「ふぅ」
最新鋭のXV級艦船「クラウディア」の艦長室で、クロノ・ハラオウンはため息を付く。
このクラウディアの艦長であり、提督としても活躍し、さらには執務官資格も持っている人物。
ハラオウンというファミリーネームからわかるとおり、フェイトの兄である(詳しく言えば義兄であるが…)
そんな彼は、一つの事件を任された。
「全く、してやられたよ……」
そこは、シンたちの世界、コズミック・イラの地球のある地域に、あるものがあった。
それはミッドチルダの艦船の備えられているアルカンシェル。
どうやらジャンクとして捨てられたものがこっそりと盗まれてしまったらしい。
こうなってしまうのも、ひとえに管理局の人員不足からなる。
人が少ないと、どうしても製造する船も少なくなる。
そしてそれを長期運用する事によって、予定よりも早く寿命を迎えてしまうときもある。
今回は、それが重なってしまい、戦艦を仮解体しておいて、順次本格的に廃棄するという方法をとっていた。
それで今回の事件だ。
話の内容によると、どうやらスパイがいたらしく、こっそりと転移して盗まれたらしい。
何とかスパイを捕らえる事に成功し、尋問を行ったところ、相手はボロを出した。
クロノはしらないが、尋問を行ったのは特別に呼ばれたのは猫を素体とした猫の使い魔らしい。
それを聞けば、クロノは頭を抱えるだろう。
「あいつら…」といいながら。
尋問を行った結果、どうやらブルーコスモスの仕業らしく、さらに言えば本局、地上本部にもスパイは数人いるという。
それを聞いた尋問を行った猫の使い魔は、なんと1日以内にすべてのスパイを捕まえたという。
そんな事は知らない(その時は別任務にでていたため詳しくは知らされていない)クロノ。
クロノはその盗まれたデータを見てさらにため息を付く。
そのアルカンシェルは、艦船の前半分はそのままで、後は基地にくっついているというものである。
ジェネレーター部分は盗まれていなかった事から、ただ発射台として使うのだろうか…
その前半分の艦船部分を見て、クロノは怒りが芽生える。
その艦船は、クラウディアに乗る以前に、自分達が長い間世話になった艦船「アースラ」だったからであった……
「はい、みんな集合!」
なのはの集合の声とともに、午前の訓練は終了をつげる。
メンバーはつかれたあ、と言う顔を前面に出していて、昼食へ向かおうと足を運ぶ。
あれ以降、ティアナもいつもの調子を取り戻し、機動六課は一段と団結力を高めた。
そして昼食を終え、各自少しの間休もうと思ったときだった。
「ん?」
シンは何かを蹴飛ばし、何を蹴ったのかと思い下を見る。
「これって……」
それは、何かのキーだった。
それもどこかで見たような気が……
「それって、フェイトさんの車のキーじゃ……」
エリオのことばに、ああとシンは頷く。
キーを見ると、フェイトのほかに数人の人の写真が入っているロケットがついていた。
おそらく家族のものだろう。
「しょうがない、渡しにいくか」
そういって、シン、そしてエリオは鍵を渡しにフェイトのところへ行く。
そしてロビーに入ったときだった。
「エリオじゃないか、久しぶりだな」
エリオは誰かに呼ばれ、そっちを振り向く。
その声に、シンは聞き覚えがあった。
友人とそっくりな声だった。
「どうしたんだよヨウラン……?」
周囲を探しても、声の主らしいヨウランの姿が全然見当たらない。
周囲をうろうろうろつかせると。
「俺はヨウランと言う名前じゃないんだけどな」
目の前にいる青い髪をしている男性の声にシンは驚く。
ヨウランの声にそっくりなのだ。
ヨウランに落ち着きがあったらこんな感じだろうか。
「あ、アスカさんは会うの初めてでしたっけ?この人はクロノ・ハラオウンさんで、本局で艦船の艦長をしている人です。それでいて提督でもあって執務官でもあるんです」
エリオの説明に素直に驚くシン。
だが、ちょっと不思議に思ったことがある。
ハラオウン?
「どうも、クロノ・ハラオウンだ。君の上官、フェイトの義兄だよ」
そのあと、フェイトの部屋に行くまで、3人は話をしていた。
「それで、クロノさんはどうしてここに?」
エリオはどうしてこんなところにクロノがいるのか気になった。
仕事で忙しいのではないか?
