さらば愛しき人よ!だゾ・その2
「うひゃあああああああああああ!!??」
最寄りのザフト軍基地に立ち寄ったシンとしんのすけを出迎えたのは…基地の総力をあげての総攻撃だった。
基地中の対空砲が唸る、ありったけのMSが発進して迎撃する、もの凄い歓迎ぶりにシンは涙がでそうになった。もちろん違う意味で。
しん 「シン兄ちゃん!こんなに歓迎してくれるなんてもしかしておら達…すごい人気者?」
シン 「そんなワケないだろ!クソ、何故か通信が繋がらない!チャンネルが違うのか?」
しん 「おお~!背中に羽がはえたロボットがこっちに来るゾ!」
シン 「バビ、いやディンか!しかしアイツ等凄い殺気だな…
ザフトのMSを撃墜するワケにもいかないし、ここは全速力で逃げるぞ!
しんちゃん、しっかり捕まっていろよ!」
しん 「ブ・ラジャー!」
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ザフト兵「隊長!アンノウンは我々に背を向けて逃走する模様です!攻撃命令を…な、何?速い!」
隊長 「なんて速さだ…あっという間にレーダー範囲から消えるとは!
地球軍の新型か?だとしたら何と恐ろしい……!」
銀髪の男「…ちっ!ジョシュアであんな事があったばかりだと言うのに…地球軍め!ナメた真似をッッ!」
* * *
シン 「どうなってるんだ?ここがコズミック・イラの世界だってのはもう間違いないみたいだが…
ザフトの基地の近くに行っただけで、いきなり攻撃を受けるなんて」
しん 「ふう…オラ、もう腹ペコで死にそうだゾ…」
シン 「ゴメンしんちゃん。こうなったらどこかの街の近くに降りて…ん?」
しん 「どうしたの?」
シン 「この熱源反応は…近くで戦闘行為が行われている?北東12キロ…何か気になるな」
しん 「シン兄ちゃん行ってみようよ。もしかしたら困っている人が助けを求めているかも!
正義のヒーローとしては見過ごせないゾ!
それにお助けしたら、キレイなおねいさんがお礼にオムライス食べさせてくれるかも…えへへへ」
シン 「何か動機が不純だけど…気になるのも確かだ。よし行こう!飛ばすよ、しんちゃん!」
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・・・
しん 「シン兄ちゃんあれみたいだゾ!
ん?なんか…どこかで見たことがあるような白いお船と青い羽のロボットが、
たくさんのロボットによってたかってイジられているように見えるけど…?」
シン 「そ、そんな…そんな!何で『アレ』がここでディン相手に戦っているんだ!」
数十機はあろうかというディン相手に互角以上に応戦する『それ』は…伝説の戦艦アークアンジェル、その艦載機スカイグラスパー、そして……後に『最強』の名をほしいままにする自由の翼を持つザフトの最新型MS・ZGMF-X10Aフリーダムであった……
しん 「……お助けしなくていいの?」
シン 「様子を見よう。状況が不明だし、俺達が出て行っていいものかどうか……」
* * *
ミリィ 「ディン4機、なおもAAに接近!
キラと少佐が頑張っていますが、数が多すぎて対処しきれません!」
マリュー「くっ!もう少しでオーブに辿りつけると言うのに!
キラ君もまだ、あのフリーダムというMSを完全に使いこなしていないし…
ジョシュアでの出来事でクルーの士気が下がっている!このタイミングでザフトの部隊に襲われるなんて!」
キラ 「しまった!撃ちもらした敵がアークエンジェルに取り付いた…!」
ムウ 「クソ!これじゃ撃てねえ!撃ったらアークエンジェルにも損害が出ちまう…マリュー!」
サイ 「取り付いた敵MSが近接用武器で本艦を攻撃しています!このままじゃもちません!」
カズィ 「うわあああっもうダメだあーー!」
その時、アークエンジェルのブリッジをディンの一体が狙いをつけた。ブリッジの全員が凍りつく。
いつかの時と同じ状況…あの時はキラが助けてくれた。だが今度は助けてくれる者は誰も………いた。
ズガアァァァァン!
マリュー「え……?」
その瞬間、アークエンジェルに取り付いたディンが全て瞬く間に撃墜された!
だがコクピットは狙っていない。推進装置を破壊しただけだ。
そしてマリュー達は見た…赤き怒りの翼を持つ未知のMSを…!
