・デリケートな時計塔
依頼者:
ガルムート(Galmut)
/ ジュノ上層・民家
依頼内容:
「時計塔の油」が切れそう。
天晶堂に行けば手に入るかも……。
Collet : ねぇ~、ガルムート兄ちゃ~ん!
Galmut : おうっ、コレットか!
もうすぐで仕事が終わるからちょっと待ってろよ!
Collet : うん!
Collet : ガルムート兄ちゃんが、毎日
時計の歯車ひとつひとつに油を塗ってるから
あの時計塔は絶対正確なの!
Galmut : ハァハァ……。うっす、元気か?
学校にはちゃんと行ってるのか。
Collet : う、うん、ぼちぼちね。
Galmut : なんだよ、“ぼちぼち”って。
ハッキリしねぇなぁ……。その様子だとやっぱり
まだ行ってないんだろ?
Collet : うん……。でもお兄ちゃんのおっきな声を
聞いたら、ちょっと元気になった!
Galmut : そうか! 子供は元気が一番だな。
な、あんた!
Galmut : よしよし、ピッタシだ。
ヘヘヘ、オレ、あの時計塔の整備をやってんのさ。
Galmut : 最初は地味な仕事だと思ったんだけどさ、
こいつがやってみると、結構おもしれぇんだ……。
Galmut : あの時計は整備にちょっと手を抜くと、
すぐにスネておかしくなっちゃうんだよ。
すげえデリケートなんだよな。
Galmut : で、毎朝オレが整備し、ネジをまいた
時計の鐘が鳴るだろ? するとまるで、
オレがこの街の目覚ましになったような気分さ。
Galmut : 時計を掃除してると、毎日同じ人が
決まった時間に時計塔の前を通って行って、
挨拶してくれる。
Galmut : たまに常連さんが通らない日があったり
すると、どうしたんだろうって心配になっちまったり
してな。
Galmut : いつも通るキレイな人がいてさ……。
Galmut : それがある日、男と楽しそうに
歩いてるのを見ちまってガッカリしたり、とか……。
Galmut : まあ、そんな話はいいや。
とにかくこの仕事をしてるといろんなことが
あって……、オレがみんなの役に立てるのが
うれしくてさ。
Galmut : たいしたことしてねぇのに、な。
おかしいだろ? へヘッ。
Collet : クスクス……。
うん! おかしいよ、お兄ちゃん……!
Galmut : お前さんに言ってんじゃねえ。
Galmut : さぁて、オレもそろそろ帰るとするよ。
気をつけてな!
Galmut : あんたも。じゃ、また明日!
Galmut : 誰かと思ったら、あんたか。
せまいとこだけど、まぁ入んなよ。
Galmut : 珍しいもんがいろいろあるだろ。
Galmut : へへ、ガラクタばっかだけどな。
オレにとっちゃどれもある人から譲り受けた
大切なものばかりなのさ。
Galmut : おっとっと、そっちは寝床だ!
カンベンしてくれ!
Narihira : お~い、元気にやっとるかい?
Galmut : お、ナリヒラの爺さん!
噂をすればなんとやら、だな。
Galmut : まだくたばってなかったのか?
Narihira : ヘヘヘ、お前らとは
体のつくりが違うんじゃて!
Galmut : ヘッ、相変わらずだな。
Narihira : どうじゃい調子は?
Galmut : もちろんキチンと動いてるさ。爺さん、
もしかしてあの鐘の音が聞こえないのかい?
Narihira : 最近、耳が遠くてのぉ。
……なんてぇのはウソじゃ。ちゃあ~んと
聞こえとるわい!
Narihira : ちとばかし鐘の音がにごっとるよう
じゃがな。そろそろ油をさしてやらんと……。
Galmut : チッ、なんだよ。心配して損したぜ。
Narihira : ほう、お前さんにも友人がたずねて
来るようになったか。結構結構!
Narihira : 知っとるか、おぬし。
こやつは今ではこんなだが、ちょっと前はそりゃ
ひどかったんじゃぞ。
Galmut : や、やめてくれよ、爺さんッ!
Narihira : ホッホッホ、いいじゃないか!
こいつがこの街に来たのはもうかれこれ
3年ぐらい前になるかのぉ。
Narihira : こやつは一旗あげようって躍起に
なっとった。一生懸命、それこそ朝から晩まで
働いとったの。
Galmut : そうそう、もうすぐ自分の店を
開けるかも、ってぐらい金を貯めたんだけど……。
Galmut : 情けねぇ話、サギにあっちまって
もう、スッカラカンさ……。
Narihira : それ以来、こいつは荒れとってなあ……。
もう金輪際、誰も信じるもんかっていうような、
すさんだ目をしとったのぉ。
Galmut : そんなオレに、時計塔の仕事をやらねぇか
って言ってくれたのが、爺さんだったんだ。
Galmut : 最初はまたオレをだまそうとしてんじゃ
ねぇかと思ってたんだが、やってるとだんだんと
楽しくなってきてさ……。
Galmut : 一生懸命サビを落として油を指して……。
1人でようやく整備を終えた時に、聴こえてきた
鐘の音の響き……。今でも耳に残ってるよ……。
Narihira : ま、おかげでわしは引退して楽させて
もらっとるがな。
Narihira : あ、そうじゃ、肝心なことを言い忘れ
とった。
Narihira : 例の時計塔の油だが、今、獣人たちが
暴れとるせいで品薄らしいぞ。どうにかせんとな。
Galmut : えっ、ホントかよ? あれがねぇと……。
Narihira : 天晶堂なら扱っとるかも知れんな。
ああいう店とはつきあいたくはないんじゃが……。
Galmut : むむ……、そうだ。
なあ、あんた、もしよかったら時計塔の整備に
使う時計塔の油を取ってきてくれないか?
Galmut : な、頼むよ。あの時計はちょっと手を
抜くと、すぐにスネておかしくなっちゃうんだ。
えらくデリケートなんだよ。
Galmut : そいつはありがたい! よろしく頼むぜ。
Narihira : とりあえずはジュノにある天晶堂に
行ってみるといい。
Galmut : あぁん……、誰だい?
Galmut : あぁ、あんたか……。
せっかく取ってきてもらって悪いが、もうそいつは
必要ないんだ……。
Galmut : あの時計塔は壊してしまって
海からの物資を運び上げるクレーンを
建てることになったんだとさ。
Galmut : ……もう決まっちまったんだ。
どうにもならないさ。
Galmut : 時計塔の油は受け取っておくよ。
とりあえずありがとよ。これ、取っておいてくれ。
Galmut : ちょっとでも何かを信じようと
思ったオレがバカだったってことだな……。
Narihira : ガルムート、わしじゃ。
そこにおるんじゃろ?
Narihira : おぉ、お前さんかい。ガルムートは
どこへ行きおった?
Narihira : あやつ、留守か。
なに、時計塔の取り壊しの話をしとったと?
それでガックリきとったか。
Narihira : しょうがないヤツだな。
時計塔保存の嘆願書をもらって、署名を集めて
持って行けば、計画を中止させることが
できるかもしれぬのに……。
機工士の軍手を手にいれた!
1200ギルを手にいれた!