W-Seed_WEED_第05話

Last-modified: 2007-11-11 (日) 12:55:44

アスランは驚愕していた、エピオンの圧倒的な性能に。
彼が知る中でも最高の機体であるフリーダムやジャスティスを遥かに超越する。
その代償なのか武装がヒートロッドとビームソードしかないのは気になるが、この性能なら例えあのアビスやカオス、ガイアとでも問題なく戦える・・・・・・いや、圧倒できるだろ。

「あの3機が出てきたら、お前達は先にいけ」
『はぁ?何言ってんですか、あんたは』
『無茶ですよ、アスランさん』

思ったとおりの返答が帰ってくる。

『・・・・・・いや、ここは言う通りにしよう』

トロワだけが違った反応を見せる。

『何言ってんだよ、トロワ、いくらなんでも無茶だ』
『その通りだ、無駄死にになる』
「安心しろ、そうはならない、それに最優先の目的はユニウスセブンの破砕だ、あの3機に俺たち全員がかかる訳にはいかない」
『でも・・・・・・あの3機に加えて死神が出てきたら』

死神、そのMSについてはアスランも聞いていた、
セカンドシリーズと比べても圧倒的な能力を示した機体。
しかし、このエピオンならば・・・・・・

『あれが出てきたら俺が相手をする、お前達はあれの破砕に全力を尽くせ』

前回死神が現れたときはこのトロワが抑えたと聞く、ならそちらは任せてもいいだろう。
そうこうしているうちにユニウスセブンに辿り着く、あの3機もいる、死神の姿は見えない。
そして、彼らの進路に立ちふさがるように一機のMSがいる。
龍を模ったその機体、アルトロンガンダムカスタムがそこにいた。

まるで、落ち行くユニウスセブンを守るかのように、アルトロンがいる。
トロワは、ひとまず五飛が乗っているであろうアルトロンに通信を入れる。

「どういう事だ五飛、これを落とせば地球は大変な事になる」

『正しいのか』

『お前達は正しいのかと聞いている!』

言葉とともにアルトロンが突っ込んでくる。
シンがインパルスで何とか鍔迫り合いに持ち込むがそうは持たないだろう。

『こいつは俺が何とかするからお前等は先に行ってくれ!』

無茶だとトロワは判断する。
アルトロン、そして五飛の1対1での実力はヒイロのウイングゼロと互角かそれ以上だ。
そして、どうやら五飛は本気のようだ。

「シン、無茶だ、お前と俺の二人がかりでやる」

二人掛りなら何とかなるだろう、後はアスランのエピオンに期待するしかないが。

『お前は死神の相手があるだろ!いいから先に行け!俺が何とか抑えてるうちに!』

その言葉とともに、しかしインパルスは弾き飛ばされる。
それでもインパルスは再び接近戦を仕掛ける、何とかアルトロンを抑えるために。

『分かった、シン、ここは任せるぞ』
『そんな!』
『しかし』

アスランのそんな言葉に、
レイとルナマリアの否定的な声。

『シンの行為を無駄にするな!俺たちの役目を忘れたのか!』

そう目的は戦闘では無くユニウスの破壊。
それになるべく多くのMSを次ぎこまなくてはならない。

『分かりました、シン無茶しないでよね!』
「シン、危なくなったら全力で離脱しろ、直線的な機動力なら恐らくインパルスの方が上だ」
『分かってる、こいつもあの死神と同類だろ?とにかく早く行け!』

シンの言葉とともに4機は一斉にユニウスに向かう。
アルトロンはそれを阻止しようとするが
インパルスがそうはさせじと再びビームサーベルで切りかかる。
それをトライデントで受け止めた頃には4機はここを離脱していた。

「あんたの相手は俺だ、先には行かせない」
『フン、いいだろう、お前の正義を見せてもらう、
あれを落とす事が悪だというのならこの俺を倒して見せろ!』

何とか1対1に持ち込めた。
しかしここからが問題だ、勝ち目は無い。
何とかユニウスセブンの破砕作業完了まで粘らなくては。
ヒットアンドアウェイ、インパルスの力を100%生かさなくては足止めすら出来ない。

