Z-Seed_ ◆1ITb1290kc氏_第03話

Last-modified: 2007-11-12 (月) 13:04:23

シンは、もう敵艦はすぐそこだというのに、敵のMSの動く気配がない事に不審に思った。
そのとき、ロックされていることを告げるアラームがなると同時にビームが飛んでくるのを目視する。

「何!?攻撃!?」
『なんなのよ!こいつら!?』

ビームの飛んでくるほうを見ると強奪された三機がビームを連射しつつこちらに向かってくる。
ブラストとザクは敵の一斉射撃を間一髪で回避する。
しかし、ショウのゲイツRがビームの雨に成す術なく打ち抜かれ、爆散する。

『ショウ!』

ルナマリアが叫ぶ。しかし、ビームの雨は止まず反撃するにも身動きが取れない。
シンは突然の奇襲に身動きを取れない上に、仲間を失ったことで逆上していた。

「くそっ!待ち伏せか!?」

第三話「見えない導き手」

―――落ち着くんだ・・・後ろから狙われてるぞ・・・―――

「えっ!?」

あの少年の声と思われる声が聞こえる。その声の通りに背後からカオスの機動兵装ポッドからビームが撃たれようとしている。
シンはすばやく回避して、少し落ち着きを取り戻すと指示を飛ばす。

「各機散開して応戦だ!・・!?ボギー1が!!?」

レーダーに映っていたはずの敵艦ボギー1がロストしている。シンは突然のことの連続で動揺した。
アビスのパイロット、アウルはこの隙を見逃さなかった。すかさずアビスのフルバーストがインパルスを襲う。
寸前で回避してフルバーストが目の前を横切り、シンは冷汗をかく。
ルナマリアのザクが応戦してアビスにライフルでけん制するが、ガイアの援護で狙いをつけられない。
そして、後方でゲイツRがカオスのビームを防ぐもミサイルの直撃を受け、機体が光球に飲み込まれ、パーツが吹き飛ぶ。

「味方が!?まずい、囲まれる!」
『デールまで!!』

その頃、ミネルバもロストしていたボギー1に背後を取られ防戦一方だった。
更に、ボギー1からダガーLが発進し砲撃を開始しようとしていた。

「ミネルバが!?でも、この状態じゃ、戻れない!」
『なんとかしないと!!』
「分かってる!」

インパルスは廃棄されたコロニーへと移動しつつ、ライフルを捨て、ケルベロスで砲撃し敵を近づけさせない。

―――上に敵が・・・。・・・今だ、撃て!―――

「そこだっ!」

シンは反射的にその声の通りにケルベロスをインパルスの頭上に放つ。
カオスは回避するが兵装ポッドが一基巻き込まれ、カオスの右肩のアーマーを焦がす。

『ちっ、なんて奴だ!!』
「やった!」

―――・・・まだだ、もう一機・・・来るぞ・・―――

ガイアがサーベルを抜いて接近してくる。しかし、ルナマリアがライフルを捨ててオルトロスでそれを妨害する。
インパルスはミサイルを一斉に発射して弾幕を張り、ケルベロスによる砲撃を行う。

『そう簡単に当たるかよ!!』
「行けぇ!!」

ケルベロスから放たれたビームは一直線になり、そのまま砲を縦に振る。
ビームは偏光ミラーを両断し、三機の戦力を分断する。

『ッ!!無茶苦茶するぜ!!』
『アウル、お前はあのドッキング野郎の先に回りこめ!』
『へーいへい』
『ステラはその赤い奴と遊んでやれ!』
『わかった』

シンは敵の攻撃を回避しつつ、インパルスをコロニーの残骸の通路へ進め敵をおびき寄せる。
ルナマリアは、果敢に接近戦を挑んでくるガイアに苦戦を強いられていた。
ガナーザクウォーリアは砲撃仕様であるため、接近戦向きの機体とはいえなかった。
さらには、この近距離では狙いをつけられるはずもなく、けん制にもならない。
それでもルナマリアがこの状態を保っていられるのは赤服としてのプライドだった。
しかし、サーベルをシールドで受けたとき、ガイアの蹴りを食らって弾き飛ばされる。

