code geass-destiny第17話

Last-modified: 2010-02-12 (金) 08:09:50
 

コードギアスDESTINY
エピローグ 未来への扉

 
 

 兵士達はいまだに出入り口の辺りで群がっている。まるでゾンビだ。
 歌姫の最後の歌は悲鳴という形だったようだ…。
 その間にルルーシュは機械を操作し、メサイアのジェネシス発射を阻止するためにコンピューターを動かす。
 だが、既に発射体勢に入っており解除できない。

 

「自爆させるしかない」

 

 ルルーシュはスイッチを押し、覚悟を決める。
 こうしなければラクス・クラインを倒した意味が無い。
 このまま地球にジェネシスが放たれれば、対プラントの怒りは加速し、戦争は終わらないだろう。
 それに元々自分たちは、異邦人。
 最悪ここで死ぬことになってもこの世界に影響は無い。

 

「フ…かまわないが、脱出できる時間はあるのだろうな?」

 

 C.C.の問いかけに、地響きが聞こえてきたルルーシュは笑みを浮かべ。

 

「安心しろ。こういうタイミングでくるものさ」

 

 地響きと供に、建物の外壁を破壊する音…。そこに現れる紅蓮暁式。
 カレンの機体である。
 ここまで輻射波動で突っ込んできたのだ。

 

『だーれが、タイミングがいいですって?人を運転手扱いするなら帰るわよ?』

 

 カレンの声に安心するルルーシュとC.C.
 どうやら外での戦闘も、もう終わりのようだ。

 

「感謝しているさ、カレン…」

 

 思わぬ感謝の言葉にカレンは何かを言い返そうとするが言葉が出てこない…。
 ルルーシュは時計を見て。

 

「急いでここから脱出する!自爆するぞ、ここは…」
『え、えぇ!?』

 

 カレンの機体に無理矢理乗り込むルルーシュとC.C.
 カレンはそのまま、全速力で、メサイアから脱出する。
 カレンの機体が脱出したのと同時に、メサイアのジェネシスは自爆し、
 要塞の岩壁から炎を上げながら、その機動要塞は歌姫の遺体を残したまま、瓦礫となり、宇宙のゴミとなった。

 

「…きちんと、決めてきたんでしょうね?」

 

 窮屈な体勢の中で操縦するカレンの問いかけに

 

「俺を誰だと思っている?」
「フ…、随分と気のいい話だ」

 

 ルルーシュの言葉に笑って答えるC.C.…。2人を見て、とりあえずはほっとするカレン。
 そんな三人を待っているものたち…。

 

「カレン!C.C.!ゼロ!」

 

 一番最初に近寄ってくるのはステラだ。

 

「フ…、なんとか間に合ったようだな」

 

 レイも一息をついて紅蓮暁式とステラの灰廉の合流を見る。

 

「やるべきことはやったわ。後は…」

 

 ルナマリアが隣のコードギアス・ディスティニーに乗るシンを見る。

 

「あぁ…ゼロ!」

 

 シンの言葉にルルーシュは頷く。
 そう、戦いは終わったが…これから、すべてを正さなくてはいけない。
 真実は隠蔽される。
 当たり前だ。
 ラクス・クラインがギアスで人々を操っていたなどといったところで、何の利益にもならない。
 世界はラクスというものに溺れているのだ。
 ならば…やはり、それを以ってして世界をひとつにする。

 
 
 
 
 

 一ヵ月後。

 

『私、ラクス・クラインはロゴスと、そして世界を争いの原因となった黒の騎士団のゼロを倒すことに成功しました。
 ですが、その傷はあまりにも大きいものです。多くの方がなくなりました。私達はその無くなった方々の土台の上に立っているのです。
 皆さん、それを忘れないでください。これからはコーディネイター、ナチュラル双方が手を結び、この世界を立て直していきましょう!』

 

 ラクス・クラインの言葉に、会場の代表と来ていたオーブ首長国連邦の代表者であるカガリ・ユラ・アスハ…、
 そして、その補佐を勤めるアスラン・ザラが立ち上がり、拍手するのと同時に、プラント、連合側の双方の人間が立ち上がり歓声を送っている。
 黒の騎士団はロゴスとともに世界を制圧しようとしたが、デュランダル議長の命、そしてラクス・クラインの活躍により、戦いは収められた…。
 騎士団のゼロは、ジブリールと共謀して兵士を先導したとされた。
 騎士団を打倒したアークエンジェルは、かなりの被害を出したが、戦った英雄として、賞を送られ微笑むマリュー・ラミアス、
 そして緊張しながら受け取るムウ・ラ・フラガ、そしてミリアリア・ハウなどのクルーたち。
 これにより、騎士団についた、ほとんどの将兵はラクスの嘆願もありお咎め無しとなった。
 ラクス・クラインは今後、コーディネイターとナチュラルの架け橋として生きることになるだろう。

