Seed-NANOHA_228氏_第02話

Last-modified: 2007-12-24 (月) 14:52:28

「うわぁ……あれロボットかな?」
なのはは感嘆したように言う。
管理局から時空の歪みを感知したと言われて来た場所がここだった。なのはがその場所から一番近くにいたためここに回されたのだ。
そこには巨大なロボットがあった。傀儡兵とは全く違う。兵器として完成されたようなものであった。
だが、それは四肢を切断されていた。何者かによって破壊されたとして見るのが妥当だろう。
「もっと近づいてみよう。行くよ、レイジングハート」
ALL LIGHT MY MASTER
文字とともに言葉が発せられた。
「しかし、こんなに大きいんて。もしかしたら、誰か乗ってるのかも。な~んてそんなはず…」
「誰だ!!」
そこには赤い瞳が印象的な少年がいた。赤い服に身を包み厳しい瞳でなのはを見ていた。
「人……?」
「お前は誰でここはどこだ!!空を飛んでいるなんてどう考えても普通じゃない。答えろ!!」
威圧するような目つきだった。銃を持つ手にも震えなどなく明らかに手慣れたものであった。
ふぅ、と彼女は息を吐き出す。
「とりあえず、それを降ろして。質問にはちゃんと答えるから。」
納得したのか渋々ながらもシンは銃を降ろした。
「ここは地球……日本の海鳴町だよ」
なのはがそう言うと少し考えたような表情をした後に少年の表情が信じられないものでも見る目つきに変わる。
「……日本って世界で最初に核を落とされた国だろ?」
「そうですけど」
これには彼女も驚いた。彼は確かに日本を知っているのだ。てっきり彼女は彼は異世界の人間だと思っていたからだ。
「ふざけるな!!日本なんて国はもう存在しないんだよ。」
「えっ……」
「今は日本は東アジア連邦になっている。日本なんてもう地球のどこにも存在しないんだよ」
その表情はどことなく彼女には怒ってるように見えた。いや、怒っていて当然だと。
いきなり、もう存在しない国の名前を上げられたら怒って当然なのかもしれない。彼の住んでいる『地球』には日本はもうなくなっているのだ。

「……なあ、ここは一体どこなんだ。俺は月で戦ってたんだよ。なのに何で俺は地球にいる。しかも、存在しないはずの日本に…」
あのロボットは彼の住んでた世界の兵器なのだろう。そして、彼はそれのパイロット。
原因は不明だが、彼は自分の住んでいた世界からこの世界に飛ばされた。彼はなのは達とは違う地球の住人なのだろう。
なのはは彼に出来る限りのことを説明した。全てを話し終えても彼の瞳は厳しいままだった。
「今時そんな話し誰が信じるか。魔法?次元転移?ザフトの軍人を馬鹿にしているのか。」
確かに彼の言い分ももっともである。こんな話し普通の人間…しかも、軍人が信じるはずもない。
「なら……ディバインバスター!!シュート!!」
彼女の言葉とともに巨大なビームのようなものが空をかけた。ブラストインパルスのケルベロスに匹敵するようなそのビームに彼は唖然としていた。
「何だよ…それ……。」
可愛らしい杖からビームが出たのに彼は心底驚いていた。
「地球の奴らこんな子供にまでこんな危ないものを……」
なのはは思わずずっこけそうになった。あれを見てもまだ疑っていたのだ。
「違うの。これが魔法なんだよ」
「いや、どう見てもあれは高出力ビームライフルだろ……。それにしてもまさか、こんな小型化にまで……」
彼は頑なに魔法というものを認識しようとはしなかった。
「君もそんなものをどこで手に入れたんだい?危ないから返してきなよ」
彼は考えるような顔をするとすぐに優しい笑顔でなのはにそう言った。
──相手はまだ子供なんだ。嘘もつきたくなるんだろう。
そんなことを彼は考えていた。
「どうしても…信じられないんだね?」
「へっ……?」
「分かった。今から証拠を見せてあげるよ。」
「何言って……」
──簡単は話しだ。自分が子供だから信じて貰えないのだろう。ならば、大人が同じことを話せば良い。時空管理局なら、彼を納得させるものもあるだろう。
なのはは意を決してシンの腕を掴んだ。
「おい…何を」
【リンディさん、転送お願い。】
彼女が念話を送ると時空管理局へと飛んだ。
撃墜されたデスティニーとともに。

──何だここ……さっきまで公園のような場所にいたはずだ。それがこんな施設みたいなところに……。もしかしたら、本当に魔法が……いやそんなはずはない。
頭がパンクしそうになった。
「なるほど、彼が異世界の人間か。」
少女と同じくらいの年の少年が立っていた。黒いロープのようなものに身を包んでいる少年。
「魔法のこと言っても信じてくれなくて……。」
「まっ、それはそうだろう。なのは達の世界と同じで彼の世界もどうやら、魔法がなかったようだし」
デスティニーを見上げながら少年はそう言う。
─こいつらやっぱり、デスティニーを狙っているのか?
デスティニーはザフトの最新鋭MSだ。欲しいと思わない組織の方が少ないだろう。デスティニーを元にたくさんのMSを作ることが出来る。
それこそ、デスティニーに匹敵する…いや、デスティニーを超えるMSを生み出すことさえも……。
─そんなことになったらまた戦争が始まってしまうかもしれない。
それだけは彼には許せなかった。
……いっそこの二人を……いや、いくら何でもそれはマズいだろう。まだ二人とも子供なのだ。
だが、もしも、もう一度戦争になるというのなら……。
「どうしたんですか?」
「……いや、何でもない。」
「ほら行くよ君。」
シンは案内されるがままクロノについていく。彼の後ろに回された手には銃が握られている。
コーディネーターであるシンが子供二人を無力化するのは造作もない。だが、なのはの持っている杖のようなものには彼でさえ警戒を抱かずにはいられなない。
「言っておくけど、抵抗しようとしても無駄だよ。」
「なっ……!」
不意にクロノが言った言葉にシンは動揺を隠せなかった。
「あんた…ザフトの軍人をなめてんのか。」
鼻で笑うかのようにシンは言う。
「ザフトとか訳の分からないことを言ってるけど、そんなに自信があるなら試してみるかい?」
クロノは挑発的に言う。
「やってやろうじゃないか。」
シンの表情が険しいものに変わった。
まさに一触即発という雰囲気である。
「ちょっと二人とも!!」
なのはが慌てて仲裁に入るが、二人の表情は厳しいものだった。
「二人ともそんなことやってる場合じゃないでしょ。早くリンディさんに会わないと」
「ごめん、僕としたことが頭に血が上った。」
その様子に毒気を抜かれたのかシンの表情も元に戻っていた。要するに彼は感情に直線的なのである。