「ちょっとね。本来ははやてに用があるんだが、ついでに妹との顔を見ておこうと思ってね」
ちょっと顔を赤らめながらクロノは言う。
そんな彼の顔を見て、シンは苦笑する。
「わかりますよ、その気持ち。俺にも妹がいましたから」
シンの言葉にそうか、とクロノは言う。
シンの言う「いました」という言葉を汲み取って、これ以上深く追求しない事にした。
それに、はやてに用があるといったが、彼にも関係があることだったが、いまは伏せておく事にした。
「それで、君達もフェイトに用があるっていってたけど何なんだ?」
クロノの言葉に、シンはポケットから鍵を取り出す。
「どうやらフェイトさん、鍵を落としてしまったみたいで……」
エリオの言葉になるほど、とクロノは頷く。
そうこうしているうちに、3人はフェイト、そしてなのはの部屋へとやってくる。
どうやら鍵は開いているようだった。
そしてドアを開けるとそこには……
少し時間をさかのぼりここはなのはとフェイトの部屋。
「弱ったなあ……」
フェイトはあわてながら部屋のあちこちを探す。
「フェイトちゃん、どうしたの?」
そんな友人の行動に、部屋にはいてきたなのははどうしたのか尋ねる。
「それが、車の鍵を落としちゃったみたいで……」
それで慌てて探しているのだ。
さっき来ていた訓練用の服も探したけど見当たらない。
かばんの中にもない。
さらにはあちこち部屋を探したけどどこにもない。
それでフェイトは困っていたのだ。
「もしかしたら落し物のところにあるかも、いってみようよ」
その言葉にフェイトは頷く。
だがその前に、着替えなければいけない。
今フェイトは下着のままだ
フェイトは下着になってから気付いてあちこち探していたのだ。
この状態で誰かは入ってきても困る。
なのはも手早く着替えようとしたときだった。
いきなりドアが開いて、そこには3人の男がいた。
そして一瞬時が止まった。
唖然とする男達。
3人とも顔を真っ赤にしている。
いま、なのはは下着姿のままで、フェイトにいたってはブラすらない状態であった。
運よく手で大事なものは隠れていたが……
少し二人の思考が止まっていたが、すこしずつ復活していく。
見る見るうちに顔が赤くなり……
「「きゃああぁぁーーーーーーーーーー!!」
二人は同時に叫び、フェイトは布団で身を隠し、二人でとりあえず近くにある強力そうで硬いものを掴み、投げ飛ばす。
それは真っ直ぐと真ん中にいる一番背の高い人物の顔面に直撃する。
その男性は「ぐは」といいながら吹き飛び、倒れたときに頭を打ち、当たり所が悪かったらしく、気を失っている。
二人はキっと残りの二人を睨む。
しかし、そこには一人、シン・アスカしかいなかった。
「シン、どういうこと?」
布団に身をくるめたフェイトがシンに尋ねる。
その声はやはり怖かった。
「ああ、えっと……これを……」
そういってシンがとりだしたのは、さっきまで自分が探していた車の鍵だった。
そして反対方向を見ると、そこには鼻時を出しながら顔を真っ赤にしたエリオが倒れている。
どうやら刺激が強すぎたらしい
そして、真ん中に倒れているのは……
「お兄ちゃん?」
「なるほどなあ」
はやては今日は久し振りに仕事が少なく、ヴィータもシグナムも出かけていたので、リィンフォースと一緒にシャマルのいる医務室へいて話をしていたのだ。
そこで、鼻字を出しながら倒れていエリオを抱えたフェイトと、顔が赤くはれているて、そして当たり所が悪かった後頭部から血を流していたクロノを抱えたシンとなのはがやってきたのだ。
医務室でシャマルが治療をして、リィンフォースが手伝っている中、はやては3人から事情を聞いていた。
「つまり、シン、そしてエリオはフェイトちゃんが落とした鍵を届けるためにフェイトちゃんとなのはちゃんの部屋へ」
「はい」
「そんで、クロノ君は本来は私に用があるんやけど、その前にフェイトちゃんが元気にしているか確認しようと顔を覗かせた」
「そういってました」
はやてはふむ、と少し考えるようにして、今度はなのは立ちのところへ目を向ける。
普通は隊長と言うべきなのだが、今はほとんどプライベートのようなものなので、普段どおりに話をしている。
「フェイトちゃんは着替え中に鍵がないことに気付いて、下着姿でいろいろと部屋中を探し回ってた」
「うん」
「そんで、そこへなのはちゃんが部屋に入ってきて、フェイトちゃんが何か悩んでいたのですぐにかけつけた……うっかり部屋の鍵を閉め忘れて」
「う…うん…」
なのはは気まずそうに頷く。
そしてはやてはすぐに決断を出す。
「こういうアクシデントの場合、女性として二人の味方したいけど……今回は流石に二人が悪いわ」
はやての言葉に、うう……と二人は顔を下に向ける。
「それで、私に用って……なんなんやろ?」
はやての言葉にシンは判りませんと言う。
ただ、用があるとしか聞いていない。
はやては考えるが、当の本人は見事に撃沈しているので今は気候にも聞けない。
「う……うーん……」
その時、クロノより先にエリオが目覚めた。
「あれ、ここは……」
エリオは周囲を見渡す。
ここは確か医務室。
どうして自分はここにいるのだろう……
