Z-Seed_ ◆1ITb1290kc氏_第05話

Last-modified: 2007-11-12 (月) 13:04:46

地球の重力に徐々に引かれていくユニウスセブン。
ミネルバのシン達の援護もあるが、敵の数が多く地の利も向こうにあり、更には相当な熟練したパイロットの集団だった。
正直なところユニウスセブンに取り付くのが精一杯で作業どころではない。

『こりゃあ、本格的にやばいぜ。どうすんだよ、イザーク?』
『分かっている!!ここで戦闘をすればメテオブレイカーが使い物にならなくなる!!ええい!!これでは、手が出せん!!』

ディアッカとイザークも奮戦しているが、メテオブレイカーを守るのが最優先なため下手に動けず状況は相変わらず不利だった。
同様にシンやレイ達も粉砕作業の邪魔をさせないようにしなければならなく、少しずつ敵のジンに押され始める。

「こんな状況でどうやって粉砕作業なんて!!無茶苦茶だ!!」
『シン!後ろだ!!口を動かす暇があるなら腕を動かせ!!』
「分かってるよ!でも、敵が多すぎてこれじゃあ援護どころじゃ・・・」
『何、弱気になってるのよ!!それでも赤なの!?根性見せなさいよ!!』
「根性ったってこれじゃあどうしようも・・・・・・これは!!?」

シンはレーダーに新しい機影を捉える。ミネルバから高速でこちらに向かってくる。
同時にメイリンから各員に通信が入る。

第五話「刻が動くとき」

『Zガンダムも粉砕作業の援護でそちらに向かいました。データを送ります。持ちこたえてください!!』
「あのパイロット!?病人なんか乗せて大丈夫なのか?」

各員の機体にZのデータが送られ、レーダーに表示される。
シンは、メイリンの言葉を聞きながらもそれが信じられなかった。

「やっぱり、只者じゃない?」

一方、ウェーブライダーに変形したままZをカミーユはユニウスセブンのビームの光や爆光が見えるほうへと加速させる。
ユニウスの残骸の破片を巧みに回避しながら直行し、敵の機影を確認する。
カミーユの機体にも手打ちのデータだけは送られて表示されている、もっともこれは詳細なデータなど見れるわけもなく識別信号を判断させるだけのものだった。
しかし、カミーユにとってそれはあってもなくても変わらなかった。
なぜならば、ニュータイプとしての彼のセンサーが悪意を感じ取っており、誰が敵であるかが大体分かっていた。

「こんなものを落とそうなんて・・・!!思い上がりだ!!」

ウェーブライダーから変形して、スマートな体型へと変わるまで1秒も掛からなかった。
たたまれた頭部のセンサーが開き、デュアルアイは強く発光する。

「こちら、Zガンダム。作業の援護をします!」
『気をつけろ!!敵の動きは普通じゃない、熟練したパイロットの動きだ!』
「了解、何とかこちらに気を引きます。」

ビームサーベルを抜いてZはビームカービンで撃ってくる接近してくるジンを捉える。
ビームは機体を狙っているが、すべて紙一重で回避されジンのパイロットは初めて恐怖を感じた。
まるで自分の動きが分かっているような、この相手にはいくら攻撃をしても当てられる自信がなかった。
眼前まで迫る機体がビームサーベルで横一閃、薙ぎ払いパイロットの意識はそこで終わった。
カミーユもそのパイロットの意思を感じ、顔を歪める。

「下がっていれば、やられなかったものを!!」

ジンの爆発から離れ、メテオブレイカーに取り付こうとするジン三機へ向かうZ。
インパルスのシンもそれを確認して、射撃武器もなしにジンに向かう無謀にも見えるZに回線をつなぐ。

「ライフルもないのに無茶だ!!死ぬつもりなのかアンタは!?」
『あれをやられる訳にはいかないんだろ!?だったら・・・』

Zは更に加速をして、ジンがライフルを構える前に左腕のグレネードランチャーを発射する。
三機は容易く回避しビームを斉射してくるが、一機はZの策に気付き後退しようとするも遅すぎた。
ランチャーはユニウスの廃墟に直撃し、爆発の衝撃でコンクリート片を撒き散らす。
至近距離でコンクリート片の雨を受けたジンはメインカメラや背部のメインスラスターにダメージを受けて、
持っていたライフルで応戦しようにもコンクリート片のおかげで使い物にならなかった。
それを見たシンはZの戦いが信じられなかった、そしてそれを操縦するパイロットの予測したかのような技量も。

