Z-Seed_◆x/lz6TqR1w氏_第10話『招かれざる客』

Last-modified: 2007-11-12 (月) 12:31:57

(注)第10話は2つあります。こちらは黒歴史です。

いくつも連なる砂時計の群れ――
コーディネイターたちが身を寄せるコロニー、プラントの宙域である

「目標、射程距離に入りました!」
「よし、MS隊を出せ!
コーディネイターどもを撃ち滅ぼすのだ!」

そこには嵐の予兆が静かに訪れていた

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機動戦士ZガンダムDESTINY
第10話『招かれざる客』

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「くそっ!!やっぱりこうなるのかよ!!」

ダガーをまっ二つに切り裂きながら、イザークは怒りに震えていた

――地球軍は、先のユニウスセブン落下騒ぎの報復として、プラントに攻撃を仕掛けてきたのであった――

覚悟していたことではあったが、
二年前に終らせた筈の戦争が再び訪れ、あの時の犠牲も苦労も全て水泡に帰すのだと考えると
自分達は何のために戦ったのだと虚しくなる
「……今は……やるしかない……」

ビームマシンガンをばらまきながら、自分の憤りを適当な所で切り上げさせた
――そうしなければ、戦うことなど出来なかった

『イザーク!何か妙じゃないか?』

相棒の言葉によって、ふと辺りを見回す
確かに、強襲してきた割には戦線を上げる強引さは無く、
とはいえ、撤退する意図も見えない

「……囮か!?」

以上を踏まえると、時間稼ぎと戦力分断が目的の攻撃という結論に行き着くのが妥当である
そして、別動部隊が存在するとすれば、それが本命の攻撃であるのは間違いない
さらに、本命の攻撃は、確実にこちらを仕留められる『打撃力』を有する可能性が高い

『た、隊長!!別動隊を確認しました!!』

自らの思考を裏付けるように部下の報告が入った

「よし、そちらに向かうぞ!座標を部隊に送信しろ!」

――しばらくして送られた座標をもとに、機体を翻すジュール隊の面々――

「間に合えよ……」

イザークは切に願う
最悪の『打撃力』――核ミサイルが存在していないことを

「これは……別動隊です!!」

CIC担当兵が青ざめた表情で叫びを上げた

「だそうだ。どうする?」

しかし、その傍らにいる女は冷静なままであり、歴戦の戦士であることが伺える
そして、問掛けられたモニターに映る男は、苦々しげな様子で返答する

「無論、迎撃してくれ。何が来るか分かったものではないからな
君なら出来るだろう?」

その少し挑発の混じった言葉に、女は鼻で笑いながら受け応える

「当たり前だ。ギル……私の機体を用意させろ!!
あの部隊は核を搭載しているかもしれん
事は一刻を争う!!」

モニターの男――デュランダルを一瞥しながら、女は踵を返して指示を飛ばした
デュランダルはやれやれと言わんばかりに肩をすくめ、一言呟く

「愛しているよ」

女はその言葉のためだけに生きていた

主戦場と少し離れた戦域にて、両軍の衝突が行われていた
戦線を維持しようと粘る地球軍に対し、戦線を押し上げようとするザフト軍の姿は、
本来の有り様からは駆け離れていた

「あの部隊を落とせ!!」

奮戦するジュール隊――
イザークの儚い願いはあっさりと裏切られたのだ
というのも、敵防衛部隊の後方の戦艦から飛び出していく、
巨大な砲身をその両肩にマウントしているウィンダムが
イザークの願望の破壊を意味しているからだ

『このままじゃプラントが!!』

流石にディアッカも、皮肉を言う余裕は無いらしい

「蒼き清浄な世界のためにぃぃ!!」

ドォオォン!

ウィンダムのパイロットたちがお決まりの台詞を口々に唱えた後、
禁断の弾頭が次々と撃ち出された

「糞ったれぇぇぇ!!」

イザークは絶叫した
それで何が変わる訳でもないが、
憤怒と無情を内に溜めておくなど、到底無理な話だった

『……』

対照的にディアッカは無言になった
己の無力さに身を震わせていたのだ

核ミサイルが唸りを上げ、あまたの命を奪わんとする

『行け、ファンネル』

その時だった――!

バァアァァン!!

プラントに着弾する前に閃光を上げる核ミサイル群――
イザークとディアッカは何が起きたのか理解出来なかった
機体を操縦する気も起きず、ただ閃光を見つめていた

『MS隊!残党狩りを行うぞ!ぼやぼやするな!』

核ミサイルを落としたと思われる白を基調としたMSのパイロットから
イザークたちへ通信が入る
核攻撃を阻止した時点で勝敗は決した
後は撤退する敵を追い落とすのみである

「今のは……一体……?」

イザークは目の前の事実を信じることが出来なかった
しかし、事実は事実であり、プラントが守られたことを素直に喜ぶことにした