シンと一緒に、フェイトの部屋に鍵を届けにいったのだが、それ以降が良く思い出せない。
「あ、目が覚めたんだね」
ふと横を見ると、そこにはフェイトがいた。
「話はシンから聞いたよ。いきなり倒れたって聞いたからびっくりしたよ」
フェイトのことはにえ?と驚くエリオ。
「ああ、いきなりふらっと倒れたんだ。よほど疲れてたんだな」
ふと、二人の言い方に少しギクシャクしていて、何かエリオは引っかかるところがあった。
「エリオ、今日はもう休んでていいよ。疲れたまましても危ないからね。他の人には私が言っておくね」
なのはにまで言われ、本当にそうなのだろうと思ったエリオ、はもう一度ゆっくりと布団にもぐる。
そしてすぐに寝ていたため、疲れているのはある程度は本当だったみたいだ。
エリオが寝るのを確認して、ほっと一息つく一同。
あの事件前後の記憶が消えているもの助かった。
「よほど衝撃だったみたいだな……」
ふとつぶやくシンの言葉に、二人は顔を赤くしながら頷く。
ちなみにシンはもうあまり動じないのは……まあ簡単に言えばヨウランたちのせいだといっておこう。
やがてクロノが目覚め、後頭部に包帯を巻かれている事に驚く。
何故そうなったのか大方をはやてから聞いた。
「あの、お兄ちゃん。ごめんなさい……」
「クロノくんごめん。ちょっとやりすぎた」
二人が謝るがクロノもこっちこそすまないと謝る。
普通はギクシャクするようなものだが、それはフェイトが妹と言うこととなのはも小さいことから交流があること。
そして最大の理由は、クロノの妻がエイミィである事とだけいっておこう。
その後、クロノははやての部屋に連れて行ってもらって、本題へ移る。
「さっきの少年、シンから聞いたと思うが、今日はちょっとお願いがあってね」
そういって数枚の資料を展開させるクロノ。
「数日前、本局のほうである事件が起きた。一つの艦船のパーツの一部が持ち出されるという事件だ」
クロノの言葉に驚く隊長陣。
いつもまにそんな事件が。
「どうやら、管理局本局、そしてこの地上本部にもスパイが紛れ込んだらしくてね。今は捕まってるみたいだが……」
さらに言葉は続く。
「で、そのパーツはある世界へ持ち出され、このようになっている」
そして映し出されたのはとある世界のある渓谷であった。
そこにある基地が建設中みたいであった。
そこにある奪われた艦船の一部。
「こ、これって……」
なのははその艦船にも覚えがあった。
いや、見覚えとかと言うレベルではない。
「ああ、敵、ブルーコスモスは艦船アースラのアルカンシェルと艦船の一部を奪っていった。そしてそれを基地に接続して使おうって寸法らしい」
しかし、まだ建設中と言うのが助かる。
「だから、本局は現地の軍と共同戦線を張る事になったんだが……」
その明細書の一部にこう書かれていた。
「尚、管理局の部隊に、機動六課を迎えてほしい……プラント最高評議会議長、ギルバート・デュランダル」
この文に、はやて達が驚く。
なぜ、違う世界の人物が、それもかなりの大物が最近出来たばかりの自分たちの部隊の名前を知っているのだろうか……
「なんでも、君達のメンバーの一人の存在が不可欠らしい」
クロノの言葉に、フェイトは納得した。
「そうか……シンとレイはあの世界の出身だから……」
ただ、何故それをも彼が知っているかはわからないが。
「確かに、クロノ提督の言うとおりやけど、こっちもこっちで忙しいし……」
そうだ、自分はレリックの回収が残っている。
いつまた新しいレリックがあるともわからない。
「けど、何とかしないとあそこにすむ多くの人が危ない」
そうなると、答えは決まった。
「了解や。これより機動六課は、本作戦に参加します」
はやての言葉に、そうか、とクロノは顔をほころばせる。
何かを隠しているような顔だった。
「おにいちゃん、何か隠してない」
ついそういったが、誰も気にしていない。
フェイトの言葉にやれやれ、とクロノハ肩を落とす。
やはりこういうのは苦手だ。
「実は、既に騎士カリムと連絡をしていて、許可を得ていたんだ」
クロノ言葉に、はやてはやっぱり、といった顔でいる。
そうでなければここまでスムーズに事が進むはずがなかった。
「お前たちがいない間は、教会側でどうにかしてくれるらしい」
既にそこまで話が進んでいたのか……自分達をのけ者にして。
「それはちょっとひどくない?」
そういうはやての言葉に、すまないなとクロノは軽く謝る。
こうして、機動六課、艦船「クラウディア」、現地の軍「ザフト軍による「アルカンシェルゲート突破作戦」が開始された。
な「ついに開始されたアルカンシェルゲート突破作戦」
フェ「現地の軍との協力線になるのだけど、ちょっとしたいざこざが……」
???「次回!機動武闘伝まじかるしん第21話!!「アルカンシェルを突破せよ!!」にぃ、レディー、ゴーー!!」
シ「ばればれなうえに題名変えないでください!」
リⅡ「任せてください。……ふう……???さん!いいかげんにしなさい!罰として、このコッペパンは没収です!」
???「大佐ど……失礼しました、曹長殿!申し訳ありません!」
レ「…いいのかこれで?」
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