 
 
 
 
 

「…これでよかったのか?」

 

 青空の下、地平線に広がる草原の中で…
 シンは、草原に寝転ぶルルーシュを見る。
 ラジオから聞こえてくるラクスに対する歓声…。彼女は幸せだろう。
 ラクスとして生きる人生に…。彼女の強いラクスに対する理想をミーアは体現できるだろう。
 彼女の心の中にあったラクス・クラインが今の彼女となって、世界に飛び立つ。

 

「魔王ゼロは消えた。だが…いつか、この世界が再び戦乱に見舞われたとき彼は現れ、戦争を纏め上げ世界を支配しようとするだろう。
 そのとき…人類は人類同士の戦争をやめ、戦争をゼロにむけて行う」

 

 自分自身を犠牲にして、この世界を救った…。
 シンには、このルルーシュという人間の心の深さを感じていた。

 

「シン!ルルーシュ!」

 

 それはルナマリアとステラだ。
 2人は草原の中を軍服ではなく、私服で笑顔で走り回っている。
 2人だけじゃない。その後からはC.C.とカレン、メイリンもいる。

 

「…1つ、あんたにお礼がある」
「なんだ?」

 

 シンは笑顔で戯れているステラたちを眺め

 

「ステラを助けてくれてありがとう。あんただったんだろう?ベルリンのとき…」
「フ…、偶然だ。いや…未来を求めたステラが起こした奇跡かもしれないな」

 

 ルルーシュは白いスーツ姿でシンと同じく、草原で遊ぶカレンたちを眺める。
 そういえば、ステラが加わってからか…
 あの戦い以後、この世界が変わり始めたのは…、だとするなら、ステラには運命を変える力があるのかもしれない。

 

「…これから、お前達はどうする?」
「いろいろ考えたんだけど…、やっぱり軍に残ることにした。
 もし、またラクス・クラインのようなものが現れたとき、力を持っているものが止めなくちゃいけなくなるから」
「未来を守るため…か」
「あぁ、俺は…、ステラ、ルナ、レイ…みんなの未来を守る。
 ルルーシュ、お前はどうするんだ?もし…、お前が何も決めていないなら、俺たちの世界にいないか?
 案内したいんだ、戦争の無い、お前が守ってくれた、この世界を…」

 

 シンはルルーシュのほうを見る。ルルーシュは首を横に振り

 

「残念だが、それは受けるわけにはいかない。
 俺は罪人だ。まだやらなくてはいけないことがある。
 ラクス・クラインにギアスを与えた存在は既に、ここにはいないようだしな。それに……十分わかったさ。
 この世界がいかに素晴らしいかは」
「……そうか、残念だ。ルナやメイリン…ステラはお前達のこと、気に入っていたんだけどな」

 

 この一ヶ月間、様々なことに奔走する中で、短い時間を見つけては、いっぱい笑っていたな。
 戦争という悲劇しか生み出さない中で、その笑顔が、傷ついた心を癒してくれる。
 ルルーシュは立ち上がり、草を払う。

 

「シン・アスカ。俺はお前達のことを忘れない。
 よき友として…、お前達が行くべき道が素晴らしいものであることを祈っている」
「それは俺がお前に送るよ。ルルーシュ」

 

 ルルーシュがさし伸ばした手を掴み、シンもまた立ち上がる。
 その2人を見て、カレンとC.C.が歩み寄ってくる。

 

「はぁー…まったくステラの奴、足が早いんだな」

 

 C.C.は息を切らしながら、言葉を出す。
 カレンはこうやって駆け回ることは好きなので、とても清々しそうだ。
 ルルーシュたちの後ろにあるミネルバからやってくるタリアとレイ、
 そしてラクシャータ…。

 

「そろそろ行くぞ」

 

 そのルルーシュの言葉に、カレンはわかってはいながらも…別れが惜しいという気持ちが残る。

 

「そう、行くのね…」

 

