明らかにお前が悪……あっ!待てよ、アウル!」
 
 スティングの制止を聞かず、アウルは家から飛び出してしまった…
 
          *          *          *
 
アウル 「――スティングの馬鹿野郎…ステラもすぐ泣くなよ……
     ちょっとぐらい貸してくれたっていいじゃんか…」
 
 愚痴を言いながら、夕暮れのかすかべをトボトボ歩く。
 しかし、いくら愚痴を呟いても気分は晴れない。
 二人の名前を口に出すたび、寂しさが募るばかりだった。
 
みさえ「…あら?アウル君じゃない。どうしたの?そんな顔しちゃって」
アウル「みさえさん…」
 
 母の面影を重ね、密かに慕っていた(恋愛感情に非ず)みさえに会い、アウルは自分の愚痴を聞いてもらいたい…甘えたいという衝動を抑えることができなくなった。
  
アウル 「きっとあいつらは僕のことが嫌いなんだ。
     二人だけじゃない。ネオだってステラだけやたら可愛がるし、
     スティングのことは、いつもしっかりしてるなって褒めてる。
     でも僕は可愛がられたことも、褒められたこともない」
みさえ 「アウル君…」
 
 いきなり泣き出したアウルをなだめ、それからは嗚咽混じりの彼の話を黙って聞いていたみさえが、この時初めて口を挟んだ。
 
みさえ 「私も、それはアウル君が悪いと思うわ」
アウル 「…みさえさんまで…僕…」
 
 信じていたみさえにまでそう言われたアウルは、まるでこの世の終わりのような顔をする。
 
みさえ 「だけどね」
アウル 「?」
みさえ 「こうしてアウル君がすごく悲しいって気持ちになってるのは、
     今日のことだけが原因じゃないんでしょう?」
アウル 「…はい。今日みたいな喧嘩は、けっこうあるんだけど。
     いつも僕が悪いわけじゃない。ステラが暴走して僕の大切な物を壊したり…
     でも結局、最後には僕が謝らされて終わりなんだ。ステラが可哀相だって言われて」
みさえ 「うん。さすがにこれまでの喧嘩全部、アウル君が悪いなんて私も思わない。
     アウル君が謝るなら、あっちもそれまでのことを謝るべきよ」
アウル 「じゃあ、どうすればいいのかな…」
みさえ 「そうねぇ」
 
 うーん、と顎に右手の人差し指をあて、何かを考えるみさえ。
 
みさえ「…とりあえず、ウチで晩御飯食べましょ」
 
 
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