『ああっ!!』

突如シンの目の前にルナマリアのザクが弾き飛ばされ壁にぶつかる。
シンは追撃してきたガイアにケルベロスをお見舞いする。
ガイアはすばやく回避し、姿を消す。

「ルナ、大丈夫か!?」
『何とかね!』

―――油断するな!意識を集中するんだ・・・前から来るぞ!ミサイルでかく乱するんだ・・・―――

「ッ!そんな簡単に!」

ザクが後退すると同時にミサイルを全弾発射して突っ込んでくるアビスをかく乱する。

『こいつ!』

―――今だ、撃て!―――

「遅い!!こっちだ!!」

アビスは爆風を吹き飛ばすように見えたビームを回避し切れなかった。
左肩シールドのビーム砲に直撃して爆発を引き起こす。

『うわぁあ!!』
『アウル、畜生!!』

カオスはビームで弾幕を作りつつ、アビスに駆け寄りアビスは体制を立て直す。
その隙にインパルスとザクは砲撃しつつ後退する。

一方、ミネルバからレイのザクが出撃し、ネオ・ロアノークが操るMAエグザスと交戦していた。
レイはミネルバに砲撃をかけるダガーLをどうにかしたかったがネオがそれを阻む。
エグザスのガンバレルが分離してレイのザクにオールレンジ攻撃を仕掛けるが回避しつつ反撃をし、互いに互角だった。

『俺の攻撃が当たらない?何なんだ君は、一体?白いボウズ君!』

普通のパイロットならば、最初の一撃を回避するのも難しいであろうこのエグザスのガンバレルをいとも容易く回避する白いザクが、
ネオには自分を小馬鹿にしているように思えたのだ。
だが、苛立たしさを口にしながらもエグザスを操るネオの技術に乱れはなく、むしろ正確だった。
レイもガンバレルを回避しているものの、実際には回避することに集中しており二機のダガーになかなか追いつかない。

「・・・・ッ!!」

レイはガンバレルを回避しつつ、目視で確認したダガーへビームを撃つ。
ビームはダガーへ吸い込まれるようにしてコックピットを貫き、パイロットは自分が死んだことにも気付かずに意識を消失させた。

『・・・この感覚!やはり只者ではないな!』

ネオはビームを回避しつつダガーへの正確な射撃で何かを感じ取る。
対するレイもガンバレルの操作、この隕石群での操作技術以外から同様に何かを感じ取る。
そして、二人は同時に対する相手以外からもこの宙域で自分たちと通ずる何かを感じていた。

「これで!!」

ザクのファイヤビー誘導ミサイルが一斉に発射され隕石を一掃してダガーとザクの間に遮るものがなくなる。。
すかさずレイはライフルをダガーへ向け、正確な一撃を与える。
二機目のダガーも打ち抜かれたあと一瞬動きが止まり、爆散する。

『こうも簡単に落とされるとはな!!』

ネオも部下を二人失って黙っていられるほどの人間ではなく、ザクへ向けて猛攻をかける。
二機は、互いに一歩も引かずの激しい攻防戦を繰り広げる。

一方、シンとルナマリアは三機の連携の前に善戦していた。
カオスも兵装ポッドで狙ってくるがシンはあの声に従って正確に回避していく。

『こいつこの前と動きが違うぞ!!後ろに目でも付いてるってのか!?』
『なんなのよお前たちはぁ!!』

『させないわよ、この泥棒!』

ガイアで食いつこうと付いていこうとしたがザクのオルトロスが立ちはだかる。
二機の砲撃があって近づけさせてもらえない。
そのとき信号弾が発光して、あたりを照らす。

『チッ、アウル、ステラ撤退だ。』
『撤退・・・帰るの?』
『アイツ・・・次は必ず・・!』

「逃げるのか・・?」
『こっちもミネルバに急がないと。』

―――大丈夫だ。船は無事だ・・・―――

三機は反転して逃げていく。シンもルナもそれ以上は追おうともしなかった。
二機のエネルギー残量もほとんどなかったからだ。
シンは深く息を吸ってその声に身を委ねる。戦闘のときもその声に従うことに不安がなくむしろ安心できた。
二機は、機体を反転させてミネルバへ向かう。

ミネルバはアスランの機転とレイの迎撃により何とか難を逃れたが、ボギー1に逃げられてしまった。
また、ミネルバは今回の戦闘で受けたダメージが大きく、強奪部隊追撃は一時断念された。
着艦したシンはあの少年に礼を言わなければならない気がした。

「助けられちゃったもんな・・・」

シンは、ひとまず戦闘が終わったことで一息ついた。ミネルバ全体も緊張していた空気から開放された。
しかし、そんな休息も長くはなかった。
静かにただ静かに、ユニウスセブンは地球への落下コースを取っていた。
そして、少年は眠りから目覚めようとしていた。