「なんで!あんた達はこんな事を!」
『それが必要な事だからだ!』
「ふざけるな!こんな事が必要なわけが無い!」

「人類は変らなかった、倒すべき敵、倒すべき悪を倒しても、地球は・・・どの世界も変らなかった!」

五飛は見た、ACで、そしてこのCEで。
かつて兵士だったもののなれの果てを。
聞いた、サトー達の嘆きを。
そして試す事にしたのだ、この世界の正義を。
犠牲の上に作られた平和に、本当に意味があるのかを。
トレーズに成り代わり、自分が悪となる事で。

「ただそこにある平和だけを見て、平和のために戦い犠牲となった兵士を切り捨てた世界を俺は許さない!俺は犠牲となった全ての兵士達の代弁者だ!」
『だからって、こんな事をしていいはずが無いだろ!』
「なら俺を倒してみせろ!力のない者が!自分の言葉をもたないものが正義を語るな!」

ドラゴンハングがインパルスに迫る。
ビームライフルを撃つが止らない。

「なに!」

ビームライフルごとインパルスの右腕が砕かれる。
武装を失ったインパルスが一瞬棒立ちになり・・・・・・
ほとんど丸腰のシンに、ツインビームトライデントが迫っていた。

「くそ!なんだよこいつは!」
「反則だろ!?これ!」
「こいつぅ!」

スティング達は圧倒されていた、たった一機のMSに。
接近戦の装備しか持たないそのMSは、
しかし信じられない機動とパワーをもって立ちふさがる。
こちらの攻撃は当たる気配もない。

アスランもまた驚いていた、ここまで圧倒するとは。
これならこの3機を破壊せずに最低限のダメージを与え捕獲する事も可能だ。
その時、"それ"は来た。
3機の姿が入れ替わる。

「なんだ、これは!」

フリーダムが突っ込んでくる。

「キラ!何でこんなところに!」

そう思う間もなく、今までと桁違いのビームが降り注ぐ。
アスランはそれをすんでのところでかわし見る、プロヴィデンスの姿を。
そして最後にソードインパルスがエクスカリバーを振り上げ迫る。
思い出す、トレーズの言葉を。
ラウ・ル・クルーゼは敵だった、間違いなく。
しかし、キラと、シンは違う、違うはずだった。

「止めるんだ!キラ!シン!こんな事をしてる場合じゃないだろ!」

だが3機の猛攻は止まらない、そしてアスランは見た。
エターナルの主砲に打ち抜かれるミネルバと、光の中に消えるカガリ。
そしてエターナルの中で微笑むラクスを。

次の瞬間、エピオンはそのビームソードであっさりとプロヴィデンスを両断。
返す刀でソードインパルスをエクスカリバーごと断ち切る。
そして最後に・・・・・・

「キィラァァァァ!」

フリーダムのコックピットにビームソードを突き立てる。
コックピットの中でキラが爆発に飲み込まれ、その姿が父、パトリック・ザラに代わる。
いやちがう、貫かれたのは自分だ、自分自身の姿だ。
爆散したのはエピオンだった。
フリーダムのハイマットフルバーストをまともに被弾し、そしてアスランは光に包まれる。

「うわぁぁぁぁぁァァァァァ!」

気付くと、エピオンの特徴的なヘルメットを放り出していた。

「はぁはぁはぁはぁ・・・何だ・・・今のは」

現実ではエピオンは無事だ。
何故かアビス、ガイア、カオスも動かない。
そしてアスランは見る、コックピット内に漂うそれを。

「ん・・・なんだ・・・俺の、毛か・・・・・・」

『トロワ!こいつはどういう事だ!ザフトはまともなんじゃなかったのかよ!』

トロワ達が来るより前に、デュオはここに辿り着いていた。
そして見たのは、ザフトのMSが何か作業をしているのと、そしてザフト同士で闘っているのだ。

「何者かがこのプラントを地球に落とそうと画策したようだ、ザフトのMSに乗ってな」
『ザフトじゃないのか?』
「少なくともザフトの上位の命令ではないだろう、
デュランダル議長は俺達にこのプラントの破壊を命じた、奴等はただのテロリストだ」
『なんだって、じゃあ俺達のしてることは・・・』
「奴等か・・・それとも何者かに踊らされたな、このプラントが地球に落ちて欲しいと思う何者かにな」
『畜生!ネオのおっさん!やってくれたな!スティング、アウル、ステラ、引くぞ
ザフトはこのプラントを砕こうとしてるんだ!』

