Seed-NANOHA魔法少年_第01話

Last-modified: 2008-04-29 (火) 17:55:11

「くっそぉ……」
少年は意識を朦朧とさせながら目の前の人型のロボットを見つめる。
自分の視界に移る、そして自分が乗っているロボット。それはこの世界は知られている兵器「MS」(モビルスーツ)
そんな物騒なものに乗っているには、まだ似つかわしくない、いまだ幼さを残す少年は、ただ目の前の漆黒の宇宙空間に浮かぶ真紅のMSを見る。
MSの状態が悪化していることを知らせるアラームですら、今の彼に耳には入っていない。
いや、もう視覚以外の感覚が彼には感じられないほど、彼の意識はよわよわしい。
そんな、下手をすればほかのMSに攻撃されてもおかしくない状況で、彼はいまだにMSを見据えながら、意識はだんだんと遠くなっていった。
「くっそぉ……」
そしてその言葉を最後に、彼の意識は闇に閉ざされた。
しかし、なにか暖かい、そんな気分が自分甥s期に入り込む。
死ぬとかそんなものではない、なにか別の温かみが自分を包み込むように……

 

「ん?」
彼は目を覚ますと、いつの間にか自分はベッドで横になっていた。
いまだに意識ははっきりとしていないが、周囲見渡すと見慣れないものばかりだがが、
さまざまな備品があることからどこかの施設なのだろう。
(ミネルバじゃない?別の艦に拾われたのか?)
少年は状況を確認しようと起き上がろうとするが、ズキリと体中が痛む。
そのとき、彼は首になにか奇妙なものをつけていることに気づいた。
(なんだ、これ……)
彼はそれをまじまじと自分の首につけられているペンダントを見ると、なにかに似ていると思った。
真っ赤な、真紅の翼を模したペンダント。
こんなものもってたか?と思案するが、そんな記憶はまったくない。
だが、それが自分ガ乗っていた愛機の翼に見えた。
そして気づいた、自分が今までどこにいたのかを……
「そうだ、戦争は!!プラントはどうなったんだ!?」
そう思うと、少年は体中の痛みを無視して飛び上がる。
いったい、オーブとプラントの戦闘はどうなったのか。
ここがどこかの施設や戦艦の中ならば、その結果を知っているはずだ。
一瞬、ここは敵国のものかと思えたが、医務室に人っ子一人いないということでそれは却下した。
わざわざ怪我をしているが動ける捕虜を一人にする馬鹿なんてさすがにいない。
少年はそう判断すると、さっと医務室から飛び出す。
「きゃっ!」
ちょうど医務室のドアが開いたと同時に、看護士らしき女性が現れ、予想より早いタイミングでドアが開いたことに驚きを見せた。
しかし、そんなことを気にせず、シンはその女性看護士に寄りかかった。
「おい!戦争は!プラントは!いったいどうなったんだよ!?」
「え……え?……」
しかし、看護士の女性は彼の言葉どころか、驚いて少年を見る。
まあ、さっきまで寝ていたはずの少年がいきなり自分に詰め寄るのほど元気でいるのだ。
しかも傷も浅くはなく、現在は安静にしていなくてはいけないのだ。
驚いても無理はないだろう。
「ああ、やっと目を覚ましたのね」
そこまで大きな声ではないが、それでもはっきりと聞き取れる声に少年は詰め寄るのをやめて看護士を開放し、声のほうを見る。
その声の正体は一人の老婆で、老婆は少年を見てにっこりと微笑む。
その笑みは、老人特有の温かみがあった。
「ミ…ミゼット提督!?」
しかし、看護士はそのおばあさん、ミゼット。クローベルをみて、かなりの驚きの顔を浮かべていた。
それを見ると、かなりの有名人のようだが、自分はこのような人など知らない。
自分がミネルバにいた間に本国で有名になった人だろうか……
「ちょっと二人で話したいことがあるから、少し席をはずして組ませんか?」
ミゼットと呼ばれる老婆の言葉に、は、はい!と緊張した面持ちで看護士はさっさとこの場を立ち去った。
よほどの有名人だろうか……
「さあ、積もる話もあるでしょうから、中に入りましょう、あなたは怪我もしているんですから」
「は、はあ……」
少年はそのミゼットという名の老婆の持つのほほんとした雰囲気に肩透かしの食らったように小さくつぶやき、自分にあてがわれているであろう病室に戻っていった。
「じゃあ、まずはあなたの名前を教えてくれる?」
ミゼットの、初対面にはまず行う質問に、少年は落ち着いたのか、少しむすっとした顔で答える。
「シン……シン・アスカ」