* * *
シン 「あ~あ…やっちゃった。いいのかなぁ一応友軍機なのに撃墜なんかしちゃって……」
しん 「シン兄ちゃん!キラ兄ちゃんやマリューおねいさんのおピンチなんだゾ!
ここでお助けしなくてどうするの!」
シン 「へへっ分かってるよ…よし!ひさびさに元ザフトのスーパーエースの力、見せてやるぜ!
行くぞしんちゃん!」
しん 「ブ・ラジャー!」
暁の戦場にかつてザフトが総力を上げて造りあげた最強のMS、デスティニーガンダムが降臨した。
人知を超えたスピードでザフトのMSに迫り…フラッシュエッジを投げ、ビームライフルを撃ち、アロンダイトで斬りつける。
その強さは、その戦い見ていたキラでさえ戦慄させるほどのものであった……
幾多の戦場での実戦経験、そして春日部で生活している内にいつの間にか身についた精神的余裕。それらがシンを戦士として究極の境地に導いたのだった。……本人は気付いていないが。
シン 「何であんた達なんかに…と。これで全部やっつけたかな?」
しん 「うん。みんな逃げていくみたいだゾ。オラ達の大勝利~!ワ~ハッハッハッ!」
シン 「後の問題はあっちか。さて、どう対応すればいいのかなあ…」
* * *
マリュー『こちら元地球連合所属、アークエンジェル。本艦の援護をしてくれた行為に感謝しますが…
そちらは何者ですか?所属と氏名、目的をを教えられたし。繰り返す…』
シン 「まいったなあ。どう答えればいいんだ?まさか本当の事を言うわけにもいかないだろうし…」
しん 「ううっ…オラ、もうお腹が減ってもう動けないゾ……」
シン 「しんちゃん…くっ、しょうがない!アークエンジェル、応答願う!こちらは……」
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・・・
マリュー「どう?あのMSのパイロット、なにか言ってきた?」
カズィ 「はい。事情を説明するために本艦への着艦許可を求めてきています。
ただそれには2つ、条件があるとか…」
マリュー「条件?」
カズィ 「自分達が乗っている機体には手をふれない事、それと…その…オムライスが食べたいそうです」
マリュー「は、はあ?お、オムライス?」
* * *
シン 「……どうも。(うわ~おなじみのメンバーがずらりと揃っちゃって…)」
ムウ 「さっそく聞きたいんだけど、君は何者だ?あのMSも普通のシロモノじゃなさそうだが」
シン 「(ここは適当にごまかしておいた方がいいみたいだな)俺の名前はシ…野原シンタロー!
今、食堂でオムライスを食べているのは弟のしんのすけだ!
俺達はオーブの国民だ…怪しいもんじゃない。」
マリュー「でも、あのMSは…」
シン 「オーブで密かに新開発中の新型さ。俺はモルゲンレーテのテストパイロットなんだ」
キラ 「新型?!アストレイ以外の機種もオーブが造ってるなんて…」
ムウ 「それにしては何か……」
シン 「それより今度はこっちが聞きたい。何で連合の戦艦がこんな所をうろうろしているんだ?
いや…さっき、”元連合所属”って言ってなかったか…?」
マリュー「うっ…しょうがないのよ。アラスカがあんな事になってしまって…
本艦は脱走兵扱いにされて原隊に戻るわけにもいかなくなって…それでオーブに向かう途中だったの」
ムウ 「もうニュースで見たんだろ?
ザフトがパナマを総攻撃すると見せかけて、連合軍の本拠地アラスカに総攻撃してきたのさ。
俺達はユーラシアの部隊と一諸に捨て石にされそうになってな」
キラ 「連合軍はザフトを残存部隊とアークエンジェルごとごとサイクロプスに…何とか逃げ出せたんだけど……」
シン (アラスカ?パナマ?サイクロプス?…
これって昔、アカデミーで習ったオペレーション・スピットブレイク?!
それでアークエンジェルがオーブにって、もしかして……もしかして!)
ムウ 「しかしキラ。お前が生きているって分かればオーブのお姫さん、泣いちまうかもしれないぞ?」
キラ 「そんなムウさん。カガリが僕の事で泣くなんてそんな…あるかなあ、カガリなら」
シン (間違いない!ここは「2年前の」コズミック・イラの世界なんだ…!)
しん 「おねいさ~ん。オムライスおかわり~~。」
ミリィ 「……あんた、子供のくせによく食べるわねえ……」
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