全てを察したデュオはすぐにスティングたちに通信を入れる。

『何でだよデュオ、こいつら敵だぜ?』
『どういう事だ?』
『何?』

やはり疑問の声が聞こえる。

「こいつらの作戦の邪魔をしたらこれがそのまま落ちるんだ!
これを落とそうとしてるのはザフトじゃない!俺たちは退くぞ、
お前等も地球には滅茶苦茶になって欲しくないだろ?ステラ、人が大勢死ぬぞ!」

『死ぬ・・・死ぬのはいや、死ぬのは嫌!』
『ちょっと待てよデュオ、何でお前そんな事がわかる』
「理由は後で説明する!今は俺のいう事を聞いとけ!ネオにも俺から説明する」
『はいはい、分かったよ、ステラもこんなだしさー』
『説明はしてもらうぞ』

最後にデュオはトロワに再び通信をする。

「俺たちはとりあえず退くぜ、こいつの破壊、頼んだぜ」
『任せておけ、そのための道具もある』
「それじゃ、また会おうぜ」

止っていたカオス達が退いて行くのをアスランは黙って見送っていた。
流石に今は追う気になれない。
それとは入れ違いにシンのインパルスが現れる。

『あれ、逃がしたんですか?』
「シン、無事だったか・・・
ああ、今はユニウスの破壊を優先する」
『シン、相手はどうした、撃破したのか?』

トロワは珍しく言葉に感情を見せている。
まるでシンがここに現れたのが意外だというように。

『ああ、俺もやばいって思ったんだけど・・・・・・
突然翼がある、天使みたいなMSが現れて、
あいつの相手は自分がやるみたいな感じで俺を行かせてくれたんだ』

確実にインパルスのコックピットを貫いたであろうトライデントは、
頭上から降り注いだビームライフルの一撃でインパルスを捕らえていたドラゴンハン

グが貫かれた事により空振りに終わる。
そこにあるのは翼あるMS。
先ほどインパルスがそうしたようにビームライフルを投げ捨て、ビームサーベルを引き抜きアルトロンに切りかかる。

「・・・・・・行けって言うのか?」

どうやらそういう事のようだ、
アルトロンはそのMSに気をとられているのかインパルスの事は完全に無視している。
これ幸いとばかりにシンは離脱する。

「ヒイロ、貴様か!」
『・・・・・・』

五飛が通信を入れるが返事はない。
返答は強烈な一撃だった。
トライデントで受けるが次の瞬間その距離でマシンキャノンが放たれる。

「くっ!」

マシンキャノンでアルトロンの装甲は破れないが確実に衝撃は来る。
ウイングは飛び退くと先程投げ捨てたビームライフルを拾い連射する。
五飛はそれを避け、残ったドラゴンハングを放つ。
それをすんでのところでビームサーベルで払いのけ、再び接近戦を仕掛ける。
激闘は続く、落ち行くユニウスセブンとともに。

『我等コーディネーターにとって!パトリック・ザラの取った道こそが唯一正しきものと!』

アスランは地球の重力に引かれながら、エピオンのコックピットで思い出す。
トロワやルナマリア、レイたちを先に戻してユニウスをできるだけ砕こうとした彼らの前に現れた数機のジン。
その中のリーダー格の男が放った最後の言葉である。
そんな事はないはずだ、自分達は正しい事をした、だから戦争は終わったはずだ。
しかし、それを良しとしない者達がいた。
ゼロシステムの影響もありアスランは混乱していた。
もしかしたら自分達は間違っていたのか?
だから倒すべき敵としてキラやラクスが・・・・・・
ならばシンは?彼は関係がない。
ザフトも敵だという事か?
敵も味方も、正義も悪も、自分のすべき事もわからずにスランは落ちていく。

