XXXIXスレ69 氏_ガンダムSeed Destiny After ten year_序章

Last-modified: 2011-02-25 (金) 03:33:36
 

ガンダムSeed Destiny After ten year
序章

 
 

C.E.83年。
シン・アスカは未だにザフト軍人であった。

 

ユニウス戦役と呼ばれる大戦から10年近く。
プラント最高評議会議長ラクス・クラインは所謂デュランダル派と言われたザフト軍人を裁くことなく、
そのまま軍属とした。
さらに終戦後早い段階で貧困に苦しむナチュラルをプラントへ移住させた。
もちろんコーディネイターとナチュラルの溝は完璧には埋まっていない。
差別を危惧したラクスは新たにナチュラル専用コロニ―の増設を採り決め、
ナチュラルはそこで暮らすようになった。
移住直後はコロニ―内の内乱も危険視もされていたが、プラント産の食物も作られ始め、
裕福となったプラントで生活する人々が暴動を起こすことはなかった。

 

かつて、デュランダル派として戦った少年がいた。
赤い瞳。
癖のある黒髪。
着慣れた赤服。
「シン・アスカ、入ります」
26になったシン・アスカは未だにザフトにいた。

 

「テロリスト?」
「そうなんだ。どうやら、「フィガロ」を狙っているらしい」
シンの問いに答えたのは最高評議会議長ラクス・クラインの騎士であり、
ザフト軍最高司令官の地位にあるキラ・ヤマト。
あの日、オーブで握手を交わした日から、キラは何かとシンのことを気遣ってくれていた。
キラの答えの中に出てきた単語、「フィガロ」。
フィガロとはナチュラル専用のコロニ―のことだ。
ラクスの命令で造られたフィガロだが、それはテロリストたちの格好の的だった。
反クライン派からしてみれば、フィガロはラクスの象徴といっていい。
逆に弱小化したとはいえ、今もなお裏社会に存在するブルーコスモスからは
憎きコーディネイターに尻尾を振った愚かな同族が住んでいる場所と捉えられる。
そのため、フィガロにはラクスに認められた精鋭たちが防衛の仕事を務めていた。
彼らは胸にラクスの頭文字であるLのバッジを身につけ、俗に「クライン親衛隊」と呼ばれる。

 

「フィガロには親衛隊がいるはずです。俺なんかが行かなくても……」
「ちょっと事情があってね。ほら、この間比較的フィガロの近くで戦闘があったでしょ?」
「はい」
「その時親衛隊の数名をそっちに回したら何人か怪我をしてしまってね。それで今回のテロだ。
 親衛隊ではないにしろ、君は優秀なパイロットだからね。ラクスも期待してる」
「ありがとうございます。シン・アスカ、確かにこの任を承りました」
「頼んだよ」
シンは敬礼をし、キラの部屋を出た。

 

この時、シンは何も知らなかった。
少しだけ嫌な気配を感じたが、親身に自分の事を気遣ってくれるキラを疑うなんてことはできなかった。
そして、キラも知らなかった。
軍部で渦巻く策略に。

 
 
 
 

この広い世界のどこか。
二人の子供が丘の上にいた。
一人は金髪に赤紫色の瞳を持った15、6歳の少女。
その子は歌を歌っていた。
そしてもう一人は癖のある黒髪に赤い瞳をしている、やはり少女と同い年ぐらいの少年。
隣で歌っている少女の歌を静かに聴き入れていた。
歌っているのはひとつの「あいのうた」だった。
やがて歌が終わり、少年は拍手を送る。

 

「すごいね、○○○!○○○はやっぱりとっても歌がうまいね!」
「そんなこと、ないよ。私よりも、もっとうまい人がいるよ……」
「でも僕は○○○以外にうまい人、見たことないよ!僕の中では○○○が一番上手だよ!」
「うれしい。ありがとう、○○」

 

見た目よりも若干子供のような二人の会話。
この光景を少し離れて見ている人物がいた。

 

「二人とも、もうじき夜になる。家に帰るぞ」
淡い金髪に、菫色の瞳をした初老の男だ。
顔には火傷の痕のようなものがあり、足はやや不自由なのか杖をついている。

 

「はーい!帰ろう、○○○!」
「うん!」
少年と少女は初老の男性の後をついていく。

 
 

二人の子供とシン・アスカが出逢うのはそう遠くないことだった。

 
 

To Be Continued.

 
 

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