「なんて戦い方だ・・・一瞬で逆転させるなんて。」

瓦礫の中から先ほど退避しようとした損傷の少ないジンが出てきてサーベルで襲い掛かる。
Zはシールドでそれを受け、バルカンでメインカメラを潰し、サーベルで腕を斬り飛ばし蹴りをお見舞いする。
ジンは地表に叩きつけられ、動きを止める。
シンも負けじと攻めて来るジンにライフルでけん制して左手にサーベルを抜かせて接近戦に挑む。

「でも俺だって、それくらい・・・!!」

無意識のうちの対抗意識が口に出てしまうシン、互いの機体の力比べでは最新機体であるインパルスのほうが上だった。
相手のジンの関節部に過負荷がかかり左腕から火花が散る、チェーンガンを至近距離で放ちシンはたたみかける。
ジンは距離を離して、ビームを撃ってくるがもうそれが恐怖には感じなかった。
なぜならば、相手が近距離戦を恐れるあまり正確な射撃になっていなかったのを感じ取ったのだ。

「そんな攻撃、当たるもんか!!」

シールドを突き出してジンに突撃し、まともに吹っ飛ぶジン。

「これで!!」

ついで、錐もみしながら体勢を立て直そうとするジンにインパルスのビームが飛んでいく。
ジンは成す術なくビームの直撃を喰らい、その機体を爆散させる。

「あの人、本当にあれに乗ってるのか?病み上がりの人間とは思えないな・・・」
『・・・?何か言ったか?』
「いえ!何も!」
『他の区域にも敵が残ってる、手伝ってくれ。』
「りょ、了解!」
(やっぱりこの人も、コーディネイターなのか?)

シンのインパルスもZの後に続き別の作業部隊の援護に向かう。

その頃、ザクに乗るアスランもメテオブレイカーによる粉砕作業を手伝っていた。
作業部隊の決死の作業によりユニウスセブンは半壊したものの、まだ半分は地球に引かれていた。
また敵の数は減っているものの、それでも作業部隊にとっては大きな脅威だった。

「何!?これは強奪された三機!?この忙しい時に!!」
『冗談じゃないぜ!こんなところでドタバタと!!』
「下がれ!!」

アスランのザクが小隊を組んで攻撃を仕掛けて来る三機にビームを放ち、分散させる。
次の瞬間アビスのフルバーストが数瞬前のザクがいた位置を通過する。
すかさず、反応して射撃が行われた位置へけん制の射撃をする。
アビスのパイロット、アウルも軽々と回避するが前回の戦闘で左肩のシールドが丸々なくなっているため姿勢制御が難しくなっているが、
それでも難なく操って見せるところがファントムペインでエクステンデッドのなせる業だろう。

『まったく、扱いづらくてしょうがないぜ』
『自分で壊したんだから、文句言うなアウル』
『うるせーよ、スティングだって同じだろ?』
『・・・』

スティングのカオスも前回の戦闘で機動兵装ポッドが一基破壊されている。
応急処置を二機とも施してあるため、出撃できないわけではなかった。
しかし、二人のプライドを傷つけたインパルスに対して殺意を露わにしていた。

