@戦力二乗の法則

Last-modified: 2024-07-14 (日) 19:47:18

戦力二乗の法則、いわゆるランチェスターの第二法則 ( という通称の定理 ) は このゲームにも再現されている

概要

ランチェスターの法則
この 2 次法則というものが戦力二乗の法則というものだ

簡単に言えば交戦するときにはお互いの戦力の二乗の差の平方根が生残する数となるということ
もっと簡単に言えば戦力は固めるほど強いということ
ここまでくれば直感的にも分かると思う

問題 1,000 人と 800 人が交戦しました
それぞれの人員に質的な違いは無いものとして、全滅するまで戦ったとき、どちらがどれだけ生き残るでしょうか

1,000 - 800 = 200 ではない

1,000 ^ 2 - 800 ^ 2 = 600 ^ 2 より、1,000 人側が 600 人残る

 
  • 詳細

    …というコトで、先までの記述は ある程度 事実に即した描写である
    ただ、言及されている範囲でも “ 直感的に ” 矛盾を感じる人が おられるかも知れない
    まず戦力は数と質に分割でき、執筆者当人も その点については間接的に

    > それぞれの人員に質的な違いは無いものとして、( 後略 )

    と触れており、現実には人数差や練度、装備の良悪に差があって、戦力を構成する要素との認識が伺える
    そうなると例えば勢力同士や勢力内のユニット割合などに “ 戦力 ” のバラツキがある場合、「 各戦力の  安重根  平方根となると、どういう内訳になるのだろう ? 」 などといった疑問はワリと自然とも思われる
    時に数学や科学の知見を利用して統計な命題に取り組む分野としては統計学がワリと有名だろう
    ちなみに、世間では混乱があるとも聞くが統計学とは純粋な数学の分野ではなく数学を重用する応用科学の(たぐ)いである
    つまり実学として有意義な手法の開発や定理の探求に対するウエイトが比較的大きく、無関心でないにせよ原理、理論の探究、解明には消極的である
    そんなワケで、同じく実学を重視する工学などと同様、統計学も定型的なノウハウを多用する慣習が幾つか知られており、特に有名なのが数理モデルという概念を  やたらめったら  頻繁に用いた対象の説明である
    例えば本稿の場合、統計学なり統計学調に解法を求める場合は  二項  ベルヌーイ分布*1指数分布という確率分布の合成によるモデリングが教科書的であるという
    つまり 2 つの事象に分けて表現したあとで一方の関数に残り一方の関数を変数と見なして代入するワケである

     

    amount_of_variant
    この場合、
    ( 戦闘開始後の経過 ) 時間
    → t
    自分の戦力 ( の初期値 )
    → x₀
    自分の戦力の強さ
    → a

     

    相手の戦力 ( の初期値 )
    → y₀
    相手の戦力の強さ
    → b

     

    という 5 項目を変数とし、以下 2 つの結果が得られるような方程式に落とし込むコトになる

     

    自分の残戦力
    → X
    相手の残戦力
    → Y

     
     

    two_Pattern_events
    まず  二項  ベルヌーイ分布というのは、一定確率で起こる 2 パターンの出来事が次に再び起こった時にどっちに転ぶかを数式化したものである
    本稿の場合、欲しい統計量は特定の兵士に攻撃が向かった場合の死亡確率になろうから、横軸が戦いの起こった回数、縦軸が攻撃を被ったコトによる死亡確率を取る確率密度関数のグラフをイメージしてもらえば良いだろう

     

    次に指数分布というのは、ある確率で起こるコトが次に再び起こるまでの時間と確率の関係を数式化したものである
    ただし本稿の場合、“ 一定確率で起こるコト ” が次に再び “ 1 回こっきり ” 起こるまでの時間を数式化したいワケではなく兵士が絶命する累積数が “ 起こるコト ” として欲しい統計量であろうから、横軸に時間、縦軸に残兵数または累積死者数を取る累積分布関数のグラフをイメージしてもらえば良いだろう

     
     

    すると、
    ・兵士の絶命イベント発生タイミング  ♪ 
    ・交戦による死亡確率
    という 2 つの統計量を示すグラフが描けるハズだ

     
     
    A134557B-09FD-4D65-B940-1C091A04BB7F.jpeg
    309D33F9-F6A8-454C-AB16-B85ABAF00CB2.jpeg
     