 ルナマリアがカレンとC.C.に言う。

 

「行く?ルルーシュ、カレン、C.C.どこかにいっちゃうの?」

 

 ステラは、その言葉を聞いてカレンとC.C.の服を掴む。
 今にも泣き出しそうな表情をするステラに、カレンとC.C.は顔を見合わせて、複雑な表情をする。

 

「ステラ…お守り、持っているでしょう?」
「うん」

 

 ネックレスとしてお守りとして持っている灰廉の起動キー。
 それは紅蓮のカレンのお守りとして持つ機動キーと色違いのおそろいとしてある。

 

「これを見て、私達を思い出して…。ステラが私達を覚えている限り、私達はずっと一緒だから…」
「…もしかしたら…だが。もし再びラクスのようなものが現れた場合は、戻ってくるつもりだ。
 これが最後の別れにはならないようにするよ」

 

 C.C.はステラを抱きしめて頭を撫でてやる。
 ステラは涙を流しながらC.C.の胸に顔を埋める。
 ルルーシュは、よっぽど好かれたんだなと思い、微笑む。
 魔女にここまでなついたのはカグヤぐらいだろう。

 

「ラクシャータさん、カレン、C.C.…ルルーシュ、本当にありがとう」
「この一ヶ月、楽しかったわ。いろいろとね」

 

 ルナマリアとメイリンはそれぞれと抱き合って、別れを惜しむ。
 メイリンは涙を堪えながら、初めての同年齢の女の子との戦友との別れに辛い思いを抱いていた。

 

「もう、メイリンったら…あなたまで泣き出したらこっちが辛いでしょう」

 

 ルナマリアがそういってメイリンを叱る。

 

「だ、だって…」
「…2人とも、ありがとう。私…ここにきて戦闘ばかりだったけど…貴方達と出会えて本当によかった…」

 

 カレンは改めてルナマリアとメイリンに思いを告げる。

 

「C.C.も…、今度またピザやいてあげるから」

 

 ルナマリアは、一ヶ月間、幾度もピザを食べていたC.C.を思い出し笑って言う。

 

「フ…、また、食べに来てやるさ。すこしは腕を上げておけよ」

 

 ルルーシュは、タリアに礼をいい、そしてレイと最後の挨拶をかわす。

 

「生きることは、死ぬことよりも難しい…。だが、それだからこそ人生とは面白いのかもしれない。様々な出会い、別れ…そして成長していく」
「俺はもう、ラウ・ル・クルーゼとしての仮面は捨てたさ。
 ルルーシュ、お前がこの先、何かがあったとしても…、俺たちと過ごした時間が、お前の何かの力になれれば幸いだ」
「感謝する」

 

 タリアが持ってきたカメラで記念撮影。

 

「わっ!?」
「な、なにっ!!」

 

 集合写真では、真ん中にいるシンにはC.C.とカレン、
 そしてルルーシュにはルナマリアとメイリンが二人を挟んで頬に口付けをするというサプライズを行い、
 2人は驚いた顔で写真にうつることに…。
 後はそれぞれクール同士のC.C.とレイ、ステラとカレン、C.C.やレイ、ルルーシュ、シンの男三人組、
 それと同じように女の子組…様々なパターンで写真が撮られた。
 思い出の1つ。互いが互いを忘れないためのものだ。

 

「…お別れね」
「またね、みんな…」
「また……会おう」
「…この世界に、幸ある未来があらんことを……」

 

 ルルーシュたちの姿は、煙のように消えていった。
 まるで全てが夢のような出来事…。
 だけど、先ほどまでの笑っていた気持ち、楽しい気持ち…そしてこの想い出は消えない。

 

「…いっちゃったね」
「また、戻ってきてくれるかな」
「俺たちが、未来を作り出せていれば、また会えるさ」

 

 残されたものたち…、シンたちには、彼らから託された未来を守るために、まだまだやるべきことがある。
 未来を守る…未来を手に入れた者たちの次なる戦いだ。
 シンは青空を眺め、風が身体をすり抜ける中…、誓った。

 
 
 
 
 

 白い白い場所…。そこは『Cの世界』。

 

「…さて、私はこのあたりで戻らないとね。さすがにこれ以上、研究、怠けてるとロイドがうるさいから…」

 

 ラクシャータは立ち止まり、キセルを回しながらつぶやく。

 

