XXXⅧスレ158 氏_復讐者の記憶 予告編

Last-modified: 2010-09-26 (日) 00:15:08
 
 

────────────それは一つの可能性。

 

「がああああぁぁぁ!!」

 

荒涼たる灼熱の荒野で男が声にならない叫びを上げる。
二人を守るためか覆い被さる様にその身を横たえる紅の騎士の下、
愛する女性を腕に抱え、仲間の遺骸に囲まれ、自身は炎に焼かれる。
恋人だったモノを優しく地面に横たえ、遥か天空の機体を睨む。
白と青と金の悪魔が空を駆ける。

 

 ガリッ

 

己の爪で顔を、喉をかき毟り、拳を地面へと叩きつけた。

 

また……またお前は俺から全てを奪うのか……。
父を、母を、妹を、恩師を、親友を、愛した人を、安息の場所を、全てを! 全てを!

 

ならいいさ……今度は俺の番だ。
今度は、俺が貴様の全てを奪ってやる。
俺にしたように、父に、母に、マユに、
議長に、艦長に、レイに、ヴィーノに、ヨウランに、アスランに、ステラに、ルナにしたように……

 

天に輝く星でいられるのも今の内だ。
貴様が天に輝く星だと言うなら、俺が全ての星を叩き落としてやる!

 

「今日と言う日を忘れるな、俺を殺し損なった事を後悔させてやる。
 忘れるな、フリーダム。 キラ・ヤマト!」

 
 
 

CE74年
全てを失い、名を、声を、顔を失った男は……
英雄となりえた、世界の守護者となりえた、救世主となりえた、最強の傭兵となりえた資質を持った男は……
復讐の為だけに生きる獣へと成り果てた。

 

コズミックイラのそらに未だ夜明けは見えない。

 
 

 機動戦士ガンダムSEED 逆襲のシン
 復讐者の記憶

 
 

「珍しいですね。 こんな辺鄙な所に人が尋ねてくるなんて」
「マダムに御用ですか? え、私にも? はい、確かに私はアビー・ウィンザーですが」

 

「あの男の事を聞きたいの? ええ、構わないわ。
 そう、あの男は同志であり、歳の離れた友人であり、復讐者だった……
 そして最後の瞬間まで一人の人間だったわ」

 

「ジェス・リブルさんだったかしら? 全てを話す代わりにお願いがあります。
 『赤目の復讐者』シン・アスカの真実を世界に伝えて欲しいの。
 ……必要なら私の名を、アイリーン・カナーバの名前を使っても構わないから」

 
 

俺の名はジェス・リブル。 フリージャーナリストだ。
俺は今『赤眼の復讐者』を追っている。……いや、追っていた。というべきか。
彼を追う内、私は彼をよく知る人間をあのベルリンで見つけた。
これは世界を震撼させたテロリスト『赤眼の復讐者』の真実を追った私の取材結果の全てである。

 
 

「悪魔に魂を売る覚悟はあるか。 だって?
 ……残念だが、この体は既に売約済みだ。 その悪魔って奴にな」
「ならば話は早い。 貴様の覚悟とその最後、見届けさせてもらおう」