Seed-NANOHA_神隠しStriker'S_第27話

Last-modified: 2007-11-19 (月) 14:48:59

「本当は思ってるんでしょ?元の世界にいるコーディネイターも含め、僕以外は全て失敗作だってさ。」
「そんなこと…」
思ってない!!言葉が遮られる。
「だから傲慢な君は、アークエンジェルとフリーダムさえあれば、ナチュラルとコーディネイター間の戦争をとめられると思った。」
『パンツァー・アイゼン』
「違うのか、なぁ!?」
銃口から発射されるバインドに引っ張られ、腹部に蹴りが入る。
「うっ!?」
転がっていくキラ。
「違う、僕はそんなこと…」
「思ってない…。」
もう一人のキラが言葉をつむぐ。
「じゃあ、話を少し変えようか、キラくん。
君が再びフリーダムに乗ってから介入した戦闘…あれは一体なんのため?」
一歩ずつ、近付いてくるもう一人の自分。
「あれは…オーブを…。」
「だよね?それで、結果、戦闘は止まった…。
でもね、それは確に君のお陰かもしれないけど、謎の第三勢力が介入して、あれだけの被害をだせば、止まりもするよ。」
『バラエーナ』
キラを蒼い奔流が飲み込んだ。

激突する二色の光。蒼と紫。魔力光が弾け、空を走る。紫の魔力光が弾き飛ばされ、蒼い光との距離が開いた。
「くっ…。強いな…キラ・ヤマト…。(褒めてどうすんだよ!)」
「シグナムさんこそ、中々やりますね。」
険しい顔をしているシグナムに対して、涼しい顔のキラが言う。
「はぁぁぁぁあああ!!!」
シグナムの縦一閃を前にキラはフリーダムを空中へと放りなげた。
「ッ!?」
キラの両手に小型の環状魔法陣を展開し、タイミングを合わせて白羽取りにした。
「レヴァンティン!」
カートリッジを消費し、刃の蛇を作ろうとし、同時に蹴りをキラに向かって放とうとするが
「遅いよ。」
『クスィフィアス3』
シグナムをとてつもない衝撃が襲う。
フリーダムをキャッチ、キラは連結したフリーダムで今だ後退しつづけるシグナムへと狙いを定めた。

「もう、やめろぉぉおお!!」
キラはもう一人のキラへと声を張り上げて向かっていく。
「だ~いじょうぶだって、死なないから…。君もこうやって沢山のMSを落として来ただろ?」
放たれるいくつもの射撃をサーベルで弾きながらもう一人のキラが言う。
銃へとモードリリース。
撃ち返したそれはキラの胸を貫いた。
「う、あっ…。」
その場に倒れ伏すキラ。

「やめてください!キラさん!!!」
連結フリーダムの射線軸に入ったのはエリオだった。キラの頭上を覆う巨大な陰。キャロの飛龍、フリードリヒだ。
「エリオくんに…キャロちゃん…それにフリードまで…。僕と戦いにきたの?」
「「違います!僕たち/私たちは!」」
「止めに来たんなら無駄だけど…。」
『サーベルモード』
「エリオ、キャロ…下がれ、今のキラ・ヤマトに言葉は届かん。」
「じゃあどうすれば…。」
エリオが言う。
「今は魔力ダメージでのノックダウンが一番の方法だ。」
「なら、皆で戦いましょう!一人よりも二人」
「二人よりも三人で!」
エリオとキャロが言った。
「落とされても拾ってはやれん。キャロはエリオをサポートしろ、私はいい。」
「「分かってます!」」

キラは倒れたままだった。体から少しずつ何かが漏れだして行き、その度に少しずつ薄くなっていく体。
シグナムとエリオ、キャロ、フリードが戦う姿が見えた。

自分が世界最高のコーディネイターなんて知ったのは、わりと最近のことでそれまでは全然…。
ただのコーディネイターだと思っていた。
コーディネイターってだけでも凄いって思われるし、逆に嫌悪されることもあった。
僕は普通に暮らせればそれでよかったよ。
ヘリオポリスの工業カレッジに通って、卒業して就職、結婚。そうして、大した事はなくてもいいから、友達や好きな人と一緒に辛いことがあっても、悲しいことがあっても平穏に暮らせればよかったよ。
だから、戦争とは関係ないヘリオポリスにいたんだし…。
でもさ、ムウさんの言うことももっともで、いつまでも傍観者面出来なくなって、嫌だったけど…モビルスーツとは言えど僕は銃を手にとった。
守りたいものを守るために…。自分にはそれだけの力があることも自覚した。
けどさ
フレイの父親が殺された、ミゲルを殺した。
バルトフェルドさんを殺しかけ、その愛する人の命を奪った。トールが殺された、ニコルを殺した、友達と殺し合いをした。

僕は死にかけたよ。でも生きてて、また剣を手にとった。
フレイが殺された、ラウ・ル・クルーゼを殺した。
見知らぬ人を沢山殺した。
振り返ってみて疑問に思うけどさ、僕は本当に人の夢?人の未来?素晴らしき結果?