『良いか?この間の奴らは絶対に生かしておくな!!特にあの合体する奴はな!!』
『その前に、この緑の奴だろ?これ奪ったときにもいたじゃんコイツ!』
『倒す・・・』

三機は散開しつつアスランを囲み、ビームを放つ。
アスランは巧みにそれを回避して作業部隊から離れるようにしながら、反撃をする。

『こちらZガンダム、援護します!』
「Z!?・・・あの機体か!?すまない、頼む!!」

Zはウェーブライダーに変形し三機の連携を乱す様にして飛行する。

『なんなんだよ、コイツ!?』
『ザフトの新型か!?ネオの奴こんな変形するのがいるなんて、聞いてないぞ!!』
『ちょろちょろと!!』

三機の意識はZに向けられ、攻撃を見事なまでに回避するZが不快だった。
しびれをきらしたアウルが接近戦に持ち込もうとスラスターを全開にする。

『目障りなんだよ!!』

カミーユも接近してくるのを感じ、急制動をかけ変形を解いて機体を反転させてサーベルを抜く。
アウルは自らのスピードも相まって接近しすぎる。

「そんなことでは・・・・」

Zはビームランスを持った右手をサーベルで切り落とし、シールドのビームを向けられる前にシールドの根元からばっさりと切り飛ばされる。

「死ぬだけだ!!」

パニックに陥ったアウルはところかまわずカリドゥスを乱射する。カミーユはアビスからいったん距離を離れる。
アスランの前に飛び出すアビスだが、アスランがビームトマホークを投げつけ、左脚を破壊する。

『うああああ!!』

カミーユは流されてきたアビスにサーベルを一薙ぎする。
アウルの視界にはスローモーションでビームサーベルを振るZの姿が映る。

『母さ・・・・!!』

どうすることもできず、次の瞬間アウルの意識は弾けとんだ。
アビスは真っ二つにされ行き場をなくしたカリドゥスのエネルギーは爆発と同時に拡散する。
アビスの爆発とビームを回避すると同時にアウルの思念を感じて苦痛に感じるが耐える。

「うぅ、まだだ。こんなの、こんなの解ってたことじゃないか・・・・!!」

口にすることでなんとか気を紛らわせようとするカミーユ。合流したシンにも、アビスの爆発と同時に頭の中に叫び声が響く。
スティングがその隙に兵装ポッドで攻撃を試みようとするもアスランにそれを阻まれる。

『アウル!!こいつら!!』
『いやあああああ!!』

こちらの状況に気付いたジンがこの戦いに参戦してくるも、それは無謀だった。

「よせ!!死にたいのか!!」
『今は、戦ってるときじゃないっていうのに・・・!!』
『邪魔だぁああ!!』

こちらに向かってくるジンの背後からカオスのビームが放たれ、容赦なくコックピットを貫く。

『だから、言ったのに!!』
「これ以上、無駄な犠牲を出すな!!」

二人はカオスとガイアに連携して攻撃を仕掛ける。
アスランがライフルで援護をしてカミーユが接近戦に持ち込むといった形でいつの間にか二人の間で連携が取れていた。
これも、二人の技量があるからこそなせる業だからだろう。

『まだ、重力に引かれている・・・』
「何とかこの場所から引き離さなければ」

『アスラン!!貴様こんなところで何をやっている!!』
『久しぶりだな、元気でやってるか?』
「イザーク!ディアッカも!」

スラッシュザクファントムとガナーザクウォーリアが二機やってくる。
アスランはイザークの厳しい口調に苦笑してしまう。

『この程度の敵にてこずるとはたるんどるぞ!!』
『まぁまぁ、アスランは俺達と違ってパイロットを続けてたわけじゃないんだし』
『敵がきますよ!!』

カミーユが言うと同時にガイアとカオスの攻撃が来るが、四機は散開して回避しつつ反撃をする。
ガイアはサーベルを抜いてスラッシュザクに接近戦を仕掛けてくる。

『この程度で、甘いわ!!』

イザークは冷静にサーベルをビームアックスで捌きつつ、距離を開けてハイドラガトリングビーム砲でけん制する。

『いけぇ!!』

すかさずディアッカのガナーザクがオルトロスで追撃し、アスランは弾幕を張ってカオスを近寄らせない。

「邪魔はさせない!!」

カミーユも動きの取れないカオスにウェーブライダーで接近してはサーベルで勝負を仕掛け、離脱する戦法を取る。

『死にたくなければ下がれ!!』

もはや仲間を失ったカオスとガイアの動きはめちゃくちゃだった。

『死にたくない!!死にたくない!!』
『ステラ!!落ち着け!!くそ、ここは一旦引くしか!!』

四機の活躍によって二機は後退していく。
ジンをさばきながらもシンはそれを見て、この4人のパイロットの技量の高さを感じた。

「これがヤキン戦役を戦い抜いてきた実力・・・」
『呆けている場合か!!まだ、粉砕は完了しておらんのだぞ!!』
『そろそろ、阻止限界点だぜ。急がないと・・・・ってもうバッテリーの残量がもうないぜ!!』
『くっ、俺もだ。これ以上は持たん。もう少しだというのに!!』