ミネルバは落ちてゆくユニウスセブンをタンホイザーで砕くため降下する。
しかし・・・・・・

「まだです!まだ巨大な塊が」

タンホイザーの一撃をもってしても砕ききれない。
もはやタンホイザーは撃てない。
これが落ちれば地球は甚大なダメージを受けるだろう。
ミネルバのクルー誰もが深い絶望にとらわれたその時。

「待ってください!ユニウスセブンに先行する機体が一つ!
インパルスでもエピオンでもありません!」
「何ですって!」

翼を持つMSが一機ユニウスセブンに先行する。
そのMSは巨大なライフルを構えるとユニウスに向ける。
ユニウスの最後の巨大な塊。
大気圏に突入する衝撃の中で、そのMSから放たれた圧倒的な衝撃は。
正確にユニウスの中心を捉え、貫いた。

その光景を五飛も見ていた。
見慣れた機体、W0。
間違いなくヒイロの機体だった。
ならば今闘っているのは誰なのか。
それが隙だった。
もう一機のウイングがその一瞬隙をつきアルトロンに蹴りをいれる。
それだけでアルトロンは地球の重力に捕われ落ちていく。
ウイングは蹴りの衝撃を利用して、逆に重力から逃れる。

「貴様ァァァァァァッ!」

アルトロンは落ちてゆく、地球に向かって。

クライン派、ファクトリー。
ザフトクライン派の兵器製造工場に一人の少女が現れる。
少女は真っ直ぐと、このファクトリーの責任者の一人の元へと歩く。
コンソールに向かい、何かの作業をしている男。

「お久しぶりですわ、ツバロフ技師長、やはりあれが必要になりそうですわ」
「おお、ラクス様!そうですか!」

ツバロフは喜色満面に喜ぶ。
この世界でこそ証明できる。

「きっとラクス様のお力になりましょう、私のモビルドールは」「ええ、兵士を必要としない兵器、素晴らしいですわ、これで戦争の犠牲が少しでも減らせる」
「はい、そして強力です、このMDは必ずラクス様に勝利をもたらすでしょう」
「ええ、完成を楽しみにしていますわ」

少女は嬉しそうに微笑む、まるで新しい玩具を手にしたかのように。

ヒイロはウイング0をバードモードに変形させ、もう一機のウイングに接近する。

「どうだ、兄の情報は見つかったか」
『それどころじゃないですよぉー、初めての戦闘なのに一人で放り出すなんて』

戻ってきた声は少女のそれだ。

『ザフトにいるのは分かるのに・・・』
「ウイングゼロのツインバスターライフルでなければあの塊は破壊できなかった、まだチャンスはある」
『そうですけど・・・・、あ~あ、本当に会えるのかなぁ・・・・・・』
「情報によると死んではいないようだ、しかし、これから調べるのは難しくなりそうだな」

おそらく、この事件がきっかけでザフトと連合の関係は悪くなるだろう、
そしてこの事件の黒幕がロゴスなら、確実に。

「戦争になる・・・・・・か」
『は?どうしてですか?』
「連合はこの事件の黒幕をザフトだと断定するだろう、
ブルーコスモスはそれを利用してプラントに攻撃を仕掛けるはずだ」
『え~、それじゃあザフトにいるお兄ちゃんの事、余計に
調べるの大変になるじゃないですか!』
「だから難しくなると言った、安心しろ、お前の兄は探す、それが今の俺の任務だ。ピースミリオンに戻るぞ、マユ、今後の話はそれからだ」
『は~い、あ、そうだ、ヒイロさん、ピースミリオンにもどったら、地球に行っていいですか?』
「何故だ?」
「なんか、地球にいるような気がするんです、お兄ちゃんが」

戻る前にヒイロは地球を見る。

(五飛、戦争がはじまるぞ、あの惨めで悲惨な戦争が、お前はもう一度あれを繰り返したいのか)

そして、ウイングガンダムゼロとウイングガンダム"セラフィム"
2機のウイングガンダムは帰還する、探し人とニアミスした事も知らずに。

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