C.E.73、ラクスを守るために戦って、また人を殺した。
正確には自爆した…だけど、僕が殺したも同然だよね?

今度は一度戦争を経験してるからさ、戦争を止めたいだなんて思ったんだよね。
あんな悲劇は繰り返したくない、そう思ってさ。

シンの友達が僕のせいで死んだ。アスランとまた戦った。
シンの大切な人を奪った。
そして僕はシンに負けた。
今思えば、あそこで死ねば楽だったかもしれない。
でも、そうはいかなかったから不思議だよね。
気が付いたら、はやての家にいて、看病してもらって居候までさせてもらった。
平穏に過ごす日々、だけど結局、僕は異世界の争いにも介入しちゃったんだよね…。

「鋼鉄の縛鎖!アルケミックチェーン!!」
キラの四肢を絡めとり、自由を奪う鎖。
「シグナム副隊長!エリオくん!!!」
『「火竜」スピーア…』
『ドラグーン・ミーティアシフト』
射出音とともに散開する十枚の翼。ミーティアの効果で奔流が強化されており、一発一発が太い上、連射が効く。
アルケミックチェーンが破壊され、シグナム、エリオの両名は魔法発動の中断。
回避に徹する。
雨のように降り注ぐ奔流をフリードが避け、シグナムも避ける。
フリードとシグナムはともかく、エリオは元来空戦を得意とするわけではない。
知らず知らずのうちにドラグーンによって誘導されていた。
「フリーダム、ターゲットマルチロック!」
クスフィアスとバラエーナの四発がエリオ、フリード、シグナムへと迫ってくる。
「フリード、ブラストレイ!!」
ケリュケイオンから供給される魔力で放つ炎のレーザー砲がバラエーナを一発相殺。
「火竜…一閃!」
クスィフィアス二発を破壊。
エリオもバラエーナを避けるが、避けた空間には十機のドラグーンが待ち構えていた。
「エリオ!!!」
「エリオくん!!!」
一斉射されるドラグーン、エリオは目を瞑った。
しかし
「戦闘中に目を閉じるな…、閉じてしまえば、僅かな勝気を見落としてしまうぞ。」
低いダンディズム溢れる声音。
「ザフィーラ…さん?」
「そうだ…。我がヴォルケンリッターが一人、盾の守護獣…ザフィーラだ!!!うぉぉぉおお。」
純白の障壁が巨大化し、ドラグーンの一斉射全てを防ぎきる。
銀髪犬耳、力強く強固で筋肉質な体。
「また、増えたね…。」
「紫電一閃!!」
隙を見せたキラに向かってシグナムが必殺の一閃を見舞おうと間合いをつめてくる。
スピードは決して遅くはなかった。むしろ早い、ただ、相手が悪かった。
それだけの話。
『サーベル・ミーティアシフト』
太い強化された魔力刃で一閃を受けた。鍔競り合いを挑んでくるシグナム。
「クスフィアスでわかってると思ったんだけど…動き止めちゃ駄目でしょ?
シグナムさん…」
気づいた時には魔力が膨れ上がっていた。
『カリドゥス』
反動で距離をとるキラ。舞い上がる爆煙。
そしてその煙から尾を引いて地上へと落下して行くシグナム。
騎士甲冑はボロボロだった。

もう戦いなんて勘弁、なんていいながら、今度はモビルスーツの代わりに魔法を使って戦った。
でもさ、戦争とかそういう戦いじゃなかったから…、最初は怪物相手に戦ってリンカーコアを集めてさ。
でも、管理局が出てきて、フェイト、なのは、シンと出会った。
もちろん戦ったよ。
でもさ、あの時の戦いでは得たものの方が多かった。勝ち負けは関係なくね。
シンが少しだけ僕に歩みよってくれて、少しだけ和解出来た様な気がしたし…。
それからまたC.E.に戻ってね…。
レイと戦った時、彼は僕にこう言ったよ。
人の夢、人の未来、その素晴らしき結果、キラ・ヤマトって。
クルーゼは人の業とも言ってたけどね。
でもさ、僕の歩いてきた道のりってなんなのかな?
人の夢、人の未来って呼ばれる僕が歩んできた人生…血だらけじゃない?
あってはならない存在。
本当にそうだよね。

ねぇ、僕を造った父さん…、何で僕を造ったの?
何で僕なんかを産み出したのさ?
こんなんだったら、世界最高のコーディネイターなんかにして欲しくなかったよ。
ただのコーディネイターか、ナチュラルでいたかったよ。

視界が歪む。
シグナムが地上へと落下して行く姿がモニターに写っていた。

シグナムさん…僕なんかにやられちゃったんだ?
案外大したことないのかも……
エリオやキャロも直、やられちゃうんだろうな…。

――ねぇ…―――
――誰か―――――――
―僕を止めてよ―――――