    1EBAD38E-FE44-4E2B-B0C9-90354155928C.jpeg
    93D30D84-F2B3-42A3-8B37-E0A203593540.png
     
     

    前者だけだと交戦の結果として生きているのか死んでいるのか分からず、後者だけだと いつ ( のタイミング ) まで生きているのか分からんので、2 つの方程式を合成させるコトにより 「 交戦が行われ、その結果、生きていたり死んでいたりする 」 様子を数式化するワケである

     

    すると、以下のような連立方程式が成立するらしい

     
     
    DDD7233B-F5A9-4324-91A3-BBF496CC9A03.jpeg
     
    D%EF%BC%93.png
     

    なお、グラフ化すると こんな感じ

    lanche_2.png
     

結論

この法則はバラバラに突撃させる ( ≒ 逐次投入 ) よりも纏めて行った方が 大きなダメージを与えることができる 対象の部隊が一会戦で受ける被害を最小限に抑制できるという結論を示す
一方、このゲームには SBDE というものがある都合上、一師団に纏めてしまうのも逆効果となる
理論上で最も効果的なのは、3 ~ 4 個師団で同時に一つの敵の軍団を叩くということ
かつ加害力を最大値に維持する、つまり継戦能力を考慮する場合は各部隊に予備兵力が与えられる条件が望ましい
包囲して自走砲で殴るのが安定か ( 高難易度 )
他にも、支援兵器を多数導入して SBDE を回避することが挙げられる
中戦車だけでなく駆逐戦車を混ぜてみたり、自走砲だけでなく砲兵を混ぜてみたり ( 射程的問題はあるが )、列車砲・ミサイルで支援をしたり、航空支援を追加してエアランドバトルをしてみたりといろいろな選択肢がある
こちらは低難易度だが多様な兵器を要するため研究費用が嵩む点に注意
SBDE と戦力二乗の法則を双方とも活かすのは至難の業となる
これができるようになったら誰も あなたのことを初心者とは呼ばないだろう
ただし、固めると戦略的柔軟性が失われるため注意

 
  • 例外等蛇足

    なお生残する味方の人員を増やすより相手に与えるダメージを優先すべき場合、ひいては味方を犠牲にしてでも相手に与えるダメージの最大化を優先すべきなら必ずしもランチェスター戦略を採用しない方が良いコトもある
    その理由だが、雑に言えば 「 単なる理論モデルなのでモデルの前提を崩せば破綻するため 」 である
    コレを少し掘り下げる場合、まず よく言われる 「 第一法則は決闘を表し、第二法則は乱戦を表している 」 という喩え話があるが、本来コレは戦闘の様式や見た目が決闘かどうかではなく互いの攻撃が一撃必殺ではない戦闘、つまり戦闘後の場合分け*2の存否について考慮するかどうかを述べたものである
    したがって自爆攻擊や特攻、一撃離脱戦法やゲリラ戦など、殺られる前に殺る、しかも あわよくば局地的には継戦しない、というような交戦方式であれば第一法則が適用されるため、数の論理が必ずしも通用しなくなってしまうのである

     

    また近年、このような古典的確率統計モデリング自体に対する  身も蓋も無い  根本的な批判は、統計力学の専門家の間で話題に挙がる事が多いらしい
    というのも、大筋のストーリーとして


        古い時代の人々は『 全ての系は、均質な素子がランダムに動き回るから平衡状態が実現される 』
        という ( 作業 ) 仮設に基づいて ( 前項までのような ) 数式化を目指した

        しかし 実際 現実には
        『 ほとんどの系の素子は、それ自体もランダム性を示す一種の系である事の方が多いものの、
          それらの系が 寄り集まると平衡状態が実現される ( 事もある ) 』というのが実態で、
        細部を掘り下げると何らかの秩序に向かう事も少なくない  じゃないか !  という
        多くの研究者らの  こだわり  直感を無視できなくなった

    という事情があるそうだ

     

関連ページ

戦術
戦力過集中ペナルティ

 

コメント [hatena]


*1 間違いとまでは言えないが、二項分布は事象の起こる確率が 50 : 50 の時に用いる
本項のように、確率が p と p - 1 の時はベルヌーイ分布が適当である

*2 命中するかどうか、当たったとして絶命するかどうか