 

その後、シンはミゼットの話を聞いて、唖然とすることとなった。
まず自分は道端で倒れていて、それをこのミゼットという老婆に助けられたということ。
まあ、それは別にいいのだが、それには引っかかることがある。
道端?
自分はMSにのっていて、挙句の果てには宇宙にいたはずだ。
何で道端で倒れてなくてはいけないのだろうか?
そのシンの反応を見て、やっぱり……とミゼットはうなずいた。
「じゃあ、この世界のことを説明しなくちゃいけないようね……」
そして老婆は言う。
ここはミッドチルダという世界で、魔法を使う世界ということを。
「は?」
ま……ほう……?
魔法というとあれだ、ファンタジーなどの世界によくある、杖で炎や水を操る人たちや、
小さな子供などが見る、女の子が杖を持って戦ったり、悩みを解決したりするあの魔法?
(夢なら覚めろ……覚めてくれ……)
どこの世界に、そんな世界が現実にあるというのだ。
冗談は顔だけにしてくれ、略してJK。
だが、そんな反応は読めていたのか、ミゼットは目の前でその魔法というものを使うといった。
老婆は手をかざすと、そこから光の玉を作り出したのだ。
それを驚きながらも、シンはまじまじと見た。
そして、この世界にはこの魔法を使い、さまざまな時空世界で起こる事件を解決する時空管理局というものがあり、彼女もそこで働いている。
まあ、そんな世界があるということは何とか理解したシンだが、なぜ自分がそのような世界へきたのか……
その理由はミゼットはすぐに教えてくれた。
というより、今まではそれを説明するための前置きらしい。
話にも順序があるということなのだろうか……
なんでも、たまに時空のゆがみなどが生じて、さまざまな人、物がこの世界に転移してくる、ということはあるらしい。
そういう人たちを、時空漂流者と呼んでいる。
しかも、そのほとんどが、管轄外の世界からやってくるものらしい。
「私はちょっとは顔を通る人だから、あなたの世界を探してもらっています。
いつになるかわからないけど、それまでに体を休めて、万全にしておきなさい」
そういうと、ミゼットはもう一度頬笑み、また来るから、といってこの場を去っていった。
これが、シン・アスカがミッドチルダのかかわり方だった。

 

あれから2週間、シンはいまだに病院での生活を続けていた。
病院にいる間、この世界のことをまったく知らないというわけにもいかず、自分を担当している看護士に頼み、
この世界についての本や、管理局についてなにか記されている本はないか?と尋ねた。
ずっと病室でいるので、暇でしょうがないというのも理由のひとつだ。
そして渡されたのがミッドチルダの歴史本と、時空管理局に関することが載っている雑誌だった。
それを見て、シンは頭を抱えた。
(あいつ、有名人どころじゃなかったのかよ……)
その雑誌に書かれていた、時空管理局伝説の3提督というコーナーにでかでかとミゼットの姿があったのだ。
その姿は自分にみせている表情ではなく、りりしく、頼もしくある表情だった。
ミゼットは、いまだに時間があれば自分のところに顔を出し、調子はどうか?などを差し入れを持って尋ねてくる。
伝説の提督、ともすれば忙しいはずなのにかかわらずだ……
倒れていた自分を助け、さらに聞いた話では自分の入院費までも負担してくれているこの提督に、シンは感謝の言葉が見つからなかった。
まさに命の恩人である。
そして、管理局のことも調べていると、それも驚くべきことばかりである。
特に質量兵器の廃止。
これにはほんとに驚いた。
質量兵器……ありたいていに言えば、拳銃や爆弾などのことだろう。
ビームなどの光学兵器は……どうなのだろうかは微妙だが、どうやらこの世界ではそのようなものはないらしい。
ここでは、その質量兵器の変わりに、環境にクリーンな魔法を使っているらしい。
そして、管理局の管轄内のほとんどがそれを進めているらしい。
それを見て、シンは素直に驚いた。

