加齢による変化
- 加齢による唾液腺の形態学的変化
70歳以上から形態に変化が生じる(腺房細胞の減少)
しかし分泌量と形態学的変化の関係は不明。
- 加齢による唾液組成の変化
加齢に伴い、ムチン、分泌型IgAの濃度が減少。
これは、細菌その他の因子に対する防御機能の低下を示す。
- 加齢による唾液分泌量の変化
安静時唾液 :加齢による分泌量変化が認められる(特に、閉経後の女性に著明)
刺激唾液 :加齢による分泌量変化は少ない
高齢者の口腔乾燥症状は加齢だけではなく、内服薬、唾液組成の変化等の他の因子の関与が考えられる。
内服薬が唾液分泌に及ぼす影響
唾液分泌の減少をもたらす薬剤=約400種類
- 特に副作用の強い薬剤
三環系抗うつ薬:トフラニール、アナフラニール
抗精神病薬 :ウインタミン、コントミン - その他の薬剤
降圧利尿剤、抗ヒスタミン剤、抗コリン作動薬(抗パーキンソン薬):アーテン、アキネトン
生理的な原因によって唾液分泌が少なくなる場合
- 唾液を作り、分泌する唾液腺は、自律神経の影響を受けます。
たとえば、緊張した時や、不安を感じた時、怒りを感じたとき等には交感神経が優位になっているため、唾液の分泌量は減少します。
- なんらかの原因で脱水状態になったとき、体からの水分の喪失を防ぐために、唾液の分泌は減ります。
年をとると、その他のあらゆる部分と同じように、唾液腺の分泌機能も衰えていくため、一般に老人では口腔内が乾燥しやすくなります。
女性の場合は、閉経に伴い、ホルモン等の関係で口腔内乾燥が起こります。
- 耳鼻科の病気や内科の病気で薬を服用している場合、その薬の多くは唾液の分泌を抑制する作用を持っています。
病的な原因によって唾液分泌が少なくなる場合
炎症や腫瘍を含む唾液腺の病気、唾液腺の機能に異常を引き起こす全身的な病気に罹ったときなどは、唾液の分泌量が減少します。また、唾液腺の付近に、治療のための放射線照射を受けた場合には、唾液腺が萎縮を起こし、唾液分泌機能が衰えます。
唾液腺の病気、または唾液の分泌を減少させる病気を幾つか挙げてみます。
- 慢性唾液腺炎
唾液腺が、数ヶ月から数年かかって、痛みを感じないままに腫脹し、硬くなってくるものです。自覚症状がないために、なかなか気づかれません。
- シェーグレン症候群
唾液腺だけではなく、目(乾性結膜炎)と、関節(慢性関節リウマチ)にも症状が出る、全身性疾患です。全身の、外分泌機能が障害されます。
- 自律神経失調症
自律神経の機能に障害を起こしたもので、その内容と程度によって、交換神経緊張症と、副交感神経緊張症とに分けられます。また、全機能が障害された状態を全自律神経失調症とよびます。
消化器系では、食欲不振や胃の不快感などとともに、唾液の分泌が減少することにより、口の中が乾く、という症状が起こりますが、障害を起こす神経によっては逆に分泌量が増えてしまうこともあります。また、便秘や下痢も起こります。
- 甲状腺機能障害
甲状腺の機能が乱れると、全身に様々な症状が発生します。そういう患者さんの場合、口の中が乾燥しやすくなります。口の中ばかりでなく、目や皮膚も乾燥します。
このような症状は、甲状腺機能亢進症の場合が多いのですが、口の中が乾燥するからといってうがい薬を使用する場合、ヨードが主成分のものは、甲状腺にヨードが蓄積してしまうので、非常に危険です。