二人のコックピットにはバッテリー残量の危険を知らせるアラームが鳴り響く。
イザークたちの苦痛な表情が、シン達のコックピットにも映る。

『・・・・後は俺がやる、イザークとディアッカは後退してくれ』
『アスラン!!?』
『僕も最後まで手伝いますよ、そのために来たんですから』

シンは二人がそう言うのを聞いて引っ込みがつかなくなってしまい、二人に合わせてしまう。

「なんであなたみたいな人がオーブに・・・俺もやります・・・やらせてください」
『・・・分かった・・・・すまんが、後は頼むぞ!だが、決して死ぬなよ!!』
『ああ、まだ死ぬつもりは無い!!』

そう言って、アスランは再びユニウスに取り付く。
カミーユのZも後に続き、最後にインパルスが二機を追う。
二機は戦友を見送り、ボルテールへと帰還した。

三機は散開して、メテオブレイカーを起動させるべく作業に移る。
いまだに、各所では戦闘の光が見えるがそれどころではなかった。
カミーユのニュータイプとしての能力が敵味方、そしてユニウスで死んでいったものたちの声を取り込んでいき、そのセンサーが感度を増していく。

「まだだ、これが終わるまでは・・・・?・・・敵が残っている!?あの人が危ない!!」

カミーユはメテオブレイカーを既に起動させており、ウェーブライダーに変形しアスランの元へ向かう。
シンも同様にこの戦場の気配を感じ取り、息苦しくなり冷汗をかいていた。

「なんなんだよ、この感じは・・・・」

アスランに二機からメテオブレイカーの設置、および起動の完了の連絡が来た。
味方もすでに撤退し初めており、残るは自分達とテロリストぐらいのものだろう。
なぜならば、作業部隊、ミネルバ隊のMSに帰投命令が出ているからだ。
メテオブレイカーの設置に完了し、アスランも起動させる。
しかし、生き残っていたジンたちがこちらに気付く。

「くっ、これで最後だというのに・・・!!」
『貴様らもコーディネイターならば、我らに従え!!』
「こいつら!!まだ・・・!?」

アスランは後ろにはメテオブレイカーがあるため、うかつに回避することも反撃することもできなかった。
いくら、アスランがヤキン戦役の英雄といっても守りながら戦い、そして敵が熟練したパイロットであること、
そして自分はMSに乗るのにブランクがあることは大きなハンデとなり、ジン達の攻撃を通さないようにシールドで耐えるのがやっとだった。
そのときだった。

『我らコーディネイターにとってパトリック・ザラのとった道こそが、正しい道なのだ!!なぜ分からん!!』
「・・・!?・・くっ!?」
『貴様たちが我らと同じコーディネイターであっても、邪魔をするならば容赦はせん!!』

今は無き父の名をこんなところで聞くとは思ってもいなかったアスランには衝撃だった。
しかも、2年経った今でも父の言葉に囚われている者たちによってこの凶行がもたらされたものだと知って、動揺を隠し切れなかった。

『甘いわ!若造が!!』

その動揺がMSにも現れたのを敵のジンが見逃すわけが無く、容赦なくビームを放つ。
断続的に防御をし続けてきたシールドがジンの猛攻に耐え切れず、ついに吹き飛びザクの左腕をも持っていく。

「・・・シールドを!?」

爆発の衝撃でバランスを持ち直そうとバーニアをふかすアスラン、しかしジンはそんな隙を与えてはくれない。

『沈むがいい!!』
「こんなところで死ぬわけには・・!!」

ザクはジンのサーベルを機体運動のみで回避して、タックルをかます。

『何!?だが・・・』

ジンも弾き飛ばされると同時に右手に持たせたライフルでザクの右足を撃ちぬく。

「くぅ・・・!!」
『ここまでだ!!』
『待てよ、お前達!!』

再びモニターいっぱいにジンの姿が映り、そのモノアイが鈍く光りアスランには死神に見えた。
しかし、ジンに高速で一機のMSが組み付く、それは僅かに発光するZガンダムだった。