 

果たして、自分達の世界ではこのようなことができるだろうか……
そして、シンはあるページを見る。
それは、将来の時空管理局員になるための訓練校に関するページだった。
さまざまな年代の人たちが、自分達の夢を実現させようとがんばる姿に、新はある姿を思い出す
それは、自分のアカデミー時代であった。
ひとつの目標に向かって進んでいく姿に、なにか自分の姿かぶらせているのだ。
おそらく、この訓練生もなにかの思いを秘めているのだろう。
そしてページをぺらぺらとめくっていると、ある人物の姿があった。
わずか13歳で戦技教導隊に所属し、Sランクを持つ管理局のエース・オブ・エース、高町なのは(現15歳)
これがいったいいつの頃の雑誌かわからないが、何でも彼女は9歳のときから管理局に入り、
管理局でも空中戦闘のトップエリート達がそろう部隊に所属しているという。
ザフトでいうフェイスのようなものだろうか……
「9歳で働いてるって……どうなってるんだよこの世界……」
自分達は15歳で成人と認定されるが、それでも9歳の子供が働いたりはしない。
どうなってるんだ、この世界の就職事業は……とシンは本気で疑問に思った。
「どうしたの?そんな顔して」
突然の声に、シンははっとしてそのほうを向く。
そこには、ミゼットがいつもの笑みを浮かべていつの間にか自分の前にいたのだ。
「いや、9歳でこういう仕事についてるってあったから……どういうやつなのかなって思って……」
シンがの言葉に、ミゼットは彼が見ている雑誌を覗くように見る。
「ああ、この娘ねえ」
ミゼットはその雑誌に移っているなのはをみて、大きくうなずく。
「知ってるんですか?」
シンの何気ない質問に、ええとミゼットはうなずく。
「何回か、彼女とそのご友人に護衛そいてもらったことがあるんだけど、本当にまっすぐでいい娘よ」
うれしそうに話しているミゼットに、そうですか、とシンはまじまじと見る。
そんなシンを、ミゼットはさっきから変わらない表情で見る。
「管理局に興味がある?」
ミゼットの言葉に、え?とシンはミゼットを見る。
「いま、管理局は人手不足で、少しでもいい人材がほしいの」
そういってミゼットは静かに、それでいてまじめにシンを見る。
その顔に、今までの優しい老婆の姿ではなかった。
威厳に満ち溢れている、時空管理局の伝説の三提督の一人がそこにいた。
「もしかしたら、自分が本当にやりたいことが見つかるかもしれないわよ」
しかし、すぐにいつもの、やさしさに満ち溢れている笑みを浮かべた。
そんなミゼットを見て、シンはふと右を見る。
そこには、ここにくるまでに自分が着用していた、向こうではトップガンの意味する赤のパイロットスーツがかけられていた。
さらに、功績を得たものだけに与えられる勲章、フェイスバッジもつけられていたままだった。
それを見て、シンは少し考える。
自分の世界……コズミック・イラの世界はいまだに見つからない。
そして、今時分は何もできない。
そこに突然現れた、今時分ができること。
何より、自分はまだこの命の恩人に何もできていない。
これで、なにか恩を返せるなら……
シンは決めた。
「はい、やらせてください!」

 