「ほら、行こう。」
はぁ…となのはは溜め息をついた。
今の彼らはなのはよりも明らかに精神年齢が低かった。
──何で男の子って単純なんだろう。
これからのことを思うとなのはは憂鬱でならなかった。

「母さん、入るよ。」
中にはおっとりとした女性がいた。部屋は和風じみていて機械だらけのこの場所にはあまり、似合ってないようにシンには思われる。
「初めまして、私はこのアースラの責任者、リンディです。」
「あんたがここの責任者か…ここは一体どこだ!?あんたらは一体何者だ!!ザフトは…プラントは一体どうなったんだ!!」
今にもつかみかかりそうな勢いでシンは言う。
その様子になのはとクロノは圧倒されていた。
「まあ、落ち着いて。ここは戦艦アースラ。私達は時空管理局の職員よ。」
「時空管理局……?」
少女が言った言葉と同じだ。
そんな出来の悪いSF小説の設定のようなことを信じられるほどシンの頭は冷静ではなかった。
「ふざけるな!!ザフトの軍人を馬鹿にしているのか。そんな子供だまし今時誰も信じないぞ。」
「そうでしょうね。私もあなたの立場なら絶対に信じないでしょうね。」
真剣な表情でリンディは言う。
嘘や冗談を言ってるような人の顔には到底見えない。
「……話せよ。今俺が置かれている状況を」
静かにシンは言った。
先ほどのように激昂したりはしなかった。
ふざけている訳ではないことくらい雰囲気でシンにも分かったのだ。
リンディは話す。現在の彼の状況を…魔法や次元転移。証拠として様々なものを見せた。いきなり、クロノの持っていたカードが杖になったのには彼は心底驚いていた。
今度は彼の状況を話した。
コーディネーターと言われる存在とナチュラルと呼ばれるもの達が戦争を行っていることを…。
戦争は集結したが、アークエンジェルと呼ばれるもの達…オーブという小さな島国の人間がプラントに攻撃を仕掛けていることも。
こんな今時子供でも知ってるようなことを彼女達は真剣に聞いていたのだ。
そのことからも、それにこの艦に使われている未知の技術からもここが異世界であることは納得するしかなかったのだ。

「それで、俺は元の世界に戻れるのか?今頃ミネルバのみんなが…議長が…プラントが」
悲痛な叫びだった。普段強がっているが、シンもまだ心が成熟仕切ってない子供なのだ。
いきなり、見知らぬ世界に来て見知らぬ人達と過ごさなければ、ならないという状況は大変なストレスになるだろう。
彼にとって唯一安心出来ることは言葉が通じることくらいだ。
「安心して、あなたを必ず元の世界に帰すから。あなたの言うところのコズミックイラという世界とは私達はコンタクトをまだ取ってないけれど。まあ、気楽に待ってて。」
「はい。」
シンは初めて会った人達が彼女達で良かったと思った。
ちゃんと自分のことを気遣ってくれる優しさを持つ人達。
見知らぬ人に誠意を持って接する人間は彼の世界には殆どいなかったと断定出来た。それだけコズミックイラは疑心暗鬼にかられた世界だったのである。
「そういえば、あなたお名前は?」
リンディはふと尋ねた。
──そういえば、まだ自分の名前を教えてなかったな。
というか状況を話すだけで自分のことについては殆ど話していなかった。
思わずシンは苦笑した。
「俺の名前は……シン……シン・アスカです」
「僕はクロノ・ハラオーンだ。よろしく。」
「私は高町なのはだよ。」
そう言って4人は握手を交わした。
これがまだ、始まりでしかないことなど知らずに…。

どこだか、分からない場所。
そこには鎮座するように金髪の男が存在していた。見た目からして金持ちそうなその男はパソコンの中の資料をずっと眺めている。
それが何の資料なのかは言うまでもない。時空管理局の……それもアースラの資料だ。
「時空管理局ですか。全く何が魔導師ですか。そんな化け物を認めたくはありませんね僕は」
苛ついているように彼は言う。彼は異端が大嫌いだった。例えば、遺伝子をいじくった人間…例えば、クローン。
自然の摂理に反して存在する人間、自分の力が及ばぬものなどは存在さえも認めようとしなかった。
「なら、僕が世界の代わりに裁いてあげませんとね。そう、蒼き清浄なる世界のために」
男…ムルタ・アズラエルは笑った。
「そう、僕らには切り札がありますからね。あはははははははっ!!!!」
屋敷に響き渡る哄笑。それは魔導師を嘲り笑うかのように……。
その資料にはロストロギアと…確かにそう書かれていたのだ。