第03話『御しえぬ野心』
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さて、ここである問題が発生してしまった。
「パプティマス様、次のMS演習なんですが……」
「パプティマス様、爆発物処理の試験が……」
「代返よろ」
そう。組織の肥大化により、私の処理能力が追い付かなくなったのだ。
早急に手を打たねばならんが、かねてから予定していたことも同時にこなしてしまおう。
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準備は整った。実行あるのみ。
「シン・アスカ君」
「俺を……笑いに来たのかよ?」
野獣のような瞳で私を睨むシン――
「いや、提案がある」
――彼は優秀だった。
「私の右腕にならんかね?」
「はぁ?」
「私を慕ってくれる者が増えてな。私もほとほと困っているのだ」
「……関係無いね」
敵意を剥き出しにした彼に対し、私は『秘密兵器』を取り出した。
「見たまえ」
「これは……設計図?」
「ああ、テストパイロットの名前を見てみろ」
「……こ、これは!!」
驚愕の表情を浮かべたシン。
既に彼は私の術中だった。
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――数日前――
「考えられん……この機体を、貴様のようなアカデミー生が描き下ろしたのか?」
「御意」
私は軍の上層部に自ら描き下ろした設計図を売り込んでいた。
幸いパプティマシズムの中に将官クラスの娘がおり、コネを使った結果だった。
「量産タイプ『ザクウォーリア』の設計図もございます」
「……要求は?」
古狸は話が早くて助かる。彼もこの設計図を持ち込めば、昇進するであろう。
私が苦心した作品故、当然だ。
「卒業と同時に、副艦長職の任命を」
「副艦長……その程度か?」
「ええ。適当に相応の功績を見繕って下さい。
艦長職も考えましたが、私にはまだ不相応ゆえ。それと……」
「何か?」
「その設計図の機体、『インパルス』のテストパイロットをシン・アスカにして頂きたい」
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「パプティマス様を誤解してたよ」
私を賛美し、私を崇拝し、私に忠誠を誓う男が他の生徒と雑談をしている。
その男の名は、『シン・アスカ』