そして、一人の少年の決意から、大体半年の月日が流れた。
「試験をクリアし、持って本校に入学した諸君らであるからして、管理局員、武装隊としての心構えを胸に……」
ここはミッドチルダにある時空管理局武装隊ミッドチルダ北部第四陸士訓練校。
未来の管理局員を育成するために学校である。
「平和と市民の安全のための力となる決意。しかともって、訓練に励んでほしい」
「はい!!」
訓練校の校長の挨拶とともに、訓練生は敬礼し、元気よく返事をした。
そこに、少し奇妙な形の敬礼をしたものがいる。
それはこの世界とは少し違う敬礼だった。
その敬礼をしている人物は黒い髪と特徴的な赤い目。
彼の名前はシン・アスカ。
時に、新暦0072年6月。
シン・アスカは、新たな一歩を踏み出そうとしている……

 

「しっかし、まさかアカデミーに逆戻りなんてなぁ……」
シンははぁ、とため息をついて周囲を見る。
周りはこれからともに過ごしていく仲間達でもあり、実力を競い合うライバルでもある。
このような場に立つと、シンは以前の……ザフトでのアカデミー時代を思い出す。
というよりも、自分に魔力がある事にも驚いたのだが……
あの後、意識を失っているときの検査で、自分に魔法が使えるようになるリンカーコアというものがあることがわかった。
だから、ミゼットは管理局に入らないか?とシンに進めてきたのだ。
さて、こっちではどうなるのか……とシンはこの訓練校で生活することになるルームメイトを割り振られるところへ向かおうとする。
「あぶ!」
「ん?」
突然、誰かとぶつかり、シンはそのほうを向く。
「あ、悪い、かんがえことして…て……」
シンはその人を見て驚きの目で見る。
「いたた……」
シンにぶつかって、しりもちをついているはずであろう人は自分よりもはるかに小さい、それも12、3歳くらいの女の子だった。
彼女もこの訓練校に入ってきたのだろうか……
たしかに、いわれてみてば自分は年上のほうなのだろうか……
きょろきょろと周囲を見ると、確かに自分よりも年上がいるが、どう見て自分よりも幼そうな人たちもいる。
これって意外と人気の職業なのか?
確かミゼットから聞いた話では、今管理局は慢性的な人手不足のはずなのに……
と、今はそんなことを考えている場合じゃなかった。
「大丈夫か?」
シンは、自分にぶつかって倒れている少女へと手を差し伸べる。
少女はうんと小さくうなずいてシンの手をつかむ。
「お前もこの訓練校に?」
シンは尋ねると、少女はまたもはいとすぐにうなずいた。
まあ、9歳で管理局入りしたやつもいるし、それもありなのかなと思ったときだった。
「二人一組のルームメイトは、当面のパートナーコンビでもある。試験と面接の結果から選ばれた組み合わせだ。円滑にすごせるよう努力するようにしておけよ」
そこに、ようやくルームメイトと部屋番号が割り振られたモニターが出現した。
シンは、いつ見てもこれにはなれない。
なぜ、何もないところに突然モニター……はまあゆるそう、なぜコンソールまでもが現れるのにまだ慣れていない。
(これって、魔法よりもSFよりなんだけどなあ……)
などと思っていたが、まあそれよりも今は部屋割り番号だ。いずれ慣れる。
シンは自分の名前が書かれている場所をさがす……
そして、ようやくその名前を見つけた。
相方は、スバル・ナカジマ……名前からして、男なのか?それとも女なのか……
ともかく、両方で使われそうな名前でもある。
そして、部屋番は……
「「32番……ん?(へ?)」」
シンは、横にいる自分にぶつかってきた少女も自分と同じ部屋番号を言って、彼女のほうを見る。
少女も、同じように自分を見る。
シンはまさか、と思いながら少女に尋ねた。
「お前が、スバル・ナカジマか?」
「あ、はい。シン・アスカさんですか?」
「ああ」
まさか、こいつがルームメイトとは……
自分も魔法に関してはド素人だが、それでも何か心配になってしまう。
そして何より……
男女二人組みって、何を考えているんだ、あの教官どもは……
しかもこんなに幼い子供と……
と、シンは部屋決めを行った教官達の脳を素直に心配した。
「あ、あの……これからよろしくお願いします。アスカさん」
新しいルームメイトとなる少女は、自分に礼儀正しくお辞儀をした。

 

魔法少年シン・アスカ、始まります。