「そうか、いろいろとすまなかった…元の世界に戻ったら、俺たちのことはおそらく忘れるだろう」
「そうなのかい、残念…ルルーシュ?」

 

 ラクシャータがルルーシュにキセルをむけ

 

「そこにいる小娘が飽きたらいつでもかえっておいて、大人の味を教えてあげるわ」

 

 耳元で囁くようにしながら言う言葉に、ルルーシュは驚きと恐怖と焦りで震える。

 

「ら、ラクシャータさん!」「……」

 

 カレンとC.C.がそれぞれ感情を表す中、ラクシャータは手を振りながら三人に背中を向ける。

 

「カレン、お前もいけ…」
「え?」

 

 カレンはルルーシュを見つめる。

 

「俺たちがこの世界に送り込まれた理由…。
 おそらく、それはCの世界において、集合無意識、神と称されるものに願った、未来を求めたことにある。
 ギアスにより、世界の未来が揺らいだ場所に、俺たちは向かい、そして、その世界に明日をもたらす。
 あの世界もラクス・クラインにより世界は止まる寸前だった。
 俺たちだけではどうしようもないということから、Cの世界が、お前とラクシャータを呼び寄せたのだろう。
 お前達の役割は終わった…、もう付き合う必要はない」

 

 シャルル・ジ・ブリタニアでの決戦時に願ったこと…。時の歩みを止めないこと…、
 それが世界の願いであり、ルルーシュに課せられた罪。
 そのために、ルルーシュは歩み続けなくてはいけない。
 そうか…自分も2人にとってはただのいちパイロットに過ぎない。
 ラクシャータさんが優秀な科学者であるのと同様に。
 ルルーシュにとっての駒でしかないということか。

 

「そんな…ルルーシュは、それを繰り返すの?」
「それが、幾多の人間の命を奪った俺が受けなくてはいけない罰だ」

 

 ルルーシュにかせられた罰は…カレンが思った以上に重いものであった。
 このような出来事を、あと何度繰り返すのだろうか。
 それが彼にとっては永遠かもしれないのに。

 

「ここまですまなかった、カレン…、お前には迷惑をかけた、どうか…ナナリーを守って欲しい」
「…ルルーシュ」

 

 ルルーシュはC.C.とともに歩き出す。次の世界を目指し…。

 

 カレンはどうしていいのかわからない。ルルーシュは世界を、自分たちの世界を救った。
 方法が間違っていたかもしれない。
 だけど、彼のおかげで世界は…平穏をもたらしたんだ。

 

「カレン」

 

 振り返ったカレンの前にいるラクシャータ。

 

「必ず帰ってくるという条件付なら、少しの間だけ休暇にしといてあげる」
「ラクシャータさん……」
「このままじゃ、納得いかないでしょう?彼の力になってあげなさい」
「……はい!」

 

 カレンは強い意志を持って頷く。そう、今、自分がやりたいことは……。

 

「さて、次はどんな世界があるんだ」

 

 ルルーシュの問いかけにC.C.は紙を取り出して

 

「ソレスタル・ビーイングと名乗るテロ組織がガンダムを操り、世界を救おうとする世界…」
「暫く、ロボット系統は遠慮しておく」
「…300年の一度行われる世界を救うため友人同士で大切な人間をかけて殺し合う蝕の祭、
 同じ時間を永遠、繰り帰しながら誰も死ぬことの無い世界を導こうとする…昭和の時代、魔法少女が活躍する世界……」
「どれもこれも厄介そうだな」

 

 ルルーシュは、紙を眺め期待・不安と様々な感情を起こしながら言った。

 

「なら、次はこれね!」

 

 C.C.とルルーシュの間に入って指差すカレン。

 

「お前!」
「2人っきりになんかさせないわよ!」
「…フ、どうなっても知らんぞ?」
「自分の意志でここにいるのよ!文句は言わせないわ!」

 

 ルルーシュは頭を抱えながらも、追い返すことは出来ないだろうと考え頭が痛む。
 笑顔のカレンは、こうやって世界を変えて行くルルーシュたちといることで、いつかルルーシュ自身の未来を変えることもできるかもしれない…、
 これだけが彼の運命じゃない。運命は自分で作るものだと知ったから…。
 こうして三人は新たな世界に向かう。
 そこで待っているものが何かはわからない…、
 だが、ルルーシュたちのやることは変わらないだろう。
 世界を壊し、世界を創り上げる……。
 大切な人たちの未来を